新生『ゴーストバスターズ』のクリス・ヘムズワースは、なぜ底の抜けたアホなのか?

2016.08.19
洋画

Why So Serious ?

侍功夫

メイン・キャラクターを女性にバトンタッチした新生ゴーストバスターズが日本でも8月19日から公開された。

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本国アメリカでは「トウのたったオバハンばっかし!」といった、知性の欠片も無い罵詈雑言を浴びせかけられ、黒人キャストのレスリー・ジョーンズへの執拗で差別的なツイートが問題となりアカウントを永久凍結させられたドナルド・トランプ支持者がいたり。と、ネガティブなニュースが続いたが、フタを開けてみればそれら女性差別をする側の浅薄さも含めて笑い飛ばす大爆笑怪作である。

また、予告編などでも片鱗は見られるが、“クリヘム”ことクリス・ヘムズワースのアホ演技は凄みを纏わせるほど圧巻のアホ加減だ。「おバカ」などという中途半端な表現では間に合わない。地獄の蓋が開いたようなアホなのである。

本項ではクリヘムの鬼気迫るほどのアホさ加減を考察していこうと思う。

ヒロインが添え物だった文化

ドラマや映画の中に登場する女性を「紅一点」とか「華をそえる」と表すことがある。

刑事ドラマ「太陽にほえろ!」シリーズには婦警の制服を着た内勤の女性警察官が登場する。「チャコ」とか「アッコ」といった役名こそありはするが、捜査にはほとんど参加せず、聞き込みや捜査から帰ってきた刑事たちにお茶を出すのが主な役割だ。

インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説でいきがかり上、インディと冒険をするハメになる歌手のウィリーは、虫や野生動物を前にギャーギャーと騒ぎ立て、インディを更なるピンチに陥れる。

ジャッキー・チェン作品でのマギー・チャンの役割は「華をそえる」の最たるものだろう。ポリス・ストーリー 香港国際警察シリーズのフィアンセ「メイ」は早とちりで浮気を疑い、八つ当たりしてジャッキーをやきもきさせるためだけに存在するキャラクターである。

ことほど左様に、映像表現の中で女性は長らく「添え物」の役割を担わされてきた。

もちろん「全ての作品」では無いし、たくましい女性が主体性を持って行動する作品もあるのだが、メインストリームではメインの男性キャラクターにしなだれることこそがヒロインの役割であった。

ジェンダーの不平等

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新生『ゴーストバスターズ』では、メイン・キャラクターの性別が変更されメンバー4人は女性となっている。年齢はクリステン・ウィグメリッサ・マッカーシーレスリー・ジョーンズが40歳以上。最年少で現在32歳のケイト・マッキノンはエキセントリックにメンバーを引っ掻き回す役どころだ。

これを聞いて「果敢なキャスティングだなぁ」とか「なぜ若い美人を配役しなかったのか?」と思う人は、逆を考えてみるといい。

例えば50歳を越えるジョージ・クルーニーブラッド・ピットを「主役を張るには年寄りだ」「オッサンが若ぶって見苦しい」とは、たとえラブ・ロマンス映画であったとしても言わないだろう。49歳のヴィン・ディーゼル新作xXx<トリプルX>:再起動でヒロインを務めるのは30歳のディーピカー・パードゥコーンだが約20歳の年の差を「キモい」と言う人もいないハズだ。

男が主演で若い女がヒロインなら何の文句も無く行えていたことが、なぜ男女を入れ替えるととたんに無根拠で差別的な言動が、当然といった風に行われてしまうのだろうか?

“ヒロイン”としてのクリヘム

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新生『ゴーストバスターズ』で受付係に採用されるのがクリヘム演じるケヴィンである。筋骨隆々とした肉体で栗色の髪に青い瞳と、見た目には非の打ち所が無いのだが、しかし底抜けのアホなのだ。

よりによって「ゴーストバスターズ」の事務所受付に応募したのにも関わらず幽霊は信じないと言ってはばからないし、デザインが出来るからと言うのでロゴのデザインをさせたらセブン・イレブンのロゴを何くわぬ顔で提出してしまう。そんな彼でもメンバーのエリンが気に入ってしまったために採用となり、本当に何も出来ない完全な“事務所のお飾り”に収まってしまう。

アホだけど若い美女が“社長にかしずく秘書”といった役どころに収まることへ違和感を唱える人は少ないだろう。しかし、それは単に「長く、広く、そういった風潮が当然のように行われていた」という慣れの問題だけで、その逆となるととたんに違和感が醸し出される。

つまり、かつて多くの映画やドラマで当然のように行われていた、従来型の「添え物としてのヒロイン」の性別を「美女」から「色男」へ変えることで、その歪さを浮き彫りにしたのだ。それまで全く不問に付された事柄がいかに異常でグロテスクであったかを突きつけたのである。

ただ、違和感の要因は浮き彫りにされた歪さだけではない。クリヘム/ケヴィンは「今まで女性にしてきたことの逆をやっただけ」には収まっていない。アホさが飛びぬけ過ぎているのだ。登場場面の全てで、ホンモノの狂人としか思えないアホさを発揮し続けるクリヘム/ケヴィンの“色男の3歳児”のような狂気は、新生『ゴーストバスターズ』を単なるリメイクから別次元のレベルへ押し上げている。

(参照記事:【レンタル開始】『マイ・インターン』が叶えたジェンダーの対称性は「萌え」?

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  • MasaakiSonoda
    3.8
    やっぱり楽しい映画ですね。ハイ。笑 エンドロールの最後まで楽しませてくれるのもさすがです。 (WOWOW 吹き替え)
  • gamathisan
    2.5
    最後の戦いが長いかな。 寝てしまった。
  • けろ
    3.6
    テーマソングもスライムもリメイク元を踏襲。 でも主役は3人のヲタっぽい女性3人組に変更、なんでだ。 おっさん3,4人じゃ視聴率取れないからか。 微妙なおばちゃん3人でも同じようなもんだと思うけど面白く仕上がってるのでまぁいいか。 そして今回もスライムでべっとりの洗礼。 入居する物件も初代と同じ物件……かとおもいきや家賃高すぎて入れずw ビル・マーレーやシガニー・ウィーバーも出てくるし。 ちゃんとマシュマロマンも出てくる。
  • ヨッシー
    3.8
    WOWOWで放送したものを録画して鑑賞。 前シリーズを観た方が面白い。 前シリーズのパロディや出演者が登場するから。 笑いも寒くなくて、ストーリーもまあ面白い。 次回作が出来て欲しい。 吹き替えが下手なのでそれだけが難点。 オススメ。
  • Tsukasa
    -
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「ゴーストバスターズ」
のレビュー(19919件)