通販しながらプロレスしたり、貌斬り事件の謎を追ったり、胸モミたくて夜道を駆けたり

2016.12.13
邦画

映画系文筆/映画館勤め/映画祭好き

大久保渉

今年の映画を振り返ってみると、とかく邦画に目がいっちゃう。『シン・ゴジラ』とか、『君の名は。』とか、『この世界の片隅に』などは言わずもがなで、クズとか下衆とかディスとかケンとか暴れる映画もたくさんあったし、カルタとったりパンツかぶったり漫画原作もたくさんあったし、深田監督はカンヌ受賞だし、ここほれワンワン思い出される。

ただまだ今年の「BEST10」を決めるには早すぎるのかもしれない。まだまだ12月も注目作がたくさんあるのだから――。

男と女とプロレスと。痛くても、その痛みを信じて生きていく

『いたくても いたくても』

いたくても

(C)東京藝術大学大学院映像研究科

「きっと、何かが変わるはずだ」

経営難にある通販会社の社長が突然思いついた、商品を紹介しながらプロレスをする“エンターテイメント通販番組”。青汁を口から吹きつける毒霧。筒状のカーボンヒーターで首を絞め上げる決め技。社員たちは社長の台本に戸惑いながらも試合をこなし、番組づくりは続けられていく。

そんな一見くだらない闘いの中に何を見い出したのか?やられ役にも関わらず、次第にプロレスにのめり込んでいく下っ端ADの主人公。それを理解できずに不満を漏らす同僚の恋人。そんな二人の間に割って入ろうとする好敵手役のメインMC……。

いたくても

(C)東京藝術大学大学院映像研究科

仕事に恋愛にプロレスに、目の前にリングがあるのなら、飛び込むことが肝心なのか?それが例えどんな結果になろうとも、痛みを伴うことになろうとも、その痛みを感じるからこそ、自分がこの後どうしたいのか、目の前の相手をどうしたいのか、思いを巡らせることができるようになるのかもしれない。

思いをぶつけて、ぶつけられて、気持ちを一身に受けて立つ!未だかつてない奇天烈な闘いからこぼれ落ちる汗は、見たこともないほど純粋な輝きを放つ。

いた2

(C)東京藝術大学大学院映像研究科

本作の監督を務めたのは、『ハッピーアワー』の濱口竜介など、気鋭の新人監督を生んでいる東京藝術大学大学院映像研究科出身の堀江貴大。第16回 TAMA NEW WAVEでは主演男優賞&主演女優賞&グランプリと3冠受賞を果たした。

劇場情報

12月3日(土)より渋谷ユーロスペースにてレイトショー。劇場情報はこちら(『いたくても いたくても』公式HP

人は“あなた”という役を降りることはできない。

『貌斬り KAOKIRI 戯曲「スタニスラフスキー探偵団」より』

かおきり

(C)2015 Tatsuoki Hosono / Keiko Kusakabe / Tadahito Sugiyama / Office Keel 

役者やめますか?  それとも人間やめますか?

これは舞台か、映画か、現実か?実際に起こった日本映画史上最強のスキャンダル、絶世の美男俳優の顔斬り事件の考証を題材に、2015年1月8日から高円寺の明石スタジオで行われた舞台「スタニスラフスキー探偵団」の全8回公演の映像を用いつつ、その舞台裏で巻き起こる不可解な事件の謎解きを、役者が役者として爆ぜるその生き様を、多重構造で描き出す。

貌斬り2

(C)2015 Tatsuoki Hosono / Keiko Kusakabe / Tadahito Sugiyama / Office Keel

大入りの千秋楽、貌斬り事件の当事者、関係者たちの心境に立ち、自分自身の内側からどんな感情が沸き起こるのか、そして体はどのように動くのか、リアルな仮説を導き出していくという舞台を演じる役者たち。

本当に相手の顔を切ってしまえよ? ニヤつく演出家。役を辞退する役者。逃げ出す役者。薬を盗まれて息も絶え絶えな役者。今日の舞台を最後に引退する役者……。舞台上で、楽屋裏で、貌斬り事件の真相に迫るその瞬間、台本を超えた“何”かが起る。

かお2

(C)2015 Tatsuoki Hosono / Keiko Kusakabe / Tadahito Sugiyama / Office Keel

監督は、90年代日本映画ベストワン と絶賛され未だに話題を提供し続ける傑作『シャブ極道』の細野辰興。主演は『アワ・ブリーフ・エタニティ』の草野康太、 『SHARING』『悪人』の山田キヌヲ

劇場情報

12月3日(土)より新宿K's cinemaほか全国順次公開。劇場情報はこちら(『貌斬り KAOKIRI 戯曲「スタニスラフスキー探偵団」より』公式HP

あきれるほどに、馬鹿だった

『14の夜』

14

(C)2016「14の夜」製作委員会

クソみたいな日常にサヨナラだ。居ても立っても居られなくなって飛び出した、14の夜。

1987年の田舎町。とある噂が子どもたちの間で話題になる。町に一軒だけあるレンタルビデオ屋に、AV女優がサイン会にやってくる!?家でも学校でもぱっとしない中学生のタカシら柔道部員の4人は、来るか来ないかも分からない彼女に会って胸を触らせてもらおうという夢を求めて、夜の町へと繰り出す決意をするのだが……。

14の2

(C)2016「14の夜」製作委員会

いつの世にもくだらないことに必死な中学生男子の悶々を描いた性春映画。しかしその妄想と葛藤こそが、後の人生をも大きく変えるきっかけになることだってある。

田舎ヤンキー、怪しいおっさん、タカシを囲む障害物。自分のふがいない父親のようにはなりたくないと、このまま女性に乳房を触らせてもらえないようなダメ男にはなりたくないと、くだらないけれども、未来を睨む主人公のタカシの瞳が印象に残る。大人になっても、燃える瞳を忘れてはならない。

14の3

(C)2016「14の夜」製作委員会

監督は、『百円の恋』で第39回アカデミー賞・最優秀脚本賞を受賞した足立紳。本作にて監督デビューを果たす。映画を盛り上げる主題歌を、大人気バンド“キュウソネコカミ”が担当する(10/26発売『わかってんだよ』)。

劇場情報

12月24日(土)よりテアトル新宿ほか全国順次公開。劇場情報はこちら(『14の夜』公式HP

まだまだあります!期待の邦画!

『イノセント15』

15

(C)2016「イノセント15」製作委員会

雑誌にTVに映画監督に、多分野での活躍に各業界から大きな注目が集まる20歳、小川紗良をヒロインに、居場所をなくした少年少女の逃避行を描いた青春ストーリー。近づくほどに胸がうずくのは、愛を得る喜びか、いずれ失う悲しみか……。

12月17日(土)よりテアトル新宿ほか順次公開。劇場情報はこちら(『イノセント15』公式HP

『ねぼけ』

ねぼけ

(C)壱岐紀仁/映画「ねぼけ」製作委員会

映画の製作費を募るクラウドファンディングでおよそ190万円の支援を得て完成された期待の1作。売れない落語家を中心に、すれ違う思いや人生のやるせなさを、昭和のよき時代の映画を彷彿とさせる丹念なタッチで描いた笑いと涙の感動作。

12月17日(土)より新宿K's cinemaほか順次公開。劇場情報はこちら(『ねぼけ』公式HP

『はるねこ』

はるねこ

Helpless』『EUREKA ユリイカ』を手掛けた青山真治監督とプロデューサーの仙頭武則 が共同プロデュースをする注目の1作。監督は、 山本政志監督、橋口亮輔監督、瀬々敬久監督など数多くの作品で助監督を務めた甫木元空。本作が初長編デビュー作となる。 

12月17日(土)より渋谷ユーロスペースほか順次公開。劇場情報はこちら(『はるねこ』公式HP

2016年の年末も、勢いにのる邦画作品をぜひ劇場で味わってみてくださいませ。

そして、2017年はどんな映画の年になるのでしょうか?

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  • きりん
    3.3
    ジャック&ベティにて、舞台を単純に映画館でというのではなくて、舞台を題材にした映画。映画ばかり観てるけれど、舞台も観に行きたいな
  • さとうの人
    3.6
    美形俳優の顔切り事件を題材に映画を作る者たちによる推理劇・・・を上演する者たちによる推理劇 宣伝にある「超重量級エンターテインメント」というよりはミステリー色の方が強く感じる。人物の感情の動かし方が上手くて上手くて、「超重量級」とはその人間を描く上の重みなのかなとしみじみ。 劇中劇は戯曲の台本を読んだので、まさにその台本通り。 映画なのに舞台が見られるという点はちとお得感を感じた。 エンターテインメントとしてはまだ足りないものがあるけど、劇中劇とその周りの推理劇は悪くは無い
  • じまじ
    1.0
    ただのナルシズムでしかない映画。監督も役者も自分大好き撮影大好き演技。 演劇をバカにしている上に映画としても飽きてくる。劇中劇がこれまた面白くない。 怒りの湧いてくる映画でした。長谷川一夫を研究する前にスタニスラフスキーメソッドを勉強しろよ。
  • snoozetakeshima
    4.6
    監督:細野辰興、主演:草野康太、山田キヌヲ 目眩がするような感動で上映終了後ぼーっとしてしまった@地元映画館。 往年のスター長谷川一夫が顔を切られた事件は芸能史の暗部として知られているがそれを題材にした戯曲が「KAOKIRI」で、細野監督は以前自らの劇団で上演。 それを映画化したのが本作である。とはいえ演劇の台本を映画として撮り直したものではなく、実際に上演された舞台を撮影したフィルムを元にそのまま劇中劇として観させる一方で、その演劇の舞台裏が映画として描かれる。 長谷川一夫事件(史実)と、それを元にした(演劇)、それを撮る(映画)という三重のメタ構造になっているが難解かというとそんなことはない。そもそも演劇部分が滅法面白く爆笑する場面多し。 この映画は、芝居の上演直前に重要な役者が二人降板したり、実はドロドロの恋愛事情があったり主役が心臓病を患っていたりという緊迫した場面から始まる。 芝居の上演自体が危ぶまれるのだが、舞台は始まってしまいもう後戻りできない緊張感。草野康太、山田キヌヲ始め役者陣が素晴しい。スターの顔を切った真犯人はだれか?その動機は何か?謎解きを中心に物語は進む 演劇の時のパッションと舞台裏のダウナーなテンションの差が微妙に可笑しい。 内山田洋とクールファイブの「恋唄」がサイコーのタイミングで流れ、テンションマックス!素晴しい映画だった。
  • スタ
    3.6
    ラストに向かって加速する緊張感。 役者の狂気的世界。 果たしてそれは観客にも伝わるものなのか…
  • 大久保渉
    3.0
    映画『貌斬り KAOKIRI』。「役者やめますか?それとも人間やめますか?」「人は"あなた"という役を降りることはできない」。あっという間の143分。……観客やめられません。ずっと観てたい(魅)
  • Habby中野
    3.0
    映画自体が予定調和でよくわからない。
  • にゅうにゅう
    -
    ラストショットが示すように、キャメラは境界を越えることを許してもらえずに取り残されてしまう。 叶うことのない本当の貌斬りに期待してしまった。
  • 花俟良王
    3.5
    メタからのメタ、で色々感情を揺さぶられ、長さは感じない。 8割を占めるだろう演劇のシーンの迫力は素晴らしい。なぜなら本物の舞台を収録しているから。黒子が舞台上で自由にカメラを向けており、ベテラン細野監督の未だギラギラする演出が堪能できる。 ただそこが評価の分かれ目で、個人的には「映画」でこの「舞台」を延々見ることに喜びは見つけられなかった。
  • AkaneMatsuno
    4.5
    演劇と映画の融合です。 演劇の演技の迫力、汗など…実際に観ているように錯覚する。
  • HarukaAndo
    -
    俳優の二重三重四重に重なった心境がよく見えた。 舞台であり、映画である不思議な感覚。 とにかく熱量がすごい。 合間の楽屋のシーンはシュールでとても好き。 様々な葛藤が散りばめられた作品だと感じた。
  • mura
    -
    今年1つだけ投稿しそびれていた作品。湯布院映画祭で見たが、その時は作品が登録されていなくて…。今さら思い出して感想を述べるのは難しく、だから点数もつけない。 ってことで、今年最後に僕なりの2016年日本映画ベストテンを。スクリーンで見た65作品の中から。 1 オーバー・フェンス 2 リップヴァンウィンクルの花嫁 3 湯を沸かすほどの熱い愛 4 淵に立つ 5 怒り 6 64ロクヨン-前編- 7 モヒカン故郷に帰る 8 さとにきたらええやん 9 FAKE 10 LIVE!LOVE!SING! 生きて愛して歌うこと 劇場版 10位には『LIVE!LOVE!SING…』をねじ込んだ。ひとえに最後のあるシーンのため。福島の人たちの思いが象徴されているようで。もう、とにかく泣けた。
  • Tengo
    4.0
    畳みかける凄まじい緊張感 ヒリヒリして焦げつくような感覚 先を見なきゃ見届けなきゃって気持ちにさせられる 感情のその先に見えた世界は 天国なのか墓場なのか 『斬れんのか 斬らせんのか』 表現の極みを覗き見た。
  • Takayo
    3.5
    役者目線の世界観 あなたとわたしの間に世間など関係ない みたいな台詞が新しい感覚にさせた
  • 村上典子
    3.9
    凄かった。これは単純だけど複雑というか、演劇と映画がうまく合体していた。役者さんは大変だろうけど。舞台上に黒子のカメラってのもいい。舞台の芝居のテイストとかは別に気にならないけど、みんな楽屋であんなに叫んだりドンドンしてたら客席に丸聞こえだよ、気を付けて、ってちょっと思った。
  • smmt705
    -
    メタ構造が映画全体の世界観ではなくて、芝居をみてる観客の気持ちや俳優の気持ちにもなるという支配される感覚が一つの映画に何個もある感じ
  • LUIBIS
    1.0
    見ない方がよかった
  • Hanako
    1.2
    映画だけど、舞台のDVDをみてるみたいだった 「演じれば演じるほど、知れば知るほどその役の気持ちが痛いほど分かる、その役になるのが怖くなる」ようなニュアンスのようなことを言っていたが、今回の役者陣の演技だとそれに説得力を感じなかった 題材となった、長谷川一夫が顔を切られた真実は未解明だけど、役者陣、製作陣が、その人達になりきってロールプレイをしているうちに、彼らの世界観で理由を導き出すというのは、面白かった
  • 理沙
    3.8
    なんだかわからないけど凄かった。 引き込まれて目が離せない。 演劇が進んで行くのと同時に映画も進んで行く。 演じてる人は映画を作ろうとしている。 カメラも演劇の演出として回している。 そのカメラが捉えた映像が、この映画を進めている。 よく考えて雰囲気を作ってるなぁと感じました。 役者さんたちの力強い演技と、素人感のある演技その差がすごく良かったです。 1つの劇場、1つの舞台上で起こっている事を忘れそうになりました。 1つの映画であることは忘れてました。 演劇を観ているんだと純粋に楽しくない劇を見た気分です。 もう一度観たいかと言われたら観たくないけど、忘れた頃に思い出して必死に探しそうな映画です。 うどん屋のくだりで、ひとり大爆笑していた。 天ぷらうどんで襲いかかるな(笑) 小さなシアターでお客さんは10人ちょっと。 クソ恥ずかしいですね…(´・ω・`)
  • yuka
    3.8
    映画の中で演劇をやっていて演劇内の人々は映画を作ろうとしている しかもその演劇では演出として舞台上でカメラが回されているというメタメタしい構造 演じることの過剰さが過剰な演技として表れていて、終始これでいいのか?という感じの演技が繰り広げられるためやや疲れる
  • 3.8
    「SHARING 」「At the terrace テラスにて」「親密さ」を続けて観ると何かが見えてくるようだ。それが可能な2016年というのが面白い。私は劇伴なしで観たい。特筆すべきはラスト30分でガラッとすべてが変わったコントラストの妙味。
  • HAL2000
    3.8
    知り合いに薦められなければ観ていない作品。正直言うと苦手な舞台劇。でも、最後まで全く退屈する間も与えてくれず引き込まれてしまいました。個人的にツボなのはクールファイブでしたね。 ただ、あまりに多い台詞を聞き逃せないから二時間超は、かなり疲れました。
  • ShungoKasuga
    5.0
    (200) これが身体からシャブ作り出すってことかも @ k's cinema
  • みーとぅ
    3.8
    おもろい
  • Arisa
    4.5
    多重メタ構造、なんて言葉を使うととても複雑で、実際かなり複雑な構造ではあるんだけれど観ている側からすると全くそう感じないんだから凄い。 実際にあった事件(ゆとりのわたしは知らなかったけど)をもとに、2015年に実際高円寺で行われていた舞台を、舞台裏を交えてエンターテイメント映画にしたってもの。舞台裏(映画の中の現実)、舞台(映画の中の芝居)、どちらでもドラマが起こる、何が起こるかわからない、この舞台が(映画が)、彼らがどうなっていくのか、舞台が進むに連れてどんどんと彼らの変化を感じながら圧倒的な熱量、パンチラインだらけの台詞に圧倒されるー! ユーモアとサスペンスのバランスも抜群、とにかく一人一人の役者の熱量、映画の持つ圧倒的なパワーを感じながらどんどん引っ張られていき、終盤汗だくの役者さんの演技にグッと息を止めて見入ってしまった。目の色が変わってるんだよ完全に。 監督役とプロデューサー役が交わすあの最高の台詞をもう一度聞くためにもう一度観に行きたい!!キヌヲさん!!!
  • ぺしん
    4.0
    劇的な劇映画 序盤は「オーバーな演技・演出だなぁ」と不安に思っていたが、 だんだんハマっていった 臨場感と熱さが勝った素晴らしい映画だったと思う 音楽の使い方がワンパターンだったのが気になるけど、 予算がなかったということでご愛嬌
  • じぇれみー
    4.5
    高円寺明石スタジオ前。舞台公演の看板をとらえると、カメラは中へと入っていく。次第に漂う邪な空気。まるで異界の入り口かのようなおぞましい階段。道川昭如撮影監督による冒頭の長回しに、いきなり心を持っていかれました。一体、どこに連れていかれるのか?! 大まかな枠組みは、三谷幸喜作品『ショー・マスト・ゴー・オン』と同じ。つまり、舞台公演が始まってしまうが、舞台裏でも様々なドラマが起きているというもの。 本作の大半は、実際に行われた舞台劇。その合間に楽屋パートが挟まれ、ドラマにサスペンスが加わっていきます。 しかし、本作の肝は、もう1層ある多重構造のメタ構成ということ。 ①現実:楽屋 ②劇中劇:舞台公演 ③劇中劇中劇(?):舞台上で更に繰り広げられる劇中劇 主人公を例に取ります。 配役:俳優・草野康太さん ①現実:俳優・尾形蓮司 ②劇中劇:映画監督:風間十兵衛 ③劇中劇中劇:うどん屋店員など つまり、尾形が風間になる芝居をし、更に風間が他の人物になり__という大変複雑な演技が求められている訳です。 俳優陣はさぞかし大変だったことでしょう。しかし、皆、見事に演劇と映画の世界を行き来しながら、魅了してくれます。 中でも、山田キヌヲさんの素晴らしさと言ったら! 誰がなんと言おうと、今年のアカデミー主演女優賞は彼女のものです。日本アカデミーじゃないですよ、米国アカデミー賞ですよ!(笑) 話を戻すと、細野辰興監督は、このような多重構造を用いて、演じることの意味を解き明かしていきます。この辺りは、金子正次さんを描いた『竜二Forever』を更に掘り下げた集大成となっています。 しかしながら、細野監督の目は俳優にだけ向いている訳ではありません。すぐさま我々観客を見つめ、問いかけてきます。お前は生きているか? 仮面を脱ぎ捨てろ! 核心のネタバレなしでの説明は、これが限界。後はご自身でお確かめください。 笑いあり、涙あり、サスペンスありの最高の恋愛映画でもあります。 設定は複雑ですが、まったく小難しくなく、気軽に観られる熱気あふれるエンターテイメント作品です。 でも、気楽に観たらヤケドします。あなたがこれから目撃するのは、そんじょそこらの誰が作りたいのかわからない軽薄な日本映画ではなく、細野辰興監督が心から作りたいと望んだ”自主映画”ですから。
  • ごてふ
    3.9
    贔屓役者目当てに初日の初回を鑑賞。やはり芸能には魔物が棲んでいるのですな。
  • yumiko
    5.0
    感想は後程!
「貌斬り KAOKIRI 戯曲「スタニスラフスキー探偵団」より」
のレビュー(56件)