ブルース・リーからドニー・イェンまで網羅する『カンフー・ジャングル』のすべて!

2015.10.10
洋画

Why So Serious ?

侍功夫

あの『スター・ウォーズ』のスピンオフ映画『ローグ・ワン:スター・ウォーズ・ストーリー』に出演が確定しているドニー・イェン、通称「ド兄ィさん」の本格カンフー映画新作『カンフー・ジャングル』が2015年10月10日より公開となります。

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打撃技、蹴り技、武器、関節技など各カンフー技の名手が次々と、しかも、それぞれが得意とする技で殺される連続殺人事件が起こります。それら全ての技を習得しながら、他流試合で対戦相手を殺してしまい服役している武術指導者ハーハウ・モウ(ドニー・イェン)が、犯人の逮捕協力を条件に仮出所をする、という物語です。

ミックスド・マーシャル・アーツ(MMA)に凝っていたドニー・イェンが原点回帰的に多彩なカンフー・アクションを魅せてくれます。

また、本作は香港カンフー映画の歴史に敬意を表した、ある種記念碑のような作品になっており、過去のカンフー映画を支えたスタッフやプロデューサーなどが数多く、様々な形でカメオ出演しています。そんな名匠たちから、特に重要な5人を紹介していきましょう。

李小龍:ブルース・リー

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たった5本の主演映画で世界の映画地図を書き替えた人物として、カンフー映画のみならず世界の映画史を語る上で欠かせない最も重要な人物です。

詠春拳の大家イップマン直弟子として奥義の習得を果たし、さらに詠春拳をベースにボクシングやフェンシングを取り入れたオリジナルの拳法であり、思想まで含んだ行動哲学「截拳道(ジー・クン・ドー)」を生みだします。

ハリウッドのプロデューサーに見出され、テレビシリーズ『グリーン・ホーネット』のサイド・キック「カトー」として出演をすると、主役を食う大人気を獲得しました。

それでも当時のハリウッドは外国人(特にアジア人)への差別意識が強く、持ち込み企画『燃えよ!カンフー』を横取りされてしまうなど、思った通りに映画製作ができませんでした。そんな失意の中で見たジミー・ウォングのカンフー映画に「カチンときて」香港へ渡ったという逸話は有名です。

いわく「ジミー・ウォングの足は立つためにしか無い!」だそうです……

ドニー・イェンがブルース・リーに傾倒していることは有名で、リーの代表作『ドラゴン 怒りの鉄拳』テレビシリーズを自ら売り込み実現させ、さらに主人公である陳真の「その後」を描いた『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』でブルース・リーコスプレを存分に楽しんでいます。

王羽:ジミー・ウォング

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映画史上、最初のカンフー映画『吼えろ!ドラゴン 起て!ジャガー』を監督/脚本/主演したのがジミー・ウォングです。現役当時から本格的に“ヤンチャ”だったため、香港にいられなくなり、現在は台湾の街を見下ろす豪邸に住んでいます。

ジミーはカンフー映画を生みこそしますが、すぐにブルース・リーが出現してしまいトップの座を追われてしまいます。カンフー経験が実戦経験ほど無いジミーは、本格的なブルースのアクションに対抗し「オモシロければ何でもアリ!」を信条に、荒唐無稽な楽しさに満ちた独自路線を開拓していきます。

日本とは縁が深く、勝新太郎の『座頭市』シリーズ『新座頭市・破れ!唐人剣』に、自身の代表的なキャラクター、折れた剣を振るう隻腕の剣士として、ショウ・ブラザースに黙って出演し、裁判沙汰になりました。

その後、さらに勝手に隻腕の武道家としてキャラクターをアレンジした『片腕ドラゴン』『片腕カンフー対空飛ぶギロチン』を作り、タランティーノの『キルビル』でオマージュを捧げられるに至っています。

ドニー・イェンとは『捜査官X』で共演しており、実生活を思わせる「暗殺団の首領」役として貫禄たっぷりに登場します。

成龍:ジャッキーチェン

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言わずと知れた現役ナンバー1のカンフー・アクション・スターです! 

幼少の頃、両親の“のっぴきならない理由(ドキュメンタリー映画『失われた龍の系譜 トレース・オブ・ア・ドラゴン』参照)”で全寮制の雑技学校に入れられます。サモハン・キン・ポーやユン・ピョウなど、おなじみの仲間と共に修行を積み、先に映画業界へ進んだサモハンの導きにより、エキストラやスタントから仕事をスタート。

ブルース・リーとは『ドラゴン 怒りの鉄拳』や『燃えよドラゴン』のやられ役として共演も果たしています。

ジミー・ウォングとも親交は深く、所属事務所とのトラブルでヤクザに拉致されたところを、ジミーの“黒いツテ”により手打ちにしてもらった事があります。その恩義に答えさせられたのがジミーがプロデュースした『ドラゴン特攻隊』と『炎の大捜査線』への出演です。タダほど高いモノは無い……

ドニー・イェンとはハリウッド作品『シャンハイ・ナイト』で対決を果たしています。

袁祥仁:ユエン・チュンヤン

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チャウ・シンチー『カンフー・ハッスル』で眉唾なカンフー教則本を売りつける老人役が印象的なチュンヤンは、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地黎明』『チャーリーズ・エンジェル』シリーズでアクション監督を務めています。

お兄さんが『ドランクモンキー/酔拳』監督のユエン・ウーピン。お父さんが赤い鼻の師匠ユエン・シャオティエンというカンフー一家です。ユエン・ウーピンが立ち上げたアクション・チーム「和平電影公司」の一員として、多くの傑作カンフー映画に携わっています。

ウーピンに見出されたドニー・イェンも「和平電影公司」に所属しており、チュンヤンはドニーの本格的な俳優デビュー作『ドラゴン酔太極拳』で、ドニーの師匠役として出演しています。

鄒文懐:レイモンド・チョウ

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ドン!ドン!ドン!ドン!」というティンパニーの音と共に4つの四角が現れるカンパニーロゴで有名な「ゴールデン・ハーベスト社」を立ち上げた香港映画界の偉人です。

1970年にジミー・ウォングらと共にショウ・ブラザーズから独立し、ゴールデン・ハーベストを立ち上げ『片腕ドラゴン』を発表します。奇抜な設定と楽しいアクションの連続で多くの観客を魅了し大ヒットを記録しましたが、主演のジミーは様々な種類の裁判沙汰を引き起こし、会社から離脱してしまいます。

スターを失ったチョウは、ブルース・リーとの契約を取りつけることに成功します。『ドラゴン 危機一発』が世界的な大ヒットを記録したことで、一気に香港映画界のトップに昇りつめます。しかし、今度はブルース・リーが急死してしまうのです。

次に探し出したのが「ミスター・ブー」ことマイケル・ホイです。『Mr.Boo!ギャンブル大将』が、さらに興行記録を塗り替えるヒットを飛ばします。また、旧友ジミー・ウォングの手引きで引き抜きに成功したジャッキー・チェンの活躍は知っての通り。香港のみならず世界中に、「ゴールデン・ハーベスト」を新たな香港映画ブランドとして定着させるのです。

後にハリウッド進出まで果たしますが、1997年の香港返還に合わせて会社を事業ごと売り、現在では売却先のコングロマリット企業「オレンジスカイ・ゴールデン・ハーベスト・エンターテインメント・グループ」の会長職を務めています。

他にも沢山! 『カンフー・ジャングル』特別出演者たち

本作には上記した以外にも、警察受付や通りがかりのトラック運転手、無線からの音声などなど、様々な形で多くの重要人物たちのカメオ出演があります。

・姜大衛:デビッド・チャン/俳優/代表作『新・片腕必殺剣

・劉家良:ラウ・カーリョン/監督・俳優/代表作『酔拳2

・孟海:マン・ホイ/俳優/代表作『蜀山奇傅 天空の剣

・劉偉強:アンドリュー・ラウ/監督/代表作『インファナル・アフェア』シリーズ

・羅禮賢:ブルース・ロウ/監督・アクション監督/代表作『香港大夜総会 タッチ&マギー

・黄志強:カーク・ウォン/監督/代表作『ビッグ・ヒット

・呉思遠:ン・シーユン/監督・プロデューサー/代表作『スネーキーモンキー/蛇拳

・郭子健:デレク・クォック/監督/代表作『全力スマッシュ

などなど。書ききれないほど登場します。エンドクレジットで特別出演した人々は登場シーンと共に紹介されるので、チェックしましょう!

カンフー映画の魅力

「カンフー映画」と一口に言っても、そこには多種多様で一口では表せない作品群が存在しています。

歴史もの、ギャングもの、コメディ、ホラー、サスペンス、スポ根もの、メロドラマに恋物語だってあります。それほど多くのジャンルを内包していながら共通する点があります。逆説的な言い方になりますが、全てのカンフー映画は、当然のようにカンフーの戦いが描かれているのです。

単にサスペンス映画であるとか、普通のメロドラマ映画ならば、目覚ましい事が何も起こらないまま映画が終わってしまうこともあります。しかし、カンフー映画であれば、ミステリー的な疑いの視線は強い打撃で表わされ、メロドラマの情熱的な恋心は鋭い蹴りで表わされます。思想や概念が、打撃の応酬という血沸き肉踊る映画的表現で表わされるのです。

『カンフー・ジャングル』も、単に「カンフー映画」で終わっていません。犯人の様々な思いや、ドニー演じるハーハウの慙愧の念が、超人的な打撃の交差や技の応酬で表わされています。『カンフー・ジャングル』は「カンフー映画」が限界の無い豊かなジャンルであることを、改めて思い出させられるのです。

参考:格闘映画マニアが選ぶ、ベスト・ファイティング・シーン。このチョイス、異論ナシ!

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  • Walter
    3.5
    矛盾点も結構多く既視感もあるストーリーの流れだったがバトルはスピード感も迫力も圧巻の申し分ない完成度。エンドロールも過去作へのリスペクトが伝わってくる素晴らしい内容
  • monobeeeeeeer
    4.0
    まさにカンフー祭り。ドニー・イェンのカッコよさももちろんだが、香港アクション映画の本気を見た。
  • sam
    2.9
    ストーリー単純
  • けーはち
    3.9
    主人公は警察武術教官のドニー・イェン。他流試合で相手を死に至らしめた彼は自首。三年後、謎の刺客が彼の知り合いの武術の達人を次々決闘で殺していくので香港警察へ捜査協力を申し出る。古いカンフー映画へのリスペクトと現代劇のサスペンス風味の融合にひきつけられる(往年のカンフー映画の俳優やスタッフがカメオ出演し、彼らをエンドクレジットでいちいち紹介してくれるのも、なかなか気が利いている)。 武術の達人を相手の最も得意な技で葬り去り最強を証明するという、困ったチャンな欲求の持ち主である容疑者。彼を発見してから建物伝いにパルクールで追い詰める追走劇はモダンだが、ドニー大兄が武術家同士ゆえ鍛錬の痕跡から相手の腕前を悟るといったシーンが続くのは本当にシブいのだ。 ワン・バオチャン演じる狂気の刺客は「最愛の妻を亡くし、武術以外の生きる意義を失った」だけでも充分なのに、その上「生まれつき足の長さが違う身体障害を抱えながら、血の滲むような鍛錬の末に最強になった」というアホみたいな設定の盛り方。妻の誕生日にノコノコ自宅に帰ってきたところを警察に待ち伏せされるのだが、わざわざ目潰しとして妻の遺灰を投げつける展開は、狂気演出かも知れないが、ちょっと度肝を抜かれて笑ってしまった。 ドニー大兄との車がビュンビュン行き交う高速道路での一騎打ちは言うまでもなく、どのシーンも役者の身体能力に現代劇ならではのシチュエーションを生かしたアイデアに富む素晴らしい格闘の魅せ方になっている。アホアホな脚本が悪目立ちするが、そこも含めて楽しいカンフーアクションの良作。
  • Tera
    3.0
    格闘シーンは 見応えあるし 面白いんだけど ストーリーはあんまり。
「カンフー・ジャングル」
のレビュー(848件)