お盆休み、久しぶりに実家帰ろうかな。そんな気持ちにさせてくれる帰郷映画10本

映画マニアと呼ばないで

夏りょうこ

夏休みに入り、お盆が近づいてくると、そろそろ故郷に帰る準備を始める人も多いのではないだろうか。

遠く離れた故郷。故郷は、遠きにありて思うもの。

故郷には何かと複雑な思いがつきまとうものだが、映画の登場人物たちにとっても、帰省や帰郷は楽しいことばかりではない。

実家に帰れない理由があったとか、逃げるようにして帰ったとか、そんな風に何十年ぶりに帰ってきたり必要に迫られて戻ってきたりして、そこで描かれる主人公の事情や家族関係も実にさまざまだ。

そこで今回は、帰省や帰郷から始まる物語を描いた映画10本をご紹介しよう。

歩いても 歩いても』(2008)

家族ってそんなもの

歩いても

兄の命日に妻とその連れ子と一緒に帰省した主人公は、失業中であることもあり、久しぶりの家族との再会に気まずい思いをする。

タイトルは、昭和歌謡曲「ブルーライト・ヨコハマ」の一節から。主人公の母親にとっていわくつきの歌として流れるのだが、それによってさりげなく、そしてチクリと夫婦の出来事が語られる。父親との葛藤を抱えた主人公は実家で居場所がなく、連れてこられた妻は、自分の寝巻が用意されていないことをぼやく。

15年前に死んだ長男。次男が連れてきた嫁。元医師である夫。そんな家族にまつわるあれこれについて、母親役の樹木希林がつぶやくように核心を突く発言をするので、ドキッとする。一歩間違えばドロドロになるところをさらりと描き、家族のキレイごとではないあり方を深く優しく見つめた作品。

笑う故郷』(2016)

ユーモアと恐怖

笑う

スペインに住むアルゼンチン人のノーベル文学賞作家が、故郷の田舎町から名誉市民を授与されることになり、40年ぶりに帰郷する。

ノーベル賞授賞式で「この賞は作家としての衰退のしるし」というスピーチをして、会場を凍りつかせた彼は、憂鬱な皮肉屋。そんな彼が久しぶりに閉鎖的な故郷に帰り、歓迎され、誘惑され、嫉妬され、憎しみをぶつけられる。昔の恋人と再会したりして、せっかくおセンチな気分になっていたのに、悪夢のような不条理に巻き込まれていくのである。

故郷を捨てたくせに故郷をネタにした小説を書いてスペインで成功した彼は、スペインの植民地だったアルゼンチン人からすると内心許せないわけで、故郷と彼は愛憎関係にあるのだ。彼は災難だったのか、当然の報いなのか。そして小説家は、転んでもタダでは起きない。

こころの湯』(1999)

湯に溶かされて

こころ

北京の下町にある銭湯は、いつも常連客で賑わい、知的障害をもつ次男も楽しそうに仕事を手伝っていたところ、サラリーマンをしている長男が突然帰ってくる。

家業を嫌がり、障害者である弟を心のどこかで恥ずかしく思い、故郷を遠く離れて就職した彼が、父親の体調を心配して帰省。それをきっかけに、ギクシャクしていた親子関係が湯で温められるように溶けていき、お客さんたちとの人情溢れる触れ合いも、疲れた都会人の心に染みてくる。

日本人に馴染みのある銭湯という場所が舞台なだけに、家族関係も含めて共感できることばかり。土地開発から立ち退きを迫られ、古き良き銭湯文化が失われてしまう寂しさと諦め。短い帰省のつもりが、じわじわと居心地がよくなってきて……一度離れたからこそわかる故郷のぬくもりよ。弟の存在がうまく生かされている佳作。

かぞくのくに』(2012)

監視つきで

かぞくのくに

北朝鮮で暮らしていた兄が、病気治療のため25年ぶりに日本に帰国し、思想や価値観の違いに戸惑いながら、家族や友人たちと再会する。

監督自身の体験を基にした作品。総連の重役である父の勧めに従い、北朝鮮の帰国事業に参加して“地上の楽園”に渡った兄が、脳にできた悪性腫瘍の治療のため3ヶ月という条件で帰国するのだが、家族との再会を果たしたのも束の間、治療を待たずに突然帰国命令が下る。

彼についてきた監視役が、彼の妹から「あなたの国もあなたも大嫌いだ」と怒鳴られ、「その国で私もあなたの兄も暮らしている」と静かに答えるシーンが印象的。彼は仕事を淡々と全うしているが、心の中では彼の家族の気持ちがわかっているし、体制に対して思うところもあるのだろう。その複雑な諦め具合いを、無表情で雄弁に語るヤン・イクチュンがうまい。

かぞくのくに

遙かなる帰郷』(1998)

そう簡単には癒えない

1945年アウシュヴィッツから解放された主人公が、故郷イタリアへ帰るまでの8ヶ月の旅を描く。

自伝を基にした衝撃的な実話。一緒に生き延びた友人と別れてしまった彼は、ヒトラーの死に沸き立つソ連軍のキャンプでもどこか寂しげで、感情を表に出さない。歴史の渦に巻き込まれ、数々の地獄をくぐり抜けてきたというのに、平和の到来を目の当たりにしても、ぼんやりと傍観しているのだ。

そして彼はロシアの国境を越え、ルーマニアからオーストリア、ドイツを通って、家族の待つイタリアへと帰る途中、楽しそうにしている女性たちを見て初めて号泣する。彼は本当に遥か遠くから戻ってきた。その彼が最後に選んだ道が、終戦を迎えたからといって、心の傷が消えるわけではないということを物語る。

ふきげんな過去』(2016)

あたし生きていたの

ふきげんな

退屈でつまらない日々を送っている女子高生のところへ、18年前に死んだはずの伯母が突然帰ってくる。

毎日死ぬほど退屈なので不機嫌な彼女は、傘を地面に叩きつけながらさせながら歩き、同級生とすれ違うとうつむいてしまう。そんな自分を乗り越えられず、この場所からも抜け出せないのでイライラ。いつも何かを睨んで、ふてくされていて。そんな女の子を演じた二階堂ふみがイメージ通りだ。

近くに川が流れる古びた食堂で、女たちは喋りながら豆の下ごしらえをし、たった1人の男は何もしない。そこへ突然現れて不協和音をもたらす伯母は、爆弾作りが生きがいだという。この只者ではないワケありの女。その正体が明らかになってもちっとも驚かないということは、それが本題ではない証拠だろう。起こるべくして起こった夏の出来事。

ふきげんな過去

家へ帰ろう』(2017)

約束だから

家へ

ブエノスアイレスに住む88歳の仕立屋が、最後に仕立てたスーツを親友に届けるため、家出をしてポーランドに戻ってくる。

70年以上も会っていないその親友は、ユダヤ人である主人公がホロコーストから逃げてきた時、命を救ってくれた恩人。「ポーランド」という言葉を決して口にせず、ドイツには一歩たりとも足を踏み入れたくないという彼の頑なさは、それだけ過去の体験が忘れがたいものだったことを物語る。

不自由な体。体調不良。お金を盗まれる。そんな状況で彼はマドリッドとパリを経由して目的地に向かうが、絶体絶命のピンチに陥っても助けてくれる人(しかも女性)がちゃんと現れる運の良さ。憎まれ口を叩きながら、ただ約束を守るためだけにはるばる故郷へ帰る姿は命がけだ。二人だけの計り知れない強い絆がそこにある。

家へ帰ろう

ナビイの恋』(1999)

疲れたから

ナビィの恋

都会生活に疲れた主人公は、沖縄の小さな島に里帰りし、島民や祖父母たちに温かく迎えられる。

暖かくてのんびりした故郷で過ごすうちに、彼女のささくれた心は癒されていく。自分を取り戻すためのバカンス。ところが、ナビイおばぁの様子がおかしいことに気づいた彼女は、その秘密を探るうちに、おばぁの意外な過去を知ってしまうのであった。

白いスーツに身を包んだ老紳士と、三線を奏でるお茶目なおじぃ。60年前の恋に胸を焦がすおばぁに迷いがないところが、素直でさっぱりしていて、こんなファンタジー・コメディが現実にあってもいいじゃないかと思わせる。それが沖縄マジック。帰省したら人生変わった。そんなこともあるかもね。

たかが世界の終わり』(2016)

もうすぐ消える

たかが

作家である主人公は、自分の死期が近いことを知らせるため、長い間疎遠になっていた家族のいる故郷へ帰ってくる。

原作の舞台劇は「まさに世界の終わり」というタイトルだが、「まさに」と「たかが」では随分と意味合いが違う。なぜ彼は家に帰らなかったのか。家族との間に何があったのか。久しぶりの再会を喜んでいるシーンでも、秘密の過去がじわじわ滲み出てきてヒヤヒヤだし、彼がいつ話を切り出すのかドキドキする。

大切なことを言い出すタイミングというものは、だいたいこんな風に失ってしまう。彼のちょっとした目の揺らぎや表情筋の動きまでが細かく映し出され、まるで顕微鏡を覗いているかのよう。派手で豪快な母親だけは、いつもと違う何かを感じ取っているようだけれども。そうして膨らみ続けた風船がパンと割れ、長い1日が終わる。

たかが世界の終わり

エレニの帰郷』(2008)

国境を越え続けて

エレニの帰郷

ローマで映画の撮影をしている主人公は、歴史的事件を背景に両親の人生を描こうとするのだが、私生活の問題もあいまって苦悩する。

彼の母親。彼女の恋人。彼女を愛する男。その3人をめぐる恋愛を大河ドラマ的に綴った長い長い物語。激動の歴史に翻弄されながら1953年から2000年まで世界中を駆けめぐった母親の人生と、その息子が抱える家庭問題が交差するうえ、彼女と孫娘の名前が同じエレニというのがややこしいものの、静かで力強い映像にハッとさせられる。

ギリシャ、シベリア、ベルリン、モスクワ、ニューヨークなどあちこちへ連れて行かれたり、自分で行ったり。その中で恋人と別れたり再会したり。生きるため、そして愛のために国境を越え続けてきた彼女が、最後にたどり着いた場所は? 母親と妻と娘に翻弄されている感のある主人公をウィレム・デフォーが演じ、新しい魅力を見せてくれる。

いかがでしたか?

お正月やお盆に帰省するのとは違い、何十年ぶりかの帰郷となると、その背景には何やら秘密がありそうで、複雑な事情を謎解きするようにストーリーが展開していく。

どうしても帰りたい。できれば帰りたくない。人によっていろいろな思い入れがあるのが、故郷というもの。

でも、そこに待ってくれている人がいるのなら、久しぶりに帰ってみる?

(C)2011 Star Sands, Inc.(C)2016「ふきげんな過去」製作委員会(C)2016 HERNANDEZ y FERNANDEZ Producciones cinematograficas S.L., TORNASOL FILMS, S.A RESCATE PRODUCCIONES A.I.E., ZAMPA AUDIOVISUAL, S.L., HADDOCK FILMS, PATAGONIK FILM GROUP S.A.(C)Shayne Laverdiere, Sons of Manual

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