これぞエンタメ時代劇。気軽に観られて感動して勉強にもなる時代劇映画10本

映画マニアと呼ばないで

夏りょうこ

『サムライマラソン』(19)や『引っ越し大名』(2019年8月30日公開)など、今年に入って時代劇が次々と公開されている。

それもこれも重厚で本格的な時代劇というよりも、若者やカップルが気軽に観に行けるような、特に歴史の知識がなくてもわかりやすくて楽しめるストーリーなのが特徴だ。

笑って泣けるだけでなく、その時代について学ぶこともできる親しみやすい時代劇。

そこで今回は、気軽に観れて感動して勉強にもなる時代劇映画10本をご紹介しよう。

超高速!参勤交代』(2014)

やるしかない

超高速

元文元年(1736年)春、東北にある湯長谷藩の藩主が、江戸詰めを終えて帰国したところ、事情説明のためにわずか5日で再び参勤するように命じられる。

通常8日かかる参勤交代を5日でという無理難題は、弱小藩にとっては資金面でも死活問題。この明らかな陰謀にどう立ち向かうのか。領民を守るために理不尽な参勤を受け入れざるを得なかった藩主が、どのような知恵を絞って乗り切ったのかが見どころ。続編『超高速!参勤交代 リターンズ』(16)あり。

武士としての体面も保たなければならないのが、殿様の単身赴任=参勤交代。この映画ではお金のかかり具合いや苦労が具体的に描かれているので、参勤交代の内情をのぞいているような気分。アッと驚く奇抜な節約アイデアと親しみのある方言がよい。

花戦さ』(2017)

花で戦うとは

花戦

戦国時代、京都の花僧である池坊専好は、織田信長のために花を生けることになるが、披お披露目の場で松が重みで折れてしまう。

信長の怒りを買わないかどうか全員ピリピリしている中で、1人だけ無邪気な専好。なんと、彼は信長のことをよく知らないのだという。そんな描き方をされている専好は、仏に花を供えることで世の平寧を祈る僧侶であり、実在した花僧。この松が折れるエピソードが、巡り巡ってのちに生かされる。

明るく楽天的で、あまり物覚えのよくない専好。家元という近寄りがたいイメージとはかけ離れた親しみのある人物像だ。そんな彼が、横暴な天下人豊臣秀吉を花で諫めるに至ったのは、あまりにも多くの悲劇を目にしてしまったから。佐藤浩市が、実父である三國連太郎も演じた千利休役を好演。

殿、利息でござる!』(2016)

殿様に金を貸す

殿

江戸時代、財政難のため民衆に重税を課していた仙台藩の宿場町では、年貢の取り立てや労役で人々が苦しめられ、町は寂れていく一方であった。

その有様に胸を痛めた造り酒屋の主人が、なんとかこの町を立て直そうと知恵を絞る。それは、藩にお金を貸し付けて利子を取るという前代未聞の発想。その元金を集めるため、町人たちは必死で金策に奔走するのであった。

自分のためではない。ただ町を救いたい。そのために彼らは我が身を捨て、力を合わせ、辛抱強く時間をかけてやり遂げようとする。これが史実に基づく実話だというのだから同じ日本人として誇らしく、道を切り拓こうとする民の強さに胸を打たれる。フィギュアスケート選手の羽生結弦が、仙台藩主として特別出演。町民の前に立ちふさがる松田龍平の複雑な頑固さがよい。

清州会議』(2013)

実に日本的な

清州

天正10年(1582年)本能寺で織田信長が明智光秀に討たれた後、その後継者や領地の配分を決めるための重要な会議が開かれることになった。

初めて合議によって歴史が動いたとされる清須会議。参加者たちの思惑が入り乱れ、駆け引きや根回しが頻繁に行われ、力関係が二転三転する複雑な状況をわかりやすく、また彼らの思惑と心情を丁寧に描いた人間ドラマとしても、見ごたえがあるだろう。

会議に出席する4人の武将はクセモノ揃い。中でも天下人以前の豊臣秀吉を大泉洋が愛嬌たっぷりにのびのびと演じ、無骨で不器用なライバル柴田勝家との対照が際立つ。舞台裏では女性たちも頭脳戦。その後の史実を知っているからこそ、未来が見えない段階の混沌とした動きに興味深さも倍増だ。

武士の家計簿』(2010)

プライドより倹約

武士

江戸幕末期に、加賀藩の財政に御算用者として代々関わってきた主人公は、御蔵米の勘定役に任命されるが、そこで役人たちの不正に気がつく。

“算盤さむらい”と呼ばれる家業を継いだ彼は、不正の口止めとして左遷されたり、事態が変わって昇進したりする下っ端のサラリーマン。そんな彼が、今度は自分の家の経済状況を見直さなければならなくなり、莫大な借金を返すための質素節約ライフを実践していく。

身分が高くなるにつれて、体面や見栄を保つための出費が増えるのが武家社会のしくみ。そんな「武士は食わねど高楊枝」的プライドを捨て、贅沢な家財道具や着物は売り払い、祝いの鯛は紙に描く。そんな道を選んだ家族の闘いに、庶民と同じ金銭感覚を垣間見て面白い。ああ、こんな優秀な財務大臣が我が家にもいてくれたら。

憑神(つきがみ)』(2007)

憑神たちのお陰で

憑

江戸幕末期、由緒ある家柄でありながら下級武士である主人公は、向島の“三囲(みめぐり)稲荷”に願掛けをすれば出世するという話を聞く。

酔っぱらった彼が早速出かけて拝んだのは、“三巡(みめぐり)稲荷”というさびれた祠。ヨミは同じでも、こちらにいたのは全く別の神様だったので、のちに彼は「貧乏神」「疫病神」「死神」に憑りつかれてしまうことになるのだが、その3人が律儀に順番にやって来るところがミソ。もちろんラストは死神である。

次々と降りかかってくる災難から必死に逃れようとする彼。しかし、度重なる不幸に見舞われているうち、自分の生き方を見つめ直していくようになり、死神と対面する頃には、自分の使命を全うする覚悟を決めるのであった。その死神の意外な姿ときたら。命の使い道について考えさせられる作品。

駆込み女と駆出し男』(2015)

黙って耐えない

駆け込み女

江戸幕府公認の縁切寺であった東慶寺で、女性たちの聞き取り調査を行う御用宿の居候が、トラブルに巻き込まれながらも彼女たちの再出発を手助けしていく。

夫が妻を一方的に離縁できても、妻から夫に離縁を言い渡すことはできなった時代に、それを可能にしてくれる存在が縁切寺。しかし、そこへ駆け込んだらすぐに離縁できるのかと思いきや、実はその後に協議離婚のチャンスがあり、それができなければ、2年間その寺で修行したのちにやっと離婚が成立したのである。

夫への呼び出し状を書くために、彼女たちの事情聴取をする。東慶寺は尼寺だが、その役目をするのは男性というのが面白い。彼女たちをサポートする姿が似合う大泉洋。夫の放蕩がひどすぎるとか強引な政略結婚だとか、そういう現代にも通じる複雑な家庭事情が赤裸々に語られ、江戸時代の人間模様が生き生きと映し出される。

のぼうの城』(2012)

水攻めがしたい

のぼう

戦国時代末期、天下統一を目前にした豊臣秀吉は、最後の敵である北条家を落とすため、石田三成に2万人の大軍を投じて忍城を攻めるよう命じた。

周囲を湖で囲まれている“浮き城”である忍城。農民たちは平穏に暮らし、領主の従弟である成田長親は、親しみを込めて“のぼう様”と呼ばれている。のぼう=でくのぼう。特に何かに秀でているわけでもないのに、天然で愛嬌のあるキャラクターが人気抜群の長親なのである。

そんな彼が領主の意志に反し、たった500人で秀吉軍に戦いを挑もうとする。そして小舟に乗り、敵に向かって披露するふざけた歌と踊り。これは一体何の真似なのかと石田三成も観客も目が釘付けだ。これぞ野村萬斎でなければできない役。史実に基づいているので、どこまでが実話なのか調べてみると面白そう。

花よりもなほ』(2006)

仇討ちよりも大切なこと

花

父親の仇討ちで江戸にやってきた若侍が、長屋の住人たちとの交流を通して、人生の意味を見つめなおす。

赤穂浪士による仇討ちに大きな関心が寄せていた江戸時代、特に剣の腕が立つわけでもなく、毎日フラフラして目的を見失っているかのような主人公。実は、貧乏だが明るくたくましく生きている長屋の人々とつきあううちに、仇討ちを果たすことが本当に武士道なのかと彼は迷い始めていたのである。

彼がほのかに恋心を寄せる美しき未亡人も、密かに仇討ちの機会をねらっており、そこへ赤穂浪士の仇討ちもからんで、彼の心は仇討ちの是非について悶々と揺れる。さて、そんな彼が出した解決策とは? 是枝監督が撮った唯一の時代劇ということで、他とはひと味違う武士の描き方に注目。

武士の献立』(2013)

あっぱれな内助の功

武士

江戸時代の加賀藩で、優れた味覚と料理の腕を持つ女性が、藩に仕える包丁侍の跡取り息子と結婚するが、彼は料理が大の苦手であった。

家業を嫌がる彼だったが、バツイチ年上の妻からスパルタ指導を受けて腕を上げ、昇進試験に合格して出世。それをきっかけに、ギクシャクしていた夫婦関係に愛情が芽生えていくのだが、藩のお家騒動に巻き込まれた二人は、次第にまた心が離れてしまう。

包丁侍とは、料理で仕える武士のこと。身分はかなり低いものの、主君の健康を守るだけでなく、接待で藩の威信を示すなど重要な役割を担っていたという。実在した包丁侍をモデルにしたこの映画でも、騒動で面目を失ってしまった加賀藩を饗応料理で立て直そうとするシーンがあり、料理が持つ力を見せつけられる。

いかがでしたか?

お金で苦労していたり、参勤交代や戦に苦しめられていたり。そんな武士の姿を見ると、格式ばった武士社会に対するイメージがガラリと変わり、女性や庶民たちのたくましさにも心を打たれてしまう。

しかもそれが実話に基づく物語であれば、歴史に対する興味も湧いてくる。そんな楽しみ方ができるのも、このようなエンタメ時代劇の特徴ではないだろうか。

歴史が苦手という方や時代劇は堅苦しいと思っている方も、これを機会に一度観てみては?

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