【追悼】ごめんねアントン・イェルチン。ふがいない大人と『チャーリーバートレット』

2016.06.23
女優・俳優

Why So Serious ?

侍功夫

2016年6月19日、アントン・イェルチンが逝去されました。

享年27歳。まだ幼い細面な顔つきで、繊細な若者の心情を細やかに演じることの出来る稀有な存在感がある俳優さんでした。フィルモグラフィは青春物語から、ホラー、SF大作まで多岐に渡り、これからどんな役を、どんな解釈で演じて見せてくれるのか、大いなる期待を抱かせてくれていただけに、その早過ぎる逝去は残念でなりません。

今回は彼の様々な出演作の中でも特に、イェルチンくんでなければ成立しなかった作品を紹介します。

『チャーリー・バートレットの男子トイレ相談室』

antn

秀才な上に金持ちの家で育ったチャーリー・バートレット(アントン・イェルチン)くん。人気者になりたいが故に、のっぴきならない事件を起こし続けて数ある私立高校から軒並み放校されまくり。最終的に公立校へ転入してきます。

ほとんどギャングの様な不良が徘徊する公立校で、エンブレム付きのブレザーを着こなす彼はさっそくイジメに会うのですが、持ち前の口の上手さでイジメっ子すら懐柔してしまいます。

これに味をしめたチャーリーくんは、男子トイレで生徒たちから誰にも告白できない悩みを聞いては適切なアドバイスをし、更には適正な向精神薬まで処方する“カウンセリング”を始めます。

たちまち全校生徒が殺到し、チャーリーは望んだ通りの人気者になっていきました。しかし、彼の焦がれるような「人気者」への渇望の裏には、彼自身の「誰にも告白できない悩み」があったのです。

青春の戦いに勝っちゃった大人

80年代。青春映画の名匠ジョン・ヒューズにより、数々の傑作青春映画が作られました。フェリスはある朝突然にブレックファスト・クラブの主人公たちは「大人」や「大人的なもの」に反抗していました。「あくせく毎日同じことをしたくないぜ!」「大人の決めたレールなんてクソくらえ!」そんな若者らしい反骨魂をたまさか叶えて見せるのも青春映画の役割でした。

『チャーリー・バートレットの男子トイレ相談室』でチャーリー・バートレットと対決する校長先生を演じるロバート・ダウニー・Jrも80年代は青春スターでした。ピックアップ・アーチストでは本気の恋をしてしまうナンパ好きのチャラい若者を、目バリの様な下まつ毛を揺らして演じ、レス・ザン・ゼロでは自堕落で享楽的な「80年代」という時代そのものを代表する存在の成れ果てた姿まで見せてくれました。

しかし、彼を筆頭とした80年代の若者たちは今もなお「あくせく毎日同じことをしたくないぜ!」「大人の決めたレールなんてクソくらえ!」と言い続けているのです。

現在40~50代(つまり80年代の若者)の、こんな「大人」は見かけませんか? 働いた余剰なお金をアクション・フィギュアにつぎ込み、友達と集まってはスター・ウォーズの新作に熱狂し、ベースボール・キャップを後ろ前にかぶってハイスペックなゲームに没頭し続ける……

そんな「大人」の象徴的な存在がアイアンマントニー・スターク/ロバート・ダウニー・Jrです。パートナーと真っ当な関係を築けないまま、一夜限りの相手を毎晩変えつつ、戦闘用スーツ開発に熱中する。そんな大人です。

コドモ大人に対抗するオトナ子供

『チャーリー・バートレットの男子トイレ相談室』のチャーリー・バートレットくんは、金持ちの家に生まれ、ハイ・カルチャーや高いレベルの教育を受け、誰に対しても当たりの良い、たおやかな優等生です。

そんな彼が「人気者」になるために行ったのは、風通しの悪い学校で気兼ねの無い話相手になってやる事。そして必要ならば適正な処方で向精神薬を用立ててあげる事。さらに、気晴らしになる程度にリタリンをパーティーでバラ撒いて風穴を開ける事でした。つまりは「理想的な大人」になることです。

チャーリーが向精神薬の処方箋をクスねる時に着ているTシャツには次のメッセージが書かれています。

People Like You, Are The Reason. People Like Me, Need Medication.(アンタらみたいのがいるから、ボクらには薬が必要)」

かつての青春映画の主人公は、大人に逆らう不良や、規格外な考え方を持つはみ出し者でした。真面目な主人公の場合には、社会からはみ出していく過程が描かれていました。ところが、今の青春映画ではむしろ大人よりも大人であることが求められるのです。精神的に子供のままな大人がいるから、年齢的な子供が本来あるべき子供として生きていくには、大人よりも大人な子供が必要なのです。

ごめんねアントン。そして、ありがとう。

アントン・イェルチン

出典 : wikipedia photo by Philippe Berdalle

そんなふがいないアラフォー/アラフィフの大人たちのせいで、青春映画もその構造から変わらざるをえなくなりました。当然、主人公のタイプも変わります。かつての青春スター、ショーン・ペンマット・ディロンロバート・ダウニー・Jrの様な不良タイプでは勤まりません。まじめに物事に対処する誠実なイメージを折れそうな肉体で体言できる、そんな俳優が求められたのです。

その要望に見事100%応えているのがアントン・イェルチンくんでした。

細い線で描かれた様な繊細な顔立ちと体躯。豊かでありながらどこか寂しげな表情。その存在そのものが、そのまま現代の若者を象徴しているように思えます。その彼が若者の困難や悩みを見事に表現したことで、救われた子もいたでしょう。

いまだにアクション・フィギュアを集め、スター・ウォーズの新作に一喜一憂し、ハイスペックのゲームを楽しむアラフォーの筆者は、そんなイェルチンくんに謝りたい気持ちでいっぱいです。

ふがいなくてごめんね。そして、多くの若者を代弁してくれてありがとう。

 

 

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  • みさキチ
    4.0
    ロバートダウニーJrのキャラクターがあるからこその、この映画て感じ。 主人公より、ダウニーの方が気になった。 あと、キップの部屋にマリリン・マンソンのポスター飾ってたのは、あからさますぎかな、と思った。 アントン・イェルチンの目つきに陰りがあって、主人公の不安定さみたいなのが見れたから、そこもポイントだなぁ。
  • Motchi
    3.5
    邦題はクソですが、中身はとても良かったです。 年頃の高校生らしく、初体験(サラッとそれっぽい描写があるだけ)やタバコ、薬の描写があるので、幼い子供とは見たくありませんが、主演の子も、ロバート・ダウニー・Jr.も好演していて、最後はみんなハッピーエンドでほっこりします。 主演のアントン・イェルチンくん、2016年に事故で亡くなっていたのですね。 スタートレックなどにも出演し、JJ自ら手書きで追悼文を発表しました。 とても才能あふれる、好青年だったようです。 この映画を観た後に知っただけに、悲しくなりました。
  • 7
    -
    記録
  • とも
    4.0
    アントンくんとアル中な悩めるだうにパパのシーンがいいです!
  • おやつ
    -
    ❤️
  • ryostatham
    3.5
    邦題はB級コメディ、内容は良き青春映画、ハイでぶち上がりながらジャズ引き倒すシーン最高。
  • 3.0
    (-ω-)ンーイイ
  • ロビンソン
    3.7
    今年最後の映画はこの作品で。 すごい変な邦題ですけど、内容はこの通りです笑 転校生のチャーリー・バートレット。彼は頭脳、ルックス、社交性すべてにおいて高い能力を持つが、ある問題行動で在籍していた高校を退学となっていた そんな彼は転校先の高校で、ある出来事を機に"人気者"へと成り上がる 学生時代に「人気者」いませんでしたか?? 誰からも好かれて友だちも多い。先生とも仲が良い、いわゆるリア充 そんな人気者になりたいチャーリー。 ちょっと変わってる彼。最初は浮いてるんだけど、様々な手を使って学校の人気者へ 学生時代って人気って大事ですよね~ 学校の中の世界が全てで、社会の縮図みたいです この映画でも様々な立場の人たちが出てくる。不良、パリピ、ぼっち…などなど 立場は違えどみんな学生ならではの不安を抱えてる 大人は大人なりに悩みを持つ。ロバート・ダウニー・Jr演じる校長との絡みがよかったです! 全体的に良かっただけに気になるところが目立ちました チャーリーが以前どんな風だったのかをもっと掘り下げてもよかったのでは。彼が結局どういうキャラなのかいまいちはっきりしないです あと成り上がる過程(相談に乗るところ)もうまくいきすぎ感があって、もう少し何か欲しかった でもこの作品ではこれらのことはそこまで重要視されてないかもしれないですけど笑 青春映画のなかでも隠れた名作 主演の方は最近亡くなられたみたいで残念です… 長くなりましたが最後に。 私の拙いレビューにいいねやコメントありがとうございました(*´∀`) みなさんと映画を通じて関われることがとても幸せです(о´∀`о) こんな私ですが、来年もよろしくおねがいします。
  • なお
    -
    日本版のビジュアル(悩みとおしりはよく拭いて、、⁈)が酷すぎてアレだけど、内容はかなりよかったです👐
  • まる助
    4.0
    タイトル通りの相談室をしていくし、コメディもするんだけど思春期の言葉にならない怒りとか戸惑いとか苦労を代弁してくれるような感じ。高校生と大人(親)達のすれ違いが見ていて共感できる。 自分の事を分かってくれない親に怒りを持ったり、夢を実現させたいけど親には言えなかったり、自分が必要じゃない人間に思えたり、そんな高校生達に大人は、すぐ逃げ出すとか楽をしたがるとか言う。特に思春期の高校生とか高校生を持つ親に見て欲しい、大人はこう思ってる、子供はこう思ってるって分かりやすいと思う
  • Miki
    3.7
    こういう下がり眉の可愛い顔めっちゃ好き 地味にさらっとドレイクが出ててめっちゃ笑ったんだけど バックシートデートのとこ好き
  • ゆうや
    3.6
    最初に薬売った時わらった
  • 鳩島
    3.4
    まじめだった
  • 生姜焼き
    3.1
    全然内容を覚えてない。
  • ていぞう
    3.7
    天才学生のカウンセリング。RDJ目当てで観たけど、ソツがないコメディで面白かった。
  • ChioriTakeda
    4.0
    ダウニー関連で見ましたが、ジャケットと邦題から想像していた話と全然違くて驚きました。 アントンイェルチン、下がり眉でハンサム! 気弱そうに見えるのに学校の人気者になるために悪巧みをしてあっという間に人気者になるのが面白い。 10代ならではの青春!という映画でした。 頭がいいので自分で調べて演技して医者を騙すのも面白いです。 ダウニーの校長も可哀想ですが最後の方はいい感じになっていました。 アントン本当に綺麗な顔でそして白い肌、素敵です。 もうこの世にいないと思うと悲しい限りです。 お母さんどこかで見たことがあると思ったらマリアスターク!!
  • やち
    3.9
    アントンくん追悼の意味を込めて久しぶりにDVD開けました。 RDjの、娘思いで頭のカチカチな校長と、そんなお父さんが昔は好きだったけどこのままじゃダメだと思う娘と、 学校でスターになりたい金持ちで頭が良くて容量もいい高校生の話。 パッケージからイメージするよりずっと深い話でした。 高校生(というか学生)って学校が世界の全てだよね。本質とはぶれるけど。
  • ナキ
    3.6
    アントンくんとダウニのシーンが好き
  • とらねこ
    3.4
    TSUTAYAで何故か英語版が届いたのだけど、これは何か間違いだったのか…
  • つおし
    4.3
    音楽がよくて、キャラと俳優がよくて、それでこの全体的雰囲気がすきなんだな。 いかにも10代って感じ。 あとバックシートのとことかいい。
  • 岡本46
    3.8
    皆案外良い奴笑笑 個人的には不良とヤりまん(本当は断れないだけ)の恋が良かった。 あいつ絶対根は良い奴なんだよ笑笑絶対そうだ笑
  • わい
    -
    アントン追悼<DVD鑑賞記録> 初鑑賞。
  • Kota
    4.2
    やっと観れた…。レンタル見つからなかったので購入!!! アントンの魅力が全てつまったような作品でした。最高です。 天才セレブ高校生チャーリーバートレットは彼にしか演じれないね。 ジャズピアノ弾きながらドラッグで狂ってくシーンがめちゃセンス感じた。 アントンが生き生きしてて涙がでました…。彼は映画の中で生き続けます! 邦題はださいけど、ほんとに名作です。みんなに観て欲しいです!!DVD貸します!笑 余談ですが、この度filmarksの人気ユーザーに認定されました! いつもたくさんのイイね、コメントありがとうございます!これからもたくさんいい映画に出会いましょう!!!
  • りょけまん
    3.9
    10代なんてみんな考えることは一緒だ 人気者になってどうするかが大事かだ チャーリーのお母さんいいお母さんだし 校長先生のロバートダウニーjrもいい役だし 結局10代なんて大人から言わせたら子供なんだ。 ドレイクがでてきた笑
  • mimirin
    4.5
    ストーリーはよく理解出来るけど色々とごちゃ混ぜなんだけどなんか好きだなぁこの映画‼︎ 若くてハンサムなのに早すぎるよ…アントンイェルチンご冥福お祈りします。
  • ニック
    3.0
    十代の若者の関心事は皆の人気者になってリスペクトされること。 本作の主人公、お金持ちでちょっと変わった天才君もその一人。 トイレ相談と主治医からいただいたヤクで成り上がっていく。 ダウニーJr.も元アルコール依存症のくたびれた校長役で出演。 十代の頃に観ていたらもっと共感出来たのかな、残念。 主演の方、亡くなっていたと聞いてビックリ、「オッド・トーマス」好きだったのに… ご冥福を御祈りします。
  • SHiN
    -
    記録用。
「チャーリー・バートレットの男子トイレ相談室」
のレビュー(543件)