女子が主役の話題映画5本、原作から読み解くみどころと共通点<『寝ても覚めても』『食べる女』など>

2018.09.01
映画

映画は気持ちよく生きるためのヒント

hikari

近年、マンガや小説を原作とした邦画がぞくぞくと製作されている。2018年9月公開の映画にも何作か、そんな実写作品が控えている。

そんな中、2018年9月に公開される実写作品の多くには、ある共通点が隠れていた。

それは、女性を主人公にしているということ。

その作品とは、『寝ても覚めても』、『累 かさね』、『響 -HIBIKI-』、『食べる女』、『コーヒーが冷めないうちに』の5本。

どれも原作自体が話題になったタイトルばかり。では、なぜ同じタイミングで、これらの作品が実写映画として作られ、公開に至ったのか。もしかしたらそのヒントが原作の中に隠されているのかもしれない……。

そう思って今回は、これらの映画が原作ではどう描かれているのかを紹介しつつ、5作品の共通点を探り、公開の時期が集中した理由を考えてみたいと思う。

寝ても覚めても(9月1日公開)

原作は、芥川賞作家・柴崎友香による同名小説。2010年に発表され、第32回野間文芸新人賞を受賞した作品でもある。

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原作でのストーリー

社会人になりたての主人公・朝子は、大阪の街でミステリアスな青年・麦(ばく)と出会い、一瞬で恋愛関係に発展する。しかし、ある日突然、麦は姿を消してしまう。

その後、朝子は友人の仕事を手伝うためという軽いノリで上京。東京で働きはじめ、職場の1階上に引っ越してきた会社へおつかいに行ったときに出会ったのが、麦と同じ顔をした亮平だった。

あることがきっかけで亮平と付き合うことになり順調に関係を築いていた2人。そこに、数年前失踪した麦が再び姿を現し……。

映画への期待

東京の友人は誰も朝子が麦と付き合っていた過去を知らないのに、なぜか朝子はテレビなどに出てくる麦を亮平含めまわりに隠そうとする。それはきっと、亮平との今があるから過去を封印したいという意味もあるのだろう。

しかし、麦との関係を知る春代が東京へ引っ越してきたことで、さらに麦のことを意識せざるをえない状況に陥り……。

「『顔』で選んでいるはずはないのに、結局、自分は『顔』で男を選んでいたのか……!?」という朝子の葛藤。そして麦と亮平とで揺れた末に選んだ結末。

それが映像になるとどのように表現されているのかが注目したいポイントだ。

累 かさね(9月7日公開)

松浦だるまが手がけた同名マンガが原作。「イブニング」にて2013年より連載を開始し、今年最終回を迎えた人気作。

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原作でのストーリー

顔が醜いことでいじめられてきたが、母であり女優の淵透世(ふちすけよ)に勝るとも劣らない天才的な演技力を持っている淵累(ふちかさね)。

大人になった累の前にある日、羽生田という演出家の男が現れ、美人なのに鳴かず飛ばずの女優・丹沢ニナを紹介する。

というのも彼は、累が持つ透世の遺品の口紅が、キスをすることで顔交換ができることを知っている上、累を表舞台に上げてほしいという透世の遺言を実行したかったからだ。

そして、ニナの顔を使って累が舞台に立つと、その演技力が評価され瞬く間にスターに。そしてニナが思いを寄せていた演出家・烏合さえも魅了する。

本物の“丹沢ニナ”を越えてしまった累を見て、女優としても人としても自信を失ったニナは……。

映画への期待

ほしくてほしくてどうしようもなかった美を手に入れることで、自分の力を十二分に発揮できる快感を知る一方、顔を入れ替えない限り、陽のあたる場所では生きられない現実に悩み苦しむ累。

そして、男を巡ってニナの嫉妬にも巻き込まれ、次第に累は美と舞台に対して強烈に執着をしていくようになる。そんな“バケモノ”のようになってしまった彼女が、このまま口紅を使い続けて生きていくのか、それとも執着を捨てるのか……。

映画では、そのあたりをどう描いていくのか観てみたい。

響 -HIBIKI-(9月14日公開)

柳本光晴によるマンガ「響 〜小説家になる方法〜」が原作。「ビッグコミックスペリオール」にて2014年より連載中。「マンガ大賞2017」で大賞を受賞した作品である。

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原作でのストーリー

高校1年生の響は、一見大人しそうに見えるが、筋が通らないことがあれば、力ずくで相手にわからせようとするケンカっ早い性格。人に媚びを売ることは絶対しないし、年上でもタメ口。

でも、小説を見る目と書く能力は抜群に優れていて、本人いわく、人がどういう感想を持つのかただ知りたかっただけで文芸誌「木蓮」の新人賞に応募。

それがやり手編集者・花井ふみの目にとまり、新人賞どころか文芸界を揺るがす超話題作となり……。

映画への期待

的外れなことを言う人や横柄な人に対して歯に衣着せぬ物言いをしたり、蹴りをくらわせたりするも正論を言う響。

また小説が注目されるも、未成年ゆえ作者の顔出しをNGにしているため、作品が話題になればなるほど、その正体を探ろうとする記者などに狙われてしまう。しかし彼女独特なやり方でそのピンチを切り抜けていく。

そういった“響らしさ”をどうやって映像で描いていくのか気になるところ。

そして、正反対な性格なのに、響が自ら“友達”と呼ぶ数少ない相手である文芸部の先輩・凛夏。父が人気作家であることもあってか、文才のある凛夏は響のライバルになっていく。

でもなんだかんだ、お互いわかり合っている2人の友情も、どう映画で表現するのか注目したい。

食べる女(9月21日公開)

筒井ともみによる小説「食べる女」、「続・食べる女」をまとめた「食べる女 決定版」をもとに、自身が企画、プロデュース、脚本を手がけた作品。

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原作でのストーリー

小説は「女と食と恋愛」をテーマにした短編集。恋愛にご無沙汰の人もいれば、行きずりの恋ばかりの人、別れを決断する人もいる。そんな女性のさまざまな恋愛ケースを楽しめる作品だ。

そして、女性の生き方を後押ししてくれるご飯。各話で取り上げる料理が主人公になじめばなじむほど、その恋の結末が主人公にとって納得いくものになっているのが痛快!

映画への期待

映画のオフィシャルサイトにある登場人物と短編集の作品を照らし合わせると、主人公のトン子は「世界の中心で、愛を拒む」と「我輩は牝猫である」を混ぜた設定。ドドは「闖入者」、多実子は「台所の暗がりで」、あかりは「ミンチ・ガール」、珠美は「メーキング・ファミリー」、ツヤコは「マイ・ファーストワイン」、マチと美冬は「リベンジ」を題材にしているよう。

短編集はオムニバスだったが、映画では登場人物がすべてつながっている。なので、原作を読んでから映画を観ると、「そことそこが、そうつながるか!」といった楽しみ方ができそう。

そして「食べる女」に欠かせないご飯。予告だけでも、よだれものだから、きっと本編ではもっと食べまくりなのかも!?

おいしい料理を食べておいしい女になって恋をしていく……。女性が元気になる要素が盛り沢山な映画の予感がする。

コーヒーが冷めないうちに(9月21日公開)

川口俊和による同名小説とその続編「この嘘がばれないうちに」が原作。「コーヒーが冷めないうちに」は、2017年の本屋大賞にノミネートされた話題作。続編とともにベストセラーとなった。

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原作でのストーリー

喫茶店「フニクリフニクラ」には、「過去に戻れる席」があるが、そこにはめんどくさいルールがある。

過去に戻ってもこの喫茶店に訪れたことがない人には会えないし、現在の状況は変わらない。過去に戻れる席には先客がいて、その席に座れるのは先客が席を立ったときだけ。過去に戻っても席を離れてはいけない。過去に戻れるのはコーヒーをカップに注いでから冷めてしまうまで。

小説はそれでも過去に戻った人々のエピソードが書かれ、現実は変わらなくてもそれぞれ思いがけない結末が待っている……というのが特徴だ。

映画への期待

客を過去へ導くためのコーヒーをいれるのが、店長の従兄妹である時田数。主人公と言ってもいいかもしれない彼女は、原作では店長や常連客など顔見知り以外の人には基本ぶっきらぼう。それもあまり人間に深入りすると面倒だからという理由で、愛想がない人物。

また過去へ戻るキーとなる先客の女。無理やり席を譲ってもらおうとすると、大変なことが起こるのだが……。

これらのキャラクターがどう描かれるのかが気になるところ。

また映画は、原作の設定に若干の変更やオリジナル要素も加えているようだ。それが原作の世界観を崩さず、どう展開していくのか楽しみでもある。

共通点、女性が主人公の邦画が集中した理由とは?

原作からの判断になってしまうが、上記5作品の共通点は、そこで描かれている主人公たちがみな「自分に正直に生きている」こと。

もちろん、無理難題にぶつかって悩んでいる人物もいるが、最終的には「自分がどうしたいのか」を判断基準として、すっきりさっぱり生きる姿が印象的だった。

昔から女性は案外強くたくましく生きてきたとは思うのだが、ようやく最近になって女性自身も「強くたくましく、そして自分に正直に生きる」ことが幸せの近道だと意識的になってきた人が増えてきたように感じる。

その女性の傾向を映画に反映することと、話題の原作の映画化といったタイミングが重なって、女性主人公の原作をもとにした邦画が同じ時期に集中したのではないかと考えている。

映画自体も、生き方にちょっと迷ったときに観たら、「案外、私大丈夫かも!?」と思えるような、爽快な作品になっていることを期待したい。

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