オスカー狙い?異例だらけのNetflix映画『ビースト・オブ・ノー・ネーション』

2015.10.27
映画

映画好きをこじらせLAへ

MaryK

レア映画満載!劇場未公開でDVDリリースも無しのNetflixスルー映画10 選ではNetflixでしか観ることのできないオリジナル・コンテンツについてご紹介していましたが、10月16日より配信が開始した『ビースト・オブ・ノー・ネーション』もNetflixが製作した長編映画です。

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出典:http://nerdist.com/idris-elba-is-a-warlord-in-new-character-posters-for-beasts-of-no-nation/
しかし、これまでのオリジナル・コンテンツと大きく異なるのが、劇場での公開も行なったということ。しかも、Netflixで配信された同日にです。一体これにはどのような意図があるのでしょう?

そこで今回は、『ビースト・オブ・ノー・ネーション』が他のNetflixオリジナル映画と一線を画するポイントをご紹介していきます。

第72回ベネチア国際映画祭でワールドプレミア

ナイジェリア人作家による同名の小説が原作である今作品。西アフリカの内戦が続く、とある国に暮らす少年のアグーは目の前で父親と兄弟を殺され、一人ジャングルを彷徨っていました。

しかし、NDFと名乗る反乱グループに捕らえられ、少年兵として生きていくことに。死にたくなければ相手を殺さなくてはいけないという過酷な生活を追った衝撃的な内容です。

その内容のすごさはもちろんですが、世間へのお披露目の方法もさすがです。世界中から良作が集まるベネチア国際映画祭でワールドプレミアを行なったのです。

VOD配信会社のNetflixが手がけた作品が歴史のある映画祭でプレミアを迎えるのは異例。映画界のルールすらを壊すことになる今回の上映には、Netflixの未来へ向けた自信を感じることができますね。

監督は今一番注目のキャリー・ジョージ・フクナガ

監督を務めたキャリー・ジョージ・フクナガはその名前から想像できる通り、日系人の父親を持つアメリカ人です。

これまでに監督をした長編映画は『闇の列車、光の旅 』と『ジェーン・エア』の2作が知られていますが、彼の名を一躍有名にさせたきっかけは傑作ドラマシリーズとして語られる『True Detective / 二人の刑事』です。

マシュー・マコノヒーとウディ・ハレルソンの2大映画スターの共演および、ゴールデングローブ賞へのダブルノミネートという快挙を成し遂げました。

通常、ドラマの場合一話ごとに異なる監督が担当をするのですが、8話すべてをフクナガ監督が手がけました。そのため、まるで8時間の長い映画を観ているかのようなクオリティを保つことができ、フクナガ監督自身もエミー賞を受賞しています。

見事新人賞受賞!注目すべき主演の2人

主役のアグーを演じた新星エイブラハム・アッターはベネチア国際映画祭で見事マルチェロ・マストロヤンニ賞(最優秀新人賞)を受賞。撮影地のガーナで1000人以上の候補者の中から選ばれた才能溢れる新人俳優です。

とはいっても、まだ若干15歳。監督に見出された当時、彼はガーナの路上で物売りをする少年でした。西アフリカのシエラレオネ共和国で10年にも及んだシエラレオネ内戦を実際に経験した人物を演技指導のために呼び、エイブラハムに武装技術などを教えたそうです。

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出典;http://netflixlife.com/2015/09/11/will-netflixs-beasts-of-no-nation-be-eligible-for-academy-awards/

一方、アグーを支配する立場の反乱グループの冷血な指揮官を演じたのがイドリス・エルバ。『マンデラ 自由への長い道』ではネルソン・マンデラを熱演しゴールデングローブ賞へノミネートもされました。

『007』シリーズの次期ジェームズ・ボンドを演じるという噂も立っていますが、初黒人俳優によるボンドは実現するのか気になるとことです。

イギリス生まれのイドリスですが、両親は『ビースト・オブ・ノー・ネーション』の舞台となった西アフリカ出身だそうです。彼にとっても、この作品への思い入れは人一倍であることは間違いありません。

アカデミー賞ノミネートにも期待が!

10月16日に世界同時にNetflixにて配信を開始した『ビースト・オブ・ノーネイション』。Netflix上で観ることができるのにも関わらず、なぜ劇場同時公開という道を選んだのでしょうか?

それは、Netflixは今作品をアカデミー賞ノミネートの対象作品にしたいという狙いがあるからです。作品賞はもちろん、主演男優賞や監督賞も期待できるのではないでしょうか。

とは言っても、自宅で見れる作品をわざわざ劇場まで足を運ぶのはほんの一部だけ。このことから、全米の映画館を敵にまわしたことは言うまでもありませんよね。

しかし、もしNetflixの戦略通りこの作品がアカデミー賞にノミネートされることになったら、VOD会社による記念すべき初のノミネート作品となるのです。

クオリティの高いオリジナルドラマシリーズの製作により、TV業界を敵に回したと思ったら、今度は映画業界まで怒らせてしまいました。

自由度の高いNetflixでドラマや映画を作るメリットも多く、魅力を感じる監督が多いのも事実。今後もアダム・サンドラーやブラット・ピットがNetflixオリジナル作品をリリースすることが決定しているので、どれほどの傑作を世に生み出してくれるのかが楽しみですね!

『最新作を見るなら映画館』の認識が崩れてしまう日もそう遠くはありません。

東京国際映画祭でも上映

これからの映画界の常識を覆すきっかけになるかもしれない『ビースト・オブ・ノー・ネーション』。東京国際映画祭でも上映され、来日している監督の舞台挨拶も行われました。

残念ながら映画祭には行けず、大きなスクリーンでの鑑賞はかなわなかったという皆様でも、今すぐNetflixでご覧いただくことができるので、ぜひご自宅でゆっくりお楽しみください!

東京国際映画祭『ビースト・オブ・ノー・ネーション』

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  • 週3でタコパしてます
    2.9
    この映画について言わなければならない事は既に先達方が仰っているので敢えて言わない。 レポート課題みたいやん。 ションベンの勢いがまあまあ強いなあ… 体洗ってる時にションベンかけられたら僕はビーストになります…
  • りたお
    3.4
    実話でもドキュメンタリーでもないけど直視したくない話とシーンの連続で胸が痛かった。 でも、こんなことも、もっと酷いことも世界では起こっているんでしょう..
  • taichiro
    3.6
    アグーと女教師?との会話良い。 コマンダーどーなったんだろ。
  • バティ
    4.6
    ようやく鑑賞。戦場に立った者はは例え子供でも変わってしまう。もう元の自分には戻れない。終盤の「僕はもう子供ではなく老人だ。この話をしたらきっと貴女は悲しむ。そして僕も悲しくなる。」が全てを語っていた。 イドリス・エルバの美しくも野蛮でカリスマティックなゲリラのリーダー。まさにカルト宗教の教祖そのもので、愛情に見せかけた呪詛を吹きかける姿が悍ましい。それに輪をかけて、子供を救われるべき被害者としてではなく許されざる人殺しの一人として描いた容赦のなさ。 彼にあったのは擬似家族な愛情でも、復讐心でもなく、単に「生きたい」という純粋気持ちしかない。命が脅かされれば崇高な意志も信仰もなければ本能に流されるがままだ。もはや善悪は存在しない。銃を持つ。標的がいる。命令される。だから撃つ。戦闘単位となった人間は皆そうなるだろう。
  • けいすけ
    3.8
    Netflixオリジナル映画。アフリカの紛争地域に生まれたアグーが、反乱チームに捕らわれ、少年兵として生きていく姿を描いた作品。 少年兵問題は、今でも残る非常に悩ましい問題の一つです。少年兵のほとんどは、戦争好きではなく、生きるために、"仕方なく"銃を握って戦っています。今現在は、少年兵問題は紛争地域だけの問題ですが、これが日本人に置き換えられたとしても全く同じ道を歩むのが必然です。人間誰だって、まして少年ならなおさら死と直面した時は生を意識してしまうものです。その時、どうやって生き残るかを考え、止む無く銃を握ります。 印象に残ったのは、アグーが少年兵になって初めて人を殺すシーン。まさしくこれも、生きるためには殺さなくてはならない場面ですが、もちろん躊躇います。人間の怖いところは、一度罪を犯してしまうと善悪の良識が麻痺を起こして、心の枷を外してしまうところです。アグーも同様に、それから人殺しに味をしめてしまいます。その印象的なシーン、見ていて、あぁやっぱり、と思ったのが、音を消す演出。意図としては、頭が真っ白になって周囲の環境音が遮断、もしくは遠ざかっていく感じですね。ベタですが、充分に効果を発揮しています。 あと撮影に関してだと、全編ロケなので、特に密林地域や川ではそうとうしんどかったのではないかと察します。アグーが、弾が尽きたと指揮官へ報告へ行く場面、カットは切らずに濁った水のなかを行ったり来たり、これも大変だったことでしょう。 私はわりかしネガティブ思考なので、今作のアグーのラストを見た時に、「でもこういう結末を迎える子は少ないのではないか」と考えてしまいます。それとも、戦争から脱することが希望ならば、死んだって同じでしょうか。戦争を脱することの意味合いは違えど、より平和的な将来を期待します。
「ビースト・オブ・ノー・ネーション」
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