あの映画監督は30歳の頃に何を撮っていたのか?人気海外監督5名をフォーカス

物語の嘘が、世界を変える

井中カエル

2019年は1989年から始まった平成の最後の年。平成元年に生まれた人は30歳を迎える年であり、ひとつの節目を迎える人も多いのではないだろうか。

そこで今回は、世界的に活躍する映画監督たちが30歳の頃にどんな映画を製作・発表していたのかを調べてご紹介。人気監督5名を取り上げる。

デヴィッド・フィンチャー

エイリアン3

エイリアン3

デヴィッド・フィンチャーは1962年8月28日生まれ。30歳を迎える1992年に『エイリアン3』で監督デビューを果たした。

リドリー・スコット監督が手がけた『エイリアン』、ジェームズ・キャメロン監督の『エイリアン2』に続く第3作。第1作から登場するリプリー(シガニー・ウィーバー)の乗る救命艇が、囚人惑星フィオリーナに不時着。しかし、その惑星にはすでにエイリアンが紛れ込んでおり、囚人たちを次々と襲撃する事態に。そしてリプリーも自らの身に大きな異変が起きていることを知る……。

本作は人気SFシリーズの続編として大きな期待を寄せられており、当時史上最高額とも言われる製作費が用意されていた。しかし当初の予定と異なり、監督の交代劇の末にデヴィッド・フィンチャーが監督に就任。幾度にもわたる脚本の修正などのトラブルも重なった結果、作品は批評家たちから酷評を受ける結果となってしまった。

フィンチャーはこのショックで1年半もの間、脚本すら読まない時期が続くも、次作『セブン』の脚本に感銘を受けて製作を決意。その後、『ファイト・クラブ』や『ベンジャミン・バトン 数奇な運命』などを手がけることになる。 

クリストファー・ノーラン

メメント

メメント

クリストファー・ノーランは1970年7月30日生まれ。2000年、30歳の時に『メメント』が公開された。

強盗犯に襲われた結果、脳に問題を抱えてしまい10分間しか記憶を保つことができなくなってしまったレナード(ガイ・ピアース)が様々な工夫を凝らしながら犯人を追うサスペンス。時間を遡りながら出来事を映す演出が、大きな話題を呼んだ。

デビュー作『フォロウィング』に続く2作目。本作の最大のポイントは時系列を逆にした構成にあるだろう。そのため、難解という評価も聞こえてくるが、謎が謎を呼び、さまざまな解釈ができることも魅力。こうした、観る人がそれぞれに解釈できるという作風は、その後の『インセプション』をはじめとする作品にも引き継がれている。

本作はインディペンデント・スピリット賞で作品賞・監督賞を受賞したほか、ゴールデングローブ賞、アカデミー賞などにもノミネートされており、キャリア2作目にして一気に注目の若手監督のひとりとなった。

クエンティン・タランティーノ

トゥルー・ロマンス

トゥルー・ロマンス

クエンティン・タランティーノは1963年3月27日生まれ。1993年、30歳の時に、脚本を手がけた『トゥルー・ロマンス』が公開された。

本作は、マフィアと警察から追われるカップルの逃避行を描いたバイオレンスな作品。カンフー映画を愛するクラレンス(クリスチャン・スレーター)は、コールガールのアラバマ(パトリシア・アークエット)と恋に落ちて結婚する。しかし、アラバマの元恋人を殺してしまったクラレンスが誤って麻薬の入ったスーツケースを持ち帰ったことで、警察とマフィアから追われることになってしまう。

タランティーノらしさが溢れるバイオレンス要素の強い作品。実際、本作にかける意気込みは相当強かったようだ。しかし、監督のトニー・スコットとラストの展開について意見が合わず、脚本の権利の返却まで求めるという事態に。なんとか説得に応じて作品は完成したが、当時からこだわりの強さの片鱗が垣間見える。

この1年後、『パルプ・フィクション』が第67回アカデミー賞 脚本賞(7部門にノミネート)、第47回カンヌ映画祭で最高賞のパルム・ドールを受賞。一躍、アメリカを代表する監督の仲間入りを果たす。

スティーヴン・スピルバーグ

未知との遭遇

未知との遭遇

スティーヴン・スピルバーグは1946年12月18日生まれ。1977年11月16日、30歳の時に本国アメリカで監督作『未知との遭遇』が公開された。

行方不明になった戦闘機や貨物船などが失踪当時のまま姿を現し、アメリカでは謎の発光体の発見や大規模な停電が相次いでいた。この異常な現象を突き止めるために、人類が初めて異星生命体とのコンタクトを試みるSF作。

言わずと知れたSFの名作。本作はスピルバーグの幼少期の体験をもとにしており、すでに『JAWS/ジョーズ』で世界中にその名をとどろかせていたが、次に手がけた本作でその評価を不動のものとした。

SF要素の多い作品ではあるが、UFOに翻弄されて人生が変わっていく人間ドラマとしても見どころが多く、のちにSFやアクションといった娯楽作のみならず、重厚な人間ドラマや歴史的伝記ドラマなども手がけるその手腕の一端も感じられる。

デイミアン・チャゼル

セッション

セッション

デイミアン・チャゼルは1985年1月15日生まれ。2014年10月10日に本国で監督作『セッション』が公開され、30代を目前に控えた29歳で一躍注目の若手監督として頭角を表す。

主人公のアンドリュー・ニーマン(マイルズ・テラー)は、19歳のジャズ・ドラマー。ある日最高の指揮者として名高いフレッチャー(J・K・シモンズ)が彼の学ぶ教室へとやってくる。アンドリューの演奏に目をかけたフレッチャーは自らのバンドに誘うのだが、その指導は「虐待」ともとれるほど過酷なものになっていく。

現在、ハリウッドの若手監督の中でも、ひときわ注目を集めるデイミアン・チャゼル。本作は自身のジャズバンド部でのスパルタ指導を受けた体験が反映された作品と言われる。3億円という現代のハリウッド映画では少額の製作費で、19日間の短い撮影期間でつくられたにもかかわらず、第87回アカデミー賞で3部門受賞に輝いた。

さらに2016年には『ラ・ラ・ランド』が高い評価を得て、第89回アカデミー賞で史上最多14ノミネート、6部門受賞を果たした。

セッション

30歳はひとつのターニングポイント

以上、5人の監督の30歳(一部、29歳)の頃の作品についてご紹介した。

ちなみに、さらに若い監督となると、『市民ケーン』のオーソン・ウェルズ監督は公開当時25歳、『死霊のはらわた』のサム・ライミ監督に至っては公開当時21歳だった。

もちろん監督として芽が出るのはもっと遅い方もいるものの、30歳はキャリアの中でひとつの区切り、ターニングポイントを迎える時期のようだ。

日本国内でも、2019年に30歳を迎える平成生まれの監督たちがこれから多くの傑作、名作を生み出すことに期待したい。

※本記事の「公開当時」は本国アメリカでの公開日に拠ります。

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