愛の告白とオマージュ【知れば知るほど解らなくなる映画の話(9)】

2017.09.12
雑学

Why So Serious ?

侍功夫

どうも、侍功夫です。

好きな芸能人の髪型や私服に憧れて、同じ髪型にしたり同じものを買ったことは、誰でも1度はあると思う。あの行為を映画製作において行うのが今回のテーマ「オマージュ」だ。

よく「パクリ」と混同されがちだが、そのあたりの違いについてはコチラを参照。つまり、作家が自作を通して他の映画へ愛の告白をしている情景が「オマージュ」になる。今回はそんな、映画に対する愛に溢れた描写を取り上げていく。

『ドッペルゲンガー』の『レイダース 失われたアーク』

新作散歩する侵略者でついに「宇宙人による侵略」をテーマに取り上げた黒沢清監督。かねてからスティーヴン・スピルバーグのファンであることを公言していたが、よもやソコでソレを!?とファンのド肝を抜いた場面だ。

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ドッペルゲンガー
医療関連の技術者が開発したロボットを巡る争奪戦の中、悪漢が廃屋に侵入すると階段の上から巨大なミラーボールが転がってくる。

レイダース/失われたアーク《聖櫃》
冒頭、チャチャポヤン寺院の殺人カラクリ場面へのオマージュである。

『レイダース〜〜』が公開された当時から当該場面はCMなどで繰り返し放映され、パロディでもよく引用された有名な場面ではあるが、静謐でシックなトーンの黒沢作品に突如として投入されたインパクトは絶大であった。

上記したように数多くの(主にパロディ)映画などで引用された当該シーンだがスター・ウォーズ/フォースの覚醒では、『レイダース〜〜』でインディ・ジョーンズを演じたハリソン・フォード本人が、転がりながら襲ってくる猛獣“ラスター”を前に、オリジナルと全く同じボディアクションも加えて再現したのも記憶に新しいところだろう。

スピルバーグ

日本を代表する名監督である黒沢清からも愛の告白を受けるスピルバーグ。新作では、狂ったようなサブカルチャーアイコン総出演の嵐と、マイケル・ベイの十八番を奪う大破壊のスペクタクルを見せるレディー・プレイヤー・ワン(原作)予告が解禁され、世界中のボンクラを歓喜の渦に叩き込んでいる。

そのスピルバーグの作品には、シネフィルらしい多くのオマージュが散見される。

『激突!』の『大アマゾンの半魚人』

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TVムービーながら、スピードとサスペンス溢れる展開で全世界にスピルバーグの名を轟かせた激突!。カーチェイスがメインになるのだが、トラック運転手の顔を写さずトラック自体を意思のあるモンスターのように見せることで意図的に「怪獣映画」として演出されている。

ラストで、トラックがくぐもった咆哮をあげながら崖から落ちていく時の“咆哮”が大アマゾンの半魚人の「半魚人」ギルマンの叫び声なのも、その証左である。

『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』の『キングコング』

ロスト・ワールド/ジュラシック・パークラスト。本土に連れてこられたTレックスのお母さん。子供を追いかけ、ひとしきり大暴れしたところで摩天楼のビル群と満月を背景に咆哮をあげる。これはキングコングで月を見たコングが故郷を思い、月に近づこうとエンパイアステートビルに昇る場面へのオマージュだ。

物言わぬTレックスが望郷の思いを抱いていることを表している。

『宇宙戦争』の『ゴジラ(1954)』

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宇宙戦争
突如現れた三本足のロボット“トライポッド”が世界各地に出現。人々は逃げ惑い、トム・クルーズ演じるレイも息子と娘を連れて、ニュージャージーから2人の母親のいるボストンへ向かう。途中、暴徒に車を奪われ、しかたなくフェリーに乗り込む。と、フェリー乗り場を見下ろす丘の上にトライポッドが出現する。

この場面、1954年の最初のゴジラで初めてその姿を現す大戸島の場面そっくりに作られている。かつてローランド・エメリッヒがリメイクGODZILLA ゴジラを作ると聞き「オリジナルへの冒涜にしかならないからやめなさい」と直接諌めたと言う伝説を持つスピルバーグによる「怪獣ってのはこう撮るんだよ!」という思いの篭った鳥肌モノの名場面だ。

ゴジラ

スピルバーグも大ファンである世界に誇る日本の大スター、ゴジラ。当然のように多くの作品からオマージュが捧げられている。

海からやって来る

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巨大ロボットと大怪獣が戦うパシフィック・リムでは“カイジュウ”は太平洋に開いた時空の裂け目から出てくる。そのため、必ず海の中から現れる。これはゴジラが必ず海から登場することへのオマージュだ。

破壊者として

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日本ではオシャレ系と紹介されることが多いレオス・カラックス監督が、東京をテーマに韓国のポン・ジュノ、フランスのミシェル・ゴンドリーと共に作ったオムニバス作品TOKYO!の一編「メルド」。ドニ・ラヴァン演じるメルド(フランス語で「クソ」)が登場し、あたるを幸い破壊の限りを尽くす。この時に鳴り響くのが伊福部昭による「ゴジラのテーマ」である。

カラックス監督の今のところ最新作であるホーリー・モーターズでも、「メルド」が登場し、伊福部サウンドをまたもや鳴り響かせている。

大スター!

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最近は豪放らい落さを持ち味にヤクザ俳優としても活躍する吉川晃司。彼のデビュー曲「モニカ」発表とほぼ同時に公開された映画がすかんぴんウォークだ。劇中、吉川演じる民川裕司は東京湾から泳いで(しかもバタフライ)芝浦から上陸すると走って新橋、銀座を通って皇居の手前で左折しバスに乗って国会議事堂あたりを通って六本木の喫茶店バイト求人に駆け込む。

このルート俯瞰して見ると「U」の字を描く不自然な遠回りをしていることがわかる。実はこれ、1954年のオリジナルゴジラの東京上陸ルートなのである。

大のゴジラファンでも知られる大森一樹監督が東宝製作である本作に吉川晃司へ「ゴジラのような大物になるんだぞ!」という思いを込めた場面なのだ。

照れるし恥ずかしいしクドいとめんどくさいのがオマージュ

最初に「オマージュ」を「好きな芸能人と同じ髪型や同じ服を着る行為の映画版」と評したが、例えばその格好を好きな芸能人本人に見られるのは恥ずかしいのではないだろうか?

なので、本人にバッタリ会っても(もしくは誰かに指摘されても)恥ずかしさが軽減されるよう自分なりに少しアレンジしたりエッセンスとして取り入れるなどすると思う。

映画も同様で、上記したいくつかの例はそれぞれ「かなり上級なオマージュ」と言えるだろう。センス良く、まったく同じにはせず、それでもギリギリ好意は伝わる、そんな名場面ばかりだ。

逆に、愛が強すぎて観ていて恥ずかしくなってくるようなオマージュも存在する。ブライアン・デ・パルマ作品に登場するヒッチコックへのストーカー並のオマージュの数々。

また、クエンティン・タランティーノのオタク趣味のコレクションをゴッソリ見せられたようなジャンル作品の羅列などがその代表だろう。

オマージュとは、上手な愛の告白同様に上品でささやかながら強い愛を感じさせるようなものこそ「上手なオマージュ」と言えるだろう。しかし、デ・パルマやタランティーノのような不器用で一方的な情熱をグリグリと押し付ける情景も、その潔さには感嘆せざるを得ない。

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  • ふらみん
    5.0
    ホラーから一気にインディジョーンズをやっちゃう黒沢清の面白さ、デタラメさ、可愛い
  • tama
    2.9
    記録
  • netfilms
    4.4
     ホームセンターに買い出しに出かけた永井由佳(永作博美)が店内から出て来ると、そこには弟の隆志(鈴木英介)がいた。引きこもりがちな弟の外出を姉は内心喜んでいた。一家は既に両親が他界し、姉と弟の2人暮らし。車で先に帰った由佳は信じられないことに既に部屋の中でゲームをしている隆志を目撃する。「どうやって帰ったの?」と訝しがる姉の問いかけを尻目に1本の電話が鳴る。警察は自殺した隆志の報を姉に伝えるのだった。一方その頃、メディカル・サイテック社のエリート研究者である早崎道夫(役所広司)は、助手の青木(戸田昌宏)と高野(戸田昌宏)と共に、人工人体の開発を続けるもはかどらず、上司から進捗状況を問われ、ストレスを募らせていた。彼は10年前に開発した血圧計が大ヒットしたことで、次の開発へ向けて会社の期待を一心に受けていた。ある日ファミレスで自分そっくりな男を目撃した早崎は帰宅した部屋で自分そっくりの「ドッペルゲンガー」を発見する。車で勝手に家に帰ったドッペルゲンガーを責める早崎は何とか人口人体の開発に成功し、スーパー・コンピューターを購入する予算を手に入れるが、深夜ドッペルゲンガーが暴れ回ったことで、会社をクビになる。自暴自棄になった早崎は高野から聞いたドッペルゲンガー現象を体感する永井由佳と対面する。そして早崎のドッペルゲンガーは解雇された会社から人工人体を盗み、君島(ユースケ・サンタマリア)と言う助手を雇い、更に研究費やライヴァル企業の資料を次々に盗み出す。  『回路』の麻生久美子と加藤晴彦と同様に、今作においても最初、役所広司と永作博美はまったく別の物語として並行し素描される。大企業において、成果を期待されないこの部署の様子は、まるで『地獄の警備員』の新設された12課のようである。ドッペルゲンガーとの出会いの場面において、早崎は正視出来ずに窓際で目を手で覆う。前作『アカルイミライ』における藤村亡き後に突如現れる藤竜也のように、ユースケ・サンタマリアは突然、役所広司の前に現れる。君島に次いで、由佳がプロジェクトに合流してから物語は明らかにジャンルレスになり、ホラー映画の範疇をいとも簡単に放棄する。自分の分身を殺し、新潟にあるメディコン産業に向け、完成したロボットを運ぶ場面はまたしても『893タクシー』や『勝手にしやがれ!!黄金計画』のようなの森の中の追いかけっこの様相を呈する。黒沢映画において、森から道路に出るときは右左を十分に確認しなければならない。鈍器による殴り合いに終わるかに見えたアクションの導火線に、スパナではなく、唐突に拳銃が加わり、来るべきアクションの機運が高まるも、物語の本筋はそこではない。ピタゴラスイッチの到来するガン・アクションの場面も自らの『勝手にしやがれ!! 黄金計画』をなぞるようである。まるでリチャード・フライシャーの『絞殺魔』のようにスクリーンに現れる分割画面が、今作の強いコントラストになる。幽霊はやがて分身となり、狂乱のうちに主人公に感染する。そのふてぶてしいまでの佇まいに90年代黒沢映画の1つの完成形を見る。
  • 小林
    3.9
    後半『恐怖の報酬』になってからはとにかくハチャメチャやってて気持ちいいのですが、前半がものすごく退屈... ドッペルゲンガー=自分自身の抑制された感情の化身というところから、一歩踏み込むような捻りが欲しいところではありました あと、デジタル化に伴って、『アカルイミライ』とこの作品で挑戦し、使われてるスプリットスクリーン、正直ダサいです...
  • umaso
    3.5
    クオリティは高くないけど、すごくおもしろい脚本。 とくに後半、車に乗ってからはテンポが速くなってよかった。 役所広司ええな。
「ドッペルゲンガー」
のレビュー(947件)