自分の中のライオンを放ち、天才棋士を演じた神木隆之介の覚悟『3月のライオン』【インタビュー】

2017.03.18
インタビュー

映画のインタビュー&取材漬けの日々是幸也

赤山恭子

柔和な表情と語り口で、最新主演映画『3月のライオン』について話を始めた神木隆之介。屈託のない笑みを広げながらも、時折、「自分の中でライオンを飼っている自覚がある」、「絶対負けたくないときは、素直に言います」、「意外と攻撃型」など、こちらをドキッとさせるような一言を口にしたりする。確固たる意志を感じさせる瞳は、スクリーンでは時に強く、時に鈍く光りを放ち、若手プロ棋士・桐山零の繊細な心の内を映し出す。ストーリーを追いながら、いつしか零の、神木の表情に釘付けになってしまう本作で、いくつもの顔を見せてくれる彼に、夢中にならずにいられない。未だ23歳、底知れない役者である。

3月のライオン

――主役の桐山零役に決まったときの思いから教えてください。

お話をいただいたときは、とてもうれしかったです。原作が好きでしたし、将棋も好きだったのでうれしいと思っていました。しかし、2部作の主演というプレッシャーは、やはり大きかったです。素敵な役者の方たちの中心に僕が立てるのか、主役として芝居も立ち居振る舞いもきちんとできるのか、その技量のようなものがあるのか、とよぎりました。しかし、蓋を開けてみると、撮影現場では本当に皆さんが優しく和気あいあいと進んでいきました。

――演じていく中で、零という人物をどう捉えていかれましたか?

最初はおとなしい人間かなと思ったのですが、まったくそうではなくて。孤独が端々に見えることが、一見物静かなイメージに結びついているのかなと感じました。タイトルにも入っている通り、零はライオンが心の中に住んでいるような人間だと思いました。それこそ、後藤正宗(※伊藤英明演じる九段)にも立ち向かっていけるくらいですし、心の中では相当暴れているのだろう、と。

――ライオンを心に飼っている零は、そのまま神木さんのイメージに重なるのですが、ご自身はライオンを飼っている自覚はありますか?

あります。

――お。どんなライオンですか?

僕は、とても負けず嫌いなんです。少し違うかもしれませんが、できればバラエティ番組での対戦なども負けたくないと思っています(笑)。勝ち負けが決まるなら、勝ちたいです。最近は、負けても楽しめればいいという余裕を持たなければいけない、とようやく思い始めてはいますが、基本的には負けたくはないです(笑)。

――演技においては、負けず嫌いをどう発揮するんですか?

あまり人に敵意をむき出しにすることはないですが、絶対負けたくないときは、素直に言っています。余裕を見せておいて、負けず嫌いだと嫌な感じがすると思うので素直に負けたくないと言います(笑)。あとは、演技の本番で緊張することも多々あるので、その緊張には絶対負けたくないと思います。自分の中では、良い方向に作用していると思います。

3月のライオン

――劇中で、盤より表情で対局を見せていく姿に圧倒されました。台詞がない分、役者さんの演技に大きく比重が置かれているように感じます。

僕たちは、「十何手先にこう責めたいので、ここに指した」、「だから相手はここに移動した」と、対局について細かく教えていただいていました。対局を理解するのは当然ですが、ただ盤を眺めているだけではなく、一番大事なのは表情と目の動きかなと思いました。実際に対局していくと目が各方向にいくんです。どこを指されるのか、自分がどこを指したらどうなるのか、と一手、一手、頭の中で動かしているんです。そのリアルさや繊細さは表現したいと思っていたので、とても疲れました(笑)。

――緊張と集中は、観ている側にも伝わりました。

皆さん息が切れていました(笑)。長回しで、スタッフの皆さんも、息を殺していたので疲れていたのではないかと思います。順撮りなので、後半にかけて疲れていくんです。その疲れがリアルだったので、またよかったなと思います。

――将棋はその指し方によって性格まで丸裸になるようです。稽古から撮影の半年間、ずっと将棋と向き合ってきて、新たに見えた神木さん像はありましたか?

意外と自分は攻撃型なんだなと思いました。最初に自分に合った棋風を決めていたのですが、僕は振り飛車といって、飛車を有効活用しながら攻めていくのが好きで。将棋は盤を通したコミュニケーションだと思っていて、「僕はこうします。さあ、あなたはどうしますか?」という駆け引きだったり、会話だったりをするものだと。でも、もう少ししっかりと守るタイプかなと思っていたのですが、僕は意外と攻めるタイプなんだと思いました(笑)。

――今回、モノローグも印象的でしたが、ナレーションで注意した点はどういうところでしょうか?

現場と後日の両方で録ったのですが、改めて観ると、現場とは違ったモノローグのところもたくさんありました。やはり聞こえ方には違いをつけたいと思い、いろいろなことに気をつけました。零は、完璧にすべてを悟って話しているわけではないので、少し幼い雰囲気も残しつつ演じなければならないなと、現場の生々しい感じを思い出しながら演じていました。

――「生々しい感じ」とは、現場での気持ちを、ということですよね。

そうです。現場で感じたこと、それこそ零の気持ちの流れで、そのときに思ったことを口にするようなモノローグの言い方でないといけないと思っていたので、頑張りました。

――零は大切なものために戦いますが、今、神木さんの大切なものは何ですか?

僕はこれまでお芝居しかしたことがないんです。バイトもしたことがないので、居場所がここしかない。頑張っていくしかないんです。ただ、いつ誰の需要がなくなるかわからない世界なので、自分の居場所を守るために戦うしかないのかもしれません。僕はお芝居が好きなので、お芝居ができれば幸せです。

――お芝居が好きという気持ちの込もった演技が、多くの出演オファーを呼び寄せている気がします。作品には、いつもどのように向き合っているんですか?

確実にひとつひとつを考えて向き合うしかないと思っているので、普段通りというスタイルです。それこそ、世の中で大ヒットしている作品はたくさんありますが、スタッフさんやキャストさん、全員の力がきちんと発揮できた状態で、最高のものができて、そこに観てくださった方がたくさんいる、と。その先で奇跡が起こるのだと思うんです。

3月のライオン

――最後に、全然違う話なのですが、Filmarksの俳優「Fan!」数で、神木さんは上位なんですね。4位(※取材当時)。

4位ですか!? ありがたいです、うれしいです!

――普段、そのような波というか、「神木が好き」と思われているオーラを感じる瞬間はありますか?

よく男性の方に声をかけていただきます。お兄ちゃんのような方が多くて。本当にうれしいです。

――本作の零まで幅広い役柄を演じていらっしゃいますけど、がっつり恋愛系作品には、まだ手をつけられていないですよね?

そうなんです。ずっと演じたいとは思っています。福士蒼汰くんの「きょうは会社休みます。」や三浦春馬くんの「ラスト・シンデレラ」のような作品に出演してみたいです。恋愛作品で自分がどんな顔をするのか、とても楽しみです。(取材・文:赤山恭子/撮影:市川沙希)

『3月のライオン』前編は3月18日(土)公開。

3月のライオン
(C)2017 映画「3月のライオン」製作委員会

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