美への執着と憧れを描く『ネオン・デーモン』N・W・レフン監督インタビュー

2017.01.12
インタビュー

FILMAGA編集部

フィルマーくま

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ライアン・ゴズリング主演の『ドライヴ』で一躍注目された、デンマークの俊英ニコラス・ウィンディング・レフン監督。その独特のセンス溢れる映像で、世界的に注目を浴びる同監督の最新作『ネオン・デーモン』がついに公開となります。

カンヌを湧かせた『ドライヴ』以来の再びロサンゼルスを舞台にした本作ではレフン監督がこれまで描いてきた男の世界ではなく、美を追求する女性たちの欲望うずまくファッション業界を描いています。主演に『マレフィセント』のエル・ファニングを迎え、女性たちの美への執着、憧れをレフン監督ならではといえる美意識で撮りあげた注目の一作です。

そのレフン監督に本作の見どころについて語ってもらいました。

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美へ執着する”恐怖”を描きたかった

—今回の映画は「美」が重要な要素になっています。監督がこの美というものを撮りたいと思った理由は何でしょうか。

ニコラス・ウィンディング・レフン監督(以下レフン):人間にとって、美への執着というものは、とても巨大なものであると思いますが、現代は美の寿命がどんどん短くなっているように思います。若ければ若いほどいいという、若さに美しさを求める傾向が強くなっているように感じています。このままいけば、美というものが存在し続けるためには、蛇のウロボロスの輪のように、己を食い尽くすしかなくなってしまうのではないか、そしてそれは映画として、非常に面白いテーマじゃないかと思ったんです。

—監督は美というものを、どういうものだと捉えているのでしょうか。

レフン:世の中には美しい人と、美しくない人がいる、これはすごくバツが悪いというか、残酷な考え方です。僕も2人の娘の父親として子供たちに、この現実の社会の中で美が持つ力を本当は認識させたくないですが、美によって階級が生まれ、美しさによって損得が生まれてしまうというのは事実としてありますよね。

僕は、美しさは不完全にあると思いますが、完璧な美しさを求める執着や欲望というものは理解できますし、美はそういった感情も含めた複雑なものであるとも思います

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美は社会の中で、いろんな問題の火種になりうるものですが、だからといって美しさにこだわるのは浅はかだ、と言うだけなら簡単です。実際に美しいものを求める心が人にあるのは確かだし、どんなに健全な思考の人間でも、虚栄心や美しさに対する欲望は持っていると思います。現代ではSNSなどを通じて、そうした欲望が力を増しているようにも思えますね。

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カメラが恋するエル・ファニングという女優

—エル・ファニングを美しく撮るために、撮影面で何かこだわられたことはありますか。

レフン:それが特にないんです。どのアングルから撮っても素晴らしく、本当に撮ることが快感になるような女優でした。

彼女は生まれつき女優として素晴らしいものを持っていて、カメラが恋をするという言い方があるんですが、まさに自然にカメラが彼女に向かってしまうような、そんな魅力を彼女は持っています。それは彼女の内なる美しさからくるものだろうと思いますね。

完璧な骨格を持っている人でも、魅力を感じるかというとそうでもない場合もあります。美の本質は、内面にあるのだと思いますが、エルの場合は内も外も備わっています。肌も雪のように美しく、シルクのような肌ですし、もしかしてエイリアンかもしれませんね(笑) 

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—監督の過去の作品は、たとえば『ドライヴ』など男性同士のぶつかり合いを描いた作品が多く、必然的に男性キャストを演出することが多かったと思うんですが、今回は女性キャストが中心ですね。女性キャストを上手くのせるコツ、上手く演出するコツで何か掴んだことがあったら教えてください。

レフン:女性か男性かは関係なく、必要なことは個々の役者によって違います。その日のムードでシンプルに演じてもらったり、少し変えてみたりしています。

ナルシシズムを祝福する映画

—エル・ファニングがとても透明感があって、美しかったんですが、ジェシーという役を演じるにあたって彼女に対してどういったものを求めたのでしょうか。

レフン:何か要求したというよりも、むしろこういう映画を作りたいんだよね、と映画の話をしていたら、彼女も一緒にやりたいと言ってくれたんです。

年齢的には僕は彼女の父親でもおかしくないくらいですが、それぞれ理由は違えども、お互いに美というものへの執着に対して興味を持っていました。

この映画は美に対する執着を含めて、それらを祝福する映画でもあるんです。言い換えれば、ナルシシズムを奨励する作品なのですが、そういうところに2人とも興味を持っていました。今回、いくつかのシーンで鏡を使った演出を試みていますが、鏡は、この映画の中ではナルシシズムを祝福するものです。ナルシシズムというものは、すなわち自分自身に恋に落ちるということですから。鏡に写った自分自身にね。

—冒頭からすごく死の匂いを感じ、死と美が隣り合わせであるかのような印象を受けました。

レフン:死と美というものはドラマの中の対局にあるものだからです。感情をそれぞれ別方向に極端にした先にあるものが美と死です。僕が作り手として過激なものを好むせいか、極端なものがあればあるほどワクワクするんです。

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本作『ネオン・デーモン』は、1月13日(金)よりTOHOシネマズ 六本木ヒルズ他全国順次公開。

■参考記事:【試写会速報】美しさの真理を追究した衝撃作『ネオン・デーモン』の魅惑の虜にされる人続出!

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公式HP:http://gaga.ne.jp/neondemon/​

(C)2016,Space Rocket,Gaumont,Wild Bunch

(取材・文:杉本穂高、撮影:柏木雄介)

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  • IchitaMasuda
    5.0
    イかれたセンス
  • キタコーヘイ
    2.5
    パリコレとかの映像が流れる度に思う。 「美を突き詰め過ぎて、庶民の自分にはさっぱり良さが理解できない」と。 その感覚をそのまま映画にされた様な作品で、結局どういうこと? 自分からすると、モデルの人達みんな美女よ。もう神々の争いということでいいでしょうか??
  • me
    4.0
    女はこんなにも妬み嫉みの醜い生き物なのか。 1番最後のシーンの衝撃がでかすぎて 今も頭から抜けない 淡い色、鮮やかな色、暗い色、不気味な音楽、いろんな演出が施されていて どの場面も、きれくて 血さえも美しかった。 メタファーが多くて 情報が詰め込まれすぎていたけど 色々想像させられた。 這いつくばって生きる女の綺麗くとも汚くともとれる生き様が描かれてた。 いろんな意味でエグくてグロい。
  • あいり
    2.0
    とてもとても美しく色彩も良く、ワンシーンワンシーン、どのシーンを切り取っても素敵なんだろうなあとは思ったけど、ストーリー性がなんとなぁくありきたりだった気がしました。レズセは、とても、良かった。
  • LEON
    2.5
    モデルは〝商品〟ではなく、あくまで動く〝マネキン〟でしかない。 あくまで〝商品〟は服やアクセサリーで有り、その〝商品〟をいかに美しく見せ引き立てるのが価値あるモデルの存在理由。 しかし、モデルそのものの容姿やスタイルに存在価値を世間は評価するという矛盾。 そういった意味でモデル自体が商品化されてしまえば、この映画のような出来事は現実に起こっても不思議ではない。 容姿やスタイルは作り上げることはできても、それをも超える内面から湧き出る〝美〟が人間には現実にある。 それが生まれ持った〝美〟は未熟だろうと関係なく、ダイヤモンドの原石のような魅力をもった人間は確かにいる。 そこが単なる〝マネキン〟では不可能な理由でもあるが、モデルも生身の人間がする必要がない時代もそう遠くはないだろう。 完成された美しい作られたモデルはもちろん、未熟であどけなく不安な瞳のモデルだって人工的に作れるだろう。 ただ美しさが永遠なら、それはまた美しさの価値は下がるだろう。 ダイヤモンドの原石が磨かれ輝きはじめる過程が美しく、それが永遠でないからまた美しい…ようするに寿命があるから儚い…だからこそ美しい。 映画の描きたいことは十分は伝わるが、残念ながらそれが表現不足に感じる。 なんかもうひと工夫すれば、もっと良くなる映画になりそうな気もし、配役なのか脚本なのか惜しい印象にある。 〈ホラー〉というジャンルに分類されているようだが、醜い人間の醜態を晒す人間ドラマにもなり得たのではないか..★,
「ネオン・デーモン」
のレビュー(9804件)