夏祭りに欠かせない金魚すくい。涼しげでファンタジック金魚が印象的な映画8本

映画マニアと呼ばないで

夏りょうこ

夏の風物詩といえば、なんといっても夏祭り。その夏祭りの醍醐味は、ずらりと並んだ夜店だ。

そんな夜店になくてはならないのが、金魚すくいだろう。

赤や黒の小さな身体をフリフリと踊らせて泳ぐ金魚は、涼しげでまさに夏の代名詞。

そこで今回は、金魚が印象的に登場する映画8本をご紹介しよう。

そうして私たちはプールに金魚を、』(2016)

キレイだと思ったから

そうして

2012年夏、埼玉県狭山市に住む4人の女子中学生が、中学校のプールに約400匹の金魚を放すという事件が起きた。

世間を騒がせた実話をベースに、彼女たちがそのような行動を起こした理由や背景を、大人の視線で追うのではなく、それに至った心の機微を捉えようとしているのが特徴。思春期のモヤモヤやイライラをポップに表現し、短編ながらも強いインパクトを残す秀作である。

地方の田舎町で暮らす退屈な日々。テクノアレンジされた南沙織の「17才」を歌い狂い、すれ違う大人に自分たちの将来を見たり、けだるい閉塞感をもてあましながら町をぶらつく彼女たちは、普通の女の子。広いプールで泳ぎまわる金魚に、自分たちの願望を投影したのだろうか? 言葉にできないことは言葉にしない。

運動靴と赤い金魚』(1997)

寄り添う金魚

運動靴と赤い金魚

妹の靴を失くしてしまった兄が、そのことを親に言えず、一足しかない自分の靴を二人で共有していたところ、マラソン大会の賞品が運動靴だと知って出場する。

修理してもらったばかりの靴を失くしたと言えないお兄ちゃんは、一足しかない自分の靴を妹と代わりばんこに履くというアイデアを思いつく。二人の時間割が被っていないから出来るワザだが、妹がたまに遅れてきたりしてハラハラ。お兄ちゃんの所へタッタッタと走っていく妹の後姿が愛らしい。

だけどお兄ちゃんの靴はボロボロだし、女の子っぽくなくて恥ずかしい。一方、靴問題で責任を感じているお兄ちゃんは、マラソン大会に無理やり出場して、それはもう必死で走り切る。そしてマメだらけになったお兄ちゃんの足は、池の中でたくさんの金魚から癒しと祝福を受けるのだ。お疲れさん。よくがんばったね。

空飛ぶ金魚と世界のひみつ』(2013)

絵本で世界を救う

空飛ぶ

妻の死後作品が描けなくなってしまった絵本作家の父と暮らす主人公は、新しい母親だと紹介された中国人女性に反発してしまう。

彼女がたとえ外国人でなくても、いきなり父親の再婚相手と同居せよと言われたら、そりゃショックだし拒否反応も示すだろう。義母の天真爛漫な性格についていけず、文化の違いで摩擦が起きる。そんな二人を見た父親は、スランプを乗り越えて再び絵本を描こうと決意。そう。彼に出来ることはそれしかないのだ。

言葉や文化の違いを認め合うのに必要なのが、お互いに対する思いやり。空港で働くグランドスタッフや、ホームステイに来た韓国人の男の子のエピソードも登場し、絵本が時代を超えて人と人を結びつける。絵本の絵が動き出して、金魚がフワフワと空を飛ぶシーンが印象的。

ブルー・マインド』(2017)

一人で悩む

ブルーマインド

新しい街に引っ越してきた15歳の主人公は、親への苛立ちと思春期の不安を抱えながら、派手なクラスメートたちと親しくなっていく。

彼女は自ら不良グループに近づき、アルコールや万引きなどを覚えて異性とも交際。何もかもが初体験だったが、かといってそれがものすごく楽しいというわけでもなさそう。思春期の女子特有のモヤモヤとイライラを紛らわしたいだけ。そして初潮が来た彼女の体に、不気味な変化が現れる。

もう我慢できないという感じで、彼女は水槽の金魚をわしづかみにして口に入れる。もぐもぐもぐ。本能のまま口を動かし、唇の端からチラリとのぞく金魚のしっぽ。うっ。好奇心。とまどい。憧れ。絶望。そうそう。この年頃の子って一人で悩んで追い詰められてしまうのよね。主演女優が素晴らしい。疾風怒濤の思春期を描いた秀作。

蜜のあわれ』(2016)

あたいとおじさま

蜜

赤いヒラヒラのドレスを着たぷっくりお尻の少女は、老いた作家と仲良く暮らしていたが、あるとき白い着物姿の女性が現れ、不思議な三角関係に陥ってしまう。

実は少女は、作家が飼っている金魚の化身。なので、たまに金魚に戻ったりするのである。原作者である室生犀星の理想の女性として描かれている彼女は、子供のように純粋でチャーミング。その気まぐれな言動に翻弄されて嬉しそうな作家は、大杉連が演じると現役感があって老人には見えないのが残念だ。

ぴちぴちの若い娘と人生の黄昏時を迎えている男が、ひそやかに官能的な会話をするのだから、相手が金魚とはいえイケナイ妄想をしてしまうのが人情。作家の過去の女性が登場してストーリーが複雑になっていくが、基本的にはレトロなファンタジーだ。芥川龍之介の登場はご愛敬。

バースデー・ワンダーランド』(2019)

勇気ってなに?

バースデー

自分に自信のない主人公が、誕生日の前日に突然現れた錬金術師とその弟子から、世界を救ってほしいと頼まれる。

彼女は友人が仲間外れにされているのを見て見ぬふりしてしまい、その罪悪感から学校をズル休み。そんな彼女が連れていかれたのは、骨董屋の地下室からつながるワンダーランドだった。彼女の使命は、色が失われつつあるこの世界に色を取り戻すこと。彼女はそこで、自分と同じように不安や恐怖から目を背けようとしている王子に出会う。

自分の飼い猫から裁判にかけられたりして、自分がしたことは必ず自分に帰ってくるという教訓めいた設定もありつつ、ほっぺが膨らんだビックリ顔の巨大金魚に乗って空を飛ぶシーンは、ワクワクするファンタジー。彼女がワンダーランドで学んだのは、見て見ぬふりをしない勇気。誕生日を迎えた彼女は、どんな風に変わるのだろうか。

トイレのピエタ』(2015)

死ぬし死ねないし

トイレ

アルバイトをしながら何となく生きてきた主人公は、余命3ヶ月と宣告され、出会ったばかりの女子高校生から一緒に死のうと言われる。

手塚治虫の病床日記に着想を得たストーリー。つらい家庭環境から逃げ出したい彼女は、いつも死にたいと思っている。一方、絵を描くことをあきらめてから漫然と生きてきた彼は、もうすぐ死ぬと言われても実感がない。そんな二人が出会い、生きる意味を見つけようとする。何度も入退院を繰り返すガン患者をリリー・フランキーが好演。

誰もいない夜の学校プールで、二人は一緒に泳ぐ。彼女が連れてきた金魚も広い水の中で自由に泳ぎ回り、そこで初めて彼は自分の思いを吐き出すのである。それまで無表情だった彼が、トイレの壁いっぱいにピエタの絵を描きながら、生きている実感を得て微笑むシーンが胸を打つ。

金魚のしずく』 (2001)

金魚が見える

金魚

警察を辞めて島で独り暮しをしている男が、家出した孫娘を捜しているうちに、Pという少女に出会う。

彼が見つけた手掛かりは、大人を信用できない1人の少女。孫娘の居場所を聞き出そうとしつこくつきまとってウザがられるが、結局彼女とその恋人と一緒に行動を共にするようになる。ちなみに元警察官を演じたのは香港の伝説的カンフースターで、あのブルース・リーも大ファンだったという。

彼からするとPは孫娘の友人なので、ちょっと風変わりな関係。そんな二人が、言葉少なく心を通わせていく。赤い髪留めと赤いガラスの指輪に赤いふわっとした服を着たPは金魚のようで、空中にたくさんの金魚が浮かぶ幻想を見たりする。彼女もまた、家庭に問題を抱える孤独な若者なのだ。香港の世相を瑞々しく描いた作品。

いかがでしたか?

家庭で飼うことの多い金魚は形や色があでやかで、特に日本人にとっては、金魚すくいの影響もあってか親しみのある魚。

映画の中では、プールに放したり空で泳がせたりするなど、金魚のヒラヒラした赤い色をうまく使った演出が多く見られ、ファンタジックで幻想的なシーンとして心に残る。

小さい魚だけど、インパクトあり。

この夏、スクリーンの片隅に出てくる金魚を探してみては?

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