知れば知るほど解らなくなる映画の話(2)~「考えるな!感じろ!」を考える~

2017.01.13
雑学

Why So Serious ?

侍功夫

どうも、侍功夫です。
連載2回目。本当は映画文法において最も重要な手法であるモンタージュについて書こうと思っていたのだが、せっかく年始の節目なおめでたい時期なので、ピッタリなテーマにしようと思う。

ブルース・リーだ。

多くの人々が、好きな人に告白する前日や、会社に辞表を叩きつける直前などにリーの出演作品を見て気合を入れたことと思う。そうやって、いまだに多くの人生を左右し続けているブルース・リーだが、その一方で大きな勘違いもされている。彼の一番有名な一言。「考えるな! 感じろ!」が、である。

インプロビゼーションは1日にしてならず

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燃えよドラゴン序盤。国際情報局からの使者を待たせ、まだ幼い弟子に稽古をつける場面。蹴ってみろと言われた少年弟子は何度も蹴りを入れるが、ダメ出しの連続で叱られてしまう。何度も蹴りを入れている間に、全く無心に良い蹴りを放ち、ようやくリーに認められる。

「どう感じた?」

急な質問に心地よい疲労と無心から引き戻された少年は、どうしたものか? と取り繕ってアゴに手をやり「う~~ん。考えさせて……」と言ってまた叱られる。

「考えるな! 感じろ!」

人類の歴史において、最も重要な言葉が映画のフィルムに焼き付けられた瞬間だ。

さて。この言葉、そのまま字面通りに受け取るとすれば「その場その場で感じたことを感じたままに受け取り反応せよ」というインプロビゼーション(即興性/アドリブ)の推奨に思える。しかし、まずは感じる前によく考えてみるといい。たとえばジャズのインプロビゼーション(即興演奏)をするプレイヤーは、死ぬほど練習したプロばかりであることを。

証言:ジェームズ・コバーン

リーがアメリカで道場を開くとスティーブ・マックィーンシャロン・テートなどのセレブな生徒を抱えることとなる。そんなセレブ生徒の1人、ジェームズ・コバーンはリーの自宅に招かれて練習をつけてもらった際のことを、こう懐古している。

いわく。リーほどの格闘家の練習はどれほど先鋭的なものかと思っていたら、延々と続くストレッチに基礎体力作りのベンチプレスなどが終わると、これまた基本的なサンドバッグ打ちと蹴りを延々と繰り返し、終わってしまった。そうだ。

コバーンがリー自宅で練習をする風景はドキュメンタリービデオ『ブルース・リー 最強格闘技ジー・クン・ドー』に収められている。あのジェームズ・コバーンが本当に延々とサイド・キックだけを蹴らされている。その光景は『燃えよドラゴン』少年弟子の稽古ロング・バージョンの様相と言えるだろう。

歩くように殴る

赤ちゃんが歩き出す時、そこに論理は無い。初めて歩いた日の苦労の記憶も無い。おそらく、その記憶を持っている人はいないだろう。しかし、立ち上がったり歩くのに苦労しなかった赤ちゃんもいないハズだ。まだしゃべれない赤ちゃんは、何度も失敗しながら感覚的にバランスの取り方を覚え、何度も転びながらようやく歩けるようになった。

もしも、赤ちゃんが歩くよりも先に言葉を覚えていたなら、「右足を重心ごと前に出し、地面についた反動と勢いで左足を前に振り出す。」というように、「歩行」を言語化しただろう。

言語化された「歩行」は「思考」となり「考察」される。「考察」によって「歩行」は限定的な意味を持たざるをえなくなる。とかなんとか、ムズかしいように聞こえるかもしれないが、感覚的には理解できるだろう。要は歩くときにいちいち「右足!左足!」とは考えない。

そして、ブルース・リーは「歩くように無意識に相手の急所へ攻撃が加えられるまで修練を積め。」と言っているのだ。

これこそ「考えるな! 感じろ!」の真意である。

ブルース・リーと功夫

ここで、ジャッキー・チェンの名作『酔拳』や『蛇拳』、またベスト・キッドや、リメイク版ベスト・キッドを思い返してみると、同じような練習を積んでいることが解るだろう。

特に新旧『ベスト・キッド』では生徒自身が何をしているのか理解しないまま、同じ動作を延々と繰り返させられ、いざ攻撃を加えられると自然と払いのけている場面がある。

これが「功夫」である。

「功夫」とは格闘スタイルの名前では無く「修練」の意味があるそうだ。大ヒットゲーム「バーチャファイター」をプレイしたことがある人ならチャイナ服の女性ファイターに負けて「あなたには功夫が足りないわ!」と言われたことがあるだろう。あれは修練不足をなじられていたワケだ。

ブルース・リーが立ち上げた格闘スタイル「ジー・クン・ドー」は古い形式ばったやり方への懐疑と否定が、その精神の礎になっているが、その一方で良いものならば何でもどん欲に取り入れることもヨシとされている。実際、ジー・クン・ドーでは空手、ボクシング、テコンドー、タイ式キックボクシング、フェンシング、柔道などの武道から、果ては噛みついたり、金的(キ●タマへの攻撃……)までも「攻撃手段」として認められている。しかし、それらも無意識に繰り出せるようになるまで、まずは修練を積め! というのがブルース・リーの教えなのである。

ここで、もうひとつブルース・リーの残した言葉を紹介しよう。

「1万種類のキックを1度づつ練習した者は恐れないが、ひとつのキックを1万回練習した者を恐れる。」

さて。上記したジャッキー・チェンの「拳もの」作品や、『ロッキー』シリーズに代表されるスポーツ映画には、音楽をバックに細かなカットの積み重ねで修練を見せていく場面がある。あれが「モンタージュ」で、次回のテーマである。

うまくまとまったところで。今回はおしまい。アチョー!

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  • ぶたくんとお友達
    4.1
    日本の藤岡弘、 中国のブルースリー。 この2人は20世紀を代表するヒーローである。 強いメッセージを持ったヒーローである2人は今でこそ、顔芸などコーヒーにありがとう。ありがとうというなどネタにされることが多いが、こうして実際に映画を観ることでアクションスターとしての偉大さを感じることができる。 闘う漢はカッコいい‼️ 信念のある漢はカッコいい‼️ 名台詞のみが知れ渡った映画ではあるが、ストーリーは至ってシンプル。ラストの鏡張りの部屋での決闘も至ってシンプル。 蹴って殴って蹴って刺して倒す 以上❗️
  • たむらまさあき
    -
    ブルース・リーってどこが評価されてるんだろうか。 正直、その凄さを言語化できないな。
  • TADDY
    3.5
    記録
  • オオオカシンゴ
    3.8
    ブルース・リーがヌンチャク持ったとき激アツ。 鏡の間の難しさは志摩スペイン村で味わったのでよくわかった。
  • 青山
    3.4
    冒頭から名台詞「Don't think , Feel!」がぶち込まれてくる事からも分かる通り、ストーリーをごちゃごちゃ考えるのではなく、アクションのすごさを感じる映画。 アクション映画ほぼ観ないので知ったようなこと言えないけど、恐らくオーソドックスなのであろう、「家族の仇をやっつける」というシンプルなストーリーが良い。そのシンプルに強い主人公の行動原理ゆえにアクション部分が剥き出しになっている。 で、そのアクションがただただ凄い!!というかブルース・リーという男がただただ凄い......。ワイヤーすら使っていないらしいのにあのキレ、あの速さ。ワイヤーどころかCG並みの人間離れした動きなので、あれを見てるだけで満足。それから大人数バトルとか鏡の部屋の決闘とか、バトルのシチュエーションもちょいちょい変えてくるのでアクション増え始めてからは飽きない。 欲を言えば、しっかり戦い始めるまでが長いかなぁ。アクションあんまり好きじゃないのもあるけど、このめちゃくちゃシンプルな内容で100分観るのはちょっとキツい。
  • けーすけ
    3.7
    昔観た映画のレビュー。 興奮してブルースリーの真似事して友人の前歯折った(笑)
  • saru
    3.8
    記録
  • よこえり
    3.0
    超有名だから期待しすぎてしまったかも。ジャキチェンのようなぶっ飛んだアクションや面白さはなかった。ただ映画史に残る名言「考えるな、感じろ」のシーンやテーマ曲が流れたり、サモハン見つけた時はテンションあがった。
  • 恵雅樹MowHenry
    4.7
    【劇場初公開版: 1h39m】 ●'97 8/〜 単館リバイバル公開 (初公開: '73 12/22〜) (リバイバル: '75 / 〜) 配給: 日本ヘラルド (初公開及び'75リバイバル時配給: ワーナー) ワイド(PANAVISION/シネスコ) モノラル 10/3 19:00〜〜 シネセゾン渋谷にて観賞 フィルム上映
  • 猛省するダライ
    3.6
    ストーリーのガバもあったし、最後の鏡張りの部屋のシーンはやりたいことはわかるのだけど、持て余している感じがあった。でも70年代でこれをやったことは凄いと思う。
  • ふみや
    3.2
    初ブルース・リー。 アクションです。 Don't think feeeel !!!
  • doremi
    3.6
    有名すぎる作品なのに観たことがなかったので視聴。 ひたすらアクション。 ムキムキ&クール。 言うことなしでかっこいい!
  • 塩豆
    5.0
    ブルース・リー、最高!! 以前観たことあるんだけど、ちゃんと観たのは初めてかもしれない。 伝説と呼ぶにふさわしい作品ではないか! 武道会が開かれる島に犯罪組織の偵察と妹の復讐へ… 今までカンフー映画って勝手にジャッキー・チェンはちょっと娯楽・エンターテイメント寄りでブルース・リーは真面目寄りだと思い込みしてました。 ブルース・リー面白いじゃないか~~ 悪役も筋肉モリモリ君も最高だし007顔負けの忍び足、眼力と雄叫び、そして音楽が格好いい!こんな使い方ニヤニヤが止まらない🎵 続けて2回鑑賞してしまった。 それと「この人デブゴンの人だよ」と教わりマジかっ!とデブゴンも伝説だなと。更にカンフー映画にハマっていきそうです。 (ジャッキーも見つけました!首、へし折られてますね・・・)
  • 荒イせぇるすまん
    -
    ルーツを感じる。 人気少年漫画のほとんどが、この映画のシーンに通じてるんじゃないか。 強者バトルの原点。 スターになる前のジャッキーチェンがその他大勢のやられ役で出てるので探しましょう。
  • DolphinPaprika
    3.8
    力こそ全てである閉ざされた孤島、そこに立つブルース・リーの絶対的な強さには全幅の信頼を置いてしまう。 本作の有名シーンである、鏡張りになった部屋で迎える最終決戦では、勝者が退室する際、回転扉に磔にされたたままの敗者が、対戦相手としてのリスペクトを何も与えられないまま、まるでごみのような扱いを受けてしまう。強さだけあればあとはもう何も要らないこの島では弱者はただのごみなのである。強くならねば。強くならねばなりません。
  • 横山
    4.0
    超超超久しぶりに見た! やっぱ面白いな〜 なんか今見ると敵のボスとかも含めて初期の007みたいな設定だな 隠れジャッキーを探せ!
  • 眠り猫
    -
    記録用
  • ゆみみ
    1.8
    初ブルース・リーしました。ストーリーはまじどうでもいいです、ブルース・リーのかっこよさを楽しむのみ。ただカンフーは初心者なもので、敵を倒すたびにやるあのキメ顔はどうも慣れなかった、、。終盤の鏡の部屋の回転扉くるくるーは好きですね。ちなみにアチョ〜っていう掛け声は『怪鳥音』というそうです(ちゃっかりWikipediaチェック)。
  • Hayato
    3.2
    ぅっふわぁちょぉぉぉ!
  • いかえもん
    3.5
    カンフー映画好きなのに、恥ずかしながら実はブルースリーはちゃんと観ていなかったのです。 友人との間で「死亡遊戯」という映画が話題に上ったのですが、それは今すぐは見られないので、今回はこちらで。 英語だったのでちょっとびっくり。 うーん、個人的にはジャッキーチェンの方が馴染みがあるからか、好きだなぁと思ったんだけど、 あの「ゥワッチョーッ!!!!」っていう声はなかなかよろしいなぁ。あの声は北斗の拳のケンシロウに受け継がれているような気がします。 キメの顔も何とも言えん良さがあります。こっちもブルースリーにつられてあの顔になってしまいそうになるという…。 蹴りやらなんやらの度に入る効果音もええ音してます。 ヌンチャクやら、鏡のお部屋での闘いやら、よくテレビのコントとかで観たのの本物が出てきて楽しかったです。 しかし、敵のおっさんが、熊手みたいな義手をつけたらそれが机に刺さってさぁ大変!っていうのは結構笑えた。なのにその後につけた義手がまた金属製の刺さりそうな手っていうのは、なんでやねーん!学べ!でした。 そして音楽がいい。テーマソングは言うまでもないですが、船に乗って川を渡っていくところとかで流れてた音楽とか、ツインピークスを思い出させる怪しげな音楽で、いい感じでした。 なんかちょっとまたカンフー映画が見たくなってきたなぁ…。
  • ハム大
    3.5
    ヌンチャクはやすぎ
  • Risa
    4.5
    ブルースリーかっこいい♡♡♡惚れた♡ 派手な編集の無い、元々びっくり人間のような人が演じるアクション映画は好きみたい♡ ストーリーは ベタにも程があるってほどベタだけど、それが逆に良い。 (ショッカーみたいな雑魚とスーパー強い人間ブルースリー!アフロの武道家!地下で闇の仕事! )
  • けけごろう
    3.1
    格闘シーンのかっこよさと笑顔のかわいさ。 ブルース・リーが愛されてる理由がよくわかった。 ストーリーとかは特に特筆すべきことは何もなし。 有名だしせっかくだからと録画しっぱなしだったのを見てみたけど、存外おもしろかったな。
  • tsutomtoom
    3.6
    2017年3月、初視聴。ストーリーに特筆すべき点は無いけど、ブルース・リーの圧倒的な技のキレに驚嘆。
  • rafael
    4.0
    とにかくカッコいい
  • 梅田
    3.0
    見せ場までが長い長い。いざブルース・リーが暴れ始めるとめちゃくちゃ面白いんだけど。ラストの鏡の間のシーン、ウェルズの『上海から来た女』みたい。 脇の下で首を固めて踵で蹴るやつがかっこいい。
  • 舵芽衣子さそり監督魂のアソコ
    3.5
    何だあの上半身裸の男は?江頭?いや、ブルース・リーだ!あの紐で繋がった振り回す棒は?ヌンチャクだ!これ、東洋人が戦うだけじゃヒットしないから白人、黒人もセットで付けたら中国人が凄すぎて完全に後はいらないって映画になっちゃった。兎に角リーが凄すぎて出てるシーンだけ神!後はどうでもいいって感じになってる。しかも公開時にはリーは死んでた。色んな意味で凄過ぎて映画というより伝記っていうかマニュアルっていうかアイコンっていうか別の物。リーは★★★★★ストーリーは★★★
  • 83roh
    -
    記録
  • 瓶覗
    3.8
    初めて見た時 驚くほど感動した 見たことの無い映画だ 今見たら さほどでもないのかもしれないが 当時はヤッパリ面白かった
  • サトーリョー
    2.7
    有名な作品ですが、この歳になって始めて観賞しました。 アクションシーンは、流石で今観ても十分面白い。ブルース・リーの無駄のない細マッチョボディも美しい!笑 あと、ブルース・リーの顔面演技にも注目の作品です。 僕の子供の頃は、ブルース・リーよりもジャッキー・チェンを観てましたが、子供の頃にこれ観てたら、もっとブルース・リーのことも好きになってただろうなぁ。
「燃えよドラゴン」
のレビュー(4393件)