やっちゃいけないことをやる人が少なくなったので、せめて自分くらいはー『蠱毒ミートボールマシン』西村喜廣監督【インタビュー】

2017.08.19
インタビュー

世界のディズニーを翔る元映画サイト編集長

鴇田崇

 

孤独でしがない中年男が最強の戦士ネクロボーグと化して戦いの渦に身を投じてゆくバイオレンス・スプラッター『MEATBALL MACHINE -ミートボールマシン-』。2005年に公開され、国内外で高い評価を獲得した同作から10数年。謎の生物に操られたヒトとマシンの複合体、ネクロボーグが死闘を演じる世界観はそのまま受け継ぎながら、より過激に生まれ変わったバイオレンス・スプラッターが、今夏公開の『蠱毒(こどく) ミートボールマシン』だ。

本作は、ワールドプレミア上映だった「サウス・バイ・サウスウエスト2017」を皮切りに、ブリュッセル国際ファンタスティック映画祭をはじめ、多くの国際映画祭での上映が決定している話題作で、それもそのはず、熱烈なファンが多い西村喜廣の監督作なのだ。前作で特撮・造型を手がけた氏が満を持して自分でメガホンを握った最新作に込めた熱い思いとは!? そして地元・浅草、東京スカイツリーでロケを敢行した撮影の驚愕の裏話とは――。

西村喜廣

――本作は、東京スカイツリーで有名になった押上と浅草近辺でロケを行っていて、下町が舞台の作品になっていますね。

僕は浅草生まれで、ずっと浅草なんです。吉原神社でやっているお化け大会の審査委員長もやっています。予算がなかったので近所で撮ることにしました、ご近所ムービーですね。押上近辺と浅草は吉原でロケしましたが、よく観ると一般のお客さんも映っていますよ(笑)。

――え!?

お客さん。スタッフに「大丈夫ですか?」と言われましたが、お客さんだからいいかなと(笑)。ロケ地に関しては何が一番重要かを考えた時に、この作品は造型とアクションが大切なわけなんですね。であれば住み慣れている台東区や墨田区で撮ったほうが、僕が自由に撮れると思ったから。それと吉原の青年部と元々知り合いなので、大変なことは全部彼らが仕切ってくれたので、自由に撮影できましたね。

蠱毒

――今回は監督として作品に参加していますが、特殊造型だけの時に比べて、自分の表現が存分に追求できそうですね。

特殊造型の仕事はお金になるのですが、「死体の肩しか見えていない」「何にも見えていない」ということがあります。そういう不満は、下請けの業者としてはあります(笑)。そのフラストレーションがたまって、自分の映画になりますね。それが今回で言うと、『蠱毒 ミートボールマシン』。自分の頭の中のイメージがあるから、無駄のない造型を実現していますよ。

――本作は夏休み真っ只中の公開ということで、西村監督のファンだけでなく、幅広い層の映画ファンにアピールしたいですよね。

最近は、マンガ原作映画に行っちゃいがちですよね。特にハードな作品をすすめたいわけじゃないですが、ほかのものも観ればいいのに、とは思います。真面目な話、1980年代はスプラッター映画ブームで、すごく多くのお客さんも観に行っていた。その後、宮崎勤事件などが起こって、メディアが誇張してスプラッターに対して疑問を提案していましたよね。親もスプラッターを子どもたちに見せない状況を作ってしまって、それがいまだに続いている。それって、本当に悲しいことだと思うんですよね。

蠱毒

――とてもよくない状況ですよね。子どもたちに隠してしまうと、何が悪いかわからないまま育ってしまうので、かえってよくないという。

映画は映画、現実は現実じゃないですか。その境目を教えないから、観客として本当に楽しめなくなってしまった。津波を出すと、「無理、無理!」ってなりますよね。映画だよ、これって。小説と一緒なんですよ。津波で怖がらすだけじゃなくて、フィクションである映画の中での津波の意味を伝えたいわけですから。そこがわかっていない時代になっていますよね。

蠱毒

――最近ではテレビがつまらなくなっていると言われますが、映画くらいは面白いままでいてほしいですよね。

何でもかんでも自主規制なんですよね。アニメーションならいいのか、原作があればいいのか、そういう話になっちゃう。しかも、オリジナルストーリーの映画を撮ることも大変じゃないですか。だから、そういうことをちゃんと実践していかないと、オリジナルがなくなってしまいますよ。海外に行くと、オリジナルが観たいって皆が思っていますよ。ただ、問題もあって、スプラッターやホラーはオリジナルがあるんだけど、つまらない作品も多い。

西村喜廣

三池(崇史)監督が、日本を代表する大作映画の監督になっちゃいましたよね。それはそれで素晴らしいと思うのですが、それも大きいと思いますね。下の世代が育っていないことも問題かもしれない。やっちゃいけないことをやる人が少なくなってしまったんで、せめて自分くらいは、みたいな思いはあります(笑)。(取材・文:鴇田崇)

蠱毒 ミートボールマシン』は8月19日(土)よりロードショー。

蠱毒
(C)2017 キングレコード

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  • あん
    4.7
    2017年の映画締めが蠱毒でよかった!完 全 に 締 ま っ た 定番演出がてんこ盛りでゲラゲラ笑いながら見れましたとさ! 内容は別におっけーって感じだから言及はしないけど! そしてそして2017年ベストに最後の最後に食い込んできた!蠱毒とヘドローバとお嬢さんがダントツ最強映画だったので、ようするに私、西村さんが好きってことだ!!来年も、血みどろで行きましょう!!!
  • NF
    3.1
    2017年見納め 西村喜廣作品毎度の馬鹿馬鹿しさもこのシチュエーションと内容なら意外と楽しめる 中盤カーアクション的な盛り上がりで引っ張るのもここ数年の作品の中では一番迫力があった。ジャッキーのモノマネの人も意外と良かった 過去2作より面白かった
  • さくらこ
    -
    後半、思わず笑ってしまうシーンが沢山。 パリスへ行きたい! がツボでした。
  • TAK44マグナム
    3.7
    とんでもないものしか出てこない! 「血を吸う粘土」との二本立て上映にて鑑賞。 日本のキング・オブ・スプラッターである西村喜廣監督作。 主演が田中要次! 滞納金の取り立てマンの役なのですが、金がないと言い張る滞納者に困って「ないないばかりじゃなくて、たまにはあるよって言えよ」とわかる人にはわかる愚痴を言ったり、キャバクラ行ってブルース・ウィリスに似てると煽てられれば「最近はジェイソン・ステイサムって言われるんだよ〜」などと返してみる、主役なのに金は無いわ愛も無い50歳という可哀想な人生どん底キャラ。 でも、スカイツリー周辺が宇宙からやってきた巨大なビーカーに覆われてから(←この設定からして狂ってます)、まるで変身ヒーローのような活躍をする羽目になるのです! 人生とは摩訶不思議! まぁ、それにしてもです。 これは、頭がどうかしてる事しか起きない、目に余るほど出鱈目で破茶滅茶で破天荒な映画ですよ! 西村監督がやりたい事をすべてごった煮に詰め込んだ、まるで闇鍋のような、濃すぎて腹を壊しても仕方ない、そんな映画なのです! 西村監督が具材をぶち込んだ闇鍋を田中要次や鳥居みゆき、そしていつもの斎藤工、果ては樋口真嗣監督やら高橋ヨシキさんやらで囲んでいるようなもの! 最近の事件な邦画には、いつも西村映造が絡んでいるような気がしますが、明らかにやり過ぎな突き抜けるドライヴ感は、これこそがロックンロールッ! 子供みたいにヤンチャなグルーヴが、ところ構わずヴァイオレンスの嵐を巻きおこして大変です! とにかく血です! 尋常じゃない量の血がプシャープシャーいいますよ! いたいけな女子だろうが、性根の曲がった子供だろうが、進撃のチンコだろうが平気で八つ裂きにしてしまうのDEATH! オッパイ丸出しのヒロインがブラジャーを手綱に目指す先は聖なる教会! 「生まれてくる子供の髪が赤かったらどうする〜?」などと青姦をキメる高橋ヨシキさんが! 立ち小便している樋口監督が! 次の瞬間には大変なことになっているなんて! ジャッキーのそっくりさんの武器が丸椅子で、必殺技が酔拳!? わ〜〜、もうビックリマークとハテナマークしか頭に浮かびません!! この世で考えうる限りの狂った光景がハイテンションでスクリーンに爆発するものだからもうタマラン! その割に、前半は田中要次演じる野田のどうしようもなくどんづまりな日常を必要以上に丹念に描き、一体これは何の映画なんだろうか・・・と、こちらを不安にさせるのだから、これはこれでたまりません。 この世は所詮、弱肉強食。 ネガティブになってても仕方ないぜ!という監督からのメッセージなのかどうかよく分かりませんでしたが、このカオスに輪をかけた超カオスな世界観は、ちょっとやそっとでは理解できないのではないでしょうか? ただひたすらに笑いを押し殺してヒーヒー言いながら観ていましたが、もっとワイワイ言いながら「そんなアホな!」とツッコミをいれられる環境で観たい一作。 どうしてもチープな部分も目立ちますけれど、斎藤工が「リアル鬼ごっこ」を遥かに超えるバカな役を楽しそうに演じているので、いくらグチャグチャ血みどろだからって途中で降りたら損ですよ。 最後までキチンと観て、すごいバカだったけど楽しなかったなぁ〜と謎の満腹感に浸りましょう! あ、そうそう、お話の中身ですが、なんか知りませんが人間がネクロボーグというデロンデロンな怪人に改造されちゃって、何故か意識が乗っ取られずに怪人化した主人公が恋する女子を守ろうと奮闘しますよ! だいたい、そんな風だったと思いますんでヨロシク! ・・・と、そんな感じで色々とテリブルでショッキングでしたけれど、このイカした二本立てを一緒の回に観ていた可愛い女子二人組が帰り際に、「人がぶった切れて面白かったね〜♡」とキャッキャ言ってるのを目撃したのがなによりも衝撃的でしたな・・・(汗) ううむ、日本は本当に大丈夫なのでしょうかね〜?!
  • HarnaKonis
    -
    2017(202) ジャッキー・チェンまがいのやつが出てくる
「蠱毒 ミートボールマシン」
のレビュー(87件)