【王子様との結婚は幸せ?】話題のシーズン4だけでも観てほしい、英国王室の大河ドラマ『ザ・クラウン』

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Netflix Japan編集部

2021年4月9日、イギリス王室はエリザベス女王の夫、エディンバラ公フィリップ殿下が99歳で逝去したことを発表しました。フィリップ殿下のご冥福を心よりお祈り申し上げます。

政界実力者との確執、王室のロマンス、そして20世紀後半を彩る歴史的事件の影で葛藤する、生身の女王の姿を重厚に描いた大ヒットシリーズ『ザ・クラウン』。ドラマチックな展開や俳優たちの迫真の演技が高い評価を受け、2021年ゴールデン・グローブ賞で最多4冠に輝きました。メーガン妃のインタビューで今、話題の英国王室を描いた作品ということで、気になっている人も多いのでは? マイリストに入れつつも、シーズン1から観ると時間がかかりそう……と後回しになっているなら、いきなりシーズン4から観始めてみてはいかがでしょうか。

シーズン4の見どころは、なんといっても故ダイアナ元妃。1997年、不慮の事故でこの世を去った彼女は、今なお世界中で愛される永遠のプリンセス、そしてヘンリー王子、その兄ウィリアム王子の母です。今から40年前、幸せなお姫様を夢見て、将来英国王となる王子様と結婚したことが、いかに彼女の人生を狂わせてしまったか。悲劇の始まりともいえる“世紀のロイヤルウェディング”、かの有名な三角関係の真相や波乱万丈な結婚生活……“おとぎ話”の裏側を赤裸々に描くシーズン4。

誰もが一度は目にしたことがある豪華絢爛な結婚式の写真や映像からは伺いしれない、ダイアナ元妃の苦悩のエピソードの数々に、きっとこう思うはず。

「王子様との結婚は、ちっとも幸せじゃないかも」。

エマ・コリンのダイアナ元妃再現率の高さに注目

ザ・クラウン』の大きな特徴は、ストーリー展開や登場人物の描かれる年齢に合わせて、キャストをがらりとチェンジする徹底ぶり。俳優陣の演技力はもちろんのこと、壮麗なセット、こだわり抜かれた衣裳、ヘアメイクによるビジュアルの再現度の高さも秀逸です。

なかでもシーズン4で注目を集めているのは、ダイアナ元妃を演じた新人俳優エマ・コリン。服装から話し方までそっくりすぎると絶賛され、見事ゴールデン・グローブ賞TVドラマ部門の主演女優賞を受賞しました。

ヴァラエティ誌のインタビューによると、ドキュメンタリー『ダイアナ妃の告白』を100回近く観たり、私設秘書だった男性に会って話を聞いたり、研究を重ねたというエマの演技は、これがフィクションだということを忘れてしまうほど。彼女の体当たりの演技によって再現された事実のひとつ、ダイアナ元妃が摂食障害に苦しむ姿はとくに、観ていて胸が痛くなるほど真に迫っています。

おとぎ話とは程遠かった?事実が織り込まれたエピソード

ストーリーの大部分が史実に基づいて作られている『ザ・クラウン』ですが、あくまでフィクションです。しかし、ダイアナ元妃にまつわるエピソードに関していえば、ドキュメタリー『ダイアナ妃の告白』の肉声テープで聞くことができる本人のコメントからも、いくつかの真実が潜んでいることは確か。

また米トーク番組に出演したヘンリー王子が、『ザ・クラウン』を視聴していることを認め、「王室のライフスタイルや家族の出来事に関して、大まかに事実を伝えている」と発言したこともあり、フィクションといえどリアルが入り混じったストーリーが話題を呼んでいます。

結婚前からの恋人カミラの存在

シーズン4のエピソード1は、チャールズ皇太子がカミラとの不倫関係を続けながら、ダイアナ元妃の姉セーラと短期間交際していた時期(1977年頃)から始まります。皇太子がカミラと出会ったのは1970年初期、彼女の家柄や恋愛遍歴などから、皇太子の妻にはふさわしくないと反対されたため、皇太子は煮え切らず、カミラは別の男性と結婚していたのです。当時アラサーの未来の国王が誰と結婚するのかは、王室はもちろん、国を挙げての関心事。皇太子が自分の立場とカミラへの思いの間で葛藤していたことが想像できますが、いろいろな女性と噂になりつつも、心は変わらずカミラにあったようです。

その頃、実の父親より慕っていた叔父マウントバッテン卿が爆弾テロにより暗殺されるという痛ましい事件が起き、ショックを受けていた皇太子に慰めの言葉をかけたのがダイアナ元妃。これはダイアナ元妃本人もコメントしている事実で、ドラマは実際のシチュエーションは違うものの、その時の会話が交際のきっかけとなったようです。

敬愛する叔父に「純粋無垢で国民に愛される王妃を見つけることが、皇太子としての義務だ」と諭されていたことも、頑なな皇太子の心を動かした一因かと思われますが、王室とゆかりのある家柄、人々に愛される性格、類まれな容姿、若く交際歴がないことなど、彼女が未来の王妃として非の打ち所のない条件を揃えていたことが、皮肉にも不幸な結婚を実現させてしまいました。

「この結婚には3人が関わっていたので、少し込み入っていました」というダイアナ元妃の有名な発言があるように、もともと定員オーバーだったチャールズ皇太子との結婚。世間は“おとぎ話のようなロマンス”に大熱狂しましたが、婚約記者会見でのダイアナ元妃を“愛しているわけではない”と言わんばかりのドン引き発言からもわかるように、婚約後もなおカミラとの関係は続いており、エピソード3では、皇太子が自分の不在中、寂しい時の最適な話し相手としてカミラに会うことをダイアナ元妃にすすめる、唖然とするようなシーンも描かれています。

またカミラがダイアナ元妃をランチに誘い、彼女の知らない皇太子の話を次々と畳みかけ、マウントをとってくる場面はドラマ上の演出だと思いたいところですが、二人が会ったのは事実なんだそう。徐々に皇太子とカミラの親密な関係に気づいたダイアナ元妃は、
猜疑心と孤独に悩み、摂食障害に苦しむように。

結婚式の直前の様子が描かれるエピソード3「おとぎ話」のエンディングでは、皇太子の苦渋の表情が映し出され、「おとぎ話ではロマンスを終わらせるのが結婚。結婚式は終着点ではなく、物語が始まる地点なのです」というスピーチが流れますが、これは実際の結婚式でカンタベリー大主教が話された音源が使われています。今なお語り継がれる世紀のロイヤルウェディングは、まさに“おとぎ話のようなロマンス”が終わった瞬間だったのかもしれません。

夫との嗜好・価値観の違い

チャールズ皇太子とダイアナ元妃は12歳という年の差があり、婚約したのはダイアナ元妃がわずか19歳の時。劇中でも王室メンバーが「彼女はまだ子供」と言うシーンが何度も出てきます。エピソード5では皇太子がカミラに電話をして、「君の大人らしさが恋しい、ダイアナに君のような強さがあれば」と愚痴る場面も。

またエピソード9では、女王に兄チャールズの結婚生活の実情を聞かれたアン王女が、「お姫様が王子様に恋しましたが、王子様は人妻に恋をしていて、全員不幸せに暮らしました」と語り始め、「夫は実年齢より老けていて、妻は若々しい。年の差は深刻になった」と続けるように、皇太子はダイアナ元妃に対して、実際以上の年齢差を感じていたそうです。

アン王女が二人の関係を「どちらも高貴な生まれでも、性格は大違い、趣味も友人も完全に別、お互いを理解できない」と説明した通り、現在もオーガニック農園を経営しているほど、田舎の自然をこよなく愛するチャールズ皇太子。一方、都会が好きなダイアナ元妃は皇太子が大好きなガーデニングもポロも狩りも大嫌い。

そんな二人の趣味嗜好の決定的な違いが描かれるのがエピソード9、皇太子の37歳の誕生日を記念してロイヤル・オペラ・ハウスでおこなわれたイベントでのこと。お祝いのつもりでサプライズダンスを披露し、拍手喝采を浴びるダイアナ元妃を、皇太子は微妙な面持ちで見つめます。これも実話がベースで、ダイアナ元妃は入念な準備と練習を重ねてこの舞台に臨んだようですが、皇太子は快く思わず、王室のエチケットに反すると立腹したそうです。

また、結婚7周年の記念日に、ダイアナ元妃は自分が演じた『オペラ座の怪人』のビデオを皇太子に贈りますが、彼女の自己表現は皇太子の目には自己顕示欲の塊としか映らず、「不気味」という始末。実際ダイアナ元妃はロンドンの劇場街で本物の舞台を用意し、役者も揃えたそうで、その場にミュージカル界で有名な作曲家アンドリュー・ロイド・ウェバーが立ち会ったこともわかっています。ダイアナ元妃のやることなすことが裏目に出る、二人の心のすれ違いぶりは見ていて切なくなるほどです。

民衆に愛されすぎて、夫の愛を失う皮肉

二人の結婚生活のターニングポイントになったと言われる1983年のオーストラリア外遊を描いたエピソード6。当時22歳のダイアナ元妃にとって初の外遊(当時9か月のウィリアム王子にとっても初の公務)で、劇中のアン王女の発言によるとチャールズ皇太子にとっても「華々しいデビューの場になるはず」でした。

しかし二人が訪れる各地に集まる民衆のお目当てはダイアナ元妃。エリザベス女王がオーストラリアに訪れた時以上の熱狂的な歓迎ぶりに、「母さんの時よりもずっと大きい歓声だ、自慢したい」とうれしそうだった皇太子も、ダイアナ元妃にばかり注目が集まることにだんだん不満が募ります。皇太子が単独で訪れた公務では、ダイアナ元妃を見に来たのに、と露骨にがっかりするファンの様子が描かれていますが、こういうことは実際に起こっていたのだそう。

まだSNSのない時代、新聞の一面や雑誌の表紙がダイアナ元妃一色になることは、将来国王となる皇太子にとって屈辱的なことでした。民衆にはこんなにも愛されながら、愛してほしい皇太子には愛されず、むしろ疎まれる存在となっていくダイアナ元妃。彼女がパパラッチの過剰報道により命を落としたことは、注目を集めすぎたゆえに起きた最大の悲劇ですが、ダイアナ・フィーバーと呼ばれるまでの世界的な人気が、夫婦関係の破綻の引き金にもなっていたのです。

王室の中で孤立を深め、心を閉ざしていくダイアナ元妃

エピソード3では、ダイアナ元妃が婚約中からすでに孤独だったことが描かれていますが、結婚後もチャールズ皇太子は不在がち。夫と話すこともできず、助けもなく、ひとり苦しむダイアナは女王にSOSを送っていたようですが、電話を取り次いでもらえず……。

エピソード6でようやく女王と直接話をする機会を得たダイアナ元妃は、女王なら結婚生活を救ってくれるはずと期待を抱いてバッキンガム宮殿を訪れます。しかし「夫もアンも私を嫌っている。陛下も私が嫌いですか?」と詰め寄り、女王を「ママ」と呼んで助けを求めたダイアナ元妃に、エリザベス女王は驚きと困惑を隠せず、その場を立ち去ります。

彼女はただ、普通の家族としての愛情と安心感を求めただけ。しかし「女王」ただ一人が重要である、特殊な家族「王家」に、彼女が求めるものは存在しませんでした。

多くの人に犠牲を強いる「王室」とはいったい何なのか

シーズン4を観て、ダイアナ元妃、そしてチャールズ皇太子の苦しみを知り、ここまでして守らなければならない王室ってなんだろう?と思ったら、ぜひシーズン1から順番に観てみるのがおすすめ。英国の政治的・社会的事件ともに、王室をめぐる壮大なホームドラマが繰り広げられ、女王が歩んできた道のりがよりよくわかるはずです。

エピソード8の冒頭で再現される、女王がまだ王女だった21歳の誕生日におこなったラジオ演説。その時の「私の人生が、たとえ長かろうと短かろうと、民のために尽くします。連邦のために人生を捧げます」という宣言は、まさに女王の生き様を象徴しています。

離婚歴のある侍従武官に恋した妹マーガレット王女の結婚を諦めさせたように、ときに家族に対しても厳しく、非情な女王。冷酷に思えるけれど、それもすべてはイギリス連邦のため、民衆のため、王室存続のため、という信念に基づく行動です。

25歳で即位して以来、イギリス連邦の君主としてさまざまな苦難を乗り越え、2022年には在位70周年を迎えるエリザベス女王。『ザ・クラウン』という作品は、“国の母”として生きる女王の姿を描くことで、王室の存在意義とは?という問いへの答えを示しているかのようにも思えます。

今、世界中がメーガン妃の一件で話題騒然ですが、シーズン4で描かれるダイアナ元妃を観れば、英国王室に嫁ぐということがいかに大変なのかを想像できます。同じようにマスコミの餌食になって苦しむメーガン妃と、その隣で母親の悲しい歴史が繰り返されることを恐れるヘンリー王子の気持ち、さらにそれを止めたくても止められなかった女王をはじめとするロイヤルファミリーの想いを、『ザ・クラウン』を観ることで少し理解できるかもしれません。

文・江口暁子

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