アニメ版『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』はハッピーエンドだったのか【ネタバレ考察】

2018.04.18
映画

アニメの風通しがもっと良くなりますように

ネジムラ89

打ち上げ花火

アニメ映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』はご覧になりましたか?

2017年8月18日に劇場公開された本作は、その前年の同時期に同じ東宝から『君の名は。』が公開されたということもあり、爽快な青春劇が楽しめるのかな、と期待したのですが、青春映画であることには変わりなかったものの、少し変わった味わいの作品で当時驚いたことをよく覚えています。

例えば、登場人物の言動に違和感があったり、起こる非現実的な現象に対して具体的な説明がなかったり、さらにはこの映画の結末が、明確にハッピーエンドなのかどうなのかもよく分からない着地を迎えたりと、奇しくもタイトルの様に、映画の観方も「どう観るのが正解なんだろう」とちょっと考えてしまうような物語となっています。

とはいえ、これが結構面白い一面を持った映画なのです。というわけで、本作の観方がわからないという人に向けて、本作『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』を読み解くうえでの手引きとなるようなヒントをいくつか紹介したいと思います。

オリジナル実写版では小学生の物語だった

打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?(1993年製作の映画)

まずそもそもこの『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』という作品には、元となる映像作品が存在します。『スワロウテイル』や『花とアリス』といった作品を世に送り出してきた岩井俊二監督が、監督・脚本を務めた実写映像作品『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』です。

主人公の典道役を山崎裕太、ヒロインのなずな役を奥菜恵が演じたこの作品、アニメ映画版からこちらの実写版を観ると大きな驚きがあります。実写版の展開が大きくそのままアニメーションに置き換えられているのです。設定だけでなく、キャラクターたちの特徴だったり、言動だったり、かなり忠実に再現されているシーンが散見できます。

唯一、そういったキャラクターの特徴で根本的な部分で大きく違うのが、主人公たちの年齢設定です。

アニメ映画版では、主人公たちは中学生なのですが、実写版は小学生という設定となっています。キャラクターデザインが大人びていることもあり、「高校生?」と思ってしまいそうですが、実際はもっと下の世代のキャラクターたちの物語なのです。アニメ版の主人公たちの言動に幼さを感じるシーンがあるのは、もともと小学生の物語だった実写版の各シーンを忠実に再現した作品だったためです。

あの不思議な玉はなんだったのか?

打ち上げ花火

その他の明確な違いとして、実写版には登場しておらずアニメ版には登場する“ビー玉”というキーアイテム。典道はこの玉の力を借りることで、起こってしまった出来事を“やり直す”力を手に入れます。

この“やり直す”という特徴的な展開も、実は実写版の『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』が、もともとフジテレビの「If もしも」という、ストーリーが分岐する企画のコンセプトに則ったものだったことから生まれた展開だったりします。今回のアニメ版にはその前置きがないため、突如物語に“やり直し”が発生したら、観客が戸惑うことは間違いないでしょう。そんなときに物語の説得力として象徴的なアイテムがあることで、物語の分岐がより分かりやすくなります。そういう意味でも映画を観やすくする工夫の一つとして登場させていると言えるでしょう。

ですが、この玉の役割はそれだけではありません。アニメ版の面白いところは、この玉をただ登場させるだけではないところです。冒頭で主人公のなずながこの玉を発見するシーンが用意されています。劇中で玉の力を使うのは典道の方なのですが、このシーンがあることで、結果的に「なずなの導きによって典道が玉の力を使うことになる」ような印象が残るようにできています。

実はこの映画、なずなが典道をある場所に導く映画として観ることができます。

そして二人は別の世界へ行ってしまう

ではなずなはどこに典道をどこに導いたのでしょうか?

この点は、人によっていろんな解釈ができる部分といえるでしょう。

親という束縛から逃れたいなずなと、いまだ自分の気持ちがうまく表現できないでいる典道。そこになずながいたずらに典道を逃避行に誘うことで、典道の心境に変化が生まれ、それに誘発されるようになずな自身も何かを得ていく……そして二人は成長していき、最後に“ある場所”に到達する。この場所というのが、何を示しているのかは、人によって様々な解釈ができるところです。

ラストシーンでは、新学期が始まった教室で意味深に二人が消えるシーンが描かれます。なずなが転校することは劇中で言及されているので、彼女がいない理由は理解できます。しかし、典道までいなくなるのは不可解です。なぜ二人がいないのか。その理由は描かれず、ハッピーエンドなのかバッドエンドなのかも分かりません。ですが、確かなのは、“二人はみんなとは違うところ”にいるということ。その場所こそまさに二人が行き着いた場所です。

皆さんはあの場所がどんな世界に見えましたか? 人によっては愛し合う相手を得た二人の幸せの世界に見えたり、またある人にとっては快楽という名の地獄にも見えるかもしれません。もしくはもっと別の概念をイメージする人もいるかもしれません。劇中では明確な答えを描いてはいないので、そこに正しいとか間違っているといった差はありません。観た人それぞれの感想が一つの答えになる映画なのです。

なずなが導いた場所が観客によって違う……。そこがまた『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の魅力の一つと言えるでしょう。

(C)2017「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」製作委員会

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  • ReiSugiura
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    うーん、
  • twinkle
    2.0
    打ち上げ花火を上から見るか?横から見るか?どうでもよくなるほどダルい作品 主人公典道のクラスメイトなずなが母親の再婚で転校することに… 嫌がるなずなは典道に「一緒にかけおちしよう」と誘い行動するが母親に連れ戻されてしまう 何も出来なかったもどかしさから典道はなずなが落としたガラス玉を投げつけると連れ戻される前の時間にワープしてしまった… なずなを救うため何度もワープする典道 はたして二人の結末は… つまらないストーリーなのに色々な謎がわからず仕舞いで終わります 何度もワープする場面でイライラし スッキリしないラストにモヤモヤするのでスコア2です エンディング曲だけが独り歩きした作品
  • おーとり
    3.0
    岩井俊二原作ということで視聴いたしました。 「リップヴァンウィンクルの花嫁」や「花とアリス」など独特な世界観で魅せる監督&脚本家さんなのですが... これは...ないかな? 思わせぶりは最後のシーンなど岩井監督の原作っぽいところは多々あるのですが普通のアニメファンの人が見たら「化物語」の戦場ヶ原さんが登場する劣化版「時をかける少女」(劇場アニメ版)としか写らないでしょうねぇ... (監督作品の絶妙な作品の曖昧さが、このアニメだと手抜きで説明不足の脚本にしかみえないです) 岩井監督のファンからもアニメファンからも望まれない作品になってしまっているのが残念。 個人的には全部ひっくるめて「岩井俊二原作をアニメで初めてみた」ということで星3つ。 (「花とアリス殺人事件」は道満先生の漫画しか読んでないです。今度みてみよう。)
  • Nobu
    1.1
    パラレルワールドの設定は面白いが内容は薄くワクワク感はない。
  • がり
    3.1
    【この絵の美しさならコテコテの恋愛でもよかった】 所々に違和感を感じ、見終わったときにはその違和感の蓄積でもやもやした感じが残った。例えば、一つ一つの言葉遣いや、なずなのキャラがクールに一貫しないところや、声優の不一致、わざとらしい場面転換など、少し気になってしまった。最初の自転車で投稿する場面からすでに、土地の雰囲気と、生徒がスケボーに乗っている感じがずれている気もしたし、言葉遣いも浮いている感じがして、思い切って訛りを入れてもよかったと感じた。 君の名は。ブームの直後の上映だったから気の毒な気もしたが、比較されてしまったからこそちょっとひねったテイストではなく、もっと絵の美しさを生かした王道の恋愛映画だったら良かったと思う。 なずなに感情移入できない。達観した女性を描きたいなら最後までクールであるべきだったし、クールななかでの弱さを見せたかったのならもっと感情を吐露しても良かったと思う。 あと打ち上げ花火の曲はエンドロールではなくて劇中歌として花火と同時に流れたらよかったなぁ。
「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」
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