1960年初頭の「東京」を見る!日本映画名作5選

2015.07.15
まとめ

映画のミカタ、ここにアリ!

青空ホナミ

私たちの住む東京は、日本の首都として数多くの映画の舞台に設定され、これまでに当時の風俗や流行、社会問題といった話題を先取りした場所として描かれ続けています。

一方で高度経済成長を遂げたのち劇的に流れてゆく時代のなかでさまざまな変化を遂げてきた場所でもあります。

2020年には東京オリンピックの開催が決まり、これからも東京は新たな様相を帯びて来ることでしょう。今回は1964年の東京オリンピックを間近に控えた1960年前後の「東京」の見える名作日本映画を選んでみました。

川島雄三『女は二度生まれる』(1961)の九段下

女は二度生まれる

日本映画黎明期を支えるなか、さまざまな街を舞台に映画を撮り続けたのが川島雄三という監督です。とりわけこの作品ではあらゆる男たちを虜にする芸子・小えん(若尾文子)の魅力さながら、彼女とともに昭和の九段下界隈を駆け抜けていくようなロケーションの素晴らしさに圧倒されます。

ちなみに現在、映画館「角川シネマ新宿」では「若尾文子映画祭 青春」が開催されており、この『女は二度生まれる』も上映されます。この機会にぜひご覧になってみてはいかがでしょうか。

「若尾文子映画祭 青春」公式サイトはこちら

成瀬巳喜男『秋立ちぬ』(1960)の銀座

田舎の山梨から銀座へ母とともに上京する少年・秀男(大沢健三郎)によるひと夏の物語。この映画でとても驚いてしまうのは、秀男が母の働く旅館の一人娘である順子(一木双葉)から「海を見に連れてってあげる」と誘われる場面です。

銀座松阪屋(現在は閉店)の屋上から身を乗り出したふたりの前には、はっきりと東京湾の姿を目にすることができます。当時の銀座とは、まさしく「海の見える街」だったのです。

小津安二郎『秋日和』(1960)の丸の内

秋日和

冒頭からそびえ立つ東京タワーの壮大さはもちろんのこと、この映画にも当時の東京の姿が映っています。たとえば新婚旅行へ向かう同僚が乗った列車を見送るため、アヤ子(司葉子)と百合子(岡田茉莉子)がオフィスの屋上から手を振るシーン。するとふたりの目の前には、今はなき都電と、赤い京浜急行が並行に走っているのです。

ささやかではありますが、こうした同時刻を見計らっての瞬間と都会を象徴する些細な風景を切り取ることこそ、小津安二郎なりの演出とも言えるでしょう。

渋谷實『もず』(1961)の有楽町

新橋裏手の小料理屋「一福」を舞台にした作品ですが、ここでも当時の東京の姿を垣間見ることができます。それは松山での結婚生活に失敗し、松山から美容師を目指して上京したさち子(有馬稲子)が、小料理屋の常連である藤村(永井智雄)に連れられて車で江戸川へと向かう場面です。

彼らを乗せた車が走るのは1951年に開通した東京高速道路。この場面ではその車窓から高架上の銀座周辺を望むことができます。また劇中で江戸川方面へ向かう車がやや急な右カーブを曲がることからも、これらの風景は当時の有楽町付近だと見当がつくでしょう。

中平康『泥だらけの純情』(1962)の新宿と渋谷

泥だらけの純情

当時の日活スターである浜田光夫と往年の名女優・吉永小百合の若々しさに満ちた本作は、まさに東京ならではの慌ただしいロケーションの中で撮られていることを随所に感じます。

冒頭に令嬢の真美(吉永小百合)がチンピラに襲われる場面では、背後に「MILANO」のネオン看板を確認することができます。これは昨年の12月31日に惜しまれつつ閉館した新宿の映画館「ミラノ座」の象徴であり、周囲には今はなき「オデオン座」や「新宿コマ劇場」の建物群にも気づくことになるでしょう。

また次郎(浜田光夫)と真美のデートの場面では当時の渋谷駅周辺のハチ公前をはじめ、銀座線の改札口、最近は復刻ブームで見かけるようになった緑一色の山手線なども姿を現します。さらにふたりの愛の逃避行が展開され、目撃者が電話をかける場面ではふたたびミラノ座の看板が夜のネオンの中で煌びやかに輝きを放てば、道玄坂付近の路面帯もこの一連の場面で確認することができるのです。

映画の中の東京について考える

今回取り上げた作品の他にも、東京の見える映画はたくさんあると思います。しかしここに挙げた名だたる日本の映画監督たちとは、そうした当時の東京の変化や状況に敏感であり、東京の地理に詳しかったことをも物語っています。だからこそこれらの名作は今なお見直され、私たちもまた繰り返しそれらを確かめることができるのです。

そうした都市の面影を念頭に、今と昔の東京を映画のなかで比べて見ることも、今後映画を見るための大きな醍醐味となっていくのではないでしょうか。

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  • 燕鷲
    4.5
    比類なき傑作。 川島雄三作品に特有の“冷めた視線”はこの映画でも健在。寄り添うでもなく、突き放すでもなく、人々の悲喜交々を天井裏から覗いているかのような、この独特の感覚が楽しい。 小えん(若尾文子)と牧(藤巻潤)が靖國神社で身の上話をするくだりは、死への予感を軽やかに描いてみせる川島にしては意外なほど象徴的な演出(劇中、何度も挿入される太鼓の音の不気味なこと!)。 腕時計を譲り、現実という呪縛から解放されたはずの女が見せる、自嘲気味な微笑み。その直後に待ち受けるラスト・カットの斬れ味、殺傷力たるや……。
  • Kentaro
    5.0
    どんな悪女かと思いきや、健気な娼妓の暮らしを淡々と映し出すカワシマ節全開の逸品。詩情豊かでハイセンスな映像美とは裏腹に「ペッティング」「自家発電」あけすけな単語がぽんぽん飛び出す。絶品と名高いラストシーンは幾通りも解釈が可能で、まこと余韻が豊かな映画。
  • 道士・安野
    4.0
    浮気した若尾文子を刃物振りかざして説教する山村聡が最悪すぎてたまんない。 ラストショットは最高。
  • 1234
    3.8
    よかったのは覚えてる
  • tjr
    4.1
    いつまでも観ていられる大映カラー、決まりまくりの構図に照明、そして現時点でのベストオブ若尾文子!これは流石に可愛すぎでしょう。 王道な題材だからこそ川島雄三の凄さがよく見える。フランキー堺が寝床で電気を消すと照明が赤くなるという感覚が素晴らしい。 山茶花究が若尾文子を刺身のつま呼ばわりしてて憤慨する。ペッティングに詳しい今時女子な江波杏子、ハマり過ぎなのでもっと出て欲しかった。 山村聡のナイフ!コウちゃんの山へのアツい想い。
  • マコッサ
    4.0
    細かい小ネタも効いてるしなによりラストシーン最高だな
  • rika
    3.6
    ただかわいいだけじゃない。小気味好さも清々しさももつこえんちゃんの魅力全開。
  • うめず
    -
    おんなは確かに二度生まれることもあるけど、ちょっとわたしが思ってるのと違う
  • reinine
    3.9
    若尾文子が可愛いかった。 この時代の下級に位置する容姿に恵まれた女性の生き方がこれ。そう思うと可憐な彼女がとても憐れに映る。
  • マツダ
    -
    若尾文子かわいいなぁ
  • ナホ
    4.0
    素晴らしい構図のラストシーンにやられた。!仄かにこれからの生きていく決意を感じた。 勝手に若尾文子映画祭。 筒井が亡くなったと知ったときの小えんちゃんの演技が素晴らしい。 若尾文子×不穏な音楽の相性はよすぎる。
  • 古池
    4.2
    良かった! 可憐だけど、危なっかしい小えんちゃん。若尾文子さんが、ほんとにかわいい。 ラスト、内容からすると、もっと晴れ晴れした演出にも、もっていきそうなところを、あのホラーっぽい音楽もあいまって、不穏な雰囲気漂わせているのが、後をひきますね! 小えんちゃんの寄るべない胸中を表現しているのでしょうか? でも、時間を確認したときの、あの爽やかな表情も、信じてよいのかと思います。
  • つつつ
    -
    めっちゃいい 泣き
  • まりも
    4.3
    あっけらかんとした男たちのミューズ、こえんちゃん。 しびんを持つ、こえんちゃん。
  • 蝶結コネQ人
    4.0
    ドロドロしてるのかと思いきや喜劇調で明るい作風。叙情性も高く、ラストの締め方が衝撃的。
  • kita
    3.5
    若尾文子の可愛さといったらない。
  • K
    3.6
    みんな生きてるんだなあ
  • MisatoKamba
    4.2
    若尾文子の使い方が逸品。可愛さとノリの軽さと人情味。うーんいいー
  • -
    角川シネマ新宿。若尾文子映画祭。 よどみないテンポで次々と交差する小えんと男たちに終始釘づけで全く飽きないし、行き当たりばったりな軽々しさがとても楽しかった。のだけれど、ラストカットでつきつけられる無常の感がこの映画全体の印象を僕に対しては決定してしまっている気がする。寂しくて、よるべなくて、確からしい。そしてそれが大好きな理由。 スクリーンに映る靖国神社の境内や神楽坂の狭い路地は僕にも馴染み深いくらい今と変わりなかった。
  • 貝柱
    4.0
    冒頭の 恋愛は自由でしょ、が印象的 きっとそういうこと 映像すてき!
  • よしなかよし
    3.7
    根無し草、若尾文子。 結局は、一人。 時計を見る仕草。 時計は少年に渡したんだった と思い出し、少し微笑む。
  • pandatakashi
    4.5
    ドス
  • くずみ
    4.0
    ヒロイン小えんは根無し草。執着がないからこなせた事が、ある時期から出来なくなる。さあどうしようという若尾文子の浮遊感が胸に残る。器が大きそうでちっちゃい男に山村聰がハマる。九段、渋谷といった新しい盛り場の安さが、この物語に似つかわしい。窓を閉めるシチュエーションいろいろ。
  • Vega
    4.1
    芸者として大した芸は身につけていなくとも、持ち前の愛嬌でご贔屓さんが付いている小えんちゃん。まあ、可愛い! いつもからりと清々しくて、戦争孤児の悲惨も、男から結局いいように扱われちゃう悲哀もどこかに置き忘れたかのように軽やかに振る舞うけど、やっぱり奥底に沈んでんだねー。 小えんちゃん、あの後どんな暮らしをするんだろか〜。
  • shino
    -
    20150627 角川シネマ新宿 若尾文子映画祭
  • fumin
    3.3
    何が面白かったのかうまく説明できないけど、とにかく絵がもつので、退屈する間もなく終わった。 生活のために人や自分の恋心を利用することってあるよなぁ。それを小悪魔と呼ばれてしまうのだろうけど、実のところ、相手に鍵を握られる生活は不安だし寂しい。本当の愛も生まれにくいし。
  • かれんぼ
    4.0
    若尾文子の和服姿がほんとうにかわいい
  • chiyo
    3.5
    30着以上の衣装を披露する、小えん演じる若尾文子を愛でる映画。特別に誰かに媚びることなく、持ち前の明るさと屈託のなさで様々な男性を魅了する、まさに小えんは天性の小悪魔。そして相手が誰であれ、枕を共にすることも含めて、存分に楽しんでいるように見える。が、それは時に小えんではない時にも発揮されるので、芸者としてのプロ意識は大いに欠けているかと(笑)。ただ、小えんに悪気があるわけでは決してなく、自分を好いてくれる人に尽くそうとする純粋なサービス精神。残念ながら、その全てが的確に相手に伝わるわけではないので、本人の気付いていないところでサラリと躱されているのが何とも切ないけれど…。タイトルの「二度」は、男性で生計を立てる小えんから脱することを指していると思えるものの、少し説明不足な感は否めず。それにしても、山茶花究と山村聡の役どころが素晴らしい!
  • obao
    3.8
    @シネ・ヌーヴォ 華やかを身に纏い、まさに我が身ひとつで男を渡り歩く情念の女 若尾文子さんの妖艶さ。川島雄三監督らしい斬新な構図に時折ハッとさせられますが、何とも重くのし掛かってくる女性の悲哀と逞しさ…悲喜こもごも。 山村聡、フランキー堺、山茶花究、藤巻潤、潮万太郎、上田吉二郎…男の身勝手ないやらしさに対する、若尾文子、山岡久乃…自分の身を守る為の女の処世術。 そして、江波杏子さん。。。お美しいです。 【若尾文子映画祭 青春】にて。
  • 菩薩
    3.8
    九段花街、置屋の芸者から銀座の夜の蝶、そして建築家先生の二号さんへと、華麗に男を渡り世を渡る、艶やかな若尾文子。エロい。エロすぎる。喪服姿が特にエロい。若尾ちゃんにあーんなんかされた日にゃ死ねる。
「女は二度生まれる」
のレビュー(145件)