『ジュラシック・ワールド』の恐竜はなぜリアルに見えるのか?映画のCGの話

2015.08.05
雑学

映像の編集とか演出やってます

ホンダカット

ジュラシック・パーク

1993年公開の『ジュラシック・パーク』は実写映画史上はじめてフルCGの生き物が【違和感なく】画面上で人間と共演した記念すべき作品でした。当時ですら驚愕したCG技術からはや22年。今や実写で描けないものは無いと言われています。

しかし、様々な記事やメイキングなどでも、ひとことで「CGで〜」と表現されている場合が多々あります。しかし実際には色んな技術で映像は作られているのです。

今回は遂に『ジュラシック・ワールド』が本日より全国公開となる記念に、なぜ恐竜たちがあんなにリアルに見えるのか、CGって何なのかを少し紐解いてみましょう。

フルCGで描かれた恐竜の様子

※フルCGで描かれた恐竜!
http://www.empireonline.com/features/making-of-jurassic-park

映画の魔法!SFX!

実写だけでは表現できない効果を映画で産み出す魔法、「SFX」という言葉があります。スペシャル・エフェクツの略です。

実写のような背景を手書きで描くマット画(かきわり)、ミニチュアを使った撮影、ワイヤーで何かを釣って飛ばしたり、特殊メイク、コマ撮り、火薬を使った爆発などの、特殊効果を行うパートです。

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※背景が実写にみえるマット画を手書きで描いている
出典 : http://makingfx.net/archives/609

『ジュラシック・パーク』ではT-REXの上半身や、ヴェラキラプトルの足などを、アニマトロニクスという自由自在に動く等身大の模型を作って、まるで生きている恐竜のように画面に登場させています。

スピルバーグ監督は撮影時に【モノ】がある事に非常にこだわる監督でも知られ、作るセットも巨大なものが多いです。『ターミーネーター2』のCG技術を見て『ジュラシック・パーク』の製作を決意したと言っていますが、こういったアナログな技術とハイブリッドして恐竜たちを産み出し、世界観をリアルにしています。

走ってくるT-REXの引いた画はCGで、主人公たちを威嚇する寄りの画はアニマトロニクスで、とカットごとに分け、自然に繋がるように調整し、CGカットの完成度をより高いものに錯覚すらさせています。

等身大のT-REX

※等身大の動くT-REX
出典 : http://www.empireonline.com/features/making-of-jurassic-park

日本においてはこの「SFX」は特殊効果と略されますが、さらに【特撮】という日本独自の方法論に発展し、現在でも主にミニチュアや着ぐるみを駆使して撮影する手法に使われています。

コンピューター時代の効果!VFX!

コンピューターベースの映像加工が出始めた90年代あたりから「VFX」という言葉が良く使われるようになりました。

ビジュアル・エフェクツの略です。日本では視覚効果と言います。現在では主に、撮影時に行うアナログの効果の事をSFX、撮影された映像に対してコンピューター上で行う効果の事をVFXと言って区別しています。

このVFXのパートの中にCGという手法が含まれます。正確にはCGI(コンピューター・ジェネレイテッド・イメージ)。いま「CG」と言われているのは基本的には【3DCG】の事です。コンピューター上で立体物を作り、それらを動かし、画面に登場させる手法です。

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※実写の映像にCGの恐竜を生成
出典 : http://www.empireonline.com/features/making-of-jurassic-park

CGにもいろいろある

『トイ・ストーリー』のようにフル3DCG映画で使われることもあれば、『ジュラシック・パーク』のように実写映画の中に恐竜を登場させることもできます。最近では『エヴァンゲリヲン新劇場版』など、アニメの中に、書いたような質感にした3DCGを混ぜて使う事も普通になってきました。

例えばアニメにおいて、メカ的なものが回転したり、という描写を手書きで描くととんでもない労力を必要とするものでも、3DCGで描いてそれを手書きの質感にすることで時間内・予算内で表現することが可能です。

またCGは3DCGだけではなく【2DCG】もあります。手書きで背景を描いていた感覚で、コンピューター上で人物の背景などをコラージュした写真+手書きの背景(マット画)を描いたり、例えばアイアンマンのモニターに映るグラフィックなど、3Dではないけどコンピューター上で生成される画もあるのです。

VFXはCGだけじゃない!合成の凄さ

VFXのパートの中にはCGだけではなく【合成】(コンポジット)という手法も含まれます。例えば実写の映像にブルースクリーンで撮った別の実写を合成したり。また、3DCGで作られた恐竜やロボットを実写の映像に馴染むように合成したりする作業です。

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※ブルーバックで撮った人物と、別の場所の背景を合成
出典 : http://www.boredpanda.com/before-after-vfx-movies-tv-hollywood-magic/

CGを違和感なく加えるというのも大切な役割ですが、他にも、背景を差し替えたり群衆の人数を増やしたり別に撮影した血しぶきや埃を足したり映ってはいけないワイヤーや建物を消したり、と、合成で行える作業の精度は年々上昇しています。

たとえば、映画内で、がでてくる部屋でカメラが自在に動いている時。撮影ではかならず鏡にカメラやカメラマンが映ってしまう際にそれらを【消す】という作業も合成に含まれます。「カメラも何も映ってない背景」を別に撮影し、それを合成するのです

『ブラックスワン』など全面鏡ばりのシチュエーションで撮影するという事自体、VFXが台頭してきた時代以降でないと撮れない画だと思います。

恐竜がリアルに見えるのはCG技術の発展と共に、この合成技術の発展があってこそのものなのです。

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※『ブラック・スワン』より 追い込まれるナタリー・ポートマン
出典 : https://www.ocf.berkeley.edu/~andrewt/thesis/Black-Swan/Becoming-the-Monster.html

全てがVFXにとってかわってしまうのか?

今後、コンピューターのハードとソフトの性能が上がっていけば現場で行うSFXは無くなり、VFXだけになってしまうのか?

たとえば実際、『ロード・オブ・ザ・リング』のゴラムのようにCGでキャラクターを描けるようになったり、『パイレーツ・オブ・カリビアン』のデイヴィ・ジョーンズは顔にはりつくウネウネの部分をCGで作成できたりしている昨今、特殊メイクの仕事がVFXに取って代わってしまっている例もあります

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※実際の役者の演技に対して、CGを合成している
出典 : http://www.dvdtalk.com/features/behind_the_scen.html

しかし、2015年のアカデミー賞の視覚効果賞は『インターステラー』が受賞しました。この作品もそうですが、クリストファー・ノーラン監督はアナログの特殊効果(SFX)が大好きな監督。

巨大な模型を撮影するなどはしょっちゅうですし、実際の宇宙船を作り動かす、飛行機を実際にヘリコプターで上空に釣り上げアクションする、空飛ぶバットはワイヤーで本物を吊るす、街中を覆う砂嵐は実際におこす、などこだわりは尋常ではありません。

そしてそれらに更にVFXを駆使し、見たことのない映像に仕上げています。しかも中にはそれらをガイドとして参考にだけして(実際には使わない!!)CGに置き換えてる場合も多いです。もはやお金の使い方が日本では考えられないレベルにきています。

今後も、SFXとVFXを組み合わせて映像の魔法を産み出していく時代がずっと続いていく、と信じています。

インターステラーの1シーン

※『インターステラー』では実際にロボットを現場で動かし、人物を合成で消している
出典 : http://www.theblaze.com/stories/2015/03/27/behind-the-scenes-how-the-robots-in-interstellar-were-really-giant-puppets/

そして22年経ってオープンしたパーク

CGや合成などのVFXの技術は、コンピューターの処理速度の発達によるところに左右されます。『ジュラシック・パーク』においてはCGで恐竜が描かれているカットは約60カットだったそうですが、今回の『ジュラシック・ワールド』ではおそらくは1000カット以上はCGが使われているハズです。

ジュラシックワールド

ただ、何といってもこのシリーズが面白いのはそのイマジネーションの化学反応。「恐竜を現代に蘇らせる」というのが、映画内の設定でもあり、映画自体の挑戦でもある。【技術】によって人間がどうなっていくのか、それを観た人がどう反応するのか、というのが絶妙にリンクしているからこそ面白いのだと思います。

個人的には『トランスフォーマー』以降、とうとう映像内におけるCGと実写の区別がつかなくなったという実感があり、映像の【嘘】が真実味をもってしまう怖さをも感じています。次回以降の記事ではCGがどんどんリアルになっている実際の技術革新をもう少し掘り下げてみていく予定です。

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