【映画で話題の出演陣にも注目】是枝監督が尊敬する脚本家が描く月9“いつ恋”の世界

2016.01.25
雑学

映画と音楽は人生の主成分

みやしゅん

先日からドラマ「いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう(以下、いつ恋と表記)」の放送がはじまりました。フジテレビの月曜日21時のドラマ、いわゆる“月9”と言えば話題性が高く、誰もが注目するドラマ枠であることは言うまでもないでしょう。

特に今回は、映画界でも活躍する若手俳優陣が主演をつとめること、さらには脚本を「東京ラブストーリー」をはじめ「最高の離婚」などのヒット作を手がけた脚本家・坂元裕二が担当していることもあり、高視聴率でのスタートを切りました。

今回は、脚本家・坂元裕二にスポットライトを当てつつ、主演の若手俳優陣の代表作やこれまでの活躍について紹介していきます。

是枝監督が尊敬する男・坂元裕二とは?

坂元作品は、テーマはさることながらストーリー自体も私たちの胸に突き刺さる“何か”があります。その才能は、カンヌ国際映画際で受賞歴をもつ是枝裕和監督も絶賛しており「尊敬している現代の脚本家のひとり」と述べるほどです。

現在、ドラマ界で活躍している坂元には、過去に映画との意外な接点がありました。

ドラマの世界へと歩み始めたきっかけ

坂元は、ドラマだけでなく、大ブームを巻き起こした映画『世界の中心で愛を叫ぶ』に共同脚本として参加していました。今でこそ「映画には興味がない」ときっぱりと断言している彼ではありますが、“セカチュー”ブームを巻き起こすよりももっと昔…18歳の時に映画の世界の門を叩いていました。

せかちゅ

18歳の坂元は映画製作会社のシナリオ募集コンクールに自身の脚本を応募していたのです。しかし、そこでは相手にされず落選…その脚本を元に練り直したものをフジテレビに送ったところ、その脚本が第1回フジテレビヤングシナリオ大賞を受賞することとなりました。

実に運命とは不思議なもので、映画界では相手にされなかった人物が、ドラマ界では「東京ラブストーリー」などの大ヒット作を生み出すヒットメーカーになりました。近年では「Mother」や「それでも、生きてゆく」をはじめ「最高の離婚」や「Woman」、「問題のあるレストラン」などの社会派ドラマも世に送り出しています。

坂元裕二のセオリー~映画ではなくドラマでなければならない理由~

一度は映画の世界へ足を踏み出そうとしていた坂元が「映画には興味がない」と語るようになったのは、映画ではなくドラマでなければならない理由があったからです。

圧倒的なセリフ量とワンシーンの長さ

その理由は実にシンプル…2時間では自分が描きたいものがおさまらないという理由でした。彼の作品の特徴として“圧倒的なセリフ量”と“ワンシーンの長さ”が挙げられます。先日、放送が始まった月9ドラマ「いつ恋」の第1話でも、有村架純演じる主人公・音が亡き母からの手紙を読むシーンだけで約5分の時間が使われています。

しかし、「1クール13話ぐらいあるとちょうどいい」と語る彼には、もう一つドラマを選ぶ理由がありました。それは、連続ドラマの脚本には、役者の芝居を観て、展開をいろいろとつくっていける面白さがあるということです。

先日、とあるバラエティ番組に登場した主演陣が「まだ、物語がどうなっていくかわからないんです」と語っていました。坂元は放送中のドラマと、役者たちの芝居を観て“新たな”展開を創っていくことに面白さを見出しているのです。その中で「ストーリーよりもこの役者さんがつくった人物をどうすればうまくおもしろく魅力的に描けるか」が自身の課題と語っています。

「わからないことはわからない」という信念

“圧倒的なセリフ量”と“ワンシーンの長さ”を特徴とする坂元作品ですが、その長い会話を飽きずに観ることが出来る不思議な魅力があります。このことについて是枝監督は「登場人物がみんな、本当のことをいわないからだと思うんです。…結局は理解し合えないんだという前提で会話のやりとりが続いていくから、すごくリアルでスリリングに観られる」と語っています

脚本家といえども、全ての人の気持ちが分かるものではありません。もちろん、様々な出来事に関する資料を通して気持ちを想像することはできます…しかし、それらの言葉は誰かしらが書いた言葉であり、どこか“物語性”を帯びています。そのため、体験した本人たちのリアルな想いを汲み取ることまでは出来ません。

多くの監督や脚本家は「きっとこういう気持ちだろう」という想像の物語を書くのに対し、坂元は最後まで「わからないものはわからない」という姿勢を貫き通しています。そこが彼の面白さであり、魅力でもあるのです。

キャストは脚本を書く前に決まっている。

脚本は「役者の持っている素の部分がセリフの中に見え隠れするとき、初めて面白くなる」と考える坂元は、主にバラエティ番組での役者の素の表情を観てキャストを決め、脚本の執筆に取り掛かると言います。そして、役者たちを想像しながら「この人が話せば(自分が伝えたいことが)うまく伝わるんじゃないだろうか」と試行錯誤しているそうです。

そのため、坂元は役者を絶対的に信頼しています。役者が感じ取ったことを大事にしている彼は、少し意地悪かもしれませんが撮影中は出演者が脚本に関する質問を一切できない状況をつくっているそうです。それは、役者たちが坂元自身が想像もしていなかったことを質問してくることがあるからだと言います。

「実は何も考えてなくて、たまたまだったりする…(だから)そこでスパッと「そうですよ」言えない自分がいる」…全てに意図があったら、坂元作品の魅力は出ないのだと思います。役者が偶然見つけた新しい観点の積み重ねが、作品に奥行きをもたせる…そして、坂元は役者がつくりあげた人物の魅力を引き出すことに全力を注ぐ…このバランスが重要なのかもしれません。

脚本の変更をあまり好まない映画に対し、途中から新たな展開をつくっていけるドラマが、坂元は心の底から好きなのでしょう。

坂元裕二が惚れた若手俳優陣とは?

坂元作品は脚本を書くときに役者をイメージして書かれています。しかもバラエティ番組での様子を観て“素の部分”に魅力を感じた役者たちが揃えられているとなると、出演人の代表作だけでなく様々な活躍にふれていく必要があるでしょう。そうすれば、坂元が彼女・彼たちに惚れ込んだ理由が見えてくるかもしれません。

今をときめく若手のホープ“有村架純”

有村架純は、今最も人気のある若手女優といっても過言ではないでしょう。NHKの朝ドラ「あまちゃん」をはじめ、これまでに人気ドラマ「SPEC」や「MOZU」、同じ月9の「失恋ショコラティエ」にも出演してきてきました。さらにジブリ作品『思い出のマーニー』でヒロインの声を担当したことも話題となりました。

間に

(C) 2014 GNDHDDTK

最近ではバラエティ番組にもよく登場するようになり、ドッキリ企画で見せた素の姿が「可愛い!」とSNSで話題になりました。また、はっきりとした物言いやノリの良さも垣間見ることが出来ます。その影響もあってか、あの「ぱっかーん」でお馴染みのauのCMシリーズでは、鬼嫁の一面を持つかぐや姫で私たちに笑いを届けてくれています。

なお、昨年公開された映画『ビリギャル』で、第39回日本アカデミー賞で優秀主演女優賞と新人俳優賞のW受賞を果たしたことが先日発表されました。映画、ドラマ、そしてバラエティ番組で引っ張りだこの彼女…その可愛さにあなたもすぐに虜になるはずです。

変幻自在の実力派“高良健吾”

デビュー以来、タイプの違う個性的な役柄をこなし“実力派“の呼び声が高い高良健吾。そんな彼を印象づけたのは、芥川賞受賞作『蛇にピアス』の実写映画でしょう。この作品では、同じくデビューしたての吉高由里子と新人とは思えない演技をこなし、話題を呼びました。

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その後、吉高由里子と再び共演を果たした映画『横道世之介』では、高良健吾は主演をつとめ第56回ブルーリボン賞主演男優賞を受賞しています。デビューしてから着実にキャリアを積み、日本を代表する俳優へと成長している証といえるでしょう。

主人公・世之介の人の良さが前面に押し出された映画『横道世之介』ですが、トーク番組で登場した親友が「(世之介は)一番、高良健吾に近い」と語るほど…役者の素の姿に近い作品も珍しいので要チェックです!

舞台で積み上げてきた演技力“高畑充希”

高畑充希は舞台を中心としてそのキャリアをスタートさせ、現在ではバラエティ番組やCMでもその個性をいかんなく発揮しています。そんな彼女は、誰もが知っている『ピーター・パン』の舞台で主演をつとめていたことも…。その後、朝ドラをはじめ様々なドラマや映画にも出演し、最近では歌手としても活動しています。

出演したドラマの中には、坂元裕二脚本ドラマ「問題のあるレストラン」にも出演しており、極端な価値観で自身を守ってきたイマドキ女子・川奈を見事演じきり、見ている私たちをドラマの世界へひき込みました。その演技力は雑誌「テレビジョン」が主催するドラマアカデミー賞助演女優賞を受賞しており、今回の月9でも期待が高まっています。

なお、6月4日公開の映画『植物図鑑』では、三代目 J Soul Brothersの岩田剛典と主演をつとめることが決まっているのでこちらも注目です。

蜷川幸雄が惚れ込んだ男“西島隆弘”

西島隆弘は、園子温監督の映画『愛のむきだし』で主演をつとめ、第83回キネマ旬報ベスト・テンにて新人男優賞を受賞しています。超大御所・蜷川幸雄も「君は繊細だ」と彼の演技に惚れ込み、再演不可能といわれていた舞台を復活させたという話もあるほどです。

愛の

しかし、彼といえばやはり歌手活動です。昨年結成10周年を迎え、若者に絶大な人気を誇る歌手グループ“AAA(トリプルエー)”でメインボーカルをつとめています。AAAは“Attack All Around(何にでも挑戦する)”の頭文字をとったもので、西島だけでなくメンバーそれぞれがマルチな活躍をしています。

“にっしー”の愛称で親しまれている彼は、2枚目の立ち回りだけでなく、メンバーやファンの前では3枚目な部分も見せ、多くのファンを魅了しています。今回のドラマではどんな表情を見せてくれるのでしょうか…注目です。

これからの活躍が期待される注目女優“森川葵”

森川葵はファッション雑誌“Seventeen”で専属モデルをつとめていた、超若手女優です。映画『渇き。』にも出演していた彼女ですが、現在公開中の映画『ピンクとグレー』での怪演が話題を読んでいる菅田将暉と主演をつとめた『チョコリエッタ』では、専属モデルを卒業する前だったにも関わらず大胆な短髪姿となったことで注目されました。

現在、フジテレビでも人気のバラエティ番組「痛快TV スカッとジャパン」でも度々登場しており、これから幅広いジャンルでの活躍が期待されています。

今大人気の塩顔男子“坂口健太郎”

坂口健太郎といえば、言わずと知れた“塩顔男子ブームの火付け役”となった人物です。ファッション誌“MEN’S NON-NO”の専属モデルをつとめながらも『予告犯』や『海街diary』、『ヒロイン失格』、1月30日公開の『残穢-住んではいけない部屋-』などの話題作にも出演しています。最近ではドラマ「コウノドリ」にも出演しており、その人気はとどまる事を知りません。

バラエティ番組では無邪気でやんちゃな一面をのぞかせる彼ですが、今回のドラマでは、何にも本気になったことがない、自由奔放な役を演じます。

一生懸命人と付き合おうと努力している人を描きたい

坂元作品に登場する主人公たちは一見すると不器用な人間たちばかりですが、とてつもなく魅力的な人物たちばかりです。こうした魅力的な人物を描くようになった背景には、とあるきっかけがありました。

東日本大震災…「最高の離婚」でも登場していますが、この出来事が彼の転機でした。監督や脚本家の中には震災そのものを題材に作品製作にのぞむ人もいました。しかし、脚本家・坂元裕二は直接的な描写は選びませんでした。

私たちは、暗く辛い現実が続く中で少なからず“生”を肯定したい気持ちを持っています。その想いに坂元は注目し、登場人物たちの生命力に託した…それは知らず知らずのうちに、彼の「一生懸命人と付き合おうと努力している人を描きたい」という想いへとリンクしていったのではないでしょうか。

時代の変化の中で、不器用ながらも強く生きようとする登場人物たちの姿が私たちの心に響くのかもしれません

ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』は、毎週月曜日21時から絶賛放送中です。

 

※なお、この記事は「是枝裕和対談集 世界といまを考える1」(PHP研究所:2015年出版)を参考にしています。

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  • ぽんた
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      先生はやっぱ生徒のことを信じなきゃ始まらないのかなと思わされる作品。  しょっぱなから母親が甘やかしすぎててイライラしたが、弟がぐれるあたりから面白かった気がする。  親から見放されることは辛いかもしれないが、弟や弁護士狙う彼のように過度の期待をされることの方が観ていてきつかった。  自分をどのキャラクターに当てはめるかで楽しみ方が変わるような気がする。  
  • ロマ
    3.5
    本の方が好きだったから少し低め
「ビリギャル」
のレビュー(31289件)