【終戦の日】戦争下に生きる人々の生活をのぞく映画3本

2017.08.15
まとめ

映画も音楽も本も好き。

みずき

8月15日、終戦の日。

日本人には忘れられないこの日に、戦争にまつわる映画をご紹介します。

今回は、戦争を真っ向から捉えた作品というよりも、戦時中を生き抜いた人間たちのドラマを描いた作品をセレクト。ぜひ、戦争を考えるきっかけのひとつになればと思います。

風立ちぬ(2013)

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零戦の設計者・堀越二郎と、同時代に生きた文学者・堀辰雄の人生をモデルに生み出された主人公の青年技師・二郎の半生を描いた物語。劇中では、関東大震災や経済不況に見舞われ、戦争へと突入する時代が描かれます。なお、宮崎駿監督の作品で、実在の人物を主人公とするのは『風立ちぬ』が初めて。

現状、本作は宮崎駿監督の最新作ですね。前述のとおり、本作を機に引退を表明。しかし、それも撤回。最も新作を期待される監督と言っても過言ではないでしょう。『風立ちぬ』は、これまでの作品とは異質で、たとえば、宮崎駿監督の「アニメーション映画は子どものためのもの」との持論からもわかるように、本作は子どもに向けたものではありません。前作の『崖の上のポニョ』とは、明らかに立ち位置が異なります。また、師弟関係とも言える、庵野秀明が二郎の声を演じたのもトピックのひとつでしょう。

そして、戦闘機や戦艦を好む一方、反戦を主張する宮崎駿監督が内包する矛盾と向き合った作品とも言えます。これに関しては「この映画は戦争を糾弾しようというものではない。零戦の優秀さで日本の若者を鼓舞しようというものでもない。本当は民間機を作りたかったなどとかばう心算もない。自分の夢に忠実にまっすぐ進んだ人物を描きたいのである。」と語ってます。(出典:映画『風立ちぬ』公式サイト

夢と時代性ゆえに戦争と密接に絡んだ男の半生

まず、『風立ちぬ』は、戦争を考える機会を与える、ジブリでは稀有な作品です。冒頭でも述べましたが、今回紹介しているのは、戦争を真正面よりも別の角度から見た作品ばかり。以下の作品も、単純に戦争の虚しさや悲惨さを描いたものというよりも、その時代を生きた人間への着目や、当時の生活を描いたものです。そして、本作は、まさに宮崎駿監督の言葉にあるように、零戦の優秀さを訴えるものでも、戦争を糾弾するわけでもない。自身の夢をまっすぐに進み、その夢と時代性ゆえに戦争と密接に絡んだ人物の物語だと、わたしは思います。

二郎の追い求める夢は、美しい飛行機を生み出すこと。しかし、実際には二郎の作り出した飛行機は零戦となり、パイロットをひとりも帰還させることはできなかった。物語のクライマックス、二郎は飛行機の墓場とも言える草原に降り立ち、そこを「地獄かと思いました」と言います。追い求めた夢の末路は、地獄。飛行機は時代に求められたと思いますし、この時代を経たからこその進化だとも思います。ただ、そこに至る過程で二郎は多くを失い、打ちひしがれます。

戦争は、多くの日本人を翻弄したのだと思います。本作の二郎に関しては「もしも、この時代以外に生まれてたら?」と考えさせられます。「美しい夢を、美しい夢のままに追えたのではないか」と。夢や希望をねじ曲げる戦争の悲惨さが、わたしが本作から感じたものでした。現状、宮崎駿監督の最新作で、賛否両論の問題作とも言えますが、戦争を考えるときに見返したい作品のひとつかと思います。

父と暮せば(2004)

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昭和23年の広島。
福吉美津江は、父・竹造とふたりで暮らしている。竹造は、原爆の直撃で亡くなったのだが、幻の姿で現れたのだった。三津江は明るく快活だが、心の奥では原爆投下を生き残ってしまったことへの罪悪感を抱いていた。勤め先である図書館で原爆の資料を集める青年・木下から好意を寄せられるものの、死者への申し訳なさから踏み出せずにいた。しかし、竹造はが三津江の日々の話し相手となり、彼女を楽しませ、助言を与える。やがて、三津江は木下に結婚を申し込まれるのだった。

父と暮せば』は、小説家、劇作家・井上ひさしの戯曲の実写化作品。監督は、黒木和雄。本作を含む『TOMORROW 明日』と『美しい夏キリシマ』は戦争レクイエム三部作と呼ばれる。1970年代半ばに『竜馬暗殺』や『祭りの準備』などのほとばしる青春群像を描き、熱狂的なファンを生んだ。1988年に原爆をテーマに描いた力作『TOMORROW 明日』が芸術選奨文部大臣賞を受賞するものの、以前の勢いは失われた。しかし、21世紀に入り、大型の傑作を連打。日本映画を代表する巨匠と目されるようになった矢先に他界。

主人公の三津江を演じるのは、宮沢りえ。個人的には「映画女優」というよりも「舞台女優」のイメージがしっくりくる女優さんなので、本作のつくりにはぴったりだったと思います。理由はのちほど。三津江の父・竹造を演じるのは、原田芳雄。2011年に亡くなりましたが、数年前の日本の映画を観返すと、そこかしこに原田芳雄さんの姿を見つけられます。そして、その姿を見るたびに日本の映画界に欠かせない役者だったのだと気づかされます

「反戦」よりも「鎮魂」を描いた戦争映画

本作は、もともとが二人芝居の戯曲なのですが、映画化に際しても原作を忠実に再現しているようです。実際、本作の登場人物は、三津江、竹造、木下のみ。木下を演じる浅野忠信も主要なふたりに比べれば、出番は少なく、ほとんどが三津江の回想に登場するくらいです。物語の舞台となる場所も三津江の自宅で、ここでの父と娘の会話で本作は完結しています。

基本的に会話ですべてを伝える作品なので、戦争の怖さ、悲惨さを伝えるのが説明的にも聞こえます。ただ、竹造は原爆の直撃を受けた男。娘との対話ではユーモアに溢れた竹造の優しさがにじみ出ていますが、死に様に見た景色をありありと、痛烈に語る彼の姿は気迫に満ちています。三津江の口からも、原爆瓦、熱でねじ曲がった瓶、針の影が焼きついた大時計など、原爆の痕跡が生々しく語られ、その情景に誰もが胸を痛めるでしょう。

本作には反戦の意味合いも含まれていると思いますが、わたしは、原爆で命を失った方々への鎮魂を感じました。三津江が感じる生き残ったことへの罪悪感は、あまりにも悲しく、当事者以外には感じることも難しい感情だと思います。後述の『この世界の片隅に』にも通じますが、戦争を生き延びたからこその喪失から紡がれた作品と言えるのではないでしょうか。わたしも同様なのですが、現代を生きる戦争との距離感がわからない方にお薦めの一本です

この世界の片隅に(2016)

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第2次世界大戦下の広島・呉を舞台に、大切なものを失いながらも、前向きに生きようとするヒロインと、彼女を取り巻く人々の日常を描く。昭和19年、故郷の広島市・江波から呉に嫁いだ女性・すずは、戦争の影響でさまざまなものが欠乏するなか、家族の毎日の食卓を作るために工夫を凝らしていた。しかし、戦争の進展とともに、日本海軍の拠点だった呉は空襲の標的となり、すずの身近なものも次々と失われる。どこにでもある毎日の暮らしを営むひとりの女性の物語。

この世界の片隅に』は、漫画家・こうの史代の同名漫画の実写化作品。原作は、第13回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。監督は、アニメーション監督の片渕須直。代表作は『マイマイ新子と千年の魔法』など。航空史の研究家という一面も併せ持ち、第二次世界大戦前の日本の航空機メーカー史、航空機用塗料などに造詣が深い。

2016年公開の日本映画はどれも素晴らしかったですが、本作の話題性と評判は凄まじかったですね。映画を観ずとも、タイトルは頭に残ってる方は多いのではないでしょうか。公開当初は63館だった劇場数が、最終的に累計360館を超えたこと。主人公・すずを演じた、のんさんの意外性(そして、そのハマりっぷり!)。単純に作品の素晴らしさなど、それらをひっくるめて、2016年を代表する作品のひとつと言えるでしょう。

普遍的な生活の営みが戦時中と現代を繋げる

本作の素晴らしさを言葉で表すのは難しいのですが、個人的には「わたしは ここで 生きている」のキャッチコピーに惹かれました。『この世界の片隅に』の舞台は第二次世界大戦の時代。呉の地で生きることを見つめ、そこで懸命に毎日を過ごす、すず。そこで描かれるのは、普遍的な生活の営みに思えます(もちろん、現代とは生活の水準が異なりますが)。衣食住と、人々との関わり合いは人間の営みの根本的なところなので、そこに気持ちを重ねた方は多いのではないでしょうか。

これまでの戦争映画は、すべてがそうだとは思わないのですが、少なくとも、筆者は戦争との距離感を見出せませんでした。さらに言えば、第二次世界大戦が実際の出来事だということも理解が追いつかないくらいでした。ただ、本作に関しては、戦時中の生活をこれでもかとリアルに見せつけられます。よくよく考えれば当たり前なのですが、そこで「戦時中にもこんな生活があったんだ」と思わせられるのです。描かれる生活の生々しさをきっかけに、いまを生きるわたしたちの日常と戦争が繋がったように感じられました。

第二次世界大戦が題材なので、物語に重たさを感じるとは思うのですが、単純に素敵な作品です。
すずを演じたのんさんの、和ませつつも強さやもろさを併せ持つ人間味の溢れる声。すずの生々しい感情の表現や、呉の空に絵の具を垂らすなど、アニメーションだからこその表現。全編を手がけるコトリンゴの音楽。語ればキリがありませんが、劇場ですずさんに会えなかった方は、今後の機会にぜひ。ソフトの発売も間近ですが、現在もロングランで上映中とのこと。詳細は『この世界の片隅に』公式サイトを。

さいごに

この世界の片隅に』の章でも述べましたが、わたしは戦争との距離感がわかりませんでした。ただ、これらの作品のおかげで、あの時代の感覚に触れることができたと思います。普段は考える機会がなくても、考える機会を得たのが映画でも、興味を持てたのならば、それは大切な一歩です。ぜひ、みなさんのきっかけの一本に。

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  • あめか
    4.0
    記録
  • ななまる
    4.0
    こんなに深部まで描くとは思わなかった。良作。
  • 賀英雪也
    4.4
    ぜひテレビ放映を
  • yukari
    -
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  • ゆっぴょんぴょん
    3.5
    「ありがとう。この世界の片隅に、うちを見つけてくれて」 戦争と災害。絶望の中でどのように生きるか。どのような選択をするか。そんな居場所の物語。 原作漫画は熟読していたのだけれど、映画は見てなくて……ようやく視聴。 噂通りよかった!! 戦時下ではあろうと、人は食べて、笑って、泣いて、恋をする。 すずの性格も相まって、終始のほほんとした雰囲気の中に、後半では負の感情も混ざってくる。 戦争のこと、原爆のこと、日本人のこと……うまく言えないけど、大切なメッセージがいっぱい詰まってる! 家族だけが人との繋がりではないんだよなあ、としみじみ思えた。
「この世界の片隅に」
のレビュー(37934件)