ライアン・ゴズリングが人形と恋する? ハートフルコメディ映画『ラースと、その彼女』を紹介!

2017.03.30
洋画

映画観て、絵描いて、ハイッ!

フクイヒロシ

本年のアカデミー賞6部門を受賞した話題作ラ・ラ・ランド』は観ましたか?

賛否両論巻き起っていますね……。僕も観ている最中は「う~ん」と思っていましたが、帰ってiTunesでサントラ買ったらそれを聴くのがもう楽しくて楽しくて。映画は観ている2時間より、観終わって記憶に残っている時間の方が長いんだから、幸せな記憶として残れば、それは自分にとっても映画にとっても幸せな結果かなと思います。

さて、そんな『ラ・ラ・ランド』の主演俳優の一人といえばライアン・ゴズリング

全米が泣いた系映画きみに読む物語でブレイクして、ハーフ・ネルソン(日本未公開)』ブルーバレンタイン』『ドライヴなどで批評家にもウケのいい当代きっての人気スターです。

見た目からしてシュッとして腹筋バキバキですけど、役柄もシュッとした腹筋バキバキのが多い印象です(ラブ・アゲインなど)。そのライアン・ゴズリングがパブリックイメージと真逆のキャラクターを演じたのが2008年日本公開のハートフルコメディ映画ラースと、その彼女

第80回アカデミー賞脚本賞にノミネートされ、トリノ映画祭で観客賞、第12回サテライト賞ではライアン・ゴズリングが主演男優賞を受賞しました。今回はこの映画をご紹介させていただきます。

『ラースと、その彼女』あらすじ

まずザッと『ラースと、その彼女』のあらすじを。

アメリカの小さな田舎町に住む26歳の好青年ラース(ライアン・ゴズリング)は極度のシャイで特に女性と接するのがとても苦手であり、兄夫婦はそれをとても心配していました。そんなある日「紹介したい女性がいるんだ」とラースから言われた兄夫婦は驚きながらも、とても喜びました。

しかし、ラースが連れてきたのは「ビアンカ」という名のついた等身大の女性の人形(まぁ、つまりそういう人形……)だったので兄夫婦は軽パニックになりました。さてさてどうなる、どうする!?

ラースとその彼女1

こう書くとだいぶドタバタコメディ感が溢れますけど、実際は静かに淡々と進んでいきます。音楽も全編美しいメロディです。とは言え、笑えるシーンも多いですよ。人形を紹介された兄夫婦の「やばいことになった!でも顔に出しちゃいけないよな!」というリアクションは噴飯モノです。

ビアンカ(人形)に対する周囲の戸惑い

この映画を改めて見返してみて印象的だったのは、「わからない」という言葉が多く出てきたことです。

兄「弟がついに壊れた!どうすりゃいいんだ!」 

兄の妻「わからないわよ!

兄「先生、ラースはいつ治るんですか?どうしてこうなったんですか?」 

女医「わからないわ

などなど。そりゃわからないですよね…。実際こんなラースに対して直接的に嫌悪感を表す人もたくさんいます。

「許せん!人形を偶像崇拝するなんて!天罰が下る」「エロ人形に恋するなんて、ものすごく不気味だ」言葉はなくても冷たい視線で見たり、ビアンカに走り寄る子供を「近づくな!」と引き留めたり。

ですが、「うわ!キモ!」とシャッター降ろしちゃうんじゃなくて「わからない」ということを受け入れた上で「正しそうなこと」をひとつずつ行動していく姿がとても丁寧だし、優しいなと思いました。

そもそもラースは心優しい青年なのでそれを知っている人は危機的状況にある彼に対して優しくあろうと努めます。そして、女医さんは「ビアンカは必要があって現れた。ラースの話に合わせて。」と兄夫婦に助言します。

ラースとその彼女2

兄夫婦は戸惑いつつもラースの望むように、ビアンカにも食事を作り風呂に入れパジャマに着替えさせてベッドで寝かしつけたりと丁重に扱います。

ちなみに、ビアンカは元宣教師(という設定)で結婚前に男性とベットを共にできないのでラースとビアンカは別の部屋で寝ることになります。だから「リアルドール」のそもそもの目的として使うことはありません。

ビアンカの噂はすぐに広がり、上記のように後ろ指さされることもありましたが、町の人たちもビアンカを徐々に受け入れ始めます。そして、ビアンカを通して自分自身を見つめ返すことも。

ラースとその彼女3

ラースの変化とビアンカの運命

周りが変化していくことでラースにも変化が。ラースはビアンカにプロポーズしますが、なんとビアンカに断られてしまうのです。「え~~、断られることなんてあんの!?」と周りの人たちも素で驚きます。

意思を持たない人形が人間を拒否するわけないんですから。つまりそれはラース自身の心に変化が起きるということです。これ以降ラースとビアンカの関係は変化していきます。

 

ラースとその彼女4

さて、王様の◯ランチのDVD紹介並みにストーリーを説明しましたが、後半の展開はさすがに本編を観ていただきたいと思います。

町の人たちもラースを支えることが自分の問題に向き合うきっかけになったり、ビアンカを通して自分の考えを主張する機会を得たような気がしました。ラース自身も「自分は今ヤバい状態である」ということに気づいているようだし、ビアンカという謎の人形を周りが受け入れてくれることに少し戸惑っているような感じも見受けられます。(ひとりでダンスを踊るシーンがそうかな、と思うんですが。切ないシーンです。)

何気ないシーンを丁寧に積み重ねてる映画で、ストーリーの流れもセリフも自然だし、笑えるシーンもいっぱいあるし、恥ずかしながら最後はウルっときてしまいました。

ぶっちゃけ「こんなに優しい人ばかりなわけがないっ!」と、この映画を嫌いな人も多いようなんです。まぁわからなくはないんですが、ちゃんと嫌悪感表現する人もたくさん出てきてましたからね。

理解できない事柄に困惑しながらもまずは受け入れるフリをしているうちに、実際受け入れられるようになって自分が変化(成長?)する物語かな、と思います。

監督はクレイグ・ガレスピー。ディズニー製作の実写映画や伝記映画を多く撮っていますが、おそらく一番ヒットしたのはコリン・ファレルがヴァンパイアを演じたホラーコメディフライトナイト/恐怖の夜。こちらもユーモアが効いてるしキャラクターが面白かったです。みんなのびのび演じてる感じで。(正直怖くはなかったですが…。)

ちなみに今回、カリン(兄嫁)役のエミリー・モーティマーがいい味出してます。声がとても可愛くて『ハウルの動く城』のソフィーの声を担当したり、2010年公開の主演映画レオニーでは中村獅童原田美枝子と共演していたりと、日本とも繋がりのある女優さんです。

設定が「ぎょっ」とする映画ですが、そこでシャッター降ろしてしまわずに試しに観てみたら意外とよかったなんてこともあるかもしれませんよ。

ラースポスター

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  • たぬ
    4.0
    面白いし可愛いし好き
  • しほ
    4.1
    ラースかわいい。 周りの人たちのあたたかさが沁みる映画でした。
  • Naoya
    2.6
    内気で人付き合いが苦手な青年のラース。そんな彼が、近所に住む兄夫婦に紹介した彼女は、ビアンカというラブドールだった。ライアン・ゴズリング出演のラブコメディー作。序盤こそラースの奇妙な行動に不思議な感覚、悪く言えばイカれてしまったと思えるような行動があるが、兄夫婦や、通う協会の人たち、病院の医療者等、小さな田舎町の人々が関わっていくうちに、次第にその光景が当たり前に感じ、ラースが、良くも悪くもある人間らしさを表出するようになり、ラブドールが登場しながらも、繊細なヒューマンドラマにもなっており感慨深い。ラースの喜怒哀楽がとても豊かになっていく、より人間らしくなっていく姿は決しておかしい事ではなく、素敵な変化に感じる。とても温かい雰囲気のある、人の優しさが溢れる内容。コメディー要素も確かにあるが、それを上回るドラマで、終盤は笑えるようで笑えない。序盤の不思議な感覚が、不思議な感覚のまま愛に包まれていく物語で、結局は不思議な感覚で終えるが、それがまた良い後味。(DVD)
  • あぶきち
    3.8
    ラブドールの彼女。頭がおかしい!と兄夫婦も心配にそりゃなる。でもラースを思うその周りの人たちすべての愛が彼女を生かし、ラースをもかえたんだとおもう。すごい映画でした。ビアンカをみてキョトンとする夫婦のなんともいえない表情(笑)それでも精神の病を抱えた彼をみんなは頭がおかしい!というのではなく、ビアンカの存在をリアルな物にしてくれる。なんと優しさで溢れ出る映画なんだ。最初は人形という認識がたしかに抜けない。でも徐々にみていくとビアンカという一人の女性が見えてくる。不思議だ。女性医師にはじまり、まわりのみんなの優しく心温まる対応に思わずやられます。人としてあるべき優しい心を教われるような本当に温まる映画でした。くまさんのぬいぐるみを蘇生するラースがたまらないです。きゅんです。
  • DjKokiAbe
    4.9
    観る前はラブドールを彼女にした色物的映画と勘違いしてしまい、最初観た時は3.5点くらいで、兄夫婦とマーゴが初めてビアンカに会った時のキョトンとした表情に笑ってしまったのですが、再度、観直したら細かい心情なども解って、何より心を病んだ主人公をとりまく優しい人々の対応が素晴らしくてとても心を打たれました  ラースの兄や兄嫁のエミリーは本当にラースのことを心配して、食事に招待したりいろいろ気を使うけど、ラースはなかなか兄夫婦とも顔を合わせようとしないのですが、ビアンカが現れてからは、人が変わったように兄夫婦と付き合うようになります 「 精神の病は必ずしも病気とは限りません。 心を通い合わせることで良い方向に進めます」 「妄想はいつまで? 」「彼が必要とする限り 」 「ビアンカは理由があって現れたのよ」 と先生は言います 「人を救うのが彼女の使命だって」 とラースが言うようにビアンカが来たことには理由があったのです ラースは人生の曲がり角にいて、このまま引きこもることもできるけど、彼は再出発を決意したのです ラースを想う同僚マーゴ 最初はかなりファニーでインパクトがあるルックスでしたが、とても優しくて観てるうちに段々可愛くなってきました マーゴはラースの事が好きだけどビアンカがいる事を知り寂しさから好きでもないエリックて言う人と付き合うのですが、エリックと別れたのとテディベアが同僚にいたずらされて悲しんでいる時にラースがテディベアに人工呼吸をしてあげるシーンがあり、ラースの優しさが表現されていて好きなシーンです 後、初めてボーリングをしたかもしれないラースが隣のレーンにいく位、大暴投をするのですがマーゴは「どこに投げてんのよ 」ではなく「スピンかけすぎよ 」と言い、ラースはまんざらでもない感じで「そう」というのですが、失敗でも褒めてラースに自信を持たせている感じがして、凄く優しさを感じました そして仲間と合流してボーリングをしてる最中もラースはマーゴの事が気になって仕方なくなります ボーリングが終わった後の「誤解してほしくないんだ、ビアンカを裏切ることは絶対にできないよ 」 のラースの言葉にも、けして「ビアンカは人形よ、私を見つめて」等と問い詰めること無く「もちろん、仲を裂いたりしない 」と言うマーゴ 帰り際、触れるだけで痛みを伴うラースが自らマーゴと握手しようと手を差し伸べます そしてビアンカが危篤になります マーゴのことが好きになったからそうしたんだと思う人もいるかもしれませんがラースはラースなりに凄く葛藤したんだと思います 先生の言うように、これはラースの決断で 初めからすべて 彼が決めているんです ビアンカの危篤に兄夫婦や町の人達も本当に心配しているところが胸が打たれました 苦しんでいる人がいたら駆けつけて、何も話さず、そっと付き添うようにする 年配のご婦人方がラースの家に来てラースのそばに付き添うシーンも暖かい気持ちが溢れていてグッときました ビアンカとラースが初めてキスをするシーン キスをした後にビアンカを抱き締めてラースが泣くところはビアンカに感謝しつつも、段々、ビアンカを必要としなくなってきてる自分に戸惑い泣いていて「今までありがとすう 」的な気持ちが込められいるような気がして心が打たれます 教会でのビアンカの葬儀のシーンは町の人達がなんて暖かい心や気持ちを持っているんだろうって思ったり、最近、父が亡くなったのも重なってか涙が溢れてしまいました 墓地に埋葬した後、マーゴがそっと寄り添いラースがちょっと積極的になってきてるラストも良かったです 久々に物凄くガツンと心を打たれ、穏やかで愛おしい映画でした この映画を観る少し前にA-Studioのリリーフランキーを観たばかりで、優香とやまぴーのリリーフランキーのラブドールに優しく接した話に本当に優しい気持ちを持った人なんだなぁと思いました (リリーフランキーのラブドールに初めて会ったやまぴーが礼儀正しく自己紹介をしたのと、優香がラブドールに自分が使っているのと同じイヤリングをプレゼントした話 ) ライアン・ゴズリングは少し前にドライブを観たばかりで、全然キャラが違く振り幅半端なくて演技力が凄いなぁと思いました 脚本 ナンシー・オリバーの言葉 「精神の病に対して私たちが、もっと向き合い受け入れることで、どんな影響があるのか 」 「この映画で学んだわ。笑いと痛みは紙一重なのよ」 ライアンの「 自分の子供に悪友ができて、その影響が心配なんだけど 結局は子供を信じるしかない、そんな母親の気分さ」ってコメントが兄夫婦の心情を表してる気がしました
「ラースと、その彼女」
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