ただの不倫劇よりもゾクッ!?『阿修羅のごとく』の人間模様から学ぶ女のうまい生き方

2017.08.22
映画

映画は気持ちよく生きるためのヒント

hikari

近ごろ、ゴシップにせよドラマにせよ映画にせよ、不倫劇がブーム。きっとその良し悪しよりも「この人たちどうなっちゃうんだろう?」という人間模様に興味津々な人が多い気がしています。でもトラブルが起こったらもっとゾクッとする人間関係になるのは夫婦よりも兄弟・姉妹や親子関係のような……。そんな描写を的確に描いている映画として思い出したのが『阿修羅のごとく』。でもじっくり観てみると、ここから女のうまい生き方が学べるように思えるんです。

ashu

密かに妬み合う四姉妹の物語

父親が不倫していると三女が言い出したことをきっかけにはじまる父、母、そして四姉妹とそれぞれの家族模様を描いたのが本作。しかし、どうも私には四姉妹それぞれが密かに抱えていたお互いに対する妬みや嫉みが浮き彫りになっていく物語のようにも見えるわけです。

ちなみに四姉妹とは、したたかな未亡人である長女・綱子(大竹しのぶ)に、主婦でしっかり者に見えるのがアダとなる次女・巻子(黒木瞳)、真面目すぎる三女・滝子(深津絵里)に、男になびきすぎる四女・咲子(深田恭子)。

それぞれキャラクターが違うがゆえに起こる妬みですが、そこには女の駆け引きがあるようで……。

面と向かっていがみ合わない!

物語が進むと、ある人物が「自分の結婚式に姉妹の中でひとり呼びたくない人がいる」と父、母に告白するシーンが。あからさまに姉妹の確執がうかがえる場面。ただ、ここにうまい女の駆け引きが隠されています。それが「本人に面と向かって言わない」こと。

別のシーンでも、姉妹の不倫現場に遭遇してもあえて罵倒しなかったり、「○○ちゃんには秘密」と言ってある姉妹同士で相談し合ったり、嫉妬や妬んでいる相手を直接刺激するようなことは避けているんです。

どんなに憎くても相手の感情を荒立てないことが上手な人間関係の築き方なのかも。

悪事は知らん顔して泳がせる!?

不倫についても昨今のものとはひと味違う描写が。大抵、夫や父の不倫・浮気がわかればそれを見逃さない表現が多いもの。この物語のスタートも父の不倫からはじまり、しかも三女・滝子は興信所まで使って証拠を押さえようと奔走していました。

しかし、ある人物だけはすべてをわかっても、知らないふりをしていたのです。映画の合間合間で、その不倫への憎しみが垣間見えるのですが、決して表にその感情を出すことはありません。

悔しさ、憎さ……そういった負の感情こそ、思い切ってぶちまけたほうがスッキリする、そう感じる人も少なくないと思いますし、私も共感できます。

でもこの作品を観ていて、知らぬ存ぜぬを貫くことで、本当は知っていたことが相手や周りにわかったとき、かえってその怒りがどれほど強いものだったか強調することができます。それに加えて、あえて波風を立てない一枚上手な女の生き方だとも思えたのです。

女の幸せなんて一瞬だったり、意外なところにあったりするもの?

『阿修羅のごとく』は、もともと向田邦子が脚本を手掛け、1979年と1980年にNHKで放送されたドラマで、それを原作として森田芳光監督が映画化したもの。

ちなみに映画冒頭で阿修羅の意味としてこのような文章が流れます。

インド民間信仰上の魔族。外には仁義礼智信を掲げるかに見えるが、内には猜疑心が強く、日常争いを好み、たがいに事実を曲げ、またいつわって他人の悪口を言いあう。怒りの生命の象徴。争いの絶えない世界とされる。

その意味に違わず四人姉妹を通して、映画では阿修羅な瞬間が幾度も登場。その一方で今見てきたように女のちょっとズルくてうまい生き方を描いていると思うのですが、それだけでなく女の幸せとは何なのかも語っている気がしているんです。

例えば、夫が仕事で大成功して結婚って幸せなものと思っていたのにそのあと落とし穴が待ち受けていたり、結婚なんて縁遠いし男にも興味がないと思っていたのに、いざ恋人ができると思いの外その生活が幸せなものだと感じていたり。

女の幸せなんて一瞬だったり、思ってもいないところに転がっていたりする。そんなことも向田邦子は言いたかったのではないかなと。勝手な深読みですが。気になった人はぜひ観てみてください。

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  • RiSaChunchun
    2.0
    まず私は4人姉妹ものが好きです。 残念ながら、この作品はNHKの土曜ドラマの方に軍配です。 まず、大竹しのぶさん以外の女優さんがしっくりいかなかったですね。姉妹感が出ていませんでした。 制作した年ということもあるかと思いますが、当時の時代の雰囲気とか男女の関係に対する世間の考えかたがにじみ出ていた演出は、やはりドラマのほうだと思います。 今のところ、NHKドラマをわざわざ映画化して、ドラマ以上の作品に感じたものはありません。
  • ねじまき
    4.0
    “心配事? お父さんの血圧が高すぎることかしら” 八千草薫は、なんかいいですね~。 見てると癒されます。 こんなセリフを言いながら、 心の中では嫉妬に燃えていたのかも。 一人の人に恋をし続けることは、 生理学的には無理みたいですね。 森田監督は個人的に 好き嫌いが分かれますが、 これはよかったです。 製作:2003年(日) 監督:森田芳光 出演:八千草薫、大竹しのぶ、黒木瞳、深津絵里、深田恭子
  • 午後ロー好き
    4.1
    やっぱり向田邦子さんの作品は人間味があっていい。
  • Masa
    2.9
    演技がなんか、軽くて入り込めなかった。 もっとお腹の底の方にあるというか、女性の深さが感じられなかった。 向田邦子さんの台本が生きていない。 知り合いの監督さんがテレビ版が良いと伺ったので捜索中である。
「阿修羅のごとく」
のレビュー(978件)