忘れていませんか?あの頃の気持ち。大切な何かを思い出させてくれる心に響く映画選

2016.04.13
まとめ

映画と音楽は人生の主成分

みやしゅん

何かを得ることが何かを失うことのように、大人になるということは子供の頃にもっていた“大切な何か”を手放すことでもあるように思えます。私たちは日々の暮らしの中で、無意識のうちに何かあれば無理矢理にでも理由をつけ、自分自身を納得させようとしています…子供の頃だったら「なんで?どうして?」と聞いていたことも、大人になった今では「こうだから」と言って区切りをつけてしまっているのです。

しかし、理屈では語りきれないことがこの世界にはあることを、理解しているはずです。それを気にしないことが大人というものなのでしょうか?

手

今回は、子供の頃に持っていた“大切な気持ち”を思い出させてくれる「子供」が鍵を握る作品をご紹介します。子供が鍵を握る作品は数多く、さらには名作が多いため、大分悩みました…ですので、2010年代に公開された作品の中から3つに絞りました! 3作品ともに「2010年代を代表する」と言っても過言ではない名作たちですので必見です!

ルーム(2015)

最初にご紹介するのは絶賛公開中の『ルーム』です。本作は、公開と同時に「2016年のベストムービー」とのコメントが数多く寄せられている感動作で、アカデミー賞で主演女優賞をとったブリー・ラーソンの演技はもちろん、子役のジェイコブ・トレンブレイの演技も早くも話題を呼んでいます。

るむ

(C)ElementPictures/RoomProductionsInc/ChannelFourTelevisionCorporation2015

本作は、ある日を境に“ルーム(部屋)”に閉じ込められることになった母親ジョイの葛藤と共に、生まれた時からその“ルーム”が全てだと思い込んでいた少年ジャックが、外の世界と初めて触れる瞬間とその後を繊細に描いた作品です。

今いる空間こそが全て

子供にとって“世界”とは、目にしたことのある場所だけです。そのため、いわゆる生活圏内だけが世界だと信じており、本人たちは知らない間にとても閉鎖的な空間で生きていることになります。本作でも、ジャックは生まれた時から母親と2人で“ルーム”で暮らしてきたため、その“ルーム”こそが世界の全てだと思い込んでいるのです。

目に映る全てのモノを「ニセモノかホンモノ」かで、区別しようとするジャック…そこには、監禁されているという事実を知らない息子のために、母親のジョイがついた優しい嘘がありました。しかし、そんな狭い空間をも宇宙空間にすることが出来る子供ならではの想像力をジャックが持っていたことを忘れてはいけません。

私たちも子供の頃は“世界”のことはまだまだ知らなかったはずです。子供にとって目にしたことのある場所が全てであり、その空間に閉じ込められている…しかし、大人になった私たちはどうでしょうか? 子供の頃と比較すると、比べ物にならないくらい世界の広さを知っているはずなのに、自分自身を様々なルールや考えで閉じ込めてしまっているように思えます

力強い、子供が踏み出す一歩

映画では“ルーム”という具体的なもので、閉鎖的な空間を創り出していますが、私たちの身の回りにもそれは目に見えない形で存在しています。学校や職場、友人や家族…様々な人との関わりの中で私たちはそれぞれの“世界”を作り上げています…そして、その閉鎖的な空間に自らを封じ込め、時には息苦しさを感じることもあるでしょう…。しかし、外の世界に目を向ければ、そこが全てではないことに気づくはずです。

劇中でジャックが“ルーム”に「Bye-bye room(さようなら、ルーム)」と別れを告げるシーンがあります。ここで、私たちは大人の想像をはるかに超える子供の力強さに気づかされます。大人になった今だからこそ、あの頃のように力強い一歩を踏み出すべきなのかもしれません

メイジーの瞳(2012)

次にご紹介するのは、主人公メイジーの美しい瞳に、思わず吸い込まれてしまいそうになる作品『メイジーの瞳』です。本作を知っている方は少ないと思いますが、心に響く作品です。

めい

(C)2013 MAISIE KNEW, LLC. ALL Rights Reserved.

少女を孤独に追いやる身勝手な大人たち

物語は、メイジーの両親の喧嘩のシーンからはじまります。メイジーの気持ちなどお構いなしに離婚の話を進めていく両親…それぞれが新しい恋人をつくり、交代で面倒を見る約束を立てるもののいとも簡単に約束を破っていく…。大人の身勝手さに振り回される彼女は、徐々に“孤独”を感じるようになっていきます。

「私の居場所はどこなの?」…目まぐるしい環境の変化の中で、そうした疑問を抱いても決して口には出さないメイジーは誰よりも大人でした。そうはいっても、その苦しみに必死に耐えている彼女の心はゆっくりと、しかし、確実に引き裂かれていきます。そうした中で、いつもメイジーを気にかけてくれたのが、両親の恋人マーゴとリンカーンでした。

「愛してる」という言葉よりも、ただ一緒にいて欲しい…幼いメイジーの願いはシンプルなものでした。

子供“だから”見えるもの

「まだ、子供なんだから」…誰もが一度は口にしたことがあるのではないでしょうか? しかし、子供にも子供なりに考えていること、見えているものがあります。そして、自分自身で人生を選び抜く力も持っているのです。

その子供の生きる力が描かれている本作で重要なことは、ほとんどがメイジーの視点で描かれているということです。同じ目線の高さと視野の広さで描かれているため、全てが映し出されている訳ではありません。けれど、この描き方によって、子供“だから”見えないものがあるのではなく、子供“だから”見えるものがあることに私たちは気付かされるのです。

ものすごくうるさくて、ありえないほど近い(2011)

この『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』は、9.11で父を亡くした少年の喪失と再生の物語です。オーディション番組を勝ち抜いて主役に抜擢された子役トーマス・ホーンの演技が、公開当時話題となりました。

もの

冒頭でも少し触れましたが、様々な経験をしている私たちは、答えがないものもあることを知りつつ、何事に対しても「こういうものだ」「こうあるべきだ」と決めつけがちです。しかし、オスカーは「世界の至るところに手がかりや宝が見つかるものだ」という父の言葉だけを信じ、答えのない世界に「なぜ?どうして?」とひたすらに疑問をぶつけていきます。

理屈だけでは語れないもの

物事は理屈だけでは語れません。冒頭で登場する空っぽの棺桶を埋めている様子を見て、「空っぽの棺桶を土に埋めるのは変だ。これじゃ、葬式ごっこだ」と問いかけるオスカーに、おばあちゃんが「やることが大事なのよ」と答えます。また、中盤での喧嘩のシーンでは母親がオスカーに「どんなに考えても分からないものは分からないの。どうしようもないのよ」と感情的になるシーンがあります。

そう、理屈では語れないものがあることを大人はわかっているのです。しかし、私たちは理屈では語れないものに直面した時、自分自身で創りあげた“勝手な”理由をつけて“勝手に”区切りをつけて終わりにしようとします。もちろん、それは大人になったら「当たり前のこと」として処理していますが、子供にはそのごまかしは通用しません。

「どうして?なんで?」…そう子供に聞かれた時、あなたならどう答えますか? 子供と同じ視点に立って、気持ちを共有する…一見すると面倒くさいことを大人は避けてしまっています。しかし、幼い自分たちが大人たちに抱いていた疑問を、大人になった自分自身に問いかけてみる価値はあるのではないでしょうか。

答えのない世界に問い続ける力

オスカーは父が遺した“鍵”に何かメッセージがある、と信じて鍵穴を探す冒険に出かけます。ですが、少年がたどり着いた先にあったものは、自身が想像していた希望とは程遠いものでした。傷を負った心は簡単には修復できなかった…しかし、深い悲しみを乗り越えようとひたすら葛藤するオスカーは、彼なりの、そして彼らしい答えにたどり着きます。

NHKの大越記者は本作について「区切りをつけて忘れるのではなく、悲しみを乗り越えるという物語は、ある種、子供の視点だから描けた気もします」と語っています。オスカーは自分自身で厳しい現実に目を向け、社会に溢れる矛盾を一つ一つ、真正面から受け止めていこうとするのです。私たちは真正面から向き合えているのでしょうか?

本作は自責の念に囚われた少年オスカーの心を繊細に映し出した、決して綺麗事では終わらない作品であるため、どのシーンを切り取っても心が締め付けられることでしょう。しかし、そこには子供が持つ「答えのない世界に問い続ける力」があり、その純粋で無垢な心に、観ている私たちの心は強く揺さぶられるはずです。そして、隠された心温まるストーリーに涙するはずです。

©2011 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

忘れたくない、あの頃の気持ち。

何かを得ることは何かを失うことでもあります。でも、絶対に忘れてはいけないものがこの世界にはあるように思えます。

個人的な考えではありますが「映画を観て心を揺さぶられる」ということは、その時に、自分自身が忘れかけていた“大切な何か”を思い出しているからなのではないでしょうか?それが何かは、人それぞれ…ですが、その気持ちこそがあなたが大切にすべき“想い”なのだと思います

映画を観て感じたこと、考えたこと…これを機に、大切にしてみてはいかがでしょうか?

記事をシェア

公式アカウントをフォロー

  • RSS
  • せいけ
    4.5
    普通に暮らしてきた人にとっては日常のことなのにすごく壮大に感じられる映画だった 初めて外の世界に出たときに見たものを順に言っていくシーンが異なる世界というものを表現していたと思う 当たり前の日常を過ごせていることに感謝しないといけないと思ったと同時に少し切なくなった 子役の演技が抜群でしかもかわいかった
  • 渡邉花菜
    4.0
    記録
  • やぁこ
    3.5
    自由になれば 幸せになれるとおもったのに 2人だけの5年間の世界には 世界はひろすぎて 普通になることの難しさ
  • きん
    3.3
    狭い部屋で暮らす母と幼い息子。唯一のドアは施錠され、週に一度だけ男が運んでくる「差し入れ」で暮らしている。 いわゆる「監禁もの」と思いきや、話のメインは脱出劇や凶悪犯との戦いではなく「その後」の話。 幼い子供にとって「世界」とは何なのか。「へや」以外を知らない息子をフォローしなきゃと思いつつ、実は自分自身もいっぱいいっぱいの母親が見ていて辛い。 いかにも「映画っぽい場面」から始まるのに、息詰まるほどリアルで深い。時々ある子供の独白は哲学的ですらある。 いい映画だとは思うけど、先が気になる展開がないから長く感じた。
  • かきつばた
    3.0
     マーベルに参加予定のブリー・ラーソンが観たくて鑑賞しました。  キャプテン・マーベルが楽しみです。  
「ルーム」
のレビュー(32216件)