【★4.2の絶賛】『あん』を超える感動がカンヌ、そして、日本へ!河瀬直美監督の集大成『光』

2017.05.19
特集

Filmarks編集部

フィルマーくま

カンヌ映画祭で『萌の朱雀』新人監督賞、『殯の森』グランプリ受賞など、世界が待望する映像作家河瀬直美監督の最新作『』が5月27日(土)より公開に。大ヒット作『あん』の黄金コンビとなる永瀬正敏と挑んだのは、人生で一番大切なものを失った大人たちが「光」を見出そうとする珠玉のラブストーリーだ。

光

★4.2絶賛評を獲得した本作の見どころをFILMAGA編集部がたっぷりご紹介します。

 

光を見出すことができないヒロイン・美佐子に差した“光”とはー

光

ヒロイン・美佐子(水崎綾女)は、劇中の登場人物の動作や情景を言葉に置き換える“映画の音声ガイド”の仕事をしている。客観的な言葉だけにしても伝わらず、主観を入れすぎると観客の想像力を奪ってしまう音声ガイドの原稿。そのモニター視聴会に参加した視覚障碍者の指摘から、音声ガイドという仕事がいかに繊細なものなのか、そして、自分自身が人の気持ちに寄り添うことに未熟だったと気づく美佐子。その中で誰よりもストレートに辛辣な意見を口にしたのが、視力を失いかけたカメラマン・雅哉(永瀬正敏)だった。

そんな彼に最初はムキになって反発するも、彼が実はとても繊細で、心優しい一面があることを知り、次第に心を開いていく。
そしてある日、美佐子は雅哉がかつて撮った写真集のなかに、まばゆい光を放つ夕日の写真を見つける。幼い頃、彼女と母を残して失踪した父との想い出と重なるオレンジ色の光は、闇に飲まれそうになっていた彼女の心を照らしはじめたのだった。

光を失いつつあるカメラマン・雅哉が本当に手に入れたかった“光”とはー

光

日々失われていく視力のなかで、しがみつくように写真を撮り続ける雅哉。それはまるで、一縷の光を必死にたぐり寄せているかのようだ。しかし恐怖は日々大きくなる。そんななか出会った美佐子。ハンディキャップを持つ人々の感情がわからない彼女にはじめは苛立つも、素直で、視力を失いつつある自分を真正面から受け止めようとする彼女に心を開いていく……。
自分の葛藤に寄り添うことで心を育むようになった美佐子に、新たな“光”を見出した雅哉は、ある大きな決意をする。

大切なものを諦めきれない二人は、お互いを通して光の道を見出し、少しずつ新しい一歩を踏み出していく。そんな人間の機微と心の結びつきを繊細なタッチで描いた本作は、観客それぞれの心にあたたかい光を放ってくれる。

執着するのではなく、捨てる事で見出だす“光”-。ラストに進むにつれ、涙が溢れ出る。

失うこと、捨てることで、その分得るものが沢山あることを気づかせてくれる本作。登場するのは皆、何かに執着し、そこから離れられずにいる大人たち。徐々に視力が失われることを受け入れられずにいる天才カメラマン、過去に囚われ抜け出せない女性、最愛の人への執着が捨てられない男。人は誰しも、一番大切なものを手放すのは耐え難く、それでも捨てなければならない時、その先にあるのは悲しみではなく、まだ見ぬ歓喜と感動が待ち受けるラストに、思いがけず涙が溢れでる。

河瀬監督はタイトルでもある“光”にとにかくこだわり、四季の中で光がもっとも美しく降り注ぐ秋に撮影を敢行。そして、物語のキーとなっている奈良の山脈や、雅哉の住まいに降り注ぐ太陽の美しい日差しなど、全編をとおして“光”が強く印象に残る。

光

永瀬正敏の新たな代表作が誕生。出演者全員の魂込めた演技に胸が熱くなる

河瀬監督の故郷でもあり、監督の多くの作品で舞台となっている奈良で撮影された本作。撮影期間中、永瀬さんと水崎さんは劇中で雅哉・美佐子が住んでいるマンションにそれぞれ住みながら撮影に挑み、これによって雅哉や美佐子という実在する人物のドキュメンタリーを観ているような感覚を生み出したという。

また劇中には、日頃から視聴会のモニターをされている、視覚障碍のある一般の方も出演。印象的な台詞(アドリブ!)が、作品を引き立ており、音声ガイドの仕事に関わらず「言葉に関わる仕事」をしている人には特に、心に響く。このような演出が、作品により高いリアリティを持たせることができたのだ。

永瀬さんは雅哉を演じるため、視覚障碍の方との交流や特殊な眼鏡による弱視体験のほか、クライマックスシーンの苦しみを表現するための断食も経験。また、永瀬さんのお祖父さんが写真師であったこと、永瀬さん自身も写真家として活動しており、劇中で登場する写真集や雅哉の部屋に飾られた写真は、なんと永瀬さん自身が撮影、セレクトしたものなのだとか。

ほかにも水崎さん自身が音声ガイドの原稿書きに挑戦。映画同様、劇中映画である『その砂の行方』の音声ガイドの原稿も彼女が担当したのだそう。
ちなみに撮影はほぼ順撮り。そのため、キャスト陣と物語の盛り上がりが重なり、より感情移入しやすくなっているのもポイントだ。

◆映画『光』 information

光

視力を失いかけたカメラマンに出逢い、美佐子の中の何かが変わりはじめる― 生きることの意味を問いかけた「あん」(‘15)。河瀨監督と永瀬正敏のコンビが、ヒロインに水崎綾女をむかえ、次に届けるのは人生で大切なものを失っても、きっと前を向けると信じさせてくれる迷える大人のための、ラブストーリー。

上映時間:101分

5月27日(土)新宿バルト9、丸の内TOEIほか全国公開
公式サイト:http://hikari-movie.com
配給:キノフィルムズ
(C)2017 “RADIANCE” FILM PARTNERS/KINOSHITA、COMME DES CINEMAS、KUMIE
※本記事、タイトルにて紹介しているスコアは2017年5月8日時点のものです。

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  • coco
    -
    想像以上に素晴らしかった。ちょっと泣いたし。見える女と見えない男のただのラブストーリーではない。見ること、感じること、考えること、映画に対しての敬意を含ませてるところがカンヌ70周年にぴったりだ。 UDCastのテストも兼ねて観てたら映画内映画、鏡合わせの世界のようで混乱した。殯の森と比べるとだいぶ分かりやすい作風になってきたけど、じゃあこの作品はどんな音声ガイドがつくのか、きっと気になるだろうね。
  • chiakia
    3.0
    永瀬正敏が前作『あん』に優るとも劣らぬ入魂の演技で、写真表現にイノチをかけてきて、病により次第に視力を失っていくカメラマン役を熱演。アブラッ気がきれいに抜け落ちたような藤竜也もすっかり河瀬直美ワールドの一員になっている。だけど、ヒロイン(水崎綾女)がね・・・・・・。 いったいに河瀬直美監督が造型する女性像は私には肌合いがしっくりこなくて、それは資質や人生経験の違いなどによるものだろうから、遠くから敬愛の念を惜しまないのだけれど、どうして邦画のキスシーンはいつも魅力や説得力に欠けるのだろう? 欧米の映画を真似する必要はさらさらないにしても、美しいキスシーンが成立するためには、日本の女と男の関係にはまだまだ克服するべき課題があるということかな、ひょっとして。
  • うさまる
    3.5
    河瀬直美監督の作品を初めて観た。 陳腐なラブストーリーではなく、本気で人と向き合う事や自分の大事なものを失う意味を考えさせられた。
  • mi
    3.9
    完成披露試写会にて鑑賞。
  • jun18
    4.4
    試写にて。 光 この作品を見たものを引き込む光 誘いの光 誘惑の光 混沌の光 漆黒の光 中森の眼から光が奪われ、今まで強がっていた瞳から一粒の涙が零れおちる。 ヒロインの水崎さんはこの映画が出世作になることは間違いないだろう。 数点、監督の見せ方と理解が及ばない点があったが、通して、ナレーションベースに絵が付いていき、モニターに考えさせる余地を与えてくれたため、見やすかった。 いまは分かりやすくするために、テレビも映画も小説も執拗にセリフや情景を書き記そうとする。 なぜ、ここに点字ブロックがあるのだろう。 話は変わるが、何故多言語の看板が増えたのだろう。 誰のためにと、五体満足の自分が考えるのには時間がかかる。五体満足の人が不自由を感じるものは自由の中の不自由であり、本当の不自由に失礼なほど満足しているのに。 一歩引いた目線で世の中を見る事の「きっかけ」を与えてくれそうな、そんな社会的映画だった。
「光」
のレビュー(37件)