イケナイものをこっそりと。アブないブツを運ぶ“運び屋”の映画11本

映画マニアと呼ばないで

夏りょうこ

「運び屋」とは、麻薬や盗品・密輸品などを秘密裏に運搬する者のこと。ただ運ぶだけだが見つかると逮捕されるし、失敗すれば命取りにもなりかねない危険な役目である。

そんなスリリングな運び屋を題材にした映画は数多くあり、現在公開中のクリント・イーストウッド監督&主演の『運び屋』も、ずばり。

しかし、ひと口に運び屋といっても、そこにはいろいろな事情があるようで……。

そこで今回は、危険なブツを運ぶ運び屋が登場する映画11本をご紹介しよう。

バリー・シール/アメリカをはめた男』(2016)

ブツを乗せて飛びまくり

バリー・シール

天才的な操縦技術を持つパイロットが、その腕を買われてCIAの偵察任務に携わるようになり、その中で次第に麻薬や武器を密輸するようになっていく。

CIAにスカウトされて航空会社を飛び出し、今度はそのCIAの極秘任務を利用して、独裁者や親米反政府組織の運び屋をやるようになるとは、ものすごい野心家。いや、彼は自分の才能を最大限にいかして大金を得る方法を見つけただけだ。トム・クルーズが全てのフライトシーンをこなし、この規格外の運び屋を演じている。

家に札束がありすぎて笑いが止まらないどころか、邪魔になるので奥さんから文句が出る始末。調子に乗りすぎて大ピンチに陥るわ、麻薬取締局とFBIに追われるわで、スリリングな展開が止まらない。大スターであるトム・クルーズが、オーラを全開させて挑んだ実話。

ファスト・コンボイ』(2016)

集団で走る

ファスト

スペインからパリまで車に大麻を乗せて運ぶ男たちが、アクシデントに遭いながら目的地を目指す。

大量の大麻を乗せた4台の車が、高速道路をひたすら走っている。しかし、途中で荷物の中にコカインが交じっていることがわかった1台が、国境付近の検問で銃撃戦を起こしてしまい、たまたま通りかかった女性を人質にして逃走。ルートをはずれたその車が、運び屋集団の計画を大きく揺るがしていく。

大麻とコカインでは罪の重さがかなり違うらしく、騙されてコカインを運んでいることに気づいた時の激怒ぶりときたら。登場人物たちがほとんど車から降りず、主に運転手と助手席2人の会話でストーリーが展開するのが特徴。人質の女性と犯人との間で、奇妙な心の交流が生まれるのが面白い。

運び屋』(2018)

老人が運ぶということ

運び屋

家族よりも仕事一筋を優先して生きてきた主人公が、商売に失敗して途方に暮れていた時、車の運転さえすればよいという簡単な仕事を紹介される。

自身の監督作品に出演するのは、『グラン・トリノ』以来10年ぶりとなるクリント・イーストウッド。しかもその役がコカインを運ぶ90歳の老人というのだから、期待しない方が無理だろう。自分の年齢にあった役を選ぶセンスの良さ。実話に基づいているということで、興味もソソられる。

お金のために引き受けた仕事が、なんと運び屋だった。知らないうちに犯罪に手を染めてしまった孤独な老人が、たったひとりでブツを運ぶ姿は、激しいアクションやカーチェイスよりもハラハラドキドキ。渋みと悲哀の増したクリント・イーストウッドを堪能できる見逃せない一作。

プンサンケ/豊山犬』(2011)

北へ南へ

プンサンケ

ソウルと平壌の間を密かに往復して、依頼された荷物や人間を運ぶ謎の男を描く。

一言もしゃべらず、ただ黙々と依頼されたものを運ぶ正体不明の主人公。彼は北朝鮮の煙草の銘柄にちなんで「プンサンケ(豊山犬)」と呼ばれ、南北の軍事境界線を命がけで越える。

依頼物の中には怪しげなブツもあるようだが、彼に託されるのは、北と南に別れて住む離散家族の手紙や会いたい子供。南北に分断された人々の想いを運んでいるのだ。そんな彼が脱北させた女性と心を通わせたことにより、悲劇が起きてしまう。南北問題にも深く切り込んだやるせないラブストーリー。

そして、ひと粒のひかり』(2004)

胃で運ぶ

そして

コロンビアの工場で働く17歳の少女が、大金を得るために危険な運び屋の仕事を引き受ける。

主演女優はコロンビア人として初めてアカデミー賞にノミネートされ、ベルリン国際映画祭でも女優賞を受賞。作品も高い評価を受けた話題作。麻薬を飲み込んで飛行機に乗り、ニューヨークまで運ぶ。そういう運び方があるのを知っていても、こんな風にリアルな映像を見るとやはり衝撃を受ける。

低賃金でつらい仕事は楽しくないし、自分が家計を支えるのは理不尽だし、たいして好きでもない彼氏の子供を妊娠するしで、誰にも頼れない状況に追い込まれた彼女。ここではないどこかへ行きたいと思っている彼女の強い瞳に、人生を切り拓こうとする力を感じる。

なんちゃって家族』(2013)

疑似家族と珍道中

なんちゃって

マリファナと金を奪われた売人が、その穴埋めとしてメキシコから麻薬を運ぶ仕事を命じられる。

怪しまれずに麻薬を運ぶ方法は家族旅行だと気づいた彼は、お金に困っている身近な知り合いに声をかけ、疑似家族を作り上げる。お気楽な独身生活を満喫していた彼に、突然できた家族。もともと仲がいいわけでもなかった彼らだが、数々のトラブルを乗り越えていくうちに心を通わせるようになる。

ピンチに次ぐピンチをジョークと機転と運で乗り切る様子が、陽気で過激なコメディ。ストリッパーを演じたジェニファー・アニストンが、絶体絶命に陥った時に「殺すには惜しい女よ!」と自信満々で踊るダンスが最高だ。ハラハラ感ありラブストーリーありのよくできたB級コメディ。

トランスポーター』(2002)

ルールを破ってみたら

トランスポーター

何でも時間通りに運ぶことで信用を得ていた運び屋が、意外な荷物を運ぶことになり、そのせいで犯罪に巻き込まれてしまう。

トランスポーターとは「運び屋」のこと。これは続編『トランスポーター2』(05)『トランスポーター3 アンリミテッド』(08)やTVドラマもある人気シリーズで、2015年にはリブリート作品『トランスポーター イグニション』が公開された。

運び屋としての美学を持つプロの彼がうっかりルールを破ってしまったのは、その荷物に情けをかけてしまったから。そんな人間らしさとストイックな生活とのギャップが彼の持ち味だ。ほかにも高級車によるカーアクションや特殊部隊で取得した格闘スキルなど、見せ場が盛りだくさん。

マルティニークからの祈り』(2014)

家族のために

マルティニーク

経済的に追い詰められてしまった家族を救うため、平凡な主婦が韓国からフランスへ荷物を運ぶ仕事を引き受ける。

この夫婦は、2度も友人に騙されている。最初はそれで莫大な借金の保証人となり、次は知らないうちにコカインを運ぶことに。どちらも夫の人間関係によって引き起こされたことであり、そのとばっちりを受けたと言ってもよい妻が、身に覚えのない罪で長期間投獄されてしまって気の毒である。

祖国から1万2,400キロも離れたマルティニークの刑務所に送られた彼女。その不安。悲しみ。絶望。異国で言葉が通じないというのが、これまたつらい。そんな地獄の日々を乗り越えた後にやってきた穏やかな時間が、ふんわりと心に残る実話。

ノーボーイズ,ノークライ』(2009)

歌で吹き飛ばしたい

ノーボーイズ

ボートで非合法の荷物を運ぶ韓国人とそれを受け取る日本人が、女性を運ぶことになったことで事件に巻き込まれてしまう。

脚本が日本人で監督が韓国人というちょっと変わり種の運び屋映画。それぞれ複雑な事情を抱える2人の青年が、お互いの孤独や絶望を知り、屈折した心に触れるうちに絆が芽生えていく。妻夫木聡が、ややこしい家族のためにお金を稼がなければならないお兄ちゃんを演じ、柄本佑がこれまたどうしようもない男として出演。

日本と韓国を舞台にしているのに違和感がないのは、セリフのほとんどが韓国語だから。組織の末端で運び屋をやるしかない彼らの行き場のなさが、諦め加減に静かに描かれ、二人が一緒になって、鬱積した気持ちを吹き飛ばすように歌うシーンが印象的だ。

ジャッキー・ブラウン』(1997)

出し抜く

ジャッキー

密売の売上金をメキシコからアメリカへ運ぶ手伝いをしていた客室乗務員が、自分を逮捕した麻薬捜査官から協力を要請される。

70年代テイスト満載のサスペンス。クエンティン・タランティーノ監督らしいクセモノ俳優が絶妙にキャスティングされ、特にロバート・デ・ニーロのくたびれた感が素晴らしい。監督が大ファンだったという主演女優のナイスバディに圧倒されつつ、彼女の周到な策略から目が離せない。

我が身を守るために周囲をあざむき、敵同士がつぶしあいをするように仕向ける。はりめぐらされたワナが緊張感を生み、ピンチに陥るシーンが笑いを誘うタランティーノ節は健在。相変わらず挿入曲もカッコいい。こういうのは弱い立場の女性がやるから痛快なわけで。大人の淡い恋にもじんわりする。

白と黒の恋人たち』(2001)

苦悩にまみれて

白

映画製作費の工面に奔走する青年が、資金を支援してもらう代わりに密輸を引き受けるかどうかで悩む。

若き映画監督と女優の卵が出会い、愛し合う。しかし、彼は映画のためにヘロインの運び屋をするかどうかで苦悩し、彼女はヒロインをうまく演じることができずに苦悩する。映画の撮影が始まり、念願叶って事が順調に運んでいるように見えたが、その裏では二人の間に少しずつ距離が生まれつつあった。

皮肉なことに彼の映画はヘロインの危険性をテーマにしていて、その『残忍な無邪気さ』というタイトルを彷彿とさせるような出来事が現実に起きてしまう。誘惑の悪魔は、心の隙間にするりと忍び込んでくる。じわじわ堕ちていく彼女と、それに気づかない彼。ラストはショッキングな展開だが、人生とはこういうものかと考えさせられる。

いかがでしたか?

もし自分だったら……そう考えながら観てしまうハラハラ感が、運び屋映画の醍醐味だろうか。

運び屋という仕事の性格上、運び屋といえば裏社会に通じた屈強な男たちを連想してしまうが、映画に登場する運び屋たちは、若い女性がやむを得ない事情で運び屋をしたり、普通の主婦が知らないうちに運び屋になってしまったというケースもあり、その背景に貧困問題が見え隠れするのも興味深い。

記事をシェア

公式アカウントをフォロー

  • RSS