日本語吹替版の声優・野島裕史が語る、『ヴィンチェンツォ』の魅力なバイプレイヤー

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Netflix Japan編集部

イタリアマフィアのコンシリエーリ、ヴィンチェンツォ・カサノ(ソン・ジュンギ)が、金塊を目当てに訪れた韓国で思いがけず、マフィアより危険な財閥と戦うことになるドラマ『ヴィンツェンツォ』。本作の日本語吹替版でヴィンチェンツォの声を担当するのは、声優の野島裕史さんです。

今回は、冷徹なマフィアだったヴィンチェンツォが変わっていくきっかけになった、数々の魅力的なバイプレイヤーについて、野島さんに語っていただきました。

※作品の結末に関わる内容が含まれます。ご注意ください。

野島裕史

1973年生まれ。東京都出身。声優・ナレーターとして活躍。代表作は『キングダム』『弱虫ペダル』『黒子のバスケ』など多数。『ヴィンチェンツォ』の他にも『スペース・スウィーパーズ』などソン・ジュンギの日本語吹替を多く担当している。

あらゆる感情が交差する母とのシーン

――野島さんは『ヴィンツェンツォ』を台本で読まれたんでしょうか、それとも先に作品を観られたんでしょうか?

人によって違うと思います。まず台本を読む人もいますし、作品と台本を見ながらという人もいます。『ヴィンチェンツォ』に関して、僕はNetflixに字幕版が上がっていたので、台本と映像を同時に見る作業から始めました。先に観てしまうと、ヴィンチェンツォとしてお母さんと接する時に違う感情が生まれてしまいそうだったので、収録するのと同じタイミングで字幕版を観るようにしました。

――たとえば、お互いに親子だとがわかっているのに、あえて言わない切ないシーンも、もしもお母さんが亡くなるとわかっていたら、違うものになりますよね。

前もってわかってしまうと、その時に生まれた感情がだんだん薄れていってしまうので。なんなら、収録のギリギリ直前に練習したりしていました。

――精神的にも大変なお仕事ですね。

役者という仕事はみんなそうですからね。感情が揺さぶられてなんぼなので。

――ヴィンツェンツォは、本気で怒った時に、目の縁が赤くなるんですよね。特にこのシーンではものすごく怒っているのに、ものすごく冷静に話す姿がとても印象的でした。吹替えの際もここは気合いが必要だったシーンじゃないかと思うんですけど、いかがでしょうか?

1話からずっと演じてきているので、ここのシーンでも僕自身の感情が素直に揺さぶられたんですね。悲しみ、怒りという感情が自然と出てきたので、演技を作るというよりも、その感情に乗せながらセリフを出して、ソン・ジュンギさんと呼吸を合わせていく。なので極端な話、演じている感覚はなかったです。

――『ヴィンツェンツォ』の中でも、最も悲しいシーンだったように思います。

お母さんとの関係って彼の一番の弱点で、これから修復していこうという矢先に心に大きな穴が開いてしまったんですよね。悲しみとか怒りだけじゃなくて、虚しさや心の空洞みたいなものもあったと思います。僕自身もセリフを話しながら涙を流しそうになるくらい、つらい気持ちに共感しました。

――このシーンでヴィンツェンツォがとった決断と行為についてどう思いましたか?

殺すだけでは手ぬるい、そんな生やさしいことでは済まされないという怒りがあったんでしょうね。それくらい怒るよなと共感しました。ずっと演じてきて、視聴者ではなくヴィンチェンツォという人の中に身を置きながら観ているので、感情移入が半端なくて。僕自身、怒りと悲しみが渦巻いていたので、簡単な復讐じゃダメだと思いました。

ただ報われはしないですよね。復讐してすっきりということはないと思いますし、たぶん視聴者の皆さんもすっきりはしてないと思うんです。でもそれでいい。決してすっきりする必要はないし、そういうお話だと思うんですよね。

脇を固めるキャラクターの魅力

――ヴィンツェンツォにとって、ホン・ユチャン弁護士はどういう存在だったと思いますか?

彼は正義の人です。ただ結局亡くなっちゃいましたよね。たぶん実際の社会もそういうことの繰り返しで、そのリアルさがこの作品のテーマでもありますし、僕が惹かれた部分です。ドラマって現実逃避で観る作品もありますけど、この作品は改めて現実社会を見たくなる、この世界を客観的に見たくなると作品でした。そういった意味では、社会の見方が少し変わったかもしれません。

――ヴィンツェンツォは結局、方法はちがうとはいえ、ホン・ユチャン弁護士の志を受け継ぐ形になりましたね。

そうですね、2人ともピュアなんですよ。ピュアだけど立ち位置が違う。でもそのピュアという部分で引き寄せ合ったからこそ、受け継ぐことができたんだと思います。

――他に、感情が揺さぶられたシーンはありますか?

ハンソの最期のシーンですね。敵だった奴が、こんなにいい奴だったのかとだんだんわかってきて、弟のようにかわいく思えてきた矢先に、実の兄のジュヌに殺されてしまう。その怒りはお母さんを殺された時に通じるものがありました。

――このシーンでヴィンツェンツォがハンソに「さすが俺の弟だ」と言いますが、実はこのセリフは台本から一度削られたそうなんです。でも2人で話して入れようと決めたんだとか。

あれは確かに言いたかったです。なかったら「言ってあげて」って思うくらい。

――実の兄のジュヌも、以前全く同じセリフを言ってるんですよね。でもそれは「兄さんの代わりに刑務所に行きます、何でもします」と言ったことに対して「弟のお前は俺の犠牲になるべき男だからな」というまったく逆の意味合いで言ったことでした。それがあってのヴィンツェンツォの「さすが俺の弟だ」なので、思い出しただけで泣きそうになります。

本当に悔しかったです。ハンソは生きていて欲しかった人物ですね。

もしもヴィンツェンツォ以外のキャラクターを演じるなら、ハンソがいいですね。彼の真っ直ぐな感じを、子供の頃の自分を思い出しながら演じてみたいです。ヴィンツェンツォは、ひとつセリフを喋るにしても裏があるじゃないですか。でもハンソには裏がない。表しかないようなセリフなので、そういう意味で楽しそうだなと思います。

――その他に好きなキャラクターはいますか?

皆さん個性的ですけど……ジュヌかな。あそこまでサイコパスな雰囲気が、もうどこまでいっちゃうんだろう?って、最後まで彼を見ていたいという気持ちになりました。好きというよりも目が離せない、惹きつけられるような魅力がありましたね。

屈指の人気キャラ、ハトのインザーギ

――インザーギとは、第1話で会っているんですよね。あれだけ嫌がっていたのが恋人みたいな仲になって。野島さんは、ヴィンチェンツォとインザーギとの関係性をどう思われましたか?

睡眠を邪魔したり、色々あっても徐々に仲良くなるんだろうなとは思いましが、まさか命を救うほどの存在になるとは予想していなかったので、一番驚いたシーンかもしれません(笑)。

インザーギに助けられた後、チャヨンにいうセリフ「あいつを悪く言うな」にはぐっときましたね。涙が出そうになりました。ソン・ジュンギさんの表情もとても良かったんですけど、ついにインザーギとヴィンツェンツォの心が通じた、いうのがね。動物と人の心の繋がりってファンタジーですけど、この作品のいいスパイスになってますよね。

――『ヴィンツェンツォ』ファンのツイートを見ていると、屈指の人気キャラのようです。

マスコット的キャラになっていますよね。僕もインザーギ、大好きです(笑)。

――『スペース・スウィーパーズ』のパロディもありましたね。

『スペース・スウィーパーズ』でソン・ジュンギさん演じるキム・テホの吹替えを担当して、音楽などモチーフになっている部分が細部までわかったので、うれしかったですね。

――同じソン・ジュンギさんの吹替えですが、ヴィンチェンツォとキム・テホ、キャラクターが違うと演じ方も違うのでしょうか?

テホの方がやんちゃでおっちょこちょいな雰囲気でした。でも演じているのは同じソン・ジュンギさんなので、役は違えど呼吸の合わせ方は同じですね。

――どちらのキャラクターに共感することが多かったですか?

ヴィンツェンツォの方が多かったですね。なんでだろう……僕は悪なのかもしれないですね(笑)。

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