『ジャック・リーチャー』シリーズは、なぜ反時代的な映画として作られたのか?

2016.11.23
洋画

ヒットガールに蹴られたい

竹島ルイ

ハリウッド・スターとして、30年以上映画界を牽引し続けているトム・クルーズそのネームバリューはテン年代に入っても衰えを知らず、毎年1本のペースでメガヒット作品を世に送り続けています。

そんなキング・オブ・ハリウッドの最新主演作『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』が、2016年11月11日より絶讃公開中!

ジャック・リーチャー

(C)2015 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.

リー・チャイルドの人気小説『ジャック・リーチャー』シリーズの9作目を元に製作された『アウトロー』(2013年)に続き、本作は同シリーズの18作目を映画化。しかし、フィルマークスに投稿された皆さんのレビューを読んでみると、とくにかく目立つのが「地味」という辛辣なお言葉。

トム・クルーズ主演のハリウッド大作に対して、あまりにそぐわないキーワードではありませんか!

しかし『ジャック・リーチャー』は、あえて地味=反時代的な映画として作られた野心的なシリーズなのです。本稿ではその意図を解き明かしていきましょう。

クリストファー・マッカリーとトム・クルーズの出会いから企画が始動

シリーズ第1作『アウトロー』を監督したのは、クリストファー・マッカリー。彼は脚本家出身で、『ユージュアル・サスペクツ』でアカデミー賞脚本賞を受賞し、新進気鋭のシナリオライターとして一躍注目を浴びました。

ユージュアル・サスペクツ

しかしその後はヒット作に恵まれず、脚本のリライト作業(しかもノンクレジット!)をして食いつなぐ不遇の日々を過ごします。

転機となったのが、ヒトラー暗殺計画を題材にした『ワルキューレ』。

ワルキューレ

クリストファー・マッカリーは、脚本兼製作としてこの作品に関わりましたが、残念ながら映画そのものの評価や興行成績は、決して芳しいものではありませんでした。

重要なのは、『ワルキューレ』をきっかけにしてトム・クルーズと出会ったということ。

天下のキング・オブ・ハリウッドに見初められたマッカリーは、その後ノンクレジットで『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』のシナリオ改訂に参加するなど、トム・クルーズ作品のクリエイティブ・ワークを後方支援するようになります。

クリストファー・マッカリーが企画を立ち上げた『アウトロー』にトム・クルーズに参加したのは、自然な成り行きだったのです。

アウトロー

目指したのは'70年代のクライム・アクション映画

クリストファー・マッカリーが好きな映画監督として挙げているのが、アラン・J・パクラシドニー・ルメットピーター・ボグダノヴィッチの3人。

アラン・J・パクラは『大統領の陰謀』、シドニー・ルメットは『セルピコ』、ピーター・ボクタノヴィッチは『殺人者はライフルを持っている!』という代表作があることでも明らかなように、'70年代のクライム・アクション映画に大きく影響を受けていることが垣間見えます。

大統領の陰謀

そのエッセンスは、『アウトロー』にも縦横無尽に張り巡らされています。

冒頭の無差別銃撃シーンは『ダーティハリー』を思い起こさせますし、『ワイルド・スピード』系のド派手カーチェイスに背を向けたノロノロ追跡シーンは『ブリット』を彷彿とさせます。黒人刑事がシドニー・ポワチエにそっくりなのは、『夜の大捜査線』へのオマージュでしょう。

夜の大捜査線

『アウトロー』は'70年代クライム・アクションへのトリビュート映画であり、テン年代の最先端アクション映画へのカウンターとしてつくられているのです。現在のチャカチャカ演出に目が慣れた若い観客に、「地味な映画」として片付けられてしまうのは、トーゼンといえばトーゼンのこと。

懐かしい匂いに狂喜乱舞した一部のオールド・ファンはいたものの、その反時代性はあまりにも蛮勇だったのです。

ジャック・リーチャー、そして父になる

時代錯誤な映画となってしまった前作の反省を活かし、続編『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』は、少しばかり方向性の微調整をはかっています。

端的にいってこの映画は、ズバリ「ジャック・リーチャー、そして父になる」。クライム・アクションの醍醐味は残しつつ、一匹狼のリーチャーが元同僚のターナー少佐(コビー・スマルダーズ)、15歳の少女サマンサと、疑似家族を形成していく人間ドラマが根幹に据えられています。ある意味では家族のロードームービーといっていいかもしれません。

クリストファー・マッカリーに代わって本作の監督を手がけているのは、エドワード・ズウィック。トム・クルーズとは、2003年に『ラスト サムライ』でタッグを組んでいる盟友です。

ラスト サムライ

ソリッドでクールなクライム・アクションがクリストファー・マッカリーのお家芸とするなら、エドワード・ズウィックは叙情性溢れる人間ドラマが持ち味。本作がどのような映画を志向しているのか、監督の人選からも伺えます。

とはいえ、トム・クルーズの華麗なフィルモグラフィーを見渡したときに、本作も地味すぎる作品であることには変わりありません。『ボーン・アイデンティティー』シリーズのようなスケールの大きい国際的謀略も、『007』シリーズのような絶世の美女とのラブ・ロマンスも、『ミッション:インポッシブル』のようなハイテク機器もナシ。ラストは敵のボスと拳でただただ殴りあうというオールド・ファッションぶりです。

前作『アウトロー』で、ウィリアム・ワイラー監督の『大いなる西部』がチラッと流れるシーンがありましたが、まさに「殴り合い」とは西部劇時代から受け継がれてきた伝統。'70年代クライム・アクションが西部劇から端を発していることを考えれば、クライマックスの地味さもまた必然的帰結なのです。

大いなる西部

トム・クルーズ主演のアンチ・トム・クルーズ映画

そもそもなぜ、常に時代をリードしてきたトム・クルーズが、こんな時代錯誤なシリーズに主演することを決めたのでしょうか?

憶測ですが、『ミッション・インポッシブル』と対極を成すような、もうひとつの代表作シリーズをつくりたかったからではないでしょうか。最先端のガジェットを武器にチームプレイでミッションを完遂する『ミッション・インポッシブル』シリーズと、己の拳のみで敵をバッタバッタを倒すアウトローを描いた『ジャック・リーチャー』シリーズは極めて好対照であり、陰陽のような位置を占めています。

ミッション:インポッシブル

『ジャック・リーチャー』シリーズはアンチ『ミッション・インポッシブル』であり、トム・クルーズが自らたちあげたアンチ・トム・クルーズ映画といえるでしょう。

時代の寵児であるトム・クルーズの反時代的精神を確認するためだけでも、『ジャック・リーチャー NEVER GO BACK』を映画館でチェックする価値があると断言させていただきます!

記事をシェア

公式アカウントをフォロー

  • RSS
  • よりも
    4.5
    前作に続いてこれぞ、アメリカ映画。 ダーティハリーを思い出す。
  • hico
    3.8
    ストーリーは王道、キャストも王道でとても面白い 相変わらずのトム・クルーズの完璧風の俺できるっしょ感を出しながらのヌケサクっぷりは観ていて飽きない 新しい続編モノになるかもらしいけど、アウトローというクソ邦題のせいで、思った通りタイトルいきなりジャック・リーチャーに戻しても全然伝わらない
  • なないろ
    3.2
    トムクルーズじゃなかったら観てなかったと思う。内容は普通。
  • ぼたもち
    3.2
    記録
  • kaz
    3.1
    そんなに盛り上がりもなく退屈な感じ
「ジャック・リーチャー NEVER GO BACK」
のレビュー(6981件)