6月24日(木)から、Netflixにて全世界に配信が開始された『全裸監督シーズン2』。シーズン1からは一転し、頂点から奈落の底へと落ちていく村西とおるの転落劇を、重厚な人間ドラマと共に描き出しています。今回は、各所で話題となっている本作の魅力を徹底的に掘り下げていきます。
本当に描きたかったのは“転落劇”だった
飛ぶ鳥を落とす勢いで時代を駆け上がり、アダルト業界の頂点に立った村西とおる。しかし彼は、アダルトビデオの成功だけでは満足しませんでした。地上波テレビでのタレント活動や、「全日本ナイス党」という政党を立ち上げ政界進出を目指すなど、バブルという時代の波に乗った村西の野望は枯れることなく、膨れあがる一方です。
そんな折、彼は衛星放送事業という新しいビジネスと出会い、空からエロを降らせるという壮大なビジョンの虜になります。
莫大な借金をこさえて事業に参入した村西ですが、入会料金が高額な衛星放送は思うように契約数が伸びず、赤字が膨らむ一方です。しかし「空からエロを降らせる」という夢を諦めきれない村西は、事業をなんとか存続させようとあがき、仲間と会社を追い詰め、借金をどんどん増やしていきます。ここから物語は、一気に転落していくのです。
武正晴総監督は、シーズン2で描かれた転落劇こそが「本当に描きたい部分だった」と語っており、脚本を担当した山田能龍氏はシーズン2を、「急激な時代のうねりと共に落ちていく物語」だと説明しています。
頂点へと上り詰めたかと思いきや、瞬く間に崩壊したバブルと共に落ちてゆく村西は、まさに「時代の波に飲まれた多くの人々」の中の一人に過ぎないのです。それ故に、本作で描かれる彼の成功も失敗も、単なるアダルト業界の1エピソード以上の想いを視聴者に与えます。
《 Filmarksレビュー》
急降下する日本社会と村西。両者が段々と失速していく所は、前作よりドラマであり、バブルそして村西自身が、これまでの幻想から解き放たれる様は、苦しいながらも深く突き刺さるものだった。
殆どはノンフィクションであろう話を豪華に演出され、隠すところなく狂い魅せ、バブルの崩壊を村西という男の視点で派手に表現されていた。
アドリブから生まれた魅力、さらに深い人間ドラマへの挑戦。
シーズン1で鉄壁のチームワークを見せた村西軍団の面々は、それぞれの道を模索することになります。黒木香は村西と別れ、夢だったイタリアに留学をします。助監督として村西を支えた三田村とラグビー、そしてメイクの順子は、川田とともにアダルトビデオ業界に残り、自らの求めるエロを追求し続けます。
そして、シーズン1では村西を救うために裏ビデオ販売に手を染めたものの、それがキッカケで村西と決別したトシは、ヤクザの道に進みながらも村西のことを気にかけ続け、最後には自らケジメをつける道を選びました。
どこでボタンを掛け違えたのか…。シーズン1で村西がハワイで逮捕された時には一丸となって救おうともがいた村西軍団が、シーズン2ではバラバラになっていく姿に、切なさと同情を覚えます。
脚本の小寺和久氏は「シーズン1とはまったく違う感情を視聴者に持ってもらう必要があったんですが、もともと落ちていく話が好きだったので、得意分野だと信じてあまり考えずに突っ込んでいった感じです」と語ります。
人間ドラマをもっと深い物にするためには、脚本チームはもちろん、実際に演じる俳優たちの解釈や掘り下げも重要です。トシ役の満島真之介は、当初脚本に書かれていたサヤカ役の西内まりやとのラブシーンに、「トシにとってはサヤカとの関係は恋愛じゃない」と意見した結果、脚本が変わり、簡単には割り切れない深みのある関係性が生まれました。
また、玉山鉄二演じる川田は、シーズン1よりさらに変態的な一面がより強く描かれています。この設定も、玉山鉄二のアドリブがきっかけで採用されたそうです。しかし振り返ってみると、村西の作品に惚れ込み、これだけ真面目にエロに取り組める川田が変態であることに、なんら違和感はありません。
脚本家と監督によって練り込まれた設定を、役者自身が深みへと落とし込み発展していったシーズン2は、より濃く色づいたキャラクターたちの個性がぶつかりあう姿も、見どころの一つです。
《 Filmarksレビュー》
シリアスな展開の中でも、玉山鉄二の変態っぷりが最高。
その全てが役者達の凄まじい演技力とNetflixだから可能にする規制に捕われない細部にまで拘ったクオリティで描かれていて、観ていて言葉にできないくらいの高揚感でファンタスティック。
村西とおるが“敗者”に贈るエール。
「死にたくなったら下を見ろ、俺がいる」
シーズン1、2を通して、村西とおるは自分の野望のために多くの人を犠牲にし、裏切ってきました。しかし、それでもこの男には大きな魅力があるのも確かな事実です。一度は村西のやり方についていけなくなった川田でさえ、最後にはホームレスとなった村西に再度手を差し伸べます。絶望的な状況に追い込まれたトシも、結局は自らを顧みず村西を助けてしまいます。
『全裸監督』の村西とおるはなぜ、こんなにも人を惹きつけるのでしょうか。
それは、彼が力の限り全力で生きているということに尽きるのではないでしょうか。彼は常に遠くにあるものを見つめ、常人にはとても理解できないスケールで夢を追いかけます。それ故に近くにあるものを大事に出来ず、大きく転落しました。
しかし、何度失敗しても一心不乱に夢を追い続ける彼の姿は、失敗や挫折を経験し這い上がれずにいる人々にとっては、一種の“エール”として映るのではないのでしょうか。誰もが経験する普遍的な“失敗”を肯定し、また立ち上がる勇気をくれる。それこそが、村西が人を惹きつける最大の魅力となっているのでしょう。
村西が最後に言った、「死にたくなったら下を見ろ、俺がいる」という言葉について、武正晴総監督は、「生きていることは素晴らしいこと」という人間賛歌に繋がると語っています。このセリフこそが『全裸監督』の真髄であり、物語を昇華させる大事なメッセージでした。村西とおるの“丸裸”の半生を通して感じられる全ての気持ちを、余すことなく味わってみてはいかがでしょうか?
《 Filmarksレビュー》
人間の欲望に向き合い続けた男に捧げるレクイエム。ぜひとも色眼鏡で見る事なく、皆さんに堪能していただきたい!
「間違いなんかない、全部正解だ。」って言葉が凄い響いた。なんか上手くいかないしこれで合ってんのかわかんないしって思ってむしゃくしゃしてたけど、この言葉信じて頑張るわ、ナイスですね!
◆『全裸監督 シーズン2』information
Netflixで独占配信中