不良もユルさも衝動も青春!青春映画を彩る音楽

2017.04.27
邦画

映画も音楽も本も好き。

みずき

青春映画」と聞き、どんな映画が浮かぶでしょうか。

学校、恋愛、友情、ひと夏の思い出、スポーツ、ひとり旅などなど、いろいろなものがあります。学生時代から離れれば離れるほどに、青春映画を観たときの感慨は増すと思いますし、自身の体験と相まったことならば、さらに心へと染み入ります。

今回は、タイプの異なる青春映画をご紹介。
どれも駆け抜けるような青春を描いた作品です。

青い春(2002)

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『青い春』は、漫画家・松本大洋の同名短編集の実写化作品。原作はオムニバス形式の作品で、今作はその中に収録されている『しあわせならてをたたこう』を軸に構成。監督は、『ナイン・ソウルズ』『空中庭園』などの豊田利晃。主な出演者は松田龍平新井浩文瑛太など。

2002年の作品ですが、いまをときめく役者たちが揃い踏みの作品です。松田龍平さんと瑛太さんのコンビは『まほろ駅前多田便利軒』でもお馴染みですね(今作では絡みはゼロに等しいですが)。主要キャラクターを演じるのは、いまでは渋い演技もこなす色男たちですが、そんな役者さんたちの若かりしころ、まさに青い春を捉えた作品とも言えます。

ロックは不良の音楽だった

今作は全編がミュージックビデオなのかと思うほどに荒々しいロックが流れます。その楽曲の大半は、Thee Michelle Gun Elephant(ミッシェル・ガン・エレファント。以下、ミッシェルと表記)。轟音と強烈なしゃがれ声が最高にかっこいい。日本が誇る、唯一無二のバンドでしょう。

いまではそんなイメージもないのかなと思いますが、一昔前は、ロック=不良の音楽のイメージがありました。ミッシェルの出で立ちも細身のモッズスーツ。威圧的な風貌ですが、それがやっぱりかっこいい。ロックのかっこよさの根っこには「悪さ」も含まれていると思うのですよね。

『青い春』は不良たちの物語なので、たくさんの粗暴な学生たちが登場します。授業をサボるのは当たり前。屋上では危険な遊びに興じて、学生なのにタバコも吸う。それらの「悪いこと」が「かっこいい」。そんな映画にミッシェルの音楽はぴったりだなあと思います。

主題歌はミッシェルの「ドロップ」。
正直、歌詞の意味はわかりません。ただ、イントロのギターを掻きむしる音と、ボーカル・チバユウスケの叫びにも似た歌声には胸を打たれます。劇中の学生たちが抱える学校生活での閉塞感や未来への危惧。それらを音で塗り潰すような、そんな余韻を残す主題歌だと思います。

森山中教習所(2016)

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『森山中教習所』は、漫画家・真造圭伍の同名漫画の実写化作品。マイペースな大学生と高校中退のヤクザという対照的な同級生の、風変わりな非公認教習所でのひと夏を描く青春コメディです。監督は『海のふた』『ヒーローマニア 生活』などの豊島圭介。主な出演者は野村周平賀来賢人麻生久美子など。

真造圭伍さんの漫画は独特なタッチながらも柔らかな印象で、それらの持ち味は物語にも活かされてますね。『森山中教習所』の公式サイトから試し読みもできるので、原作を未読の方はこちらもぜひ(映画『森山中教習所』オフィシャルサイト)。

映画では、主人公・清高のキャラクターは原作よりも能天気に描かれ、若干の差異があります。原作のファンの目にはどう映るかはわかりませんが、個人的には原作の持つ空気感は引き継がれてると思いました。

物語の空気感と重なる軽快なサウンド

劇伴を手がけるのは、グッドラックヘイワ。鍵盤とドラムという非常にミニマルな編成ながらも、多様なジャンルの音楽を飲み込み、グッドラックヘイワらしいとしか言えないポップスに昇華しているインストのデュオです。

映画の本編が始まるまえ、配給会社「ファントム・フィルム」のロゴが出るのですが、そこからグッドラックヘイワの軽快な音楽が早くも流れます。清高の能天気なキャラクター性と、今作に込められた最後の青春とも言える大学生の夏休み感と相まって、物語に色を添えてます。

そして、今作の主題歌は星野源さんの「Friend Ship」。ミュージシャン、役者、文筆家など、多才な顔を持ち、昨年はドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」の大ヒット。一躍、時の人となりました。現在も声優を務めたアニメーション映画『夜は短し歩けよ乙女』が公開中ですね。

いまでは知らぬ人がいないほどの星野源さんですが、その出自がインストバンド・SAKEROCK(サケロック)だということは知らない方もいるかと思います。ほとんどの楽曲がインストなので、星野源さんの歌声はあまり聴けませんが、彼のルーツがわかるバンドです。SAKEROCKはすでに解散していますが、このバンドのメンバーにはグッドラックヘイワのふたりも在籍。彼らを昔から知るファンは今作を耳でも楽しめるのではないでしょうか。

『森山中教習所』のキャッチコピーは「もう一生会えないけど 大切な友達がいる」。これがエンドロールで流れる「Friend Ship」の歌詞とも合うのですよね。オリエンタルな雰囲気のメロディが心地よく、わたしたちにもいつかの夏休みを思いださせます。さらっとしてるのに、切なさもある、友情物語のラストにぴったりの主題歌です。

私たちのハァハァ(2015)

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『私たちのハァハァ』は、松居大悟監督による青春ロードムービー。主人公は福岡県北九州市の片田舎に住む、女子高生4人組。彼女らはロックバンド・クリープハイプのライブのために、自転車で東京に向かうことをノリで決意。後先を考えずに好きなものに向かう無鉄砲さは、学生の時分だからこそのエネルギーでしょう。

松居大悟監督は音楽と映画を絡めた作品が多く、彼の作品のひとつの特徴かなと思います。クリープハイプとは、前作『自分の事ばかりで情けなくなるよ』でもタッグを組んでます。『私たちのハァアハァ』は彼らとのコラボレーション映画の第2弾です。

若手のミュージシャンの起用にも積極的で、『ワンダフルワールドエンド』では大森靖子さんが出演。最新作『アズミハルコは行方不明』では演者に石崎ひゅーいさん、劇伴はラッパーの環ROYさんが担当。ヒップホップのミュージシャンが劇伴を手がけるのはめずらしいですね。

今作は、キャスティングも魅力的です。
女優の三浦透子さん。6秒動画のVineから名前を知られるようになった、大関れいかさん。シンガーソングライターの井上苑子さん。ミスiD2014ファイナリストの真山朔さん。そう、ご覧のように三浦透子さんを除く、残りの3人は演技の素人なのです。

それが功を奏したのか、普通の女子高生の日常っぽさがとてもいい。カラオケのシーンだったり、自撮りだったり、SNSだったり。現実とフィクションのバランスが絶妙に曖昧で、ドキュメンタリー作品のように見える瞬間もあります。

あるミュージシャンの熱狂的なファンとSNSを絡めた物語の構造は『リリイ・シュシュのすべて』を思い出します。あの作品の時代には、いまのようなSNSはありませんでしたが、その関係性の走りを描いた作品でした。『リリイ・シュシュ〜』は、重めの作品ですが、音楽に救いを求めるという点では『私たちのハァハァ』も同じで、時代は変わっても、思春期に出会う音楽は心の支えだなと思います。

青春をクリープハイプに捧げた女の子たちの物語

主役の女の子たちはタイプも性格もバラバラ。彼女らの唯一の共通点は「クリープハイプが好きだ」という一点のみ。その共通点がなければ、行動を共にすることはなかったのだと思います。ただの顔見知りくらいのクラスメイトで終わってただろうなと。ただ、その一点がとても強い。好きなものを共有できることの強さを感じられる映画です。

序盤は楽しさとほとばしる若さで押し通す映画に見えるのですが、物語がクライマックスに近づくほど、現実を垣間見る描写が増えます。女子高生が自転車だけで東京に向かうのは無謀ですし、移動でも食事でもお金はかかる。しかも、お金を稼ぐのは思ってるよりも難しくて、青春の成長譚と呼ぶには当たり前のことばかりが描かれるけれど、それが現代のロードムービーらしさなのかなと思います。

さいごに

あらためて、これらの「青春映画」と呼ばれるジャンルの映画を見ると、どれもその描かれ方は違えど、どの作品にも刹那的な美しさがあるなと思います。『青い春』では、若さゆえのきらめき。『森山中教習所』では、過去を懐かしんだときの思い出の瞬間。『私たちのハァハァ』では、好きなことを全力で楽しむ愛おしさ。

みなさんも映画で青春の追体験を、ぜひ。

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