「茨城」×「お茶の間スタイル」が生むリアルだけどフィクションな映画《取材》

2016.12.27
映画

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箱田さんアイキャッチ

第一線で活躍するCM・映像ディレクターが描く「しょうもない人と時間を、愛せる映画」とは!?

新しい映像クリエイターの発掘と育成を目的に、コンペティションを勝ち抜いた映像企画をTSUTAYAが全面的にバックアップし、制作からレンタル・販売までを総合支援する「TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM 2016」(以下、TCP)。

本コンペにおいて、『ブルーアワー(仮)』で審査員特別賞を受賞した箱田優子さんを取材。地元・茨城県での体験をもとに描かれる、リアルとフィクションの間の物語に迫る。

■参照:
TSUTAYAが「本当に観たい映像作品」の企画を募集中!5,000万円の制作支援
次世代の大物監督が出る!?「TCP2016」最終審査会に密着!

箱田優子監督『ブルーアワー(仮)』ってどんな企画?

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人生の夜明けなのか日暮れなのか、どちらともつかない時間を過ごす主人公の妙齢女。嫌いな田舎に帰省するも、家族ともすれ違い、埋められない溝を確信し、結果やっぱ田舎嫌いだわーって思うという、みみっちい話を、実話に基づき、しけた田舎で面白おかしく美しく切り取ります。(『ブルーアワー(仮)』企画資料より)

「自分が生まれ育った街なのに嫌い」なのはなぜ?

−『ブルーアワー(仮)』は「実話に基づく」ということですが、箱田さんご自身はどんなエピソードをお持ちなのでしょうか?

私は茨城県出身なんですが、親と一緒に住んでいた時間がすごく少ないんです。田舎ならではのしきたりでいろいろあって、家族と離れて、大きな家に祖母とふたりで暮らすことになったんです。その茨城での二人暮らしが小学校から高校卒業までずっと。

−それは特殊な経験ですね。

実家に帰ると、家族なのに「どうも、元気です」みたいな妙にあらたまったような、不思議な距離感があります(笑) でも仲がわるいわけではないんです。それが私にとっての「家族」なんですね。なので、友だちのうちに遊びに行って当たり前のように家族揃ってごはんを食べていることに「スゴイな!」と驚いたり(笑)

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−箱田さんならではの感覚ですね(笑)

ちょっとしたことがすごく新鮮で、面白いなと思う感覚があります。身近にあるフツウであったり、一見地味なフツウの人たちに興味が向きます。

友だちや仕事仲間と話していても、「家族なのに一緒に居づらい」とか「自分が生まれ育った街なのに実は嫌い」とか(笑) そういうテーマって、意外とみんな何かしら持っていたりしますよね。その理由が何なのかも考えてみたいし、そんな“フツウ”が、自分だけが描けるものかもしれないと思っていて、それをカタチにしたいなと。

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−その“フツウ”は、ちょっと人には隠しておきたいようなネガティブな部分ですね。

そうですね。でも、それって哀しいだけじゃなくて、ちょっとヘンで笑えたりするんですよね。それを踏まえて『ブルーアワー(仮)』は、劇的な物語や展開がある悲劇喜劇でワイワイするより、自分のことに置き換えて見られるような作品にできればと思っています。

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▼TCPプレゼンリハーサルでの一コマ

クリエイターのエゴではなく「お茶の間スタイル」で

−映像ディレクターとして数々のCMを手がけていらっしゃいますが、今回初めて映画制作を手がけるにあたって、どんなことを心がけたいですか?

いいモノであれば、映画であれCMであれPVであれ一緒だろうという気持ちがあります。私がCMをつくる時には、このCMを誰が見ているのか、見た人はどう感じるのかということを一番に考えます。家でご飯を食べながらこのCMを見たら、どう思うのかと。

■TCPプレゼンでも披露された箱田優子監督のCM作品■

▼「グリコ メンタルバランスチョコレート GABA(ギャバ)WEBムービー 3分Ver」

プロフィール資料にも「表現したい、という気持ちよりも、いち観客としての想いが強い自分としては、本当に観たいものを形にできるのではないかと、(TCPに)希望を持てました」とありますね。

CM制作を仕事にしているので、他のCMを見ると色々と分かることがあるんです。顔見知りのスタッフが制作に参加していて何となく内情を知っていて、こういう企画だったけど色んな事情でこういうCMになったんだろうなとか。それは分かるんですけど…、ひとりの視聴者としたらそんな事情や背景なんて全部関係ないなぁって(笑)

クリエイターのエゴではなくて、できる限り私はお茶の間視点でCMをつくっているし、映画もそのスタイルで撮りたい。映画で言えば、劇場の観客席スタイルですかね(笑)

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▼TCPプレゼン本番直前の舞台袖で出番を待つ箱田さん

−本作はやはり茨城県で撮る予定ですか?

そこは悩ましいところで…、『ブルーアワー(仮)』は、茨城という土地とそこでの体験をベースにしたお話ですが、それは、目立った観光地があるわけでもない中途半端な田舎を舞台にちょっと卑屈な人が出てくるっていう(笑) そういう、いい意味でしみったれた感じに面白さがあると思っているんです。

それと、今回の作品では、出演者がつらくなる状況を脚本の中に入れていきたいなと思っていて。

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−出演者がつらくなる、ですか!?

例えば、本作の主演をやっていただく女優さんが、その昔、生まれ育った地方でアイドルをやっていたけど、当時は全然売れなかったという過去を持っているとします。

−それは映画の中の設定ではなくて、現実に?

そうです現実に。あくまで例え話ですが。主演の女優さんは現実に売れなかった時代があって、有名になった今はその過去について触れてくれるなという思いを抱えている。だけど、『ブルーアワー(仮)』の脚本の中に、なぜかその不遇の時代に触れる内容が入っている、みたいな。出演者自身が、自分の過去やキャリアに向き合う仕掛けが脚本の中にあるといいなと考えています。

−演じる方はかなりエグられますね(笑)

エグられます(笑) ただ、エグっていくことで生まれる面白さがあると思っています。

−亀田興毅さん出演のグリコのCMにも近いものを感じます。

「この映画って半分フィクションだけど、半分ドキュメンタリーだよね」みたいな味わいのある作品がいいなと。うまく役を演じられるよりも、そのキャストがそのシチュエーションの中でいつもと違うところが出てしまっている、そういう感情の揺らぎが描けると面白い。

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−キャスティングも大事なポイントになりますね。

地元や自分の過去にコンプレックスがある人をキャスティングするところから、この作品は色々と決まっていくのかなという気がしています。ひとまず、東京生まれ東京育ちの人はないかなと(笑) 茨城で撮れたらいいなとは思いますが、茨城じゃなくてもきっと成立するし、舞台が変わっても話の流れは変わらないと思います。

−主演女優については、審査員の女優・鈴木京香さんとのやりとりもありましたね。

女優さんの素の部分に触れる演出について、お話を聞くことができてとても勉強になりました。

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−リアルなコンプレックスに触れつつも、仕上げは笑えるように?

そうですね。『6才のボクが、大人になるまで。』って映画がありましたよね。あの映画は簡単に言ってしまえば「6才の子どもが大人になるまでの記録」だけど、毎年出演者が集まって撮って、その年月をリアルに追っていく。そこに面白味がある。

6歳の僕が

(C)2014 boyhood inc./ifc productions i, L.L.c. aLL rights reserved.

例えば、あの映画の中でいうと、キャスト本人は当時撮って欲しくなかったであろう10代の頃のダサい時代が “映っちゃっている感じ”。それが、やっぱり面白いなと。この映画を各世代でベストキャスティング、ベストアクトで撮っても意味がない。リアルとフィクションが絶妙に混ざり合っている映画が面白いですよね。

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−箱田さん、ありがとうございました。完成を楽しみにしています!

(取材・文:斉藤聖/撮影:柏木雄介)

■TSUTAYA CREATORS’ PROGRAM公式サイト
http://top.tsite.jp/special/tcp/

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  • pikaru
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    主題歌好きです。 めっちゃ長い映画。。 でもきっと二年たった今なら違った見方ができるはず。
  • たくや
    3.7
    過こし長いけど、本当によく撮ったなと頭が下がる。
  • ellliiing
    -
    いつか再挑戦しよう。。
  • SatokoOno
    3.8
    色んな状況の中で育ったけど、自分を理解してくれる素敵なママパパのそばで自分を見つける過程 同じ人間を撮っていくとこういう風に変わっていくんだってそれだけで興味深い作品になる。びっくり whats the point 使いたい
  • yacci
    -
    主役の少年が幼少期から青年期までの成長と家族の形の変化を自然に描くべく、12年をかけて撮影をする事を決断した事に先ず拍手を送りたい。 このテーマを映像で観て行く中で一番目が醒めるのは、役者が変わってしまう時の違和感、こればかりは避けられないのですが、実は作品にもたらすノイズはかなり大きいものです。 それを無くすなら制作側が家族の成長を待てば良いんだって言うこの端的で愚かとも言える決断がこれまでに無い映画を生む事となったと言えます。 鑑賞中にふとコレは映画の世界を観てるのか、ドキュメントを観てるのか混乱する感覚があります。 それは子供逹の成長だけではなく、イーサン・ホークの演技力と子供逹との関係作りの為であると思います。 実際この撮影は、毎年の夏休みに行われ、子供逹は映画の撮影と言うより、夏のイベントの1つとしてイーサンホークと再会する事を楽しみにしていたそうで、まさに作品中のたまに会える別れた父親と会う様な関係を構築する事で、子供逹は役作りを意識する事無く撮り終えたようです。 つまりは彼等自体も映像の中にパラレルワールド的家族を共有していてそれを自然に受け入れていたと言う、家族を描くのにこの上無い条件を得る事に成功しているのです。 同じ形態を取るものに北の国からがありますが、全く異なるのは、この作品にはセンセーショナルな事件が起きる事があまり無く淡々と進んで行く事。 社会が開ける6歳からの外への関心や恋愛、育ての親や兄弟との繊細な距離、進路、自分探しといった誰しもが経験して行く物事やあるあるに観る側が共感して行く感覚はこの映画独特の手触りではないかと思います。 個人的にはイーサン・ホークを観るだけでも価値はある映画と思います。 まさに一生の中で出会えるかわからない映画の1つです。
「6才のボクが、大人になるまで。」
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