巨大ロボットが飛び交いぶつかり合ったり、特殊能力を持った少年たちが命がけの戦いを繰り広げたり、その目まぐるしさが苦手で普段アニメーションを観ないという人もいるのではないでしょうか。実写映画などは観られるのにどうもアニメーションは苦手という気持ちも意外と分かるもので、カメラワークに演出、ノリやテンポなどアニメーションならではという要素も多いです。
そんな中でオススメなのが、練り込まれたストーリーで牽引し洒落た演出で描いていく大人向けのアニメーションたち。普段アニメーションに触れていないという人も、アニメの魅力を実感しやすいそんな作品たちを6作品ピックアップしました。
『オッドタクシー』(2021)
2021年に突如として登場し、最終回に向けてジワジワと話題になっていたシリーズが『オッドタクシー』です。
身寄りもなく、人とあまり交わることのないセイウチのタクシー運転手・小戸川を主人公に、彼のタクシーに乗り合わせる客や、友人たちの物語が、ある女子高生の失踪事件へと収束していく群像劇です。
登場人物はいずれも動物の姿をしていて、ビジュアルだけ観るとポップな印象を受けるのですが、実は物語を追っていくと内容は意外とハードな展開を見せていくのでビックリ。作中に散りばめられた僅かな情報が、実は後々の展開に影響を与えたり、思わぬ登場の仕方をしたりと、エピソードを観進めていけばいくほど面白くなる練り込まれた内容になっています。
音楽には、PUNPEEやVaVa、OMSBといった本格的なヒップホップシーンで活躍する面々が活躍していたり、声優としてラッパーのMETEORや、お笑い芸人のダイアンやミキのお二人をはじめとした意外な分野の方達が参加している点も見どころとなっています。
Amazon Prime Videoで観る【30日間無料】
『ACCA13区監察課』(2017)
月刊ビッグガンガンにてオノ・ナツメによって手がけられた同名漫画を原作にTVアニメ化を果たしたのが『ACCA13区監察課』です。
13の自治区によって構成されているドーワー王国は、かつて12の地区のクーデターが起こったことによって形成され、各地に国家行政機関ACCAが設立されます。こうしてすっかり平和な国となった世の中で、13区を不定期に視察し、不正がないかを視察するのがACCA13区監察課です。その監察課の本部の副課長を勤めるのがジーン・オータス。平和であるが故に、監察課の廃止の話が上がるも、直後のジーンの働きで課の存続が決定します。しかし、その裏にはクーデターを疑う監察課廃止派の長官によるジーンへの疑いの目にも起因しています……。
一見地味そうな仕事である監査人の仕事がここまで面白くなるんだ、という発見のある世界観の作り方と見せ方が秀逸。上品な雰囲気と、入り乱れるキャラクターたちの思惑、さらには徐々に明かされていく情報と、一度踏み込んだらストーリーに飲み込まれるのは必至です。
Amazon Prime Videoで観る【30日間無料】
『キャロル&チューズデイ』(2019)
『カウボーイビバップ』や『サムライチャンプルー』などで知られる渡辺信一郎監督と、「交響詩編エウレカセブン」シリーズや『僕のヒーローアカデミア』などを制作してきたアニメーション制作会社ボンズのタッグで制作されたオリジナル作品が『キャロル&チューズデイ』。
人類が火星に移り住みはじめて50年。首都アルバシティに、地方都市ハーシェルシティの裕福な家に育った少女チューズデイは、ミュージシャンになりたいという夢をみて家出してきます。そんな彼女は、偶然この街で働きながらミュージシャンを目指している少女・キャロルが路上で演奏しているところに出くわします。すっかりキャロルの演奏に惹かれたチューズデイは、キャロルと行動を共にすることになり、二人は共に音楽の道を歩んでいくことを決意します。
無名の二人がミュージシャンとしてデビューを目指し、成長していく姿が描かれる音楽作品となっており、歌唱シーンには声優とは別にシンガー役を用意したり、作中の音楽には国内外で活躍するプロミュージシャンが集結。豊富な挿入歌が作中の物語を盛り上げ、音楽ファンには嬉しい小ネタも盛りだくさんです。物語には人種や社会格差についても語られており、考えさせられるテーマも込められています。
Amazon Prime Videoで観る【30日間無料】
『映像研には手を出すな!』(2020)
月刊!スピリッツにて連載されている大童澄瞳が手がけた同名漫画を原作に『夜は短し歩けよ乙女』や『夜明け告げるルーのうた』の湯浅政明がTVアニメ化したのが『映像研には手を出すな!』。
アニメーション制作を夢見る高校1年生の浅草みどりは、同級生の金森さやかと共にアニメ研の上映会に足を運んだことをきっかけに、カリスマ読者モデルとして活躍しながらも実はアニメーター志望である水崎ツバメと遭遇します。こうして出会った三人は“映像研”として古い倉庫を部室としてアニメーション作りに取り組んでいくことになります。
アニメーション作りをいかにしてアニメーションで表現するのか。そんな難しい表現を見事に具体的な例で描いて、アニメーションの魅力を実感として楽しませてくれます。アニメーターの頭の中を覗くような体験が詰まっており、アニメがどうやって生まれていくのかを理解する足がかりにもなる作品となっています。
しかも描かれるのは技術面だけではなし。物作りに対する初期衝動のようなものが込められており、クリエイティブ心に火を付けるような物語となっています。
Amazon Prime Videoで観る【30日間無料】
『BEASTARS』(2019)
週刊少年チャンピオンにて板垣巴留が連載していた同名漫画を原作にCGアニメーション会社オレンジがTVアニメ化したのが『BEASTARS』。
舞台は肉食獣と草食獣が共存する世界。全寮制のチェリートン学園にて、アルパカのテムが何者かによって“食殺”される事件が起きます。テム殺しの犯人として、同じ演劇部部員であり、寡黙な性格が災いしてハイイロオオカミのレゴシに疑いの目が向けられることになることに始まり、レゴシを始め多種多様な動物たちがそれぞれの欲望と対峙していく青春群像劇です。
ストーリーだけを聞くと『ズートピア』を想像する人も居るかもしれませんが、より生々しい動物らしさが際立った内容となっているのが特徴。自分が親しくなったウサギのハルに抱いた想いが果たして、恋愛感情なのか食欲なのか。本能と倫理の間で揺れる動物と人間が入り混じったが故のストーリーになっています。
一方で重くなりそうな物語も、主人公のレゴシのまっすぐで誠実な性格が清々しく、不思議な愛おしさに溢れているところも、本作を気持ちよく観られる推進力になっています。
『かくしごと』 (2020)
月刊少年マガジンにて久米田康治によって連載されていた同名漫画をTVアニメ化したのが『かくしごと』です。
後藤可久士は下品な漫画を連載している漫画家。しかしそんな可久士は大切にしている小学四年生の一人娘・姫にその仕事が知られては嫌われてしまうと危惧して、頑なにその仕事の内容を隠していました。面白おかしく姫に仕事を隠しながらも、日々を過ごしていく一方で、時が流れ18歳となった姫は何者かから手に入れた鍵と地図を手にし、父が秘密に隠していたある家や原稿を見つけていきます。
あるあるネタを織り込んだコメディ調で描かれる姫の小学生時代のエピソードと、そんな父の秘密と姫が向き合う事になるシリアスな女子高生時代が並行して描かれる、一風変わった構成の物語となっています。毎エピソードは気軽に楽しめる一方で、全話を見終えるともう一つのハートフルストーリーへと繋がっていき、これまた清々しいラストに着地する作品となっています。
ちなみに2021年には、TVアニメシリーズを再編集しさらに新規パートを加えて、映画一本のサイズに収めた『劇場編集版 かくしごと ―ひめごとはなんですか―』も制作されています。
Amazon Prime Videoで観る【30日間無料】
一口にTVアニメと言ってもジャンルの幅から対象年齢に至るまで様々です。その中でもここで紹介している作品はいずれも大人がしっかり楽しめる作品です。世界ではいまだにアニメは子供向けという認識が強い国も多く、大人も楽しめる作品が充実している国も限られています。せっかくアニメが充実している日本ならではの楽しさを、ぜひ味わってみて下さい。
※2021年9月27日時点の情報です。