SUPERCAR、NUMBER GIRL、くるり、ミッシェル…!映画×ロックのいい関係を考える

ヒットガールに蹴られたい

竹島ルイ

映画『君の名は。』のポスターを見るたびに、「キミのぜん・ぜん・ぜんせからボクは〜♪」と、RADWIMPSの「前前前世」を口ずさんでしまうのは筆者だけではありますまい。そんな輩は世界に2,000万人くらいはいると思われる(俺統計)。

映画を見るたびにその主題歌を口ずさみ、主題歌を聴くたびにその映画のワンシーンを思い浮かべるというのが、映画と主題歌の理想的な補完関係。

「オトナの理屈」と「オトナのルール」に従って、無理やりタイアップする例も少なくありませんが、今回は映画の世界観とナイスマッチングを果たした、1990年代後半〜2010年代初期のバンドサウンド、ロックミュージックにフォーカスし、神ソングの数々を紹介していきましょう。

YEN TOWN BAND「Swallowtail butterfly〜あいのうた〜」×『スワロウテイル』(1996)

スワロウテイル

映画と曲が不可分に結びついているという意味では、岩井俊二監督作『スワロウテイル』の主題歌「Swallowtail butterfly〜あいのうた〜」は、その究極のカタチと言っていいだろう。なにせ、劇中に登場する架空の無国籍バンド・YEN TOWN BANDが、その名義で実際にシングルをリリースしてしまったのだ!

映画の音楽も担当した小林武史が精緻につくりあげた、力強くも哀愁に満ちたメロディーにのせて、CHARAのちょっとかすれた歌声が世界を優しく包み込む。「あいのうた」という直球すぎるタイトルに恥じることのない、てらいのない至高のラブソングがここにある。

「Swallowtail butterfly〜あいのうた〜」はおよそ85万枚を売り上げる大ヒットとなり、オリコン・チャートでも1位を記録。倖田來未やJUJUといったアーティストがカバーするなど、エヴァーグリーンな名曲として今も歌い継がれている。

SUPERCAR「YUMEGIWA LAST BOY」×『ピンポン』(2002)

ピンポン

J-Rockシーンを変えたと称される「'97の世代」のひとつ、青森県出身の4ピースバンド・SUPERCAR

アルバム「スリーアウトチェンジ」でデビューした頃はUK系ギターロックだったが、プロデューサーに元・電気グルーヴの砂原良徳を迎えて制作した4枚目のアルバム「HIGHVISION」は、それまでと打って変わってエレクトロニカ系サウンドにシフトチェンジ。

映画『ピンポン』の主題歌に起用されたのが、このアルバムの8枚目に収録されている「YUMEGIWA LAST BOY」である。

CGを多用した試合シーンの演出といい、宮藤官九郎によるウィットに富んだシナリオといい、窪塚洋介&ARATAというキャスティングといい、全てがクールでスタイリッシュ。『ピンポン』には、スポ根的なウェット感は感じられない。

だが、その奥底には“青春の蹉跌”がしっかりと刻印されている。「YUMEGIWA LAST BOY」の透明感と清涼感に溢れたサウンドのその向こうに、“血は鉄の味がする”アオハル・ユースが広がっているのだ。

THEE MICHELLE GUN ELEPHANT「ドロップ」×『青い春』(2002)

青い春

何もかもが信じられず、何もかもが曖昧な世界で、THEE MICHELLE GUN ELEPHANTのチバユウスケが紡ぎ出す言霊こそが、唯一にして絶対の真実である!(誇張アリ)

夜の荒野を一人彷徨うかのような「ドロップ」のリリックは、感情ではなく情景を浮かび上がらせる。だからこそ、聴き手はそのサウンドスケープを自分の感情とダイレクトに結びつけることができるのだ。

「ドロップ」が主題歌として起用されている映画『青い春』は、松本大洋の同名漫画短編集を豊田利晃監督が実写化した作品。そこに描かれるのは、高校生不良グループの無為な時間。ほとばしるエモーションなんぞカケラもなし。「ドロップ」のリリックのごとく、感情ではなくただ情景が広がっているのだ。

ミッシェルががなりたてる、暴力的なガレージロック。そのサウンドは、映画と完全に響き合っている。

NUMBER GIRL「I don't know」×『害虫』(2002)

害虫

祝・NUMBER GIRL復活!!!

「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2019 in EZO」で、あの伝説のバンドNUMBER GIRLがオリジナルメンバーで17年ぶりに再結成するらしいっスよ! いやー楽しみですね。

「透明少女」や「NUM-AMI-DABUTZ」など、バリヤバ・ロックナンバーを次々とリリースしてきたNUMBER GIRLだが、筆者的にはやはり映画『害虫』主題歌の「I don't know」にトドメを刺す。

中学校をドロップアウトした少女を宮﨑あおい主演で描いた『害虫』には、なんぴとたりとも知ることのできない、深い河のように複雑でドロドロとした“ティーンエイジャーの内面”が生々しく刻まれている。だがヴォーカル・ギターの向井秀徳は、結局“彼女の真実”は誰も知ることができないとばかりに、「I don't know」を狂ったように叫び続ける。

I don't know!
I don't know!
I don't know!
I don't know!

なお、「I don't know」のミュージック・ビデオには、向井秀徳が『害虫』の撮影現場を見てインスピレーションを受けて制作したという楽曲「サーティーン」と「中学一年生」も収録されているので、これもまた要チェックなり。

くるり「ハイウェイ」×『ジョゼと虎と魚たち』(2003)

ジョゼ

青春という残酷な季節は、決してファンタジーには成り得ない。少年と少女の恋の物語は、醜くも哀しい結末を迎えるものだ。

僕らはそうして痛みを知る。裏切ったり裏切られたりして、痛みを知る。それが現実の、等身大の恋物語である。『ジョゼと虎と魚たち』は、そんな生々しい記憶が刻印された恋愛映画であり、「ハイウェイ」はサウンドトラックを担当したくるりが主題歌として制作した曲だ。

人生をハイウェイになぞらえたこのナンバーはどこか牧歌的で、どこか虚無的で、どこかメランコリック。その捉えどころのなさが、青春そのものの正体なのかもしれない。

チャットモンチー「世界が終わる夜に」×『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(2007)

腑抜けども

橋本絵莉子、福岡晃子、高橋久美子による女性スリーピースバンドとしてデビューした、チャットモンチー(後に高橋が脱退して2人体制となる)。

ストレートな8ビート曲「シャングリラ」はじめ、清く正しく美しい大和撫子ロックを奏でてきた彼女たちが、一転して禍々しいほどの“超陰鬱系ナンバー”として世に放ったのが「世界が終わる夜に」だ。

本作は、女性の過剰な自意識やエゴイズムを妥協なく描き続けてきた劇作家・本谷有希子が原作の『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』主題歌。

福岡晃子が原作をイメージして書き下ろしたという歌詞は、“わたし”とそれを取り巻く“絶望”、そしてその先にある“世界”との関係性が、諦観めいた視線で書かれている。それはきっと、この世界に絶望しきっているとしても、いまをサバイヴしなければならい我々自身なのだ。

銀杏BOYZ「ボーイズ・オン・ザ・ラン」×『ボーイズ・オン・ザ・ラン』(2010)

ボーイズ

青春パンクのフロントランナーといえば、銀杏BOYZ! 童貞ロックのカリスマといえば、銀杏BOYZ!

花沢健吾による青春恋愛残酷不条理リビドー爆発マンガ「ボーイズ・オン・ザ・ラン」のファンを公言するヴォーカルの峯田和伸が、実写映画の主人公・タニシを演じることは、太陽が東から昇って西に沈むがごとく、極めて当然の帰結だった。

そしてついでに主題歌「ボーイズ・オン・ザ・ラン」を書き下ろすことも、地球が太陽の周りを公転するがごとく、極めて当然の帰結だった。映画と音楽のこれほどまでに完璧なコラボレーションが、他にあるだろうか?いや、ない!

サスガっす、峯田さん! かつて立ち上げた自主レーベルの名前が、童貞臭丸出しの「初恋妄℃学園」なのも伊達じゃないっスね!

ASIAN KUNG-FU GENERATION「ソラニン」×『ソラニン』(2010)

ソラニン

たぶん、ASIAN KUNG-FU GENERATIONが『ソラニン』の主題歌を歌うことは運命だった。

『ソラニン』の原作は、社会に飛び出したばかりの若いカップル、成男と芽衣子の日常を描いたマンガ。原作者の浅野いにおは、当時付き合っていた彼女から、「今度のアジカンのアルバムタイトルは『ソラニン』っていうらしいよ」と言われたという。しかし、リリースされたアルバムタイトルは『ソルファ』だった。

「ソラニン」という言葉の響きがなぜか気になっていた浅野は、自分のマンガ作品のタイトルにその名をつけることにする。

時はめぐり、「ソラニン」は実写映画化され、アジカンが主題歌を歌うことになり、その作詞は浅野いにお自身が担当することに……。これを運命と呼ばずになんと言おう!!!

ヴォーカルの後藤正文が歌い上げる「ソラニン」は、これぞアジカン!というべき、エモさ爆発のロックナンバー。映画には、宮崎あおいと高良健吾が歌うシーンもあるので、ぜひ聴き比べてくださいまし。

フジファブリック「夜明けのBEAT」×『モテキ』(2011)

モテキ

フジファブリックは、間違いなくJ-Rockの最重要バンドのひとつである。そして大半の楽曲の作曲・作詞を手がけた志村正彦もまた、最重要アーティストの一人だった。

だが志村正彦は2009年12月24日のクリスマス・イヴに、29歳という若さでこの世を去る(死因は今に至るまで明らかにされていない)。それは日本の音楽界にとって、あまりに大きな損失だった。

夜明けのBEAT」は、彼の死から約半年が過ぎて完成したアルバム「MUSIC」に収録された、疾走感溢れる軽快なロックナンバー。フジファブリックが新しく生まれ変わったように、この曲にも「何かが新しく始まるドキドキした気持ち」が真空パックされている。

モテキ』の大根仁監督は、候補リストから一曲目に「夜明けのBEAT」を聴いて、他の楽曲を聴くこともなく主題歌に即決したという。人生初のモテキに戸惑う主人公・藤本幸世の「何かが新しく始まるドキドキした気持ち」と完全シンクロを果たした、奇跡的なマッチングだったのである。

(C)浅野いにお・小学館/「ソラニン」製作委員会/写真:太田好治

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