後世に残る傑作の誕生!3900万円の支援金を集めた『この世界の片隅に』の魅力とは

2016.11.09
アニメ

映画と現実を行ったり来たり

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2016年11月12日(土)に、こうの史代原作、片渕須直監督作品『この世界の片隅に』が公開されます。

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(C)こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

本作は2015年3月にスタートしたクラウドファンディングにて、3000人を超える支持者から目標額を大きく上回る約3900万円(39,121,920円)の支援を集めたことで本格的に制作が決まりました。

作品完成後に試写会で上映されると、その魅力に瞬く間に心を奪われる人が続出。SNSや各メディアにおいて絶賛の声が多数あがっており、その数は日々増え続けています。

なぜこれほどまで多くの人々が本作の制作・公開を希望したのか、これから鑑賞される多くの人々の心を動かす傑作となる見どころを以下にて紹介します。

戦時下で強く生きた人々の記憶がスクリーンを通して疑似体験できる

終戦から70年以上が経ち、実際に第二次世界大戦を経験した人も少ない今の日本においては、戦時下の体験談を聞くことも難しくなってきました。

実際に戦争体験をしたことのない私たちは、当時の日本を数少ない映像や写真、残された文献、これまで作られた戦争をテーマにしたドラマやアニメ、映画作品からイメージすることが一般的ではないでしょうか。

戦時下の日本を描いた作品と聞くと、多くの人が恐怖や残酷さ、悲しさという、いわゆる負のイメージを抱くと思います。しかし、まず一番にお伝えしたいのは、本作はこれまでの戦争を描いた映画作品とはひと味もふた味も違う魅力が詰まっているということです。

当時の厳しい日本の状況を鮮明に描いたアニメーションでありながら、日々を丁寧に生きる主人公すずと、彼女を取り巻く家族や広島で暮らす人々の姿が、スクリーンの向こう側に生き生きと映し出されます。

そこには、戦時下の日本で貧しいながらも前を向き、支え合う人々の繋がりや営みが手に取るように感じられ、鑑賞者はまるで自分がその時代、主人公やその家族と共に生きているかのような錯覚に陥るでしょう。

戦争は映画の中のどこか非現実的な話ではなく、私たちが生きるこの日本で実際に起こり、私たちの家族や祖先がその時代に実際に暮していたということ、その出来事は今現在と地続きの出来事であるという感覚を体感できるのです。

見どころ1:魅力的なキャラクター達

この作品の主人公であるすずは、絵を書くことが好きな少女です。

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(C)こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

のんびりしていて少し抜けたところがありながらも、なぜだか憎めない性格のすずは、広島市江波で生まれ育ち、18歳で呉市に嫁ぎに行きます。そして彼女を取り巻く家族や街の人々は、みなそれぞれ短所も長所も含めて優しさと人間味で溢れています。

すずの声を担当したのんさんはじめ、声優陣の素晴らしい表現力によってそれぞれのキャラクターがスクリーン上で本当に生きているように感じられ、一人一人の表情や細かい所作から目が離せません。

見どころ2:スクリーンの中で蘇る当時の日本

こうの史代さんは原作を描くにあたり、写真や資料を基に話の舞台となる広島の町や呉の風景、気候、人々の食事、生活様式を漫画の中で忠実に再現しています。

それを受け片渕監督は、原作を映画化する際に改めて当時の資料を集め直し、劇中に描かれる町並みや家の中、着るもの、食べるもの、海に浮かぶ戦艦一隻一隻まで、当時の人々の暮らしをそのままスクリーンに蘇らせることにこだわったそうです。

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(C)こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会

細かな部分まで細密に描き込まれた画面は1シーン1シーンに見応えがあり、筆者は作品の鑑賞中、当時の日本で実際に自分が生きているような感覚を何度も味わいました。

見どころ3:アニメーションだからできる表現

全編を通して、水彩タッチで優しいながらもテンポよく紡がれるストーリー。

ネタバレになってしまうので詳しくは書きませんが、作中のポイントとなるいくつかのシーンでは音楽とアニメーションの効果が最大限に生かされた幻想的な(そして衝撃的な)描写がいくつか登場します。

戦争という出来事が、毎日を丁寧に生きる人々にどれほど大きな影響を与えるのか。アニメーションならではの表現方法によって表現されており、それらは観賞後も人々の心に強く残るシーンとなるでしょう。

生きるということに心が震え、必ずもう一度観たくなる。

この世界の片隅に イラスト

上記の見どころ以外にも、さまざまなシーンで”当時の人々にとって戦争がどのようなものであったのか”、言葉では語られないさまざまな意味が登場人物や風景描写に込められており、観れば観るほど新しい発見が見つかるはずです。

戦争映画を新しい切り口で描ききった、後世に残る傑作となるであろう本作をぜひ劇場で体感して下さい。

エンドロールの最後の最後まで、作品に関わった全ての人、そして鑑賞者への愛が詰まっています!お見逃しなく!

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  • まさやん
    4.8
    2016年に観た映画で文句無しのベスト1。 こうの史代さんの原作も素晴らしいけれど、映像化されてなお魅力の増している珍しい好例。 のん(能年玲奈)の声の演技がとにかく素晴らしい。
  • さささ
    4.5
    ある意味究極の日常系。「戦争があった」けどその中でも彼女達「普通に」生きていた。私たちと何ら変わりなく。それでもたくましく生きる姿には胸を打たれた。戦争のために沢山我慢して、耐えて、色んなものを失って、負けて…でも明日は来るし、明後日も1か月後も普通に来る。 生きている事。今「普通」に生活していることを改めて考えた。
  • Yas
    4.3
    余韻がすごかったです
  • TomoyaMizukami
    5.0
    つらい。 楽しい家族も、幸せな暮らしも、生きているうちに少しずつ何らかの問題を抱え、いずれ、失ってしまう。 そしていつかは、自分自身も。 いま自分が持っているもの、周りの人、何より自分自身を、大切に生きていきたい。 なにか問題が起きても、手を取り合って、どんな形であれ乗り越えていきたい。 舞台は戦時中の日本、広島。 主人公のすずは、ちょっぴりぼんやりしているけれども、絵を描くことが好きな平々凡々な女の子。 普通に暮らし、普通に成長し、普通に嫁に行き、小姑との関係が上手くいかなくても、優しい夫、義両親に支えられ、小さくも普通の幸せを手にしていく。 少し苦しくて、でも幸せな、当たり前の毎日。 そんな毎日に、戦争が徐々に暗い影を落としていく。 空襲が増え、配給が減り、男は戦場に駆り出され、親しい人が亡くなっていく。 だが残された自分達は、それでも生きている。生きて、耐えて、戦って、そして生きなければならない。 歯を食いしばって、お国のため、亡くなった人のため、そして自分達のため。いつかやってくる当たり前の日々のために。 何があっても毎日は続く。 親しい親戚を失っても、思い出がたくさん詰まった身体の一部を失っても。 毎日はそれが当然かのように、当たり前に過ぎていく。 毎日、少しずつ、沢山のものを失いながら、自分達は、生きている。 沢山の失った幸せがありながら、すずと周りの人々は、強く生きていた。 そして、強く生きるすず達の姿は、僕には本当に美しく、尊いものに思えた。一つ一つは小さくとも、かけがえのないものに思えた。 主人公のすずや、その周りの人だけではない。僕自身にも当てはまることだ。 戦争が、すず達の失うものを増やしているが、根本的には今に生きる僕も、知らず知らずの内に、大切なものや、大切な人や、自分自身の人生を失いながら、削りながら生きている。 僕にも大切な人達や大切な幸せがある。 苦しくても、幸せを感じることができる毎日がある。 生きていれば、これからも色んなものを失うだろう。色んな悲しみを味わうだろう。 だが、変わっていく日常に、少しでも幸せが灯るよう、すず達のように、強く、美しく、大切に大切に、毎日を生きていきたい。 そんなことを感じた、素晴らしい映画でした。
  • k
    5.0
    すずさんかわいい……!のんちゃんの素朴な演技がすごくはまってて癒し。っていうか、すずさんと修作さんの夫妻がとてもよい。きゅんとする。。。 戦争の悲惨さもずしんと胸に響くんだけど、その時代を生きていた人たちの生活があって、失敗したり泣いちゃったり笑いあったり、人々の息遣いを感じられたのがすっっごくよかった。 エンドロールまでちゃんと観るべし。。。
「この世界の片隅に」
のレビュー(28626件)