なぜCGなしにこだわったのか?アカデミー賞最有力作『ダンケルク』で語るクリストファー・ノーラン監督 「これは人類史上最高の物語のひとつ」 【インタビュー】

2017.09.07
インタビュー

FILMAGA編集部

フィルマーくま

全世界で興行収入5億ドル突破を目前。2018年アカデミー賞最有力として、トロント国際映画祭での出品も決定し、賞レースへの参戦も本格的にスタート。9月のFilmarks期待度ランキングNo.1、レビュー★4.1(2017年9月7日現在)の高得点を獲得するなど、いま話題の映画『ダンケルク』が遂に日本で公開!

Filmarksでは米公開前に一足早く、クリストファー・ノーラン監督へのインタビューを敢行。360°全方位から迫るタイムサスペンス、究極の映像体験『ダンケルク』はいかにして生まれたのか? 8月には、『インセプション』以来7年ぶりの来日を果たし、未来のクリエイターたちとの交流も楽しんでいたクリストファー・ノーラン監督のスペシャル・インタビューをお届けします!

クリストファー・ノーラン

クリストファー・ノーラン

 

若きクリエーターたちよ、心して聞け!クリストファー・ノーラン監督が学生の質問に回答

――『ダンケルク』はご自身初となる実話を基にした作品ですが、歴史上のできごとを映画にしようと思ったきっかけはどういったことだったのでしょうか。

アイデアが芽生えたのは、25年前の旅行だったと思います。妻のエマ(本作のプロデューサー)と一緒に、友人が所有していた小さな船であの海峡を渡ったときに思いつきました。

私は、ダンケルクの物語に魅了されてきました。イギリス人はその話とともに成長し、骨まで染み込み、神話のように文化の一部になっているんです。私たちは逆境立たされたとき、敵の優勢について語るとき、“ダンケルク・スピリット”のことを話します。それにこの物語は、近代映画で描かれていない。そこがとても魅力的でした。映画監督は常に大衆文化のギャップを探している。いまだに語られず、すでに語られているべきものを探す。この物語は人類史上最高の物語のひとつです。

ダンケルク

――究極の映画体験となる作品です。これまでの映画にはなかった革新性とは、どんなところでしょう。

革新的な部分は多くあります。「ダンケルクの戦い」という実際の出来事はあまり知られておらず、ほとんど映画化されていません。またこの歴史的出来事の核は、“戦い”ではなく“撤退”、サスペンスに溢れているという点もとてもユニークだと思います。だからこそ、『ダンケルク』を説明するにあたって「サスペンス」と「スリル」という言葉を使うことにしました。ストーリーも、単なる史実ではなく、可能な限り登場する人物の視点から描くよう試みました。戦争をテーマとする映画としては、新しい描き方ではないかと思います。

ダンケルク

――これまでの作品でもCGを極力使用しないというのが監督の作品のひとつの特徴でしたが、今作も大掛かりな撮影だったのでしょうか。

ダンケルク』の舞台のほとんどは屋外です。撮影は実際の場所で行うのがベストだと感じていました。ダンケルクの地理はとてもユニークです。今でも1940年当時の様子を残す部分が多くあります。ロケシーンのほとんどが、海と海岸だったので、実際のダンケルクで撮影しました。

本物の防波堤も、大半が当時のまま残っており、それを基にセットを作りました。撮影には、空には本物の戦闘機も飛ばし、実際に使われた軍用艦艇、1940年に本当にダンケルクで活躍した多数の船を、撮影のために再びダンケルクへ呼び戻しました。このように限りなくリアルな環境を提供出来たことは、俳優たちの演技にも影響を与えることができた思います。

撮影の時点で“本物”をカメラで捉えられれば、ポスト・プロダクションで加工する必要が減り、よりリアルで新鮮な映像をつくりだすことが可能になるのです。

――フィン・ホワイトヘッドやハリー・スタイルズなど役者経験のないキャストを起用した理由を教えてください。

作品や観客にとって、主人公には新鮮な顔ぶれが必要だったので、キャスティングには時間をかけました。ザ・ハリウッド流のように、35歳の俳優が18歳の役に演じるような配役をしたくはありませんでした。オーディションで募集し、演劇学校へも出向き、そこで学ぶ新人俳優たちと会いました。しかし本当に重要だったのは、新鮮な顔ぶれのアンサンブルキャストをまとめることでした。

ダンケルク

――ケネス・ブラナー、マーク・ライランスといったベテランキャストが顔を揃える中で、物語の語り部を若い兵士にしたことにも理由があるのでしょうか。

この物語で観客の心を打つのは、若者たちが、当時本当に、この壮絶な戦いと向き合ったという事実です。だからこそ私は、本物の18歳、19歳の俳優の起用を希望し、リアルな“未熟さ”をもつ新人俳優たち配役する事にしました。

――作品を拝見した側からも、その壮絶な撮影現場が想像できましたが、彼らの取り組みはいかがでしたか?

素晴らしいものでした。撮影は身体的にも厳しかったと思います。若い俳優たちの中には演技経験が少ない者もいましたが、厳しい環境に身を置くことで、演技という束縛から解放され、リアルに振る舞う様子が撮影出来たと確信しています。

ダンケルク

映画『ダンケルク』は9月9日(土)より全国ロードショー
公式サイト:dunkirk.jp
映画公式ツイッター:@dunkirkjp #ダンケルク
(C)2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED.

【あわせて読みたい】
 9月9日公開!ノーラン監督セレクトの11作品から、新作『ダンケルク』の全貌を徹底予想!
 若きクリエーターたちよ、心して聞け!クリストファー・ノーラン監督が学生の質問に回答
 【芸術の秋に観たい映画はコレ!】9月上映 映画期待度ランキングTOP20
 Filmarks期待度No.1!ノーランがノーランを超えた究極の映像体験『ダンケルク』
 『散歩する侵略者』が描く“未知の”侵略…大切な人が侵略者に体を奪われた、そのとき妻はー

記事をシェア

公式アカウントをフォロー

  • RSS
  • ゆーみん
    3.2
    ノーラン節を終えて炸裂させて欲しいというわけではないがノーランじゃなくても撮れるのでは? ソーラン節やね
  • くーみん
    3.0
    2018・1・19鑑賞
  • 映画漬廃人
    1.7
    私の中に一本引かれそうな神経過敏な境界線。クリストファー・ノーラン「ダンケルク」 昨年、この作品を「観た!」と仰る、仕事上お付き合いさせていただいている多くの方々がお話を聞かせてくれました。 ある方は史実である西部戦線のひとつについて。 ある方はウィンストン・チャーチル首相の政策について。 またある方は負傷兵を運ぶ二等兵や橋の上での将校の指揮内容について。 ラジコンマニアの方はスピットファイア戦闘機について。 果てはドイツ軍の「まやかし戦争」やヘルマン・ゲーリングの大言壮語まで。 (ダイナモ作戦)という史実に疎い私にはとても興味深いお話ばかりでした。 実際このfilmarksでもコメントが物凄い数ですね。 そして私は自分が実際この作品を観て「映画」そのものの輝きよりも観た者に何かを語らせたい「映画外」的な力がこの作品には圧倒的に占められているとはっきり感じられたのです。 言い換えれば「厄介なシロモノ」だな、というあの感慨。 「ダークナイト」三部作を観た時、絶賛の嵐の中で私自身どこか居心地が悪い気がしていたわけがおぼろげながら分かってきた気がします。 この作品も「ダークナイト」三部作も間違いなく圧倒的な迫力ですし敢えて濃い味を回避する聡明な作家性もあります。 ですが苦い共感さえ封じ込めるような警戒心がいまだに禁じえません。
  • ごろすけさん
    4.0
    戦争映画なのに映像がとても綺麗。
  • たいりょう
    4.3
    オープニングの街。紙切れが舞う市街での銃撃戦。カメラワークの美しさにいきなり心を奪われた。いかにもノーランっぽいし、IIMAXカメラの効果もあるんだしょうか。奥行きを感じさせる構図、必要最低限の台詞と音楽、過度なドラマ性を抑えた脚本が生み出した世界は一つの叙情詩のよう。  ダンケルク戦線からの脱出を図るイギリス軍。負傷した兵士を優先して船に乗せる軍人としてのルールは守られるが、船を乗れなかった隊員たちの表情にはほとんど表情が無い。今の状況を受け入れざるを得ない諦念の表れだろうか。  一方で、数的不利の中救出作戦の援助の向かう空軍パイロット達や、民間船の船長として救出作戦に参加するドーソン達の表情には、責任を纏う強さが在る。多分ダンケルク戦線の兵士達もかつてはこの表情を持っていたんだろう。そのヒロイズムの象徴なのが、民間船に乗り込みダンケルクに向かったジョージかもしれない。救出戦でヒーローとなり英雄として新聞を飾る。実体験として戦争の過酷さをしるドーソンやパイロット達と較べても、その表情は無邪気なヒロイズムに溢れている。  陸(ダンケルク)、空(ドイツとの戦闘機戦)、海(救出戦)の物語は、それぞれ一週間、一日、一時間と別々の時間軸の中で交錯しながら描かれている。最初はその並列に戸惑ったけれども、観終わってみればそれぞれの時間軸を分けることで、無駄にドラマを作り出すこともなく、戦争に関する場面だけで救出作戦を描くことに繋がったと思う。  台詞やドラマ性、音楽など映画における様子がある意味過剰に感じるくらい抑制されている中で、エンターテイメントとしては、同じ過酷な戦争を描いた「プライベート・ライアン」などに較べるとリズムに乏しく、そういった意味では観るのにかなり重さを感じるし、途中で飽きてしまう人もいても不思議では無いと思います。  ただ、陸・海・空のそれぞれの物語の結末の中で、直接的には語られないけど伝わってくる戦争の残酷性、ドラマ性は、戦争映画のひとつの形として有りだと思いまいた。個人的には傑作だと思います。
「ダンケルク」
のレビュー(33718件)