映画『何者』菅田将暉演じるコータローを中心に、それぞれのキャラクター像に迫る!

2016.10.26
邦画

映画デートでモメてみたいショタコン文筆家

martha

今月、10月15日に公開になった『何者』。

何者 ポスター

直木賞を受賞した朝井リョウ原作の同名小説を元にした作品である。

小説家・朝井リョウと言えば、『桐島、部活やめるってよ』でのデビューが記憶に新しい。こちらは学校の中でのそれぞれの立ち位置や役割、心理描写などが鮮やかな作品だったが、本作品『何者』では、就職活動に奮闘し頭を抱える大学生の男女5人が主人公だ。これを、今人気も実力も確かとする俳優たちが演じている。

物語の主観となる主人公は佐藤健演じる、真面目な大学生、二宮拓人(タクト)。就職活動を始める前は演劇に没頭し脚本を書いたり稽古に明け暮れる日々を過ごす。作品を一緒に作っていた友人は演劇一本で暮らす人生を選択したのに対し、タクトは就職活動を始め会社員になることを選択する。

そんなタクトとルームシェアで同じ部屋に暮らすのが、今回スポットを当てたい神谷光太郎(コータロー)だ。ノリがよく誰とでもすぐに打ち解ける才能を持ち、自身が組むバンドでもヴォーカルを務める所謂”軽い”天真爛漫な大学生を菅田将暉が演じた。

何者2

コータローが見せる「あざとさ」「ズルさ」とは?

何者7

タクトが部屋に帰ると、茶色く明るかった髪を黒に染めたコータローが風呂から上がり出てくる。バンドも引退したし、真面目に就職活動がんばる!と宣言し、色々教えて欲しいと、就活の先輩であるタクトにお願いするのだ。

コータローはその人懐っこさが売りだ。大学に入ってすぐの飲み会で場を盛り上げ、タクトや有村架純演じる田名部瑞月(ミズキ)に声をかけすぐに打ち解ける。少し高すぎるくらいのテンション。何も考えていなさそうな軽い言動。街でやたらと騒ぐ大学生を見かけたりすると、思い浮かべるのはコータローのような人物像ではないだろうか。

深刻さを欠いて生きるのは、時にズルくもある自分の考えや思いを生のまま外に出すのは誰にでも抵抗があるからだ。取り繕い、笑うのは楽ではないかもしれないけれど、「あいつはああだから」と言わせてしまえれば勝ちかもしれない。コータローにはそんなズルさがある。

ミズキとの関係性も、就職活動が誰よりも順調に進むのもタクトにとっては嫌味でしかない。けれどそれを責める綻びも見つからない。女性のような綺麗な顔面で大きく口を開けてにかっと笑い、お願いしたり謝ったりすることで相手に何も言わせなくさせてしまうのは間違いなくズルい

少し甘えたような表情は、あざといくらいだ。コータローはあの笑顔で誰にも破れない鉄壁を作りあげている。

「現実」と「ネット」の中の自分

何者8

本作品で重きを置かれるのが、現代では当たり前に日常の一部となったSNSでの発信。

タクトは、一緒に住むコータローや、周りにいる人間のTwitterのツイートをチェックし、呟きからその人間性や考えを分析している。そして就職活動に対し感じたことや、経験を重ねるごとに得た知識を呟いている。

コータローは、Twitter上でも明るいキャラクターを壊さない。自意識をひけらかしたりもしないし、あえて自分からSNSと距離を置くようにしている印象も受ける。承認欲求に関しても、あまり人付き合いに悩んだことがない彼故か、他のキャラクターよりも執着がない。

タクトとコータローの部屋の上に住む就活生の小早川里香(リカ)もまた、初めの登場シーンから強烈な雰囲気を醸し出す。二階堂ふみのハスキー気味の声が、明るく仕切り屋なだけでは無い彼女の性格を表すようだ。

巷で言う「意識高い系」代表のような女子大生だが、彼女の少し行き過ぎたSNSの使い方にコータローは度々嫌悪を示す。そんなコータローの意見も含め、あくまで客観的に見ているスタンスを崩さないタクトの表情が印象的だ。

たった140文字で人間性や考えを知るのは無理なはずなのに、そのたった140文字に含まれる”何か”が強い意思を持つことに気付いているから、私たちはそれを自分の分身のように発信し続けるのかもしれない

フォロワーの数や「いいね!」の数は、自分自身が肯定されている数のような気分にさせる。またSNSは、現実世界では思っていても言えないことを吐き出す場所にはふさわしい。その魔力に依存し取り付かれてしまうのはもはや自然なことだ。でもそれだけになってはいけないと思う。

現実で人に気を使い疲れてしまう自分も大事にしたい。相手とぶつかることを避けてネットの中だけで生きていても、”何者”にもなれないことを改めて突きつけられる。

ゾクゾク冷や汗が出るような登場人物のリアルな描写

何者5

本作品の最大の魅力は絶妙な”リアル”にある。登場人物どのキャラクターをとっても、「こういう奴いる!」と思わず知っている誰かを思い浮かべてしまいそうなほどだ。

オシャレすぎる生活やファッションで周りを固め、就職活動をバカにしながら自分は人とは違いますオーラを漂わすリカの彼氏、宮本隆良(タカヨシ)なんかは特に分かりやすい。長すぎる前髪、おしゃれ眼鏡、人を小馬鹿にしたような目線。演じる岡田将生にぴったりはまり、彼の新しい役者としての一面に出会える。

画面いっぱいに映るTwitterの呟きは、アイコンや@以降のIDまで、どこかでタカヨシに出会ったことがありそうな気がするほどに細かい設定だ。就職活動なんかや世代ごとに行き当たる問題に自分から距離を置いていた私にとっては、目を背けたくなるようなキャラクターだった。

他にも、タクトがテーブルの上で食べ頃を待つカップラーメンの蓋の上にスマートフォンを伏せて置く場面や、コータローの無造作で毛先の傷んだ髪型、ミズキがあえてコータローではなくタクトに電話をかけるシーンなど緻密に作られた現実感がひどく痛い。演出だとは分かっていながら、誰にも見られたくない自分を見られたような気にさせられてしまう

そんな中、山田孝之演じるタクトの先輩は時代に流されず地にしっかり根を生やし生きている印象を受けるが、彼の発する一言一言はタクトだけではなくこちらまでピリピリと痺れさせる。姿勢のよい後ろ姿が少し憎たらしいくらいに。

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そしてコータローの鉄壁は崩れないように思われたが、ひどく酔った日にタクトに本音を漏らすシーンには唾を飲む。まるで自分がタクト自身になったかのような錯覚を覚え、ナイフを一突きで刺されたように心臓が轟いた。しかし、あのコータローの言葉も計算し尽くしたものではなかったのか。全てを知っている故の言葉だったとしたら・・・。

そこから作品はガラッと纏う雰囲気を変える。結末まで一気に走り出し、観る者がどこかで恐れていた不安や身に覚えのある罪悪感などをかき乱していく。さすが劇作家でもある三浦大輔監督ならではの演出に、ラストには長い戯曲を読み終えたかのような充足感を得た。

『何者』かであることへの執着

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全く違う5人の言動や思惑や、仲間やライバルに対する妬みや嫉み。どの人物にも、自分と重なる部分があるから面白い。誰のことも理解できるし、したくもない

登場人物の彼らと同じくらいの歳頃にこの作品を観ていたら、と考えると恐ろしくなる。それほどに人間の真理を突いた絶妙な演出や描写が素晴らしい。見逃すにはもったいない。本当の自分なんて、環境や状況によっても変わってくる。それでも「誰か」でいたい。「何者」かでいたい。不確かではなく確かなものを求めてしまう。きっとそれはいくつ歳を重ねても変わらないのではないだろうか。

本作は至極のエンターテイメントだ。是非劇場に足を運び、肌で感じて欲しい。

(C)2016映画「何者」製作委員会 (C)2012 朝井リョウ/新潮社

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  • indie
    2.0
    小劇団サイコー! SNSクソ! 就職を通して何人かの思考模様を描くのかと思いきやイイ奴とイヤな奴を描いただけで更に目的を持って物事に真剣に取組む奴(劇団員、バンドマン、家庭の事情持ち)こそ就職出来る人的な位置付けにしてある事に衝撃!バンドマンや劇団員こそ社会に迎合しない人達であるはずだから参考にしてはいけないはずなのに。 やたらと小劇団を持て囃し(観たくなるような)、SNS中毒者を地獄の使者の様に扱うのは製作者の怨嗟的ルサンチマンを感じずにいられない。
  • とり飯
    3.0
    就活する大学生の映画 3年後の自分をイメージできない人にすすめたい 原作小説「何者」をなぞった映画 「何様」の内容が含まれていないせいか、全体的に薄味(-1) SNSの使い方も「当たり前じゃないの?」と思ってしまい(-1)、これは自分に合ってなかったみたい 音楽がいい 舞台演劇を使った演出は素晴らしい 光太郎のバンド活動に比べて、拓人がほぼ毎回「その…エンゲキ?w」と小馬鹿にされる描写もリアルだった 「いるよねこういう奴」のどれかに自分も属してる そう思いながら観ると、反面教師みたいな映画だった 就活で採用されやすいタイプ(最初の2人)みたいになれたらいいね
  • Saki
    3.3
    就活を迎えたSNSを使いこなしている若者達の映画。 原作の方が好みかな。言いたい事は、伝わったと思う。
  • カワウチケンタ
    3.2
    登場人物がみんな痛い笑 特に二階堂ふみ!あんな奴嫌い!SNS社会の闇を観た。
  • okada*
    3.3
    こういう人実はいっぱいいるんだろうな… 誰かと比べて自分は違うと思いながらなにも成し遂げてない。 批評するのでなく、常に当事者でいたいと思った。
  • 北側紘史
    3.5
    ちょうど就活前に原作を読んでいて、 イメージがあっただけにズレが残念。でも面白い。
  • Na
    2.9
    キャストは好きな人ばっかりだけど内容はいまいち。 現代的な映画な印象。
  • ナツミ
    3.0
    記録
  • ヒトデ
    -
    記録
  • ReiMasada
    4.0
    もともと小説で読んだけど、音楽やダンスが良い。その場の雰囲気がとてもよく伝わってきて映画でも良かった。
  • Nami
    3.5
    自分の将来について考えさせられた。なおさら不安にもなるし頑張らなくてはとも思える作品だったなぁ
  • asahimari
    4.0
    面接をする側になっても、自分の就活時の不安とか焦りを未だに覚えている。 「自分は何者で、これから何者になれるのか」 自己分析して、面接受けて、ってしてるうちに、何となく自分の力量が見えてくるもの。でも、周りに弱みを見せたくないから、スマートな就活スタイルを装おうとする。 今になって思うけど、採用する立場からすると、見たいのは装ったスマートさじゃなくて、本人の素の部分なんだろうな。 結局、社会人になったら、恥かいて挫折して…の繰り返しでお給料もらう事になるんだから。 まあ、そんなこと当時の自分も微塵も思ってなかったですが。
  • きい
    -
    原作読みたいと思った。 なんだかしっくりこない感じ。
  • Micron
    2.6
    ちらほら匂わせといて最後にたかよし(岡田将生)のセリフでどーーん‼︎って感じ。原作よんでみたくなる。ところどころで感じた違和感とかイニシエーションラブに似てるのかなと、漠然と感じた。 あともっと中田ヤスタカワールドなのかなって思ってたけどそーでもなかった。
  • YuyaKuroki
    3.0
    見栄っ張りのプライド高いやつに限って失敗してく話 反面教師
  • ヒールストップ
    4.5
    60分くらいに感じた。面白かった。
  • Yumezi
    1.3
    これで終わり?って感じ。 本が読みたくなった
  • Enpy
    3.8
    過去見 二階堂ふみ
  • dml
    3.7
    就活をテーマにした、群像劇。 絶対に就活中には観ないで下さい。 就活やSNSをリアルに感じられるかどうかで印象が違うのではないでしょうか? これは、観た人が、就活をしたかどうか、いつ頃したのかで感じ方が違うと思います。 個人的には、デフォルメしている部分はあるものの、かなりリアルに感じました。 あー、こんなことあったなあー、こんな奴いたなあというのがやはりありました。その中に含まれる、自分の目線や感情が、刃物になるというか‥ ある意味、鑑賞者としての安全圏が脅かされるようで、かなり怖かったです。ホラーですよ、これは。
  • ナナ
    2.6
    Twitter怖いね
  • まこ
    -
    記録
  • 小夏
    2.7
    新しい感じはしたけど結局よく分からなかった。常に居心地の悪い感じがしたけどそういう映画なんだろうなと思う。終わり方に納得がいかないけれど自分の理解能力のせいかもしれない、、、
  • yuka
    4.1
    観終わったあと、心にずどんとくる。自分自身も何者なのかわからなくなる。キャストがよかったな。
  • ryoco
    3.3
    SNSにはもれなく鍵をかけましょう。 マウンティング、監視、自己顕示欲、すべて渦巻いている友人関係は怖い… 自分をよく見て欲しい!その気持ちが舞台というステージで表現していたのはよかった。
  • ちょん
    3.0
    記録
  • aya
    3.0
    飛行機でみたよよ。 まず言えること、 これは小説のがいい! それから、二階堂ふみの役こわすぎ。
  • てっぺい
    3.2
    ツイッターやめたらええやん
  • しゅーた
    3.5
    有村架純と友達になって、一緒に就活したい大学生活だった。結局バンドマンに取られるけど
  • anri0829
    -
    3.20飛行機の機内で。 就活中こんな人いるよね~って映画で、若干人間不信になりそう。けど、周りもこんな感じなんだって安心する。
  • やまもと
    2.8
    あせる!
「何者」
のレビュー(17705件)