原点回帰の北村龍平が創り出した90分ノンストップスリラー「誰が生き残るかわからない」【インタビュー】

2018.09.23
映画

世界のディズニーを翔る元映画サイト編集長

鴇田崇

上戸彩主演の『あずみ』や小栗旬主演の『ルパン三世』など話題作を次々と放ち、ハリウッドに拠点を移した後も『ミッドナイト・ミート・トレイン』『ノー・ワン・リヴズ』など、個性的な作品をリリースし続ける北村龍平監督。その監督最新作である映画『ダウンレンジ』が好評だ。20年来の知己という『この世界の片隅に』の真木太郎プロデューサーと手を組み、90分ノンストップのソリッド・シチュエーション・スリラーを作り上げた。

北村龍平

山道を走る車のタイヤがパンクしてしまい、乗っていた6人の大学生たちが見えない何者かの“射程距離”に入ってしまうという『ダウンレンジ』では、「誰が生き残るかわからないような展開を目指した」と語る北村監督。よくあるタイプのスリラーではなく、常識と定石を完全にくつがえした野心作を、どうして撮ろうと思ったのか。日本に戻った監督に聞く。

ーー本作は開巻直後はもちろん、全編を貫くアイディアがとにかくスゴいと思いましたが、どういう風に生まれたのでしょう?

アイディアの骨格自体は、3時間くらいで完成しました。全編を通して異様な雰囲気や緊張感を出すことを意識しました。ミニマルでありながらテンションが高い映画にしたかったんです。普通こういう映画は最初の十数分はどうでもいいキャラクター紹介の描写が続いたりするのですが、そういう無駄な説明やセリフは徹底的に排して、始まると同時に本題に入り、90分ノンストップで展開するようにしたいなと。

ダウンレンジ

ーー無名の若手俳優たちの存在感も素晴らしかったですね。オーディションは、どういう基準を設けて選抜したのでしょうか?

すごい数でした。12,000人くらいの応募がありました。オーディションというのは、基本みんなに同じことをしてもらうわけですが、誰もが同じような芝居になりがちな中で、あたかも周りの情景が見えてくるような芝居をしてくれる人が好きですね。オーディションは普通の部屋でやっているのに、だんだんと周りの風景や他の登場人物が見えてくるような。そういう人を選びましたね。一人や二人はそこそこ名の知れたキャストを呼ぶこともできたのですが、それよりも全員がフレッシュな状態にしたかった。

ダウンレンジ

ーー資料によれば、監督の原点回帰の意味合いもあるそうですね。マインドとしても、そういうタイミングだったのですか?

そうですね。ハリウッドに渡って10年間やってきて、『ルパン三世』(14)も日本映画だけれど、海外のスタッフも入り混ぜて、ほぼタイで撮っていたように、形式や規模にとらわれず、面白い映画を純粋に撮りたかった。ハリウッドで映画を作るとなると、すごく時間がかかるもの。それこそ10年前に仕込みをしたものが、来年くらいからカタチになるような街。だから、ジョン・ウーも香港に帰っちゃったほどです。でも僕は元々がインディーズでやっていたので、今回もインディーズ体制でガッと作ってしまおうと。

北村龍平

ーー実際に思う存分撮られて、やり切った感も大きそうです。

やり切った感はあります。アイデアを最初に思い付いたのが6年前で、『ルパン三世』に参加する前でした。ハリウッド映画はとてつもなく巨大な産業なので、企画が実現して思い通りに完成して公開されていくことは少なく、監督のコントロールを離れてしまうもの。それはそういうものなので構わないのですが、一方で僕の代表作として世界的に認知されているのは、いまだにインディーズで作った『VERSUS ヴァーサス』(01)だという事実もあって。セルフプロデュース的な作品が愛されるならば、もう一度インディーズでやってもいけるんじゃないか、という自信があった。それが2012年ですね。実際そうなりました。

ーーまた、影響を受けたというスリラーやホラーへのリスペクトにも満ちていて、映画ファンとしては映画愛をシェアできる作品にもなりました。

『激突!』(71)や『ヒッチャー』(86)も『悪魔のいけにえ』(74)もそうですね。何故襲われているのか? そこに理由なんかなくて、それこそが死そのものな気がします。最近は何でも理屈で説明したがる映画が増えてしまって。「要る? そこまで?」と思うんですよね。ホラー映画など理由がわからないほうが恐ろしいし、現実世界でもそうじゃないですか。理由がわからないのに襲ってくるほうが怖い。説明はしない、要らない情報は要らないと、それは最初に決めていましたね。

ダウンレンジ

ーーそのこだわりがうれしいですよね。いまの我々が知らないような、本来の映画のお楽しみをありがとうございます!

徹底的にやりきって突き抜けないと勝てない映画だと思っていたので、映像的にはもちろん、音楽もこだわっていて、全部銃の音と声だけで作っています。スナイパーが出てくる場面のオーケストラみたいな不気味な重低音は、全部僕の声。そういう細かなディティールの積み重ねが全編を貫く緊張感を醸し出しているのだと思います。ストーリー的にも予想を次々と覆して、誰が生き残るかわからないような展開を目指しました。(取材・文・写真=鴇田崇)

北村龍平

映画『ダウンレンジ』は新宿武蔵野館にてレイトショー公開中。

ダウンレンジ
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