新作CGアニメ『バイオハザード』はどこまでも実写映像にこだわった新たな連続CGドラマ【羽住英一郎監督 × 小林裕幸プロデューサー対談インタビュー】

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Netflix Japan編集部

BIOHAZARD:Infinite Darkness(バイオハザード:インフィニット ダークネス)』がNetflixオリジナルアニメシリーズとして配信中。

本作では「海猿」シリーズや『太陽は動かない』など実写映画の監督で知られる羽住英一郎さんが、アニメ監督に初挑戦。今回は「バイオハザード」のゲーム開発から携わっているカプコンの小林裕幸プロデューサーも迎えて、制作意図をシーンごとに深掘り。羽住監督にとっては初挑戦となるフルCGアニメの“撮影現場”の裏話にも注目しました。

※作品の結末に関わる内容が含まれます。ご注意ください。

羽住英一郎

映画監督。2004年『海猿』で劇場映画監督デビュー。以降、数々の話題作、ヒット作を手掛ける。主な監督作品として、『BRAVE HEARTS海猿』(12)、『暗殺教室』(15)、『劇場版MOZU』(15)、『OVER DRIVE』(18)、『太陽は動かない』(21)等がある。ROBOT所属。

小林裕幸

株式会社カプコン プロデューサー。「BIOHAZARD」「DINO CRISIS」などのゲーム開発に関わる。「Devil May Cry」シリーズ「biohazard」シリーズ「戦国BASARA」シリーズ「ドラゴンズドグマ」シリーズなどにプロデューサーとして参加。ゲーム以外にも、映画「バイオハザード」シリーズ、アニメ・舞台・TVドラマと広がった「戦国BASARA」アニメ『ドラゴンズドグマ』などに携わる。

レオンとクレア、 それぞれの交錯する思い

――今回「バイオハザード」シリーズでお馴染みのレオンとクレアが登場します。シリーズとして、この二人が会うのはいつ以来でしょうか?

小林裕幸(以下、小林):映画『バイオハザード ディジェネレーション』の1年後として描いているので、それ以来ですね。アニメ本編ではラクーンシティの事件が起こった1998年から8年後となります。とはいえ全く会ってないことはないと思うので「8年ぶりの再会」に見えないよう注意しつつ、意識しました。

ラクーンシティの事件を体験したレオンとクレアが当時の気持ちを語りますが、ファン目線では初めてレオンの思いを聞くのでたまらないと思います。「ああ、あそこと繋がるんだ!」と思っていただければ幸いです。

羽住英一郎(以下、羽住):クレアがレオンに「そのスーツ似合ってないわよ」と声をかけますが、「スーツが似合わない」というのは、この時代のレオンを描くにあたって大事な部分ですね。レオンとクレアって、ラクーンシティの惨劇を生き延びてきたもの同士、わかりやすく言ってしまえば同じ青春時代を送ってきた同級生みたいなものなので。。片方(レオン)が就職して変わっていってしまう、という意味も含めてスーツなんか着ている。大人にならないといけないことを理解しているレオンと、スクエアな(真っ直ぐな)クレアの関係を、今回は描きたかったですね。

――本作の敵であるジェイソンとヒーローであるレオンが、敵対同士ながら共通の恐怖体験をしていることで、心を通わせるシーンもありますね。この二人の関係は、どのように描きたかったのでしょう?

羽住:ジェイソンは倒すべきキャラですが、彼の正義感や経験は大切にしたいと思っていました。主人公であるレオンが彼の思いを理解できないまま戦っても面白くないので、同じ経験をしている者同士、共感できるバックボーンがあると視聴者にも認識してほしかった。ジェイソンは恐怖を世界に拡散して悲劇を終わらせようとしますが、レオンを計画の目撃者に選びます。「おまえが恐怖を拡散していくんだ」と言い放たれたレオンが全て背負って終わっていくという、なかなかビターなストーリーです。

ですから潜水艦でのレオンとジェイソンの会話は、その前フリとしてすごく大切。CGアニメにしては動きが少なく会話が長いと思うんですけど、絶対に必要なシーンでした。製作プロデューサーの篠原(宏康)さんから「実写の芝居だったら画面がもつかもしれないですけど、アニメの場合はそういうシーンは結構きついかもしれませんよ」と言われて不安だったので、観客の興味が薄れないようにそのシーンの前に何者か(ネズミ)の主観のカットを足しました(笑)。

小林:CGチーム側は長いのを気にしていましたが、監督が実写のようなカメラワークでやって頂いて会話もしっかりあるので長くは感じず、見応えのあるシーンだと思います。

――ジェイソンは一度、レオンに協力を求めますよね。彼はどの程度、レオンが仲間になると踏んでいたのでしょうか?

羽住:半々でしょうね。どちらにしても「最後はレオンに託そう」と考えていただろうなと思いながら作っていました。ジェイソンは潜水艦で自分の思いを語っているし、もし上手くいかなくてもレオンの正義感を持ってすれば、この事件を真摯に止めてくれるだろうと考えていたでしょう。

――ジェイソンとの出会いで、レオンが何か影響されことはあるのでしょうか?

小林:映画『バイオハザード: ヴェンデッタ』では、レオンは冒頭で飲んだくれているんですけど(苦笑)、既に様々な経験を経たベテランエージェントとなっています。そういう意味では、今回の事件もレオンの中に刻まれて、『ヴェンデッタ』のレオンにたどり着いてると思ってもらえばいいのかな。

「実写の視点」で作られたシーンの数々

――続いてメイキングについてお聞きします。レオンとジェイソンが上海のセーフハウスでの二人の会話。このシーンは監督おすすめのシーンとのことですが?

羽住:今作はフルCGアニメですが、実写の撮り方を持ち込んだことで、非常に実写っぽい、つまり狭いところで撮っているように見える映像にしています。本来フルCGアニメならいくらでもアングルを切れるし、ライティングももっと綺麗にいけるのが、「“こういう条件だと絶対に上手く撮れない”というのをあえて出して欲しい」とスタッフにもオーダーしました。こういうライティングになると、見えない部分はつぶれてしまうのですが「見えない部分をしっかり見えなくして欲しい」と。

僕は「CGの言語」を持ってないので、スタッフへの指示や説明も実写と同じなんです。「ここにレールを敷いて、手持ちなんだけど箱馬に乗って揺らさない程度に持っている」とか「何かコトが起きた時は一拍遅れてカメラを振る」とか。フルCGのアニメの作り方とはまったく違う感じですが、スタッフがとても優秀で、実写で撮ってる時と同じ感覚で撮影は進みました。

――とことん、実写での見え方にこだわられたんですね。

羽住:こだわりましたね。中国のセーフハウスでのレオンとジェイソンのシーンなんて、変な話、いわば中国ロケじゃないですか。発砲時に出る硝煙もちょっと大袈裟になっているんですが、これは現地の中国人スタッフが頑張っちゃった感じ。実写の海外ロケなんかでもそういう事はありがちなんですけど(笑)、そこまでスタッフには伝えていました。

小林:その話は初めて聞きました(笑)。ロケ地設定まで演出していたとは……。でもこのシーンは、ずば抜けて実写感が強いシーンなので、最初からいい仕上がりでしたね。小窓からのライティングもいいし、タバコの描写もリアリティが高い。

――映像だけでなくキャラクターの繊細な表情から、複雑な心情の変化を感じとれました。こうした“演技”は、どう作り上げていったんでしょうか?

羽住:モーションキャプチャーは俳優さんに演じていただくので、カメラワーク含め実写のアプローチで出来ました。ただ、編集に苦労しましたね。なぜなら編集時の映像にキャラクターの表情がついていないからです。普通は芝居やちょっとした仕草で編集点を切っていくのですが、CGではそれが出来なくて。

小林:編集時点でのCGは、まだ顔がついてないですからね。

羽住:ですから別途モーションキャプチャーで撮影していた役者さんのフェイシャル(表情)を撮って、未完成のCGアニメ画面にワイプで入れてもらい、その表情の芝居を見ながら編集していきました。

モーションキャプチャーをやる時、だいたい演技の狙いがあるんですよね。例えばタバコを取りいくと見せかける動作で、本当は銃を取りに行くとか。2Dアニメでは演出できない動きがフルCGアニメだと出せる。表情も実際の俳優さんの表情を撮っているので、その動きまできっちり再現できるCG技術に驚きました。実写だとなんてことないシーンでも、フルCGで再現することが大きな挑戦でしたし、良い経験でした。

小林:他にもエージェント3人と政府側3人の6人で大統領の部屋にいるシーンとか。実はバイオの歴史において、大統領執務室を描くのは初めてでした。ゲームの場合、プレイではないシーンはキャラクターを見せるためにカメラが寄るのですが、作中では壁側のカメラからテーブルとソファーを映しながら向こうに立っている6人を見せている。この見せ方が実写っぽいなと。ゲーム側の目線として、いいシーンだと思いました。

「バイオハザード」にとって“フルCG”は新しいことではない

――ここまで実写での撮り方にこだわられた理由を、改めてお聞かせください。

羽住:CG技術が高くなりどんどん実写に近いことが出来るようになっているので、どこまで実写っぽい仕上がりができるだろうという探求もありましたね。

小林:今回だけじゃなく「バイオハザード」シリーズは一貫して“実写っぽさ”を追求してきました。超人的なキャラもいますが、基本的には実写のイメージで作っている作品です。監督からするといつも通りかもしれませんが、僕らから見ると実写のクオリティがCGのようになってきていると感じますし、今回も実写とCGが融合した作品になったと思いました。

――「これは新しい挑戦だった」ということがあれば教えて頂けますか?

小林:監督はもうフルCG自体が挑戦ですよね?

羽住:アクション部だけいつもの羽住組から来てもらいましたけど、他のスタッフは全員初めてで、最初は肩書きを見ても何をやる人なのかわからなくて(笑)。「ライティングは誰と話せばいいんだろう?」というところからスタートしました。

でもスタッフみんな「バイオハザード」はもちろん、映画がすごく好きで色々な作品を見ているので、過去の映画を引き合いに出して喋ればだいたい共通認識ができました。僕自身はそこまで「バイオハザード」のゲームをやってきたわけではなかったのですが、例えばクリーチャーのデザインひとつとっても素晴らしくて、撮影中はすごく面白かったですね。

小林:羽住監督といえば実写のベテラン監督なので、実は最初身構えていたんです。でも「バイオハザードとして譲れないこだわりはこれで、理由はこうです」とお話したらご理解頂き修正して下さって、やりやすかったですね。あと今回、映画ではなく連続ドラマというのが新しいですね。十分満足できるCGドラマが出来たと思います。

――「バイオハザート」のこだわりとは、具体的にはどんなものですか?

小林:エンターテインメントでありたいと思っています。「バイオハザード=ホラー」と思われがちですが、ただのホラーなら25年も続いていないと思うんです。アクションがあり、ドラマやサスペンスの要素もある。「バイオハザード」は25年間ずっと同じチームで作っているわけではないのですが、カプコンで受け継がれている「バイオハザードはこういうもの」という暗黙の了解があります。僕もそれを守っていますが、かといって一言で言い切るのは難しいんですけど……。「ただのホラーではない」というのが一番わかりやすいのかな。監督もエンタメ作品を沢山作っていらっしゃるので、その意思疎通も問題なくできました。

羽住:小林さんと初めてご一緒させてもらって、小林さん含めカプコンの皆さんがファンを第一に考えているとひしひしと伝わってきました。ゲームも含めてこれだけ数多くの作品を作られているなかで、絶対に破綻しないように「この時代は誰と誰とは会ってはいけない」というルールが明確にあり、すごく大事に守っている。ファンをがっかりさせないようにという想いが明確にありますし、だからこそこんなに長く続いている作品で、どんどん新しいファンも増えていって、一回ファンになった人が離れないんですね。

――ラスト、もう一度クレアがレオンに「スーツ似合ってない」という言葉で終わりますよね。この先2人はどう変わっていくのかな……と、ファンに期待を持たせる締めくくりにグッときました。

羽住:「これ(今作の鍵となるある物)を公表する」というクレアに対して、レオンは「そんな事をしたら合衆国中のエージェントにおまえが追われることになる」と、あえて言わないけれどそう思っている。

小林:いいバランス関係の二人ですよね。一緒にラクーンシティを脱出したという辛い記憶を共有しているけれど、8年経ちレオンはエージェントとして、クレアはテラセイブとしての生き方を見つけ、少しずつ袂を分かっていく。悲しい別れではないですけど、お互いが思う道を進んでいくんですよね。これからも彼らの進む道を、見守っていただければと思います。

進行&構成・ネトフリ編集部 伊藤
文・鈴木智美

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