遂に公開!ハリウッドきっての問題児を描いた話題作『サム・ペキンパー 情熱と美学』

2015.09.20
洋画

ヒットガールに蹴られたい

竹島ルイ

“血まみれのサム”の異名を持ち、“バイオレンスのピカソ”とも称された、映画監督サム・ペキンパー。その59年の生涯を、貴重な映像や関係者たちの証言を交えて描くドキュメンタリー映画『サム・ペキンパー 情熱と美学』が、今月26日より全国で順次公開されます。

映画史にその名を刻む伝説の映画監督でありながら、ハリウッドきってのトラブルメーカーでもあり、孤高のアーティストとして生を全うした奇才サム・ペキンパーとは、いったい何者だったのでしょうか?

本稿ではペキンパーの生涯を駆け足でご紹介していきましょう。

撮影3日目で解雇!ハリウッド屈指の“トラブルメーカー”

サム・ペキンパーは、1925年カリフォルニア州生まれ。第二次世界大戦では海兵隊として従軍した後、南カリフォルニア大学に入学して演劇を専攻。やがて『ダーティハリー』で知られるドン・シーゲル監督のアシスタントとして映画界入りし、『荒野のガンマン』(1961年)で劇場用映画デビューを飾りました。

続く二作目の『昼下がりの決斗』(1962年)がヒットを飛ばし、将来有望な映画作家として一躍注目される存在となったペキンパーは、チャールトン・ヘストン主演の超大作『ダンディー少佐』に招聘されます。ここまでは順風満帆の映画監督人生だったといえるでしょう。

ダンディー少佐

ところが、450万ドルの予算が費やされるはずだった『昼下がりの決斗』は300万ドルにまで縮小。10人以上をクビにするなどスタッフとの関係は最悪で、しまいには、彼に断りもなく30分以上もカットしたプロデューサーのジェリー・ブレスラーともケンカになる始末。製作時のゴタゴタが災いして、興行的にも失敗してしまいます。

続いて、スティーヴ・マックイーン主演『シンシナティ・キッド』の製作にとりかかったものの、MGMプロデューサーのマーティン・ランソホフと衝突してわずか撮影3日目にして解雇される憂き目に(監督は、後に『夜の大捜査線』や『華麗なる賭け』を手がけるノーマン・ジュイソンに交替)。

プロデューサーにやたら噛み付く“トラブルメーカー”としての悪名がたってしまい、以降ハリウッドで完全に干されてしまいます。

バイオレンスの巨匠として華麗に復活!血まみれのフィルモグラフィー

映画界から総スカンを食らったペキンパーは、テレビでの仕事に活路を見いだします。やがてテレビドラマ『昼酒』(1966年)の優れた演出が認められたことをきっかけに、干されてから4年後の1969年、『ワイルドバンチ』で華麗に映画シーンに復活!

以降、『わらの犬』(1971年)、『ジュニア・ボナー/華麗なる挑戦』(1972年)、『ゲッタウェイ』(1972年)、『ビリー・ザ・キッド/21才の生涯』(1973年)、『ガルシアの首』(1974年)と、血なまぐさいバイオレンス映画の巨匠として、次々と傑作を発表しました。

“血まみれのサム”、“バイオレンスのピカソ”と呼ばれるようになったのは、この頃からのことです。

しかし、彼の身体は次第にアルコールや薬物に蝕まれていきます。妻にDVをふるう、プロデューサーには食ってかかる、気に入らないスタッフは首にする、予算や期日は守らない…。

そんな破滅型作家に、天寿を全うすることなどあり得ないのでしょう。1984年12月28日、ペキンパーは心不全でこの世を去ります。享年59歳。

残された“血まみれの”フィルモグラフィーは、14本。映画界に干された期間が長く、若くしてこの世を去ったこともあり、その数は決して多くはありません。しかしその鮮烈な暴力の美学は、現在でも色あせることなく輝きを放ち続けています。

では、彼のフィルモグラフィーの中から、特にオススメのペキンパー映画を3本ご紹介いたしましょう。

暴力描写の革命!『ワイルドバンチ

ワイルドバンチ

ハリウッドで干されていたサム・ペキンパーが、4年ぶりに監督復帰を果たした作品。1913年のメキシコを舞台に、時代に取り残された5人のアウトローたちが、100人を超える軍隊を相手に死闘を繰り広げるバイオレンス巨編です。

6台のマルチカメラを使って11日間ぶっ通しで撮影したという、ラストの大銃撃戦は圧巻の一言!スローモーションを多用したダイナミックなアクションは、 “死のバレエ”と称されて後世に大きな影響を与えています。

ちなみにこの撮影の様子は、ワーナー・ブラザースの倉庫で発見された記録フィルムを元に、『ワイルド バンチ アルバム・イン・モンタージュ』(1996年)というドキュメンタリー映画として発表されているので、興味のある方はチェックしてみてください。

内気でひ弱な青年が殺人者に変貌!『わらの犬』

わらの犬

ダスティン・ホフマン演じる内気でひ弱な数学者が、執拗な村の若者の嫌がらせにプッツンし、やがて大殺戮をおこすという凄まじい映画。凡庸な一市民が次第に狂気を帯びていく描写がヴィヴィッドで恐ろしい!

法で裁けない悪に対して、一般市民が復讐を果たす物語を一般的に「ビジランテもの」と言いますが、この『わらの犬』はその最高峰とでも言うべき作品です。

ちなみにこの作品、2011年にロッド・ルーリー監督、ジェームス・マースデン主演でリメイクされています。

ゲッタウェイ

ゲッタウェイ

『ジュニア・ボナー/華麗なる挑戦』に続いて、スティーヴ・マックイーンと組んだクライム・アクション。恋愛要素は控えめに、とにかく銃撃戦に比重を置いた演出がペキンパー流。とにかくマックイーンがひたすらカッコ良く、そのダンディズムはハンパなし!

この作品も、1994年にロジャー・ドナルドソン監督、アレック・ボールドウィン&キム・ベイシンガー主演でリメイクされています。キム・ベイシンガーのエロさが辛抱たまりません。

その破天荒な生き様をスクリーンで目撃せよ!

サム・ペキンパー 情熱と美学

いかがだったでしょうか。映画が破天荒なら、作る監督も破天荒!であることがお分かり頂けたかと思います。

ちなみに、今回『サム・ペキンパー 情熱と美学』の監督を務めているのは、ペキンパーの伝記『PASSION & POETRY SAM PECKINPAH IN PICTURES』(日本未出版)を執筆したマイク・シーゲルという映画史家ですが、製作資金を捻出するために、オークションサイトのeBayで自身の貴重なコレクションを売却したという熱の入れよう!

インタビューに登場するのも、俳優のアーネスト・ボーグナイン、ジェームズ・コバーンなど、ペキンパー映画を支えたアツくてコワモテな面々ばかり。映画という狂気に取り憑かれた男の生き様を、ぜひスクリーンでチェックしてみてください!

記事をシェア

公式アカウントをフォロー

  • RSS
  • 三上新吾
    2.5
    記録
  • RYUYA
    3.5
    女中毒、アルコール中毒、コカイン中毒。 いや、ただのクソ野郎じゃねーか。 でもこの映画見たらみんなペキンパー中毒。
  • 三次元からきたブロンディ
    3.4
    バイオレンス描写とスローモーション撮影を多用した鬼才サム・ペキンパーの素顔に迫ったドキュメンタリー作品。 自分の思った通りにいかない撮影になるとスタッフと衝突し、その一方では酒と女の性癖など最悪な男性ではあるが、俳優仲間には非常に慕われていた。 ジェームズ・コバーン、アーネスト・ボーグナインなど嬉しそうにペキンパーを語ってくれる。彼の経歴は素晴らしい作品もあれば、つまらない作品もあった。 晩年は映画やドラマに出演し、監督もやり続けたが、その殆どがB級映画しか撮らなかった。彼の情熱と美学を触れるいい機会のさくであります。是非、御覧あれ。
  • padd
    3.2
    “アイツにはスープをぶっかけたからな。オレを殺したいはずさ”
  • 清原和博
    4.0
    酒(アル中)と薬(コカイン中毒)で早死にするペキンパー。50歳前後、『戦争のはらわた』撮影中の姿はすでにフラフラの老人。強面にはなにも言わず、弱そうなやつを徹底的にいじめ抜く、監督はナメられたらお終いってことを教えてくれる。「好きに演りゃいいさ」「でなきゃ何の意味がある?」。ペキンパー組の顔が岩のような役者が次々と出てきて嬉しかった。
「サム・ペキンパー 情熱と美学」
のレビュー(108件)