「死ぬかと思った」夏帆×満島真之介が激白する園子温監督作『東京ヴァンパイアホテル』【インタビュー】

2017.06.14
インタビュー

映画のインタビュー&取材漬けの日々是幸也

赤山恭子

近年、超人的なスピードで監督作品を輩出している園子温が、撮りたくて、撮りたくて、数年前よりずっと温めていたというオリジナル作品『東京ヴァンパイアホテル』が、Amazonプライム・ビデオにていよいよ配信開始になる。近未来の東京を舞台に、吸血鬼のコルビン族とドラキュラ族、そして人類との闘いを描くドラマティックなアクション・スプラッター風作品は、トレーラーを観ただけでは、奇想天外の極みでストーリーがまったくつかめないことに胸が高鳴る。

それもそのはず、ヒロインの夏帆と、要となる配役を受けた満島真之介が、「何も見えず、それでも強くイマジネーションを持ってやっていくしかない」、「毎日死にものぐるいでした」と、わからないながらも突き進んでいったというハードボイルドな撮影現場だったのだ。園監督とは、ドラマ「みんな!エスパーだよ!」以来のタッグとなった夏帆、満島は元々園監督の助監督を長らくやっており旧知の仲だという、現場の酸いも甘いも噛み分けた二人に、ノンストップでロングインタビューを敢行した。

東京ヴァンパイアホテル

――夏帆さんは、吸血鬼コルビン族を滅亡させようとする主人公のKという役でした。台本を読んでの率直な印象はいかがでしたか?

夏帆:台本を読んだだけでは、役柄がいまいちつかめませんでした。というのも、台本も撮影しながら園さんが書き進めていくという状況だったので(笑)、私の役がどういう方向に向かっていくかもわからなかったんです。大変でしたね。特に最初は謎が多いので、私自身もつかみどころがなくて、「一体どうやって演じたらいいんだろう?」と思って、撮影に入る前は不安でしょうがなかったです。ただ、園さんの作品は、現場で生まれることをすごく大事にしていくことが多いので、相手役の方がいて、その場でつくっていきました。ほんっとに手探りでした(笑)。

――「みんな!エスパーだよ!」から2回目になりますが、園監督作品出演以前、以後でご自身の変化はあるんでしょうか?

夏帆:役柄を選ぶときに、意識的に自分のイメージにない役や、新しい役をやろう、面白い作品をやりたいっていう思いが強くなったかもしれません。とはいえ、そこだけを重点的に考えて役を選んでいる訳ではないですが。意識の変化でいえば、段々仕事が楽しくなってきました。

――変わられたんですね。

夏帆:以前と比べると、はい。私は10代の頃からこの仕事をしていて、特にずっとやってきたいっていう強い意思もないまま、漠然とやっていたんです。けど、20代に入ってからは、もう、どんどんどんどん仕事が楽しくなっていきました。

東京ヴァンパイアホテル

――満島さんは、謎の男・山田役をものすごく楽しそうに演じていらっしゃいましたね。

満島:とても楽しくやっていましたよ! 日本の作品で山田のようなキャラクターが描かれることはなかなかないので、今まで開いたことのないトビラを全て開けようと思いました。やくざとか不良とか、日本の文化にあるものは描かれてきていますが、ヴァンパイアはまず日本の文化にない。幽霊でも妖怪でもない、日本とは違う文化から生み出されたもの。それを作品にするとなったときにワクワクしかありませんでした。僕は、外国の血が混じっているんですけど、その本質の部分はいつも閉ざしていたんです。今回は自分のアイデンティティに向き合いがら、思い切り楽しませてもらいました。

――園監督とは、以前よりお付き合いがあったんですよね?

満島:そうです。僕は10代の頃に園さんの助監督をやっていたんです。それから一周回って、役者として久しぶりの再会ができました。こういう形でまたお会いできたこと、たぶん……ほかの役者さんとは違う喜びがあります。あれから9年経って、今ここで再出発できたことは、僕にとってとてつもなく大きな喜びでした。心のどこかで、もう園さんとは作品をつくれないのではないかと思っていたので。

――なぜ?

満島:助監督をやっていて、その後に役者で出るということは、園さんにも勇気がいるし、恥ずかしいでしょう。でも、いつかタイミングがくるはずだ。と希望は持っていたんです。けど、実現させるにはお互いにパワーがあるときじゃないとダメだし、園さんがよぼよぼになってからだと、ちょっと嫌だなと思ったから(笑)。

夏帆:へえー(笑)!

東京ヴァンパイアホテル

――今回の作品のアイデアは、満島さんが助監督をやっていた時代からの構想だったんですか?

満島:それよりも前からだと思います。僕が助監督をやっていた18~19歳の頃、監督がいろいろな題材を書いている中で、よく会話に出てきていたヴァンパイアは園さんがずっと作りたかったことだったみたいなんです。いろいろ動いていたのもあったけどあまりうまくいかず、沸々としている園さん自体がヴァンパイアみたいになってましたけど(笑)。それが「ついにできる」という話を、園さんともしました。

――万感の想いなんですね。

満島:園さんが手書きで走り書きした言葉たちを「打ち込んでくれ」と渡されたものは、ほぼ読めないミミズ字なんですよ(笑)。それを僕は全部拾って打ち込んでいたので、半分ぐらいは僕が創作してたんじゃないかな(笑)。当時、園さんの40代最後の姿を目の前で見てきて、様々な葛藤や、想いから言葉を生み出すとてつもないパワーを感じていました。

――実際、園組の現場はどのような感じでしたか?

満島:そんなに深く話さなくても、みんなパワーを出し合って、すごく切磋琢磨していました。

夏帆:キャストもスタッフも手探りの中撮影をしていたけど、それでもでき上がったときに「こんなにすごい作品になるんだ!」って。

満島:ねえ!

夏帆:やっぱり園さんはすごいです。改めて完成された作品を見て、私自身も驚きました。

東京ヴァンパイアホテル

――夏帆さんにとって、発見はありましたか?

夏帆:「自分はこんな顔ができるんだ」って(笑)。今まで自分が見たことのない顔を撮ってもらっていました。

満島:夏帆ちゃんは、今回激しいアクションをするんですけど、練習する時間も全然ない中で、ずっと刀を持ってスタジオを歩いていたよね。常に「空間があれば振るぞ、斬るぞ」とメラメラしてました。

――ソードアクションなど、いろいろ挑戦されていましたよね。

満島:そうなんです。夏帆ちゃんの役は、拳銃も使えば刀も使うわで、すごかった。

夏帆:確かに。何でもありでした。しかも、撃たれても死なないし、刺されても急所じゃなければ死なない(笑)。だから撃たれたリアクションもしながら、さらに斬ってと、またアクションを続けていくっていう。普通だとあり得ないことをやっていました。今思えば、そのときの精神状態って普通じゃなかったです。気持ちも時間も余裕がないことでのギリギリもありますけど、現場の空気がそうさせるというか。

満島:そう、これは結構奇跡的な作品だなと思っていますよ。その空気が、役にこう、ぐっと入ったときに、やっぱり強くなるんですよ。園さんは昔からですけど、知らんふりしながらも実はとても良く見ています。檄を飛ばさない檄、っていうのがあるんですよ。

東京ヴァンパイアホテル

――園監督から特別な演出というものはないということですか?

満島:あった? まずないと思う。

夏帆:なかったです。特に何か言葉をかけられたってわけではないんですけど、園さんの存在自体がそうさせるっていう(笑)。

満島:特に今回はそうだったと思います。園さんのオリジナル作品で思い入れもあるし、日本の文化にない話だし。園さんの存在自体が、そして現場で出しているオーラはとてつもなく、僕らが押しつぶされそうになるほど強い想いが伝わってきていました。たぶん夏帆ちゃんも、他の役者さんも、今までに見たことのない顔が映像に映し出されていると思います。

夏帆:現場は錯乱状態だったんですよ。

――錯乱(笑)。

夏帆:スタッフ、キャスト共に、本当にこの作品は一体どこに向かっていくんだろうって。でもでき上がった作品を観たら、やっぱりすごいので、一体何のマジックなんだろうって今でもすごく思います。現場では何も想像つかないから、いつも無我夢中で。とにかく今日、目の前にあることを毎日やっていくっていう状況なんです。だから、実際でき上がった作品を観ると、本当に驚くことが多くて。

満島:本当にすごい。

夏帆:こんなに想像がつかない作品も初めてなんじゃないかなっていうぐらい。これだけ何も見えず、それでも何かを想像してやっていくしかないっていうのも…。今回は、すごくいっぱいいっぱいで、大変でした!

満島:大変だったね。撮影のときは、僕らも覚醒状態に入っていたよね。家に帰った時間なんてほとんどなかったので、時間の軸は完全にずれていました。

東京ヴァンパイアホテル

――時間軸がずれるというのは、セットだからずっと撮影していて感覚がわからなくなるということですか?

夏帆:そうです。東京での撮影はほとんどセットだから、何時まででもできるんです。外での撮影もほぼないので、今何時かもわからないという。毎日セット通いだったので、あのときは現実世界と引き離されていました。……今思うと、よくやっていたなって思います(笑)。

満島:その瞬間を生きることに精いっぱいだったので、今日をパワフルに、無事に終わることがすべてでした。

夏帆:本当です。毎日本当に死ぬんじゃないかと思いながらやっていました。下手したら、本当に死ぬまでいかなくても、すごい大ケガするんじゃないかな、って。

満島:ほんと、ね。役者生命の危機くらいの。

夏帆:特に後半はずっとアクションシーンが続いていましたし。後半はずっとセットに缶詰めだったので、キャストだけじゃなくて、スタッフもみんなちょっとハイというか、精神状態が普通ではなくて。だから今思ってみると、3か月半の時間がほんとに夢だったんじゃないかなって思う。

満島:本当によくやったと思う。

東京ヴァンパイアホテル

――壮絶な現場の空気が伝わるようです。先ほどのお話だと、満島さんは本作をふたつ返事で出演快諾した経緯でしたか?

満島:いえ、実は1回断っているんですよ。

――えっ、意外なんですが。

満島:園さんから連絡が来て、「山田役をやってくれ」と言われたときは、「ついにそのときがきた!」と思ったんです。でも脚本を読んで、「この脚本だったらやれないです。もう少しブラッシュアップしてください」と勇気を出して伝えました。それから2週間後に届いた改訂版がとても面白く、胸躍らされ、「ぜひやらせてください!園さん久しぶりに会えますね!」と伝え、その日を待ちました。僕も嬉しかったのですが、園さんも本当に喜んでいました。久々に会うと、一緒に過ごしていた時の記憶が走馬灯のようによみがえり、言葉にできない喜びと時間の経過をしみじみ感じていたんです。少し老けた園さんを見て、「あぁ、時間が経ったんだなぁ」と。

――「老ける」というのは、見た目の問題ではなく、性格的にちょっと落ち着いたという印象ですか?

満島:パワーの質だと思うんですよ。炎の広がりというか。以前はブワーッと身体中から燃えていたものが、今は深いところで強い炎が燃えたぎっている感じです。

夏帆:そうだったんですね。

――夏帆さんは、初めて聞くお話でしたか?

夏帆:はい。初めて聞きました。

満島:現場ではそういうことは話さなかったです。実は、僕たち一緒のシーンも少なかったしね。

夏帆:すごく少なかったですよね。実際、対峙してお芝居をするのが、後半だったりもするので。

満島:そうだね。自分から園さんとの関係性をいうのはちょっと恥ずかしいですからね。言葉にはしなくても、ちゃんと背中を感じている毎日でした。撮影後、クランクアップの挨拶をしている時にこの数ヶ月のことがフラッシュバックしてウルッときちゃいました。想いが強すぎたのか、スタッフのみんなももらい泣きしちゃって……。あんな風になったことは初めてですね。

夏帆:私、その場にいなかったのが残念です……。いいな、何かそういうの。そういう意味では、今回、私はあまり園さんには近づけなかった気がします。

満島:ああ、でも男でここまで距離感が近いのって俺ぐらいしかいないと思うから、例外だよ。

夏帆:でも、もう少し楽しめたらよかったなって、今は思います。あのときは、本当にいっぱいいっぱいで毎日不安で。

満島:それはそうだと思う。俺は現場の裏側を知っているから、あれが当たり前だったっていうだけで。

東京ヴァンパイアホテル

――本作で、満島さんだから発揮された山田の部分も多いにあったんですね。

満島:園さんは、昔から女優を素晴らしく撮ってきたという自負があると思う。女性を撮ると天下一品じゃないですか。その反面、オリジナル作品で男を描いていることは、あまり多くないと思うんですよ。だから僕は、園さんがつくる新しい男像を体現したかったんです。園さんの自主映画時代から全ての作品を見ていている僕が感じるのは、山田というキャラクターがひとつの集大成のような気がしたんです。あの役は、園さんの今まで放ってきたパワーとまだ出し切っていない葛藤や想いが全て詰まっている。ずっとやろうとしてきたことを表現している役だからこそ、僕は託されたと勝手に思っています。

夏帆:満島さん、まぶしかったですもん。まぶしすぎて見ていられなかった(笑)。現場で満島さんを見ていると、いつもすごく楽しそうで、それがすごくうらやましかった。だからこそ私も頑張ろうと思いましたし、実は私もそうなりたいなと思っていたんです。園さんの現場をもっと楽しもうって。もっと楽しんで、遊んでもよかったなって、今思えば思います。

満島:僕は裏方の仕事をしていたので、今でもスタッフだった頃を思い出すことが多いんです。裏方が頑張って準備したものを、表現する人が全身を使って思いっきり楽しんでくれていると、とっても幸せになっていたんだよね。だから今、逆の立場になったので、思いきり楽しんでやるだけだったんです。

――そんな激しい現場の後、違う現場に行くと、またまったく違う心境になりそうですね。

満島:もう全然違いますよ。その後、僕は是枝(裕和)組(『三度目の殺人』)に入ったんですけど。

夏帆:ああ、そっか!

満島:夏帆ちゃんも是枝組に参加していたから(『海街diary』)、わかるよね?

夏帆:わかる、わかる(笑)。

満島:全然違う空気感なんですよ。是枝組の現場に行くと、「ほんわかしてる~♥」と思いながら(笑)。

夏帆:次の現場に行ったときのギャップが、もうすごいですよね。

満島:うん、大変!「そこまで僕にかまわなくて大丈夫ですから」みたいなね(笑)。

夏帆:考えられないですよ。毎日キレイにメイクをしてもらっても、その後に毎日バーッと血に染まって血まみれっていうのを、1か月も続けていたので(笑)。

――結局、やはり強烈な『東京ヴァンパイアホテル』のことが思い出されるんですね(笑)。

夏帆:(笑)。これから観てくださる皆さんが、どんな反応をするのかがすごく楽しみです。

満島:本当に楽しみです。今回、作品に入る前にヴァンパイア作品とかをすごく観たんです。

夏帆:うん、私も。

満島:昔から描かれているもの、コメディーチックなもの、恋愛ものといろいろあるんだけど……。

夏帆:そのどれにも似つかないっていう(笑)。

満島:今回の作品は、どこにも似つかないので、自分たちの持つヴァンパイアというイメージを追いかけなくていいんだなと。僕らは僕らの世界観をつくればいいことを、数々の作品を観て理解しました。『東京ヴァンパイアホテル』は、この業界に一石を投じるものになると正直思っています。

夏帆:間違いなく、誰も観たことのない作品。ドラマなのか、映画なのかもわからない。そういったジャンルの枠を超越したスケール感です。でも、Amazonプライム・ビデオで配信だから、すごく観やすいですよね。クリックしたら再生できる環境なので、まずは1話観ていただきたいです!

満島:そうそう、本当によろしくお願いします!(取材・文:赤山恭子/撮影:市川沙希)

『東京ヴァンパイアホテル』は6月16日(金)からAmazonプライム・ビデオにて全9話一挙独占配信開始。

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