「これぞメルギブの信念」齋藤孝&枡田絵理奈が説く『ハクソー・リッジ』を観るべき4つの理由

2017.06.16
映画祭・イベント

映画のインタビュー&取材漬けの日々是幸也

赤山恭子

本年度の米アカデミー賞で編集賞、録音賞の2部門を受賞した映画『ハクソー・リッジ』の公開を記念した試写会が、6月8日、Filmarksユーザー限定で行われました。上映前には、教育学者・作家・明治大学文学部教授の齋藤孝さんと元TBSアナウンサーの枡田絵理奈さんによるスペシャルトークショーも実施され、本作の見どころについて熱い意見交換が展開されました。

ハクソー・リッジ トークイベント

第2次世界大戦下、沖縄・前田高地で苦戦を強いられるアメリカ軍の中で、何ひとつ武器を持たずに激戦地を駆け回り、75名もの命を救った兵士の実話に基づいた映画『ハクソー・リッジ』。本作を一足先に観た齋藤さんは、「世界に配給される映画で、沖縄戦を舞台にしているのは珍しいことだと思います。迫力のある映像ですよね」と意義のある映画だとし、枡田さんも「主人公のドスが殺しに行くのではなく、助けに行くんです。イメージを超え、どれだけ困難で危険なことだったかを感じました。また、奥さんが、ドスの背中を押す強さにも感銘を受けました」と、人物について女性らしい視点での感想を伝えてくれます。

本作は「アメイジング・スパイダーマン」シリーズで知られるアンドリュー・ガーフィールド演じる衛生兵が主人公。日本では、あまりよく知られていない「衛生兵」という存在について、齋藤さんは「衛生兵を主人公にして映画を作るのは、かなり珍しいことではないですか? 衛生兵は戦争において後ろでケアをするので、スターになりにくい存在。けど、本作では主人公が普通の衛生兵じゃないのもポイントですよね」と、武器を持たずに戦場に行く行為に敬意を表します。枡田さんは、「自分を守るための武器も持たずに、戦場に行く強さは驚きでした。実在する方だったんですよね」と、本作が実話を基に描かれている事実にも触れ、目を丸くしていました。

10年ぶりにメガホンを取ることになったメル・ギブソン監督は、できるだけ現実に近づけるために、CGをほとんど使わず、生身の俳優のスタントや実際に爆発を起こすといった特殊効果を最大限に利用したそう。迫力のある映像について、枡田さんは「思わず目を背けたくなるような、生々しい描写もたくさんありました。自分がその場にいるような感覚になるシーンがたくさんありました。特に、日本兵の気配を感じると一緒になって息をひそめて……本当にドキドキして観ていました」と話します。実際に、爆発で身体の破片が飛び散る描写など、監督のこだわりが詰まった映像に、枡田さんは「あれだけオブラートに包まずに描いたことで、どれだけ戦争が悲惨なものかを伝えたんだと思います」と、その手腕を絶賛。

ハクソー・リッジ トークイベント

第二次世界大戦をアメリカ側から描いたことで、日本人として観るのは複雑な思いがあるのも正直なところかもしれません。現代の私たちが作品を観ることの意義を、齋藤さんはこのように語ります。「現代はテロが頻発したり、北朝鮮問題があったりと大変な時代です。やられたらやり返すという報復的な考え方があります。そんな中、静かな湖面のような心を持つことが大事だと思うんです。この映画は、周りが激しいのに、主人公の心の中だけは静か。そういう気持ちを持たないと、波にのみ込まれてしまい、戦いのスイッチが入りやすいから。平和というものを保ち続ける精神の一貫性を、映像から読み取っていただければと思います」。

齋藤さんは、メル監督が伝えたかったことをさらに説明してくれます。「メル・ギブソンが伝えたかったのは、信念の力だと思います。信念を持った人間は、周りがどうであっても流されない。時代は空気があり、流されてしまうこともあると思うんです。信念の力こそが、人を動かし周りの目も変えていきます」。そして、スコットランドの英雄が独立のために戦い続けるという、メル監督のオスカー受賞作『ブレイブハート』(95)を引き合いに出し、「メル・ギブソンは信念が生きているような人物ですから」と、きっぱりと表現していました。

ハクソー・リッジ トークイベント

メルが描いた強い信念の映画『ハクソー・リッジ』は6月24日(土)よりTOHシネマズ スカラ座ほか全国ロードショーです。(取材・文・写真:赤山恭子)

ハクソー・リッジ トークイベント

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  • かむしん
    4.4
    実話を元にした作品も戦争モノも好きだから今作も気になってはいたけど、これの予告動画がどれも「実話実話!これは実話を元に映像化したものです!こんな凄い事がリアルで起こったんです!忠実に作ったので観て!」という売り方が滲み出ていて正直辟易していたものの結局観ることになった。 戦争モノが好きと言っても基本的には戦闘機とか戦艦とかの話で、肉弾戦はそれ程という感じだが、その点についてもいい意味で裏切られた。アクションもほぼ肉弾戦が主だが決して中弛みすることもなく、身を隠している場面含め緊張感の連続。 シナリオも特にケチを付けられるわけでもなく、そこに実話というスパイスが付くことで更に味が出ている。ただ予告編でもわかるとおりドンパチが多めではあるのでヒューマンドラマとしてよりはアクション寄りの戦争映画と感じたし、グロテスクな描写も強めだったので耐性が無い人にはキツそう。 そもそもグロ耐性無い人は戦争映画自体観ることが少ないか。 ちなみに今作は沖縄が戦地の話だったんだけど、直前になってそれを知った。確かに語りでも第二次世界大戦末期って言ってるし、そもそもハクソーリッジってタイトルは沖縄の断崖絶壁のことを指すらしいんだけど、この予告観ただけでこの映画が対日本ってことに気付く人どれくらいいるんだろ。 沖縄戦であることが丸分かりであればそっち系の人が騒ぐし、分からずに観てしまったそっち系の人が条件反射的に低評価レビューしてるのも見かけた。そういう連中がいる限り、日本が加害者となってる映画は日本では横槍の入らない正統な評価になることは一生ないんだろうな
  • ロマンチックを止まらせたい
    3.3
    主人公の度胸と根性と信念に拍手。 戦うことから逃げたのではなく、違う戦場を選んで戦ってた。
  • 矢倉央之利
    4.5
    後半涙が止まらなくなって焦った。 信念のある人は違う。けしてマネできない。 こんなにも壮絶であった前田高知の戦いを今まで知らずにいた自分が恥ずかしい。
  • daiki
    3.9
    filmarksサボり期間中に見た映画の中で最も素晴らしかったんじゃないだろうか。個人的には7月度MVP。 死と隣り合わせの状況であそこまで頑張れる、自分を顧みず他の人を助ける、立派という言葉では足りないくらい。そんな強い心を持ちたいと思った。 内容は風化してあまり覚えていない。残念!
「ハクソー・リッジ」
のレビュー(8816件)