浅野忠信、田中麗奈のもとで挑戦した初めての映画、初めての演技――15歳の新星・南沙良【インタビュー】

2017.08.23
インタビュー

映画のインタビュー&取材漬けの日々是幸也

赤山恭子

血のつながった家族と、血のつながらない家族―。人間のエゴや価値観のズレを突きつけられる映画『幼な子われらに生まれ』は、親子関係の脆さと尊さも包み隠さずに描いた1作だ。本作にて、主人公のサラリーマン・田中信(浅野忠信)と、再婚した妻・奈苗(田中麗奈)の間に連れ子として共に生活している不機嫌な長女の薫を演じたのが、新星・南沙良だ。映画初出演、さらには演技初挑戦ながら、浅野と田中というベテラン俳優を相手に、不安定な薫という物語のキーパーソンを等身大で堂々と演じた。「ずっと女優になりたかった」と意欲を見せる南に、初めて尽くしの現場で受けた洗礼を教えてもらった。

南沙良

――元々、女優をやりたい気持ちはあったんですか?

はい。小さい頃から、ずっと女優さんになりたかったんです。

――約200人のオーディションを勝ち抜いたそうですね?

そうなんです! お芝居をして、三島(有紀子)監督と面接をしました。演じる薫についての話をしたんです。「原作を読んでどう感じたの?」と聞かれたので、「すごく複雑な子だと思いました。親子関係や夫婦関係など、いろいろな家族の形が描かれていますね」と答えました。重たい話ですけれど、すごく温かみのある作品だと思って読んでいたんです。

南沙良

――複雑な環境下の中で生まれる鬱屈した気持ちや、思春期特有の揺れを繊細に演じていらっしゃいました。南さんは、薫をどう受け止めて演じていたんですか?

私は原作を読んで、(感情を)うまく表現できない不器用な子だなと思っていました。無愛想だったり、ぶっきらぼうだったりするけど、その中に薫なりのやさしさ、素直さ、正直さなどが実は存在しているんですよね。薫の演技については、三島監督とすごく話し合いを重ねました。

――具体的に、どのような話し合いをされたんですか?

薫の不器用な性格において、どうやって、やさしさや素直さを表現するかということを、すごく話し合いました。家族について、お父さんについて、薫は一体どう思っているのか。薫の考えていることが、「表情や動きで表現できるといいね」ということになり、リハーサルを何回かやって、確かめてから本番に行く、みたいな流れでした。あとは順撮りだったので、気持ちが入りやすくて、すごくやりやすかったです。

南沙良

――演じた薫は実年齢に近いですよね。家族に対する思いで理解できるところもありましたか?

薫が義父に対して反抗的な部分がありますけど、私も当時、父とそんなに仲良くなかったんです。喧嘩したり、言い合いになったりしたので、そこは共感できました。でも、喧嘩の内容はくだらなくて……、私に似合わない洋服を買ってきたとか、テレビのチャンネルの奪い合いとか(笑)。

――ダークな内容ではなくてホッとしました(笑)。薫の不器用さの面で、何かしら自分と通じるところはありますか?

私も感情を上手に表現することがあまりできないので、そこは共感できました。

南沙良

――あまり表に出さないんですね。

出さないわけではないんですけど、どう表現していいかが、よくわからなくて(笑)。

――例えば「うれしい!」と思ったときは言えますか?

ああ、はい! 言えます! 反対に「嫌だなあ」と思ったりしたときは、あまり言えないんです。

――撮影現場でつらいときとかも、胸の内にしまっていたんですか?

それが、なかったんです。撮影は本当に楽しかったです。

南沙良

――初めての現場で、緊張もしなかったんですか?

スタッフさん、共演者の皆さんが本当に温かくて、優しく接してくださったので楽しかったです。雰囲気が本当によくて、リラックスして演技できました。

南沙良

――義理の父親役の浅野さんの印象はいかがでしたか?

本当に透明感がすごいんです! 浅野さんは透けているんじゃないかっていうくらい。最初すれ違ったときに、透けていて一瞬気づかなくて(笑)。

――そうなんですか(笑)!? スクリーンでは存在感として映えますが、お芝居で圧倒されるようなことはなかったですか?

三島監督に「お芝居をするよりも、キャッチボールを大切にしてね」とすごく言われました。浅野さんは、本当にコミュニケーションも取ってくださいました。私がやって、返されたものに対して、素直に感じたものを表すように心がけていました。

――カメラが回っていないところでも、コミュニケーションを取ったり?

そうです。浅野さん、すごく優しいんです。私が撮影期間中に誕生日だったんですけど、浅野さんや三島監督がケーキを用意してくださって!う れしかったです。しかも誕生日プレゼントも用意してくださって。スニーカー、浅野さんのバンドのキャップとトートバッグ、私がすごく好きな声優さんのライブDVDまで、たくさんもらいました。妹役の(新井)美羽ちゃんもプレゼントを買ってきてくれて……。皆、とっても優しかったです。

南沙良

――いっぱいいただいたんですね(笑)。母親役の田中さんは、いかがでしたか?

麗奈さんは本当に明るくて、面白い方でした。休憩中もすごく話しかけてくださって、一緒にお話をしたり、写真で遊んだり(笑)。あとは麗奈さんが現場でお料理を作ってくださったので、そのお手伝いをしたりもしました。

――本当の家族みたいですね。素敵な共演者の皆さんと挑んだ完成作、初号は皆さんでご覧になったんですか?

そうです。三島監督とは終わってから少しお話をして、「お疲れさま、本当にありがとう」と言ってもらえて、すごくうれしかったです。またご一緒したいです。

南沙良

――自分の演技については、いかがでしたか?

いやぁ……もう、自分のところは恥ずかしくて全然観られなかったです(笑)。「私ってこんな風に映るんだ……」って思いました。客観的に見つつも、「自分がいる……」と。

――とはいえ、客観的に見られた面もあったんですね。率直に、どんな感情が残りましたか?

作品を観る前は、親子や夫婦、兄弟、家族はひとつの形だと勝手に思っていたんです。ただ、この作品を観ると、家族の形はたくさんあって、表現も一通りではないですし、温かいものなんだと改めて思いました。いいものだなあ、って。

南沙良

――これから女優としてキャリアを重ねていくと思いますが、目標は立てていますか?

ひとつの型にはまらないでいたいと思っています。たくさんのイメージを持っていただけるような女優さんになりたくて、本当に、今は何でもやりたいです。(取材・文:赤山恭子/撮影:市川沙希)

南沙良

幼な子われらに生まれ』は8月26日(土)より、テアトル新宿・シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー。

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    タダでさえ父親との関係がうまくいかない思春期の娘、それが血の繋がりのない父親なら尚のこと。浅野忠信の普段はニコニコしているんだけれどブチギレたら何しだすかわかんねえっていう妙な胡散臭さは本作でも全開でこんな人が新しく自分の父親になるとしたらなにかと難しい思春期の娘でなくとも身構えてしまうところ…いやあ…ナチュラルサイコパス… 重松清さんの小説って何を読んでもとっても居た堪れない気持ちになってしまうので苦手…でもやっぱり泣ける。
  • rose_chocolat
    4.5
    一見幸せそうに見えるファミリー。 しかし果たしてそのどれだけが形通りに幸せであるのだろうか。 郊外に立ち並ぶ無機質な団地、しかしよく見るとエスカレーター様のものが違う。山の麓から頂上にずっと伸びるそれは、エスカレーターではなく斜行エレベーターである。山に沿って住宅があり、そこの住民用に開発されたエレベーター。遠目から見れば普通に感じるのに、近くに寄ると実態は奇妙なものがある。それは信の家族にも言えること。 日本でも恐らくはステップ・ファミリーの割合が高くなって来ているからこそのストーリー。幸せになるために敢えてそれまでの家族を終わらせた。そして今度こそ幸せになろうと新たな家族を見つけた。そこから幸せになれる確率はどのくらいなのだろう。「親たちにとってはその選択が幸せであったとしても、子どもたちにとってはそうとは限らない」という可能性は、新しい一歩を踏み出す時には親たちの中ではさしたる心配事ではない。しかしその心配事が現実的となってしまった時、どう対処すればいいのだろうと初めて親たちは途方に暮れる。 信と沙織 信と薫 信と恵理子 奈苗と薫 奈苗と恵理子 奈苗と沙織 沢田と薫と恵理子 友佳と沙織 薫と沙織 薫と恵理子 そして まだ見ぬ我が子 それぞれの糸は、絡むつもりもなかったのに、いつの間にかどうしようもなく複雑に混ざり合い、ほどけなくなる。ほどこうとしてもそれは無理なのだろう。絡まったところから、どう進んでいくのか。絶対に理解することはないと信じ込んでいた心が、きっかけがあって初めてほぐれていく様は、絡み合った糸に似ている。それぞれがある意味わがままだった4人の親たちが少しずつほぐれる時、子どもたちもまた自分たちの世界を広げるのかもしれない。 沙織、薫、恵理子のキャスティングがいい。それぞれの子が持つ屈折したものと、真っ直ぐなもの。光と陰、そこを的確に表していた配役だった。脚本も演出も、恐らくは原作に誠実に作っていたのではなかろうか。
  • koof
    3.7
    冒頭は遊園地での沙織と主人公(実父)で始まる。沙織は、大人びていて、気が遣えて、ダメなパパを困らせない賢い子だ。この遊園地の一連のシーンは、親子で遊んでいるというよりかは、デートに来ているカップルみたいに映った。あ、そうか、この二人は、傍から見たら親子なんだろうけど、別々の家に帰るんだと、皮肉な始まり方で、引き込まれた。 薫もまた、主人公の本質を突いていて、正しい。最近の子供はびっくりするくらい大人だよな、と自分の妹を思い浮かべた、がすぐに頭から消した。でもベッドの上にぬいぐるみが陳列してあったりして所謂子供らしい一面が見えたら、よりリアルになって、説得力を持ったとも思う。全てにおいて大人びてるわけではないんだと。これほどランドセルが似合わない子は珍しい、たまにいるけど。 特にうまいなぁと感心したのは元妻との車の中でのシーン。確かに男というものは相手の気持ちになんて甚だ興味がない。そして、こういうときの女の叙情は大抵強い。相手に何も言わせなくさせる。 沙織の父親の危篤を知り、病院へ向かう車内でも共通するが、車の中の圧迫した空間だと逃げ場がない。緊張した空間で会話が行える。だから、雨による雑音が勿体ないと感じた。 あとは子供部屋に鍵をつけようとする前の、夫婦喧嘩。主人公が敬語口調で声を荒げる。怒っているときでも敬語口調にすると、自分の中で冷静さを保てる。そして相手に与えるダメージも大きい。そういうのを無意識でやってしまう、男の惨めさがにじみ出ていた。主人公はもう別れて楽になりたいんだ、逃げたくて逃げたくてしょうがないんだと。禁煙なんてのもしたくないんだ。 お気楽で自分勝手な母親と、血のつながってないダメな父親。この家族はエリコによって崩壊を免れているんだなと感じた。エリコは主人公の事をパパと呼び、すり寄ってくれる。何も知らないエリコに対する見栄と同情。この抑止力は大きい。
  • カナッパユイッパ
    1.9
    言葉が汚くて御免なさい。 はっきり言って、糞映画です。 それに長々とレビューを書くのは時間の無駄なので、手短に! まるで窒素不足のキャベツの様です。 (キャベツは、窒素不足になると丸く纏まりません。) 兎に角、最後まで纏まりのない映画です。
  • Garu
    4.2
    まず映像が最高に良かった。 ちゃんと調べてないけど、おそらくたぶん16ミリで撮影しているのが最高だった。 なんかわからないが個人的にすごく気持ちが動く色と質感だった。素晴らしい。 もちろん内容にも合っていたと思う。本作での正解のない家族の問題や、複雑で自分でもわからなくなる自分の感情みたいなものにマッチしていた。 複雑にしてしまった家庭事情に翻弄される主人公。構成をパターン分けしながら観てしまう。 抱えてる問題は家庭ごと、そして個人でバラバラだ。 主人公の浅野忠信さんはどんな役でも「普通の人じゃないかも感」が残ると思っている。 そんな部分と本作の斜行エレベーターや階段のショットや16ミリでの青みがかった暖かみのない映像に合っていた。 男の嫌な所も、女の嫌な所も描かれているが、最高潮に盛り上がるわけでもなく、静かに丁寧に伝えてくる。 そして浅野忠信さんをはじめ、見事な演技で引き込まれる。 「そして父になる」ではないが、女性の子供を産んだと言う究極の強みに対して男は最後にどういう気持ちを持って苦難や心の葛藤を乗り越えればよいのか。 結局なるようになるが正しいかもしれないが、人間の希望が生んだ苦悩は世界共通の悩みだろう。 エンターテイメント的なインパクトは弱いかもしれないが、素晴らしい映像で心に残る作品だった。
「幼な子われらに生まれ」
のレビュー(690件)