新しくできるシネコンに「IMAXムービーシアター導入!」「IMAX3Dで臨場感あふれる体験を!」などという宣伝文句を見たことがありませんか?IMAXで撮影された映画にはどんな効果があり、IMAXシアターとは何が凄いんでしょうか。
出典 : https://www.imax.com/ja/corporate/
IMAXという規格
IMAXとは、IMAX社が作った映画を観る環境の規格の一種であり、また、元は大判フィルムそのものの規格でもあります。通常の35mmフィルムの面積比4倍もある70mmの大きさ。
つまり、撮影用フィルムとしても、上映用フィルムとしても、超高解像度の画が得られます。日本の映画館で採用している上映用システムはその高解像度の技術をデジタル化したIMAXデジタルシアターという規格です。
出典 : https://en.wikipedia.org/?title=IMAX
世界で4台しかないIMAXカメラをぶっ壊したノーラン
撮影用フィルムカメラとしては、今までは実験映画や環境記録などで使われていましたが、カメラ本体が巨大になってしまうので、通常の映画の撮影で使われる事はほとんどありませんでした。何せ、カメラを手持ちで撮影するのすら大変な大きさです。
※ 『インターステラー』撮影時の撮影監督ホイテ・ヴァン・ホイテマさん
出典 : http://www.studiodaily.com/2014/11/for-the-love-of-film-interstellar-imax-featurette/
その常識を覆したのが、クリストファー・ノーラン監督の『ダークナイト』。果敢にもカメラを動かしまくるアクション映画に使用し、その緻密な画で描く冒頭の銀行強盗シーンやカーアクションなどは、今まで感じ得なかったヒリヒリした不思議なリアリティのあるフィクションを描くことに成功しています。
特に、パトカーを奪った後のジョーカーが窓から顔を出しながら走るカット。大判フィルムならではの被写界深度の浅さ(後ろのボケの綺麗さ)も相まって、ジョーカーの開放感のある芝居に鳥肌が立ちました。
また、当時世界に4台しかなかったIMAXカメラを、カーチェイスの撮影中にクレーンに乗せ、別の車が突っ込んでしまい、ぶっ壊した様子がメイキング映像から見て取れます。当時1台50万ドルはしたとか…。
出典 : http://www.joblo.com/movie-news/thoughts-after-seeing-the-six-minute-dark-knight-rises-prologue
IMAXデジタルシアターの何が凄いのか
現在の日本のシネコンのIMAXデジタルシアターはやや小ぶりなサイズ。(成田が最大で縦14m。世界最大はシドニーの縦30m!)ただし音響や画面の明るさ、そして3D作品における立体感(IMAX3D)は他の映画館の追随を許しません。IMAXカメラで撮影してない映画であってもその差は歴然なのです。
3D映画のエポックメイキングである『アバター』公開の際、最初は別の3Dシステムの映画館で観た後、IMAXで再鑑賞しました。まず3D眼鏡をしても画面が明るい!映画冒頭の目のアップからの「手前に浮いている埃」がちゃんと認識でき、こんな形で、こんな立体感があったのか!と驚いたくらいです。
3D作品だけでなく2Dの作品もたくさん上映しています。『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』は2D作品としての上映でしたが、ドバイの高層ホテルのシーンはIMAXカメラで撮影されていたので、トム・クルーズのスタント無しの高層アクションは、大迫力でした。
縦横の比率が違う
IMAXで撮影といっても、現在ではなかなか全編撮るのは難しく、台数の確保もできないため、シーンによってIMAXカメラだったり通常の35mmカメラだったりと混在している事が多いです。そして、その場合多くは縦横比が違うフィルムが混在することになります。
例えば「トランスフォーマー」の3作目、4作目では、トランスフォーマーたちが戦うカットはIMAX(ちょっと縦長)、それを見ている人間のカットは35mm(シネスコサイズ)という、同シーン内でころころ変わる変則でした。Blu-rayで観ても、画面の上下を良く見ればどのカットがIMAX撮影かひと目で分かります。
IMAXフィルム(70mmフィルム)上映という特別
また『インターステラー』においては実験的な事をやっていました。IMAXフィルム撮影の際のフィルムの上下幅いっぱいいっぱいまでの画を全部活かしているため、IMAXデジタル上映版と、一部で特別に上映されたIMAX70mmフィルム上映版のふたつは、全然違う画角で上映されていました。
これはBlu-rayで確認する術もなく、その特別上映でしか観れない画がそこにありました。まさにこのデジタル時代にあえて反抗するような、【映画館で映画を観る】事に対する製作者側たちの想いの現れだと思います。
※ 実際に見えてる範囲がこんなにも違うのです!!
出典
: http://www.reddit.com/r/interstellar/comments/2rg2gs/is_70mm_imax_praised_simply_because_of_the_the/
※上映用フィルムも巨大!
出典 : http://evergreenmuseum.org/behind-the-scenes-at-the-imax
ぼくのIMAX体験記
そんな特別なIMAXフィルム上映だけでなく、IMAXデジタルシアターのような上質な映画体験というのはDVDやBlu-rayでは感じ得ないものだと思います。いずれ過去のIMAXの名作をもう一度映画館でリバイバル上映して欲しいものです。特にIMAX3Dは体感という言葉が正しい映画体験だと思います。
『ゼロ・グラビティ』では本当に宇宙にいるような感じで手に汗と握りました。『プロメテウス』ではリドリー・スコット監督特有の【大画面の中に米粒のように映る宇宙船や人間】というしびれる構図を楽しみました。『パシフィック・リム』では一緒にコクピット内でイェーガーを操縦してる気分でした。
また、『サンクタム』という3D映画は流石にジェームズ・キャメロンが製作してるだけに、本当に水没した洞窟内に閉じ込められたような息苦しさをも体感しました。これもいつかIMAX3Dで観てみたい作品のひとつです。
今年観るべきIMAX映画!
公開されたばかりの『マッドマックス 怒りのデス・ロード』はその音の爆音っぷりも含めてIMAX3Dシアターで観るのに相応しい作品でしょう。その他、今年2015年は大作続編やリメイクが目白押しの年。なんだかんだ楽しみなものです。
『ジュラシック・ワールド』や『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』はIMAX公開も決定。「恐竜がいるパークは危険だよ」ってあんだけ言ってるのにまた作った人々が襲われる様をIMAX体験しにいきましょう!やはり大作ならではの迫力は映画館で体感したいものです。
※2015/6/24 8:28 修正 記事内にて、『ザ・マスター』でもIMAXカメラが使用されている旨の記載がありましたが、こちらは誤りであったため削除致しました。大変失礼いたしました。
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