【今は亡き「伝説」の監督】『タレンタイム〜優しい歌』監督との撮影秘話、その死に隠されたエピソードとは?

2017.03.27
映画祭・イベント

Filmarks編集部

フィルマーくま

Talentime3

マレーシアの女性監督ヤスミン・アフマドの最高傑作で、長編映画としての遺作であるタレンタイム〜優しい歌が3月25日(土)に初日を迎えました。Filmarks上でも4.3の高評価! 絶賛のレビューが多数寄せられ、《Filmarks調べ》の3月第4週の映画初日満足度ランキングでも見事1位を獲得しました。

公開に合わせ先日、マレーシアより初来日した本作出演の女優アディバ・ノールさんを迎え、舞台挨拶が行なわれました。撮影の裏話やヤスミン監督との感動的なお話もいただけましたので、ご紹介します。

アディバさん1

※タレンタイムの開催を決定したチャーミングなアディバ先生を演じたアディバ・ノールさん

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ヤスミン監督との出会い

スミン映画6作品のうち、4作品『細い目』(04)、『グブラ』(05)、『ムクシン』(06)、『タレンタイム〜優しい歌』(09)に脇役ながら重要な役柄で出演し、ヤスミン映画の常連女優であるアディバ・ノールさん。女優業に挑戦した当時について、また監督との出会いを次のように語りました。

「ヤスミンと出会った頃、私はさほど有名ではない歌手でした。この世界に入る前は英語の教師をしていたんですが、子供の頃から歌うことが好きで、友人にも薦められ色々なコンクールに出ました。でも良いところまで残っても優勝するのはセクシーでスリムな女の子ばかり。ようやくあるコンクールで優勝し、それをきっかけにショウビズの世界に入りました。

当初は顔を出す仕事は少なく、例えばCMの歌の吹き替えなどをしていました。そしてあるとき、当時、大手の広告代理店レオバーネットでクリエイティブ・ディレクターをしていたヤスミン監督から、自分のコマーシャルに出演して欲しいと依頼がありました。

2002年のサッカー・ワールドカップをとりあげたものでしたが、私は最初信じられなくて “えっ!? 私なんかを出していいのですか”と聞いたほどです。しかしそのCMは評判になり、しばらくすると、今度はヤスミンが“私の映画に出演しませんか?”と声をかけてくれたんです。演技を学んだこともないし、自分の顔が大きなスクリーンに出るなんて、とても無理だと思いましたが、ヤスミンは“やってみなきゃわからないじゃない”、“あなたの顔を思い浮かべながら書いた役なのよ”と言うのです。それが『細い目』でした」。 

ヤスミン映画の魅力、撮影現場での演出スタイル 

「ヤスミンは何より“ストーリーを語ること”を大事にした人でした。最初の頃は、マレーシアの批評家の中にも“なんだ、カメラをただ左から右に普通に撮っているだけじゃないか”と批判した人がいましたが、彼女はそんな批判は気にしませんでした。 

台本は事前に渡されますが、現場で変えることもよくありました。彼女は俳優が実際に持っているものを役に取り込むと言われますが、それも“あなたの家族は? どんな経験をしたの?”などとインタビューする訳ではないんです。 彼女は撮影中に俳優やスタッフとお喋りをするのが好きで楽しく会話しているうちに何かを見つけて、そこで発見したことを劇中のキャラクターに取り込んでいくのです」。

ヤスミン監督が亡くなった日の知られざるエピソード

舞台挨拶初日の最終回では、アディバさん本人の希望で、急遽、観客とともにスクリーンで映画を鑑賞。マレーシアで公開された2009年以来、初めてスクリーンで映画を見たアディバさんはヤスミン監督とともに過ごした時間がよみがえったようで、胸がいっぱいと言う表情。感極まって涙を浮かべながら、監督との知られざるエピソードについてお話しました。

「ヤスミンが倒れたと聞いて、私たちも病院に行き、そこで夜通し過ごしました。監督のご両親はランカウイ島にいました。というのも、ヤスミンがご両親に“休日を楽しんで”とプレゼントしたんですね。ご両親が急いでクアラルンプールに戻ってきたとき、すでにヤスミンは昏睡状態でした。

これはヤスミンのご兄弟から聞いた話ですが、とくにお母様のショックが激しく、非常に衰弱してしまい、お母様も入院してしまったそうです。ヤスミンがいる病棟と北と南、反対側の病棟に入院したそうですが、ヤスミンは昏睡状態が続き、ついに医師が“もうなす術がないので生命維持装置を外してもいいでしょうか”と尋ね、ご兄弟は“母に許可を得てきます”とお母様のところに行ったんですね。

そしてお母様が維持装置を外してもいいと許可をした瞬間、離れた場所にいるにも関わらず、まさにそのタイミングでヤスミンは息を引き取りました。つまりヤスミンは、誰にも生命維持装置の電源を切らせることはしなかったんです。まるで、その許可を得たことを知ったかのように自分で旅立っていったのです。 

日本に来て、私が思っていたよりも、ヤスミンがいかに大きなものを皆さんに遺したかを知りました。皆さんは、ヤスミンを直接知っていたわけではないのに、映画を通してヤスミンを愛してくださっています。その皆さんとここでヤスミンの話をし、彼女のおかげで皆さんに会えました。なんと素晴らしいことでしょう。今はいろんなことが頭をよぎって、きちんとお話できなくてごめんなさい」。 

アディバさん2

ヤスミン監督の優しさと強さを現すかのような、そんな感動的なエピソードに観客にも涙する方も。

監督はもちろん、作品に関わるたくさんの方の想いが伝わった本作は、シアター・イメージフォーラム、4月シネマート心斎橋ほか全国順次公開中です。

Talentime

配給:ムヴィオラ

公式サイト:http://www.moviola.jp/talentime/[リンク

(C)Primeworks Studios Sdn Bhd

※記事内の★スコアは2017年3月27日時点のものです。

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