「俺、結婚したいかも」彼をその気にさせる夫婦の話【ジューン・ブライド特集】

映画も音楽も本も好き。

丸山瑞生

6月といえばジューン・ブライド!

そこで今回は、結婚が題材の映画をご紹介です。描かれ方は三者三様ですが、どれもがともに人生を過ごすひとがいることの嬉しさを感じられる作品です。ぜひ、この機会にご覧ください!

グッド・ストライプス(2015)

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グッド・ストライプス』は、岨手由貴子監督による、オリジナル作品の長編商業映画デビュー作。

交際期間4年。マンネリ状態だった破局寸前のカップル・緑と真生。ところが緑の妊娠を機に結婚を決め、お互いの家族やルーツを知ってくラブストーリー。主演は、菊池亜希子中島歩

カップルのマンネリや倦怠感が描かれてますが、それよりも緑と真生は生活そのものに不感症にも見え、それはふたりの世代の特徴なのかなと思います。アラサーが感じる先行きへの期待の持てなさと、この世代特有の生き方を描いてます。

結婚とはお互いの家族を知り、それは本人たちのルーツを知るきっかけにもなるでしょう。真生は緑の家庭の淡白さを知り、緑は真生の家庭環境を知る。同時にふたりは自身の家族の在り方を再確認する。

『グッド・ストライプス』は、当たり前の日常を慈しむ映画です。
両親の離婚を経験している真生は「何かを期待しても、いつも違うことが起こる」と言いますが、緑は「わたしには特別なことは起こらない」と笑います。
マンネリを刺激のない日常と捉えがちですが、これからの人生を共に歩むのなら、日常の些細な出来事も共におもしろがりたい。特別なことが起こらない人生も楽しいですよね、きっと。

ツレがうつになりまして。(2011)

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ツレがうつになりまして。』は、漫画家・細川貂々(ほそかわてんてん)の同名コミックエッセイの実写化作品。

ある日、仕事をバリバリとこなすサラリーマンだったツレが「死にたい」と言った。診断の結果は、心の風邪。うつ病だった。売れない漫画家の妻、晴子との闘病生活を描いた物語。主演は、堺雅人宮崎あおい

いわゆる、闘病生活を描いた作品なのですが、物語のトーンは全体的にはやわらかく、比較的に重さは控えめです。ただ、生活の何気ないところで起こる、小さな引っかかりや、心にチクリと刺さるような出来事。それらを鋭く捉えているので、日常の些細なことが原因で起こりうる病なのだなと、あらためて気づかされます。

本作のキャッチコピーは「すこやかなる時も、病める時も、君と一緒にいたい。」結婚式の誓いの言葉の引用ですが、この言葉が物語のすべてを言い表しています。ツレがうつ病とわかったときに、晴子は「会社を辞めないなら離婚する」と告げるのも、最愛のひとの心身の健康を案じるからこそですが、バシッと決断を下せるのは素晴らしいし、すごいことだなと思います。

物語のテーマはあくまでも、うつ病とその闘病なのですが、堺雅人さん演じるツレの神経質な性格と佇まいと、宮崎あおいさん演じる晴子の自由であっけらかんな役どころが軽すぎず、重すぎない絶妙なバランスの物語に仕上げています。それらを通して描かれる夫婦の絆は普遍的で、大切だと思えるパートナーがいる方には響くものがきっとあるかと思います

海よりもまだ深く(2016)

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『海よりもまだ深く』は、ある団地を舞台に描かれる家族の物語。監督は、是枝裕和

売れない小説家の主人公・良太。団地に独り住いのその母親・淑子。別れた元妻と息子、響子と真悟。淑子の家に集まった3人は、一夜限りの家族の時間を取り戻す。おもな出演者は、阿部寛真木よう子樹木希林ほか。

主人公の良太を演じる、阿部寛さんは是枝監督の『歩いても 歩いても』や『奇跡』などに出演。もはや、常連ですね。『海よりもまだ深く』と『歩いても 歩いても』は、通ずるところも多く、どちらも主人公の名前は良太で、母親役は樹木希林さん。また、どちらの良太も頼りなくて、ちょっとダメな男に思えます。男前な阿部寛さんですが、そんな役も見事に好演。

本作は、結婚というよりも、その先にある家族の在り方を考えさせられます。良太と響子の夫婦の関係は終わりましたが、家族の縁は続きます。それは、真悟という息子の存在があるから。まさに、子はかすがいでしょう。

夫婦だったふたりを中心に描いた物語なので、結婚に後ろ向きな考えを抱くかなとも思うのですが、意外にも人生の方向性を考えるきっかけをもらえます。良太の「なりたいものになれていない」という台詞が印象的で、非常にモラトリアムっぽい。中年男のモラトリアムなんか、いかにもダメな男ですが、そのダメっぷりは男性には共感と反面教師の表裏一体かと。男性にお薦めの一本です。

モヒカン故郷に帰る(2016)

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松田龍平が演じる、永吉は、鳴かず飛ばずのバンドのボーカル。ある日、永吉は恋人の妊娠をきっかけに結婚を決意。その報告がてら、7年ぶりに故郷に帰省する。ひさしぶりの一家団らんかと思いきや、父親のガンが発覚。余命がわずかな父親のために奮闘する家族の姿を描く。監督は、沖田修一。おもな出演者は、松田龍平、前田敦子柄本明もたいまさこ千葉雄大ほか。

物語はシリアスですが、悲壮感や重苦しさを感じさせない軽やかな印象。たくさんのシュールな笑いも散りばめれられます。沖田修一監督の作品は『南極料理人』や『横道世之介』など、ほのぼのと笑えるものが多いですね。

『グッド・ストライプス』でも、『海よりもまだ深く』でも、結婚を機に訪れる相手の家族との関わりを描いていましたが、それぞれが異なる切り口でした。相手のルーツを知るきっかけだったり、元夫の家族との関係性だったり。
『モヒカン故郷に帰る』では、もたいまさこさんが演じる、永吉の母・春子と、前田敦子さんが演じる、永吉の恋人・由佳のかけ合いがほがらかで、あんな関係性を築けるのは理想的だなと思わされます。

結婚を考えたときに、不安に思うことはたくさんあるかと思います。恋人と自身の家族の相性はどうだろうかとか、経済的にこの先の生活は大丈夫だろうかとか。本作には、不安に感じる悩みを吹っ飛ばす力があります。なぜなら、永吉と由佳は傍目には不安だらけなのに、ポジティブに生きてるから。
みなさんも前向きな気持ちになれると思いますよ。

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    4.5
    ぐっときた、愛おしや。
  • 紫煙
    4.0
    もしも世界に優しさが存在して、その優しさが愛よりも優(まさ)ることがあるなら、きっとこの映画のようになるんだろうなと思う。 グッド・ストライプス。 ややポップソングめいたタイトルにも、そのことは表れている。素晴らしき平行線。 監督で脚本の岨手由貴子(そで ゆきこ)さんについて、私はいっさい知らないけれど、ノートに詩を書くように、脚本を書いたのではないだろうか。 スタイルとしての詩ではなく、テーマにどこか詩的なイメージがある。 妻が大橋トリオのことを好きで、見せたがりの彼女からMVを見せられて。この作品の主題歌となった『めくるめく僕らの出会い』もそのうちの1つとして見た。 いいなと思った。なんだろう。あえてズラすというより、タイミングの合わない人なんだろうと思った。そのタイミングの合わなさが、詩になっている感覚。 これは大橋トリオのことではなく、MVで使われたこの作品からの映像の話。 ちなみに妻に言わせると、私は大橋トリオに似ているらしい(髪の毛1本くらいの差で、私のほうが端正だと強がってみたけれど、無視された)。 20代後半、交際歴4年の男女が、交際関係を自然消滅させようとしていた矢先に、デキ婚するお話。 真生(まお:中島歩)と緑(菊池亜希子)。 とくに感慨もなく、かといって焦りもなく、ズルズルというよりはボヤッと、お互いの家へ報告と挨拶へ2人は向かうことになる。 その過程で、2人はそれぞれの生い立ちとわだかまりの核心に、はじめて触れることになる。 この作品の中島歩くんが、私の隣家の男の子(中学1年生)に似ていて可笑しかった。また、20代のころの私にも少し似ていて、それで彼と相性が良かったのかと変に納得した。 だから、うじきつよし氏よりも、私のほうが、父親役として似合っている(演技できないですけれど)。 緑の生家では真生が緑に気をつかって、離婚した真生の父親の家では緑が真生に気をつかって。この感じは、妻と結婚した26歳のころの私たちそのもの。 泣いた。あぁだめ、おれ、泣くと妻に宣言してから、泣いた。 優しいひとになりたいと言うひとは、たぶん優しさを誤解している。優しさにはナルシズムが入りこまないため、内的世界は苦しさに満ちている。 それでも苦しさを引き受けるのは、ほとんど宿命のようなものであり、目指してなれるものでもないし、それほど良いものでもない。 つまりこの作品は、真生と緑が、お互いに優しさという宿命につかまれていく物語だといえる。 それはきっと、愛ではない。愛の本質には、お互いを受け入れていく交差があるいっぽうで、優しさには、そうした交差はない。 平行線(ストライプス)というタイトルには、そんな意味が込められているのだろう。けれど、そこに宿命が宿るなら、愛に優(まさ)る優しさだともいえる。 恋には、どこか運命的な心がはたらく。 愛には、意志的な思いがはたらく。 そして優しさには、宿命的な寄り添いがはたらく。 運命は尽きることもあれば、意志はくじけることもある。けれど、宿命には命が尽きるときまでの永遠性が宿る。 素朴に信じていたものがいったん崩れ、崩れたなかから何かを見出した者にしか、ちょっと分からない映画かもしれない。 宿命は、そうした風景のなかにこそ現れるから。 若者のためにではなく、たぶん大人のために、この作品はある。
  • きもち
    3.4
    俳優さんの頼りなさげな背中がツボだった。大橋トリオの音楽が、合う〜!
  • jenn
    3.4
    雰囲気と菊池亜希子の役は好きだけど、男の良さが分からなかった あんな意思のない人嫌だ〜 女の人ってみんな足に変なアザあるっていう台詞は笑った 白無垢姿可愛かった
  • トリーヌ
    4.0
    「女の人ってなんでみんな足に変なアザあるの?」のくだりで爆笑。 同級生の女の人が側転?するところ意味がわからなかった。 めんどくさいけど愛おしいってこういうことだなと思った。
「グッド・ストライプス」
のレビュー(2326件)