映画に添えられている良質な音楽も一緒に味わおう。サントラに耳を澄ませたい映画6選

2015.12.13
映画

映画も音楽も本も好き。

丸山瑞生

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(c)2015吉田秋生・小学館/「海街diary」製作委員会

 

12月16日より、是枝裕和監督作品『海街diary』のレンタルがスタートします!

鎌倉を舞台に4人の姉妹の日常を描いた作品。姉妹の生活は「そこにある当たり前の暮らし」として映し出され、四季折々の季節の変化とともに丁寧に捉えています。

そして、映像に負けず劣らず素晴らしかったのは、菅野よう子が手がけるサントラ。CMでもアニメでも数多くの音楽を手がけ、知らないうちに彼女の音楽を聴いているひとは少なくないとおもいます。

今年は音楽が題材の映画作品が目立ちましたが、ストーリーに音楽が絡まずとも映画における音楽の重要さは言わずもがな。今回は、映像に合わせてサウンドトラックにも耳を澄ませていただきたい映画をご紹介いたします。

『空気人形』が見ている世界に音で触れる

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まずは『海街diary』に引き続き、是枝裕和監督による『空気人形』をご紹介いたします。

中年男の秀雄が所持する空気人形が心を持つようになるというストーリー。音楽を担当するのは、world's end girlfriend(略称:WEG)。日本の音楽家、前田勝彦氏によるソロプロジェクトです。

WEGの音楽はジャンル分けがむずかしく、激しめのものも多いのですが、今作のサウンドトラックに関しては、ピアノの音色がメインで子守唄のようにやさしい。

主演のペ・ドゥナが演じる空気人形も「心」を宿したばかりの無垢な存在として描かれるので、見るものすべてが新鮮であり、彼女の見ている世界を音で見事に表現しています。

子どものように無邪気な楽曲もあれば、他者との触れ合いで切なさを感じたような寂しげな楽曲もあり、この作品に添えられたサウンドトラックは、まるで成長譚のような音楽です

『ファンタスティックプラネット』の芸術性と音楽

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ルネ・ラルー監督による1973年制作のアニメ映画。

物語の舞台はドラーグ族という真っ青な巨人が、人間にそっくりなオム族を支配する、どこかの惑星。バッチリと印象に残るキャラクターのデザインや動植物の独創性には、ど肝を抜かれます。

音楽を担当するのは、ジャズ・ピアニストのアラン・ゴラゲール。しかし、本作ではプログレッシヴ・ロックのようにサイケデリックで、浮遊感と気だるさが同居する不思議な音楽が物語に添えられています

当時の最先端だったシンセサイザーを駆使した電子音楽は、この作品にぴったりと当てはまっていると言えるでしょう。

『ドラゴンタトゥーの女』の凍てつくアンビエント

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デヴィッド・フィンチャー監督による2011年制作のミステリー映画。

公開中の『007 スペクター』ではかっこいい姿を見せているダニエル・クレイグですが、なぜだか筆者には今作の垢抜けない彼の印象のほうが強いです。

ただ、映像はどのシーンを切り取ってもスタイリッシュ。寒々しい景色と青白い映像の美しさが、この作品の持ち味ですらあるとおもいます。

2011 Columbia Pictures Industries, Inc. and Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved.

音楽を担当するのは、ナイン・インチ・ネイルズのトレント・レズナーと音楽家のアッティカス・ロス。彼らは、近年のデヴィッド・フィンチャー監督の作品には欠かせない存在と言えるでしょう。

今作のサウンドトラックは、前述した特有の映像に映える、冷たくて硬質な、体温が失せたアンビエント・ミュージック。シーンによっては不協和音と言えるものもあり、それは緊張感のあるストーリーに拍車をかけます。

この特徴は、のちの『ゴーン・ガール』にも引き継がれているので、こちらも要チェックです。

『天然コケッコー』の朗らかなエレクトロニカ

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山下敦弘監督による2007年制作の実写映画。原作は、くらもちふさこの同名漫画。

小さな村に住む主人公「そよ」の日々を、東京からの転校生である「大沢」との恋愛を軸に描いた物語。『海町diary』にも出演している夏帆の単独初主演作品でもあります。

近ごろはいろいろな役を演じ、幅のある演技を見せている夏帆。ただ、やっぱり彼女の根っこにあるのはこういった瑞々しいイメージなのだろうなあと筆者はおもいます。もちろん、前述の『海街diary』も素敵でした。

『天然コケッコー』の音楽を担当しているのは、レイ・ハラカミくぐもったようで、浮遊感のあるサウンドが特徴で、テクノやエレクトロニカといったジャンルを中心に手がけていました

今作に添えられた音楽は「シーンや景色に音をつけたらこんな感じだろうな」とおもわせられる楽曲ばかりで、それはまさにサウンドトラックにふさわしいなとおもいます。

2011年の訃報にはショックを受けましたが、彼の音楽はいつでも聴くことができます。映画からでも興味を抱いたかたは、ぜひ、聴いていただきたいです。

『おおかみこどもの雨と雪』の躍動する音楽

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細田守監督による2014年制作のアニメーション映画。

女子大生の女の子が「おおかみおとこ」と出会い、そのあいだに生まれた「おおかみこども」の姉弟が成長し、自立するまでの13年間を描いた物語。

サマーウォーズ』以降の細田守監督の作品は「家族」というものを作品ごとに角度を変えて描いているようにおもいます。今作では「親子」を描いていますが、『サマーウォーズ』では家族になることで生まれる親戚との付き合いだとか。

バケモノの子』では血のつながりだけではない家族の在り方を描くなど、監督自身の人生が作品に取り入れられてるように感じられます。

『おおかみこどもの雨と雪』の音楽を担当しているのは、音楽家の高木正勝。じつは、このひとは現在では同作の主人公である、花と同様の生活をしているらしく、とても驚かされました。

今作のサウンドトラックは、ピアノを基調としたシンプルなもの。音楽から感じ取れるものは、前述の『空気人形』の近しいものがあり、それは登場人物の成長を感じられるところ。

「おおかみこども」の無邪気な一面や、雪山を駆け回るオオカミの躍動感を音でも感じられるかとおもいます

『ぐるりのこと。』の季節の巡りを音楽で聴く

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橋口亮輔監督による2008年制作の映画。

一組の夫婦を主人公に、生まれたばかりの子どもの死を乗り越える10年の月日を描いた物語。現在、同監督の『恋人たち』が公開中ですね。

『ぐるりのこと。』も『恋人たち』も人生を長い目で捉えたような作品で、筆者は「人生とは何が起ころうとも、生きている限りは生活はつづいていく」ということを思い知らされるようでした。

そして、両作品の音楽を担当しているのは、Akeboshi(アケボシ)。フォークサウンドの流れを汲んだ民謡にも似た音楽は、エレクトロニカなどのジャンルを取り入れた無二のものです

今作のサウンドトラックでは季節の巡りが感じられるのですが、とりわけ、郷愁や儚さのイメージを思い起こされる秋の印象が強いようにおもいます。

それは主人公の夫婦が歩んでいる人生を季節に例えたときに、筆者がそのように感じたからなのかもしれません。

さいごに

今回のご紹介は音楽がメインの映画というわけではありません。どちらかといえば、BGMのような役割で、映画に添えられている良質なサウンドトラックのご紹介でした。

今回のご紹介のなかにはおどろおどろしいものもありますが、こういったサウンドトラックはわたしたちの日々の生活のなかで聴いても邪魔をしない音楽です。

みなさんもお気に入りの作品のサウンドトラックに、ぜひ、耳を澄ませてみましょう!

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    4.5
    台詞や音楽が心地よくて、舞台が鎌倉なのがなお良い 個人的には、あなたという宝物を産み落としたご両親が羨ましいっていう二ノ宮さんの言葉にうるっときた 家族のかたちはたくさんあるけど、姉妹のお互いを思い合う姿には家族としての理想的なかたちが表れてたなあと思う オチというオチは無いけれど、観ていくと共に心がどんどん温まっていって、終始ほっこりしました
  • 3.0
    記録
  • シネフィルmonk
    4.0
    是枝監督作品。父の死とともに腹違いの妹がやってきてつむぎだす四姉妹の物語。生き生きとした四姉妹を演じた役者たちを選んだ監督の眼を評価。
  • Kanako
    2.7
    個人的にはよーわからん
  • GK
    3.8
    是枝監督が最新作『万引き家族』で第71回カンヌ国際映画祭で最高賞「パルムドール」を獲得した。 是枝監督といえば「家族」をテーマにした作品だが、2015年公開の『海街diary』がそこそこ話題になって記憶に新しい作品だろう。 『万引き家族』は6月8日予定だが、その前に「是枝監督は”家族”をどう描いているのか」を『海街ダイアリー』を元に考えてみたいと思う。 映画『海街ダイアリー』は吉田秋生作のマンガが原作となっており、原作の途中までを映画化したものだ。 主役の4姉妹には、綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すず。 そして脇を固めるのは是枝監督映画常連のリリー・フランキー、樹木希林から、大竹しのぶ、堤真一、風吹ジュン、加瀬亮、鈴木亮平等々の面々。 そこまで豪華にしなくても、と言いたくなるぐらい豪華な布陣である。 ストーリーは複雑なものではなく、むしろ単調と言えるぐらいだ。 神奈川県鎌倉市で暮らす三姉妹の元に、自分たちが幼い頃に離婚して家を出て行った父の訃報が届いた。 その父の葬式に行くと、異母妹・浅野すずがおり、その後4姉妹で鎌倉に暮らすようになる という話だ。『海街ダイアリー』というタイトルのとおり、海の街 鎌倉を舞台にした4姉妹の暮らしが静かに語られる。 『海街ダイアリー』を観て考える家族のカタチとはこうだ。 1.家族とは、居場所である 3姉妹の異母妹・浅野すずは、唯一の血縁者である父親が亡くなり、元々住んでいた山形で居場所がなくなってしまう。 そんなすずに「一緒に住もう」と声をかけたのが鎌倉に住む3姉妹である。 血がつながっているとはいえ、母親は違うすずと3姉妹。 また父親が出ていって、次の妻と作った子どもがすずであり、3姉妹は被害者側、すずは加害者側とも言える。 とても居心地が良くその環境に馴染むすずだが、一方で「自分がいていいのか」と悩む。 そんなすずに長姉である幸が言葉をかける。 「すずはここにいていいんだよ。ずぅっと。」 その言葉を幸が発したこと、すずがそれを受け入れたことによって、彼女たちは「家族」になったのだろう。 2.家族とは、必ずしも血縁同士であるとは限らない 家を出ていった母親は、法事で帰ってきた際に幸にこう話す。 「(幸と私は)合わなかったのよ~昔から」 その言葉どおり、3姉妹の母と幸は激しい喧嘩をする。 その後仲直りをするが、それは母が「その後別の場所に帰る」という前提ありきの仲直りだろう。 血縁だからといって、家族として一緒に暮らせるとは限らない。 是枝監督の作品『そして父になる』はそのテーマを正面から扱った作品で、 「血縁関係」に考えるのに良い作品だと思う。 3.家族とは、五感を共有する存在である 『海街ダイアリー』は4姉妹の鎌倉での生活を描く作品だが、五感に関する場面が度々登場する。 毎年庭の梅を収穫して作る梅酒の匂い、味。 4姉妹の父がよく作っていたというしらす丼の味。 おばあちゃんの匂いがする着物。 家族で共有する鎌倉の四季。 それらを共有し、あーでもないこーでもないと言い合うときもあれば、 あるいはただ「〇〇だね」「そうだね〇〇だね」と5感を共有するときもある。 あるいは何も言わずにただ一緒に感じているだけのときもある。 そして五感の共有は同時代に限らない。 前述のように、味や匂いは世代間で引き継がれていく。 家族とは、「意味」を求めず、五感を共有し合える存在ではないだろうか。 これらが、現時点で私が是枝監督の作品を鑑賞して考える「家族」だ。 『万引き家族』で是枝監督はどんな家族を見せてくれるのだろうか。 昨今、夫婦別姓に関する議論の活性化など、家族に関する話題は豊富だ。 枠組みにあてはめがちな日本人に対して、新たな「家族」を見せてくれる作品を期待している。 ※ちなみに原作の『海街ダイアリー』はまだ完結していない。 私は原作を先に読んでいたが、映画から入った人にも是非読んでもらいたい。 映画と同じぐらい、あるいは約2時間の映画では語れないディテールがある分の深い感動が得られる作品だと思う。
「海街diary」
のレビュー(67246件)