【★4.2の絶賛】『あん』を超える感動がカンヌ、そして、日本へ!河瀬直美監督の集大成『光』

カンヌ映画祭で『萌の朱雀』新人監督賞、『殯の森』グランプリ受賞など、世界が待望する映像作家河瀬直美監督の最新作『』が5月27日(土)より公開に。大ヒット作『あん』の黄金コンビとなる永瀬正敏と挑んだのは、人生で一番大切なものを失った大人たちが「光」を見出そうとする珠玉のラブストーリーだ。

光

★4.2絶賛評を獲得した本作の見どころをFILMAGA編集部がたっぷりご紹介します。

光を見出すことができないヒロイン・美佐子に差した“光”とはー

光

ヒロイン・美佐子(水崎綾女)は、劇中の登場人物の動作や情景を言葉に置き換える“映画の音声ガイド”の仕事をしている。客観的な言葉だけにしても伝わらず、主観を入れすぎると観客の想像力を奪ってしまう音声ガイドの原稿。そのモニター視聴会に参加した視覚障碍者の指摘から、音声ガイドという仕事がいかに繊細なものなのか、そして、自分自身が人の気持ちに寄り添うことに未熟だったと気づく美佐子。その中で誰よりもストレートに辛辣な意見を口にしたのが、視力を失いかけたカメラマン・雅哉(永瀬正敏)だった。

そんな彼に最初はムキになって反発するも、彼が実はとても繊細で、心優しい一面があることを知り、次第に心を開いていく。
そしてある日、美佐子は雅哉がかつて撮った写真集のなかに、まばゆい光を放つ夕日の写真を見つける。幼い頃、彼女と母を残して失踪した父との想い出と重なるオレンジ色の光は、闇に飲まれそうになっていた彼女の心を照らしはじめたのだった。

光を失いつつあるカメラマン・雅哉が本当に手に入れたかった“光”とはー

光

日々失われていく視力のなかで、しがみつくように写真を撮り続ける雅哉。それはまるで、一縷の光を必死にたぐり寄せているかのようだ。しかし恐怖は日々大きくなる。そんななか出会った美佐子。ハンディキャップを持つ人々の感情がわからない彼女にはじめは苛立つも、素直で、視力を失いつつある自分を真正面から受け止めようとする彼女に心を開いていく……。
自分の葛藤に寄り添うことで心を育むようになった美佐子に、新たな“光”を見出した雅哉は、ある大きな決意をする。

大切なものを諦めきれない二人は、お互いを通して光の道を見出し、少しずつ新しい一歩を踏み出していく。そんな人間の機微と心の結びつきを繊細なタッチで描いた本作は、観客それぞれの心にあたたかい光を放ってくれる。

執着するのではなく、捨てる事で見出だす“光”-。ラストに進むにつれ、涙が溢れ出る。

失うこと、捨てることで、その分得るものが沢山あることを気づかせてくれる本作。登場するのは皆、何かに執着し、そこから離れられずにいる大人たち。徐々に視力が失われることを受け入れられずにいる天才カメラマン、過去に囚われ抜け出せない女性、最愛の人への執着が捨てられない男。人は誰しも、一番大切なものを手放すのは耐え難く、それでも捨てなければならない時、その先にあるのは悲しみではなく、まだ見ぬ歓喜と感動が待ち受けるラストに、思いがけず涙が溢れでる。

河瀬監督はタイトルでもある“光”にとにかくこだわり、四季の中で光がもっとも美しく降り注ぐ秋に撮影を敢行。そして、物語のキーとなっている奈良の山脈や、雅哉の住まいに降り注ぐ太陽の美しい日差しなど、全編をとおして“光”が強く印象に残る。

光

永瀬正敏の新たな代表作が誕生。出演者全員の魂込めた演技に胸が熱くなる

河瀬監督の故郷でもあり、監督の多くの作品で舞台となっている奈良で撮影された本作。撮影期間中、永瀬さんと水崎さんは劇中で雅哉・美佐子が住んでいるマンションにそれぞれ住みながら撮影に挑み、これによって雅哉や美佐子という実在する人物のドキュメンタリーを観ているような感覚を生み出したという。

また劇中には、日頃から視聴会のモニターをされている、視覚障碍のある一般の方も出演。印象的な台詞(アドリブ!)が、作品を引き立ており、音声ガイドの仕事に関わらず「言葉に関わる仕事」をしている人には特に、心に響く。このような演出が、作品により高いリアリティを持たせることができたのだ。

永瀬さんは雅哉を演じるため、視覚障碍の方との交流や特殊な眼鏡による弱視体験のほか、クライマックスシーンの苦しみを表現するための断食も経験。また、永瀬さんのお祖父さんが写真師であったこと、永瀬さん自身も写真家として活動しており、劇中で登場する写真集や雅哉の部屋に飾られた写真は、なんと永瀬さん自身が撮影、セレクトしたものなのだとか。

ほかにも水崎さん自身が音声ガイドの原稿書きに挑戦。映画同様、劇中映画である『その砂の行方』の音声ガイドの原稿も彼女が担当したのだそう。
ちなみに撮影はほぼ順撮り。そのため、キャスト陣と物語の盛り上がりが重なり、より感情移入しやすくなっているのもポイントだ。

◆映画『光』 information

光

視力を失いかけたカメラマンに出逢い、美佐子の中の何かが変わりはじめる― 生きることの意味を問いかけた『あん』(‘15)。河瀨監督と永瀬正敏のコンビが、ヒロインに水崎綾女をむかえ、次に届けるのは人生で大切なものを失っても、きっと前を向けると信じさせてくれる迷える大人のための、ラブストーリー。

上映時間:101分

5月27日(土)新宿バルト9、丸の内TOEIほか全国公開
公式サイト:http://hikari-movie.com
配給:キノフィルムズ
(C)2017 “RADIANCE” FILM PARTNERS/KINOSHITA、COMME DES CINEMAS、KUMIE
※本記事、タイトルにて紹介しているスコアは2017年5月8日時点のものです。

Amazon Prime Videoで観る【30日間無料】

 

※2022年3月27日時点のVOD配信情報です。

記事をシェア

公式アカウントをフォロー

  • RSS

  • KK2PANTS
    5
    再鑑賞 監督の河瀬直美が撮る自然の風景やカットの美しさに毎度驚かされる。生命の神秘とそれにリンクする自然の映像に魅力された。 ‪ドキュメンタリーっぽいけどドキュメンタリー以上のものを感じさせられる何かがあって、それを言葉で表現するのはちょっと難しい…‬ ‪弱視の人達の視線を再現したカメラワークだったり、光のない闇の世界だったり。‬ ‪芸術的だし高尚だけどそういった言葉では済ませられないなと思った。‬ ‪光ではふんだんにそれらが使われていてよかった。夕陽、影、そしてラストにおける光。‬ ‪ストーリーにも惹かれた。元々音声ガイドという職業は知っていたけど、映画における音声ガイドの内容ってこんな風に完成していくのか と感心した。‬ ‪視覚障害者の人達に、映画を観せる事の難しさ、それに必要とされる創造力。‬ ‪言葉一つで風景が消えるし、現れる。‬ ‪ ‪‬自分も徐々に視力を失っていくかもしれないし、両親のどちらかが認知症になってしまうかもしれない。‬ ‪二回目はそんな事も少し考えながら見てみた。‬ ‪ゆっくりだけど確実に視力が失われていく恐怖や、年老いて全てを忘れてしまうかもしれない両親の事を想像すると肌で恐怖を感じた。‬ ‬‪映画における台詞や間の大事さを実感させられる。 「私たちは映画を観ている時いつの間にか映画の中にいる。」‬ ‪「1番大事なものを捨てなきゃいけないなんて、辛すぎる。」‬ ‪厳しい事を割とはっきり言ってしまう(表現してしまう)監督のストレートさが好き。‬ ‪でもそれがあるからこの映画のラストの点と線が繋がった感じとその時の感動が大きいんだなあ と思った。‬ ラストシーンは目を瞑って見ても風景が自然と浮かんでひたすら感動した
  • KH
    4.5
    こんなに美しい終わり方をする映画を今まで観た事がない。最後を観るためだけに、もう十数回は鑑賞した。 河瀬直美監督の書き下ろし作品は、比較的に抽象的で独りよがりな作品が多いが「光」は、わかりやすいストーリーかつ河瀬監督の映像も楽しめる作品。 目の見えない人に向けた副音声を書く仕事をしている主人公演じる水崎綾女と、盲目の男性を演じる永瀬正敏の物語。 副音声は目の見えない人にとっては映像より大切で、その映画の評価を左右するほど難しい。また副音声を入れることとは、映像を解説することであり、副音声に主観が入り過ぎても映画の世界が狭まるし、言葉足らずでも映画の世界が完成されない。 でも目が見えないからこそ、映画の音と副音声だけで想像がずっと膨らむ。 水崎綾女演じる主人公は、河瀬作品には珍しくヒロインチックな演出がなされている。 主人公と目の見えない人との間で、または主人公とその映画の監督との間での会話が噛み合っていないことが多い。そこに凄くリアリティがあった。 映像は本当に美しい。 特に今作はいつも以上に顔や手元などアップになることが多く、その他の視覚的情報が入ってこないのは狙った演出か分からないけど、良いように作用していると思う。 最後のシーンは自分が今まで見た映画で1番好きな終わり方。 最後に光を描いても、説得力がないと何も響かないけど、監督の作品は今までの映像が最もの説得力になっているからこそ本当に、そこに光を感じる。 またナレーションの樹木希林が素晴らしい。
  • ToY
    4.5
    Blu-rayで再鑑賞したけれどめっちゃ好きな映画の1つ
  • トムヤムくん
    3.9
    視力を失っていく天才カメラマンと、視覚障害者向けの音声ガイドに携わる主人公の話。 伝えることの難しさ、表現することの難しさ、生きることの難しさ。表面的な意味ではなく、文字通り「映画愛」に溢れていないとこんな難しい題材の作品は生み出せないと思った。 「光」というシンプルなタイトルが何よりも秀逸で、たった一文字で様々な意味にも取ることができるし、映画の内容を的確に表現している。 ラストシーン、樹木希林の声によって読み上げられる音声には圧倒されてしまった。
  • fullmoon
    3.6
    過去の鑑賞記録

のレビュー(7039件)