【追悼】魅惑の悪夢創造主/ウェス・クレイブン監督の外せない必見作をまとめて紹介!

2015.09.05
監督

Why So Serious ?

侍功夫

 

『エルム街の悪夢』シリーズや『スクリーム』シリーズなど、ホラー映画の傑作を多く生み出したウェス・クレイブン監督が2015年8月30日にお亡くなりになりました。享年76歳です。ガン闘病は報じられていましたが、それでも早すぎる死に、多くのファンや関係者たちが死を悼んでいます。

本項ではウェス・クレイブン監督の代表作を振り返り、作品の魅力を詳らかにしていこうと思います。

ウェス・クレイブン 恐怖の代表作

ウェス・クレイブンを語る上で、どうしても外せない作品があります。デビュー作の『鮮血の美学』。シッチェス映画祭で審査員特別賞を受賞した『サランドラ』。フレディ・クルーガーを生んだ『エルム街の悪夢』。ティーン・スラッシャー・ホラーを復興させた『スクリーム』の、4作品です。

レイプ・リベンジ・ホラーの始祖『鮮血の美学』(1972)

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ウェス・クレイブンは『鮮血の美学』で監督デビューを果たします。少女をレイプして死に追いやった不良たちを、少女の両親が殺していく、というイングマール・ベルイマンの『処女の泉』に着想を得た物語で、後に量産される「レイプ・リベンジ」ジャンルの原型とも言える作品です。

不良たちを度し難く憎たらしく見せる演出や酸鼻を極める報復描写など、洩れて溢れる非凡さが初監督作品からすでに顕著に現れています。

劇中、か弱い少女をノリノリで犯し、悪びれることも無い不良たちですが、犯された少女が絶望のあまり入水自殺を図ろうと湖に入っていくと、一気にバツの悪い神妙な面持ちとなり、居心地の悪さを振り切るように彼女を撃ち殺してしまいます。

この、不良たちのバツの悪い瞬間が存在するおかげで、彼らは単に「悪役」という記号的存在から一歩踏み込んだ、人間らしさを纏わせます。この“人間らしさ”が逆に復讐され惨殺されても当然だと思える胸糞の悪い連中だと印象づけているのです。こういった通り一遍では生み出せない奇妙な発想は、クレイブンの本領発揮と言えるでしょう。

ちなみに、本作は初めてチェーンソーを人殺しの武器として使った映画だとされています。

ジョギリ・ショック!『サランドラ』(1977)

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『サランドラ』は、核開発競争時代に実験場として使用されていた砂漠のど真ん中で、車の故障により立ち往生した家族が謎の異形の一家に襲われる、という作品です。

ジーンズやジャケットといった現代的な服装を動物の革や骨で装飾した、現代と原始時代を合わせた様な異形の一家のいでたちは、『マッドマックス2』などポスト・アポカリプス物の始祖と言っても良いでしょう。

また、本作は日本だけで悪名高い作品となっています。

アメリカ公開から7年後の1984年になって突然日本公開を請け負った東宝東和は、劇中には登場しない「ジョギリ」なる蛮刀イラストを広告イメージのメインに据え、「警告! ご注意ください。あなたの眼が破れます。」という、今では考えられないコピーを添えた誇大広告を掲げます。

期待いっぱいに観賞した(筆者含む)ホラーファンたちは、正に狐につままれたような感覚を味わい、前時代的いかがわしい興行の世界を垣間見ることになったのです。

フレディ・クルーガー誕生!『エルム街の悪夢』(1984)

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夢の中に現れては高校生たちを殺していく殺人鬼、フレディ・クルーガーを描いた大人気シリーズ1作目です。このシリーズを支えたのは何と言ってもフレディのキャラクター性でしょう。

饒舌にイヤミを捲し立てて若者たちを精神的に追い詰めた末に、右手のツメで切り裂くというフレディのスタイルは、レザーフェイスや13金ジェイソン、マイケル・マイヤーズなど寡黙な殺人鬼スターたちの中において特出した存在となっています。

また、夢の中ということでフレディは腕を伸ばして逃げ道をさえぎったり、電話の受話器になって女の子の口をぺろぺろ舐めたりと、シュールレアリズムを思わせるイマジネーション豊かな姿で登場するのも見どころです。

若者たちを襲うごとに姿を変え、殺害方法もバラエティに富んだ『エルム街の悪夢』シリーズは観客に絶大な支持を得ます。その結果、製作したニュー・ライン・シネマを大儲けさせ、一流の製作会社へと押し上げるのです。

つまり、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズや『アイ・アム・サム』『マグノリア』などの傑作もフレディがいなければ作られていなかった…… かもしれないのです。

枯れた“恐怖”の水平思考!『スクリーム』(1996)

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オバケのハロウィン・マスクをかぶった殺人鬼による連続殺人を描きます。本作では、犯人と被害者にホラー映画ファンがいる、というのが肝になっています。

「セックスをしたら死ぬ」「すぐ戻る!と言って出て行った奴は死ぬ」「死んだ殺人鬼に近づくと起き上がる」などなど。スラッシャー・ホラー映画のお約束を踏まえた上で、裏切ったり、意外な展開を意図的に登場人物にさせるなど、遊び心を盛り込んだことで廃れかけたスラッシャー・ホラーに新風を吹き込みます。

本作のヒットで「安く、早く、そこそこ楽しく」作れるホラー映画は注目を集め、ティーン向けホラー映画ブームが再び巻き起こるのです。このブームは日本にも輸入され、ハロウィンシーズンになると本作のオバケマスクを量販店で見かけるほど、『スクリーム』はホラーファン以外にも広く浸透していていきました。

クリシェを破壊する悪夢の創造主

これらクレイブン監督代表作から見られる特徴は「クリシェの破壊による新たな恐怖の開拓」だと言えるでしょう。

胸糞の悪い加害者に対し、彼らを上回る凄惨なやり口で報復する被害者、という逆転した構造を持つ『鮮血の美学』。

アメリカの地方で訛りの激しい田舎っぺが襲ってくるホラー映画はありましたが、言葉が通じるかどうかもあやしい原始人じみた一家としてツイストを加えた『サランドラ』。

夢の中で殺人鬼に追われ、ハッと目覚めて救われる夢オチ映画はよくありましたが、逆に言えば、再び寝たらまた追われるハメになります。生きている以上寝ないワケにはいかないでので、死ぬまで追われ続ける、という正に悪夢のような設定を持った『エルム街の悪夢』。

そして、続編全てを自身で監督するほど愛着があり、遺作にもなった『スクリーム』シリーズはクレイブンの特徴を最も顕著に表しています。映画的な文脈を裏切り続けたあげく、最後の最後に素直になってみたり。裏切って裏切って、さすがに最後は…… と思わせてからヤッパリ裏切ったり。観客に安心させるヒマを与えない展開を見せます。

ホラーやサスペンス、スリラーなどのジャンル映画には、長い歴史の中で培われた「鉄板」と呼ばれる「お約束展開:クリシェ」が多く存在します。クレイブンはそれらを踏まえた上で、ひっくり返したり、裏切ったり、ズラしたりと、観客にいつも見なれていない展開や情景を突きつけ、不安を誘い、思いもよらなかった新しい恐怖を味あわせてくれたのです。

傑作ぞろいのフィルモグラフィ

上記した代表作以外でも、クレイブン監督作にはジャンル・ファンおなじみの傑作が揃っています。

テレビの電波に乗って襲ってくる殺人鬼を描いた『ショッカー』。ハイチ、ブードゥー教に伝わる死者を蘇らせる薬を追った『ゾンビ伝説』。脳死した少女の体にコンピューターを埋め込んで蘇生させる『デッドリー・フレンド』。奇妙な夫婦の住む家に隠されたトンデモない秘密『壁の中に誰かがいる』。狼男になった若者たちの青春を描き『トワイライト』の先駆けとも言える『カースド』、などなど、ここには書ききれないほどありますので各自ググってください! 

これらフィルモグラフィのほとんどをホラーやスリラーで埋めるクレイブンですが、2本だけ異色な作品があります。

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『ミュージック・オブ・ハート』はニューヨーク、ハーレムのダウンタウンにある小学校のヴァイオリン課外授業で多くの子供たちを救った、実在の音楽家ロベルタ・ガスパーリを描いた作品です。

主人公の教師は、なんとメリル・ストリープが演じており、公開年のアカデミー賞主演女優賞に本作でノミネートされています。クレイブンの作品としては珍しくモンスターも殺人鬼も登場しない作品ながら、素直で優れた感動作になっています。

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『パリ、ジュテーム』はパリの18の区を舞台に18組の監督による、「愛」をテーマにしたオムニバス映画です。クレイブンはペール・ラシェーズ墓地を舞台に、幽霊が登場しはするものの、ロマンティックで愛らしい小品を作りあげています。

これら多くの作品で、我々をゆさぶり、心地よく裏切り、さまざまな形の恐怖を魅せてくれたことへの感謝と功績を称え、ウェス・クレイブン監督へ哀悼の意を捧げます。

R.I.P WES CRAVEN !  傑作をありがとうございました!良い夢を!

参考動画:生前交流のあったホラー監督ジョン・カーペンターが語るウェス・クレイブン。

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    鮮血の美学。このタイトルとジャケで話はとても真面目で、あらすじからとても重々しいものだと思っていました。ですが、コミカルな音楽と演出でレイプシーンがあってもあまり気落ちせずに見終わることが出来ました。 娘を殺された両親の復讐ですが、彼らは一般人ですのでどこか抜けていて応援したくなる気持ちに。個人的にお母さんが必死すぎて怖いです。男の人はヒュンっとするかも。
「鮮血の美学」
のレビュー(208件)