各所で既に語り尽くされているかも知れませんが、それでも「ぼくも語りたい!」と思わせてくれるのが本作「海街diary」の最大の魅力です。
本作は、全シーン全カットの些細な描写一つひとつに映画を輝かせる魅力がさりげなく、惜し気もなく詰めこまれているので、”自分が発見できた魅力”をいくらでも挙げることができます。御覧になった方ならそれを実感されているのではないでしょうか。
あらやる観点からどんな風にでも本作の魅力に触れられますので、ぼくは夏帆ちゃんが演じた三女の姿を通して、本作がいかに魅力に溢れた作品であるかを紹介します。
(※本記事には映画の内容にふれる記述があります)
Amazon Prime Videoで観る【30日間無料】超絶豪華な四姉妹!全員が主役級
超絶豪華なキャスト陣で、四姉妹を演じた全員がいわば主役級の四番打者です。世界中から注目されている是枝監督作品だからこそ、実現したキャスティングなのかも知れません。
ちょっとした台詞や仕草に宿った確かな感情
豊かに描き込まれた魅力的な人物造形
上記したように三女を家族でさえちゃんとわかろうとしていません。たとえ家族であっても、違う人間です。暢気で陽気で天真爛漫そうに見える三女のその姿は、ぼくの目にはそう演じざるを得ない”我慢した結果”の姿にも見えました。
「生きている」を強調する食事シーンの数々
本作で特に印象に残るのは、食事シーンの数々です。しらす丼にしらすパン、おはぎにお蕎麦などたくさんの食事シーンがあります。中でも魅力が爆発しているのはやはり、夏帆ちゃんが見事に演じた三女がカレーを食べている姿です。あの時のカレーを次々と口へ運んで膨らんだほっぺたは、最高に愛おしくて魅力的でした。願わくば永遠に観ていたかったです。
本作は、お葬式とお葬式に物語が挟まれている為、意図的に食事シーンが強調して描かれています。連載されたコミックから二時間の映画へ物語を落とし込む段階で、映画として成立し得るテーマを浮き彫りにする為に、その間と多くの食事の場面を抜き出したのではないでしょうか。
大袈裟に聞こえるかも知れませんが、全人類が共通して「死ぬまで」の間を「生きて」います。そんな普遍的なテーマを浮き彫りにするのは、世界で活躍する是枝監督にとって宿命だったのだと思います。また、そういう姿勢があるから世界で評価され続けるのかも知れません。
彼女たちはその間で、「生きる」為だけに食事を”摂る”のではなく、楽しさや喜びを同時に味わい「生きている」ことを堪能しようとしていました。また「美味しそうに見える食事」と「食べる行為」を誠実に撮ることには、フィクションを越える力があります。
夏帆ちゃんは疑いようもなくカレーを口に運んで、味わい、飲み込んでいました。しかも、本当に美味しそうに食べています。カレーを本当に美味しそうに食べている夏帆ちゃんの「生きている」姿が、本作を地続きな本当の物語に押し上げているのです!
本作は、食事のシーンだけでも延々見ていたい活き活きとした「生きている」魅力が詰まっています。
テーマに寄り添い続けた撮影
撮影は、常に物語のテーマとも合致していました。中でも特筆したいのは、桜のトンネルシーンのラストカットです。(すずちゃんに浮気します。ごめんなさい夏帆ちゃん)
奇跡が起き過ぎているショットなので、たった数秒のシーンでもあらゆる観点で1時間くらいは語れてしまいますが、ぼくが特に語りたいのはスローモーションの意図です。あくまで憶測に過ぎませんが、本作がフィルムで撮られたことを考えるとあのラストカットだけは、ハイスピードカメラで撮られています。
ハイスピードカメラとは1秒間に24コマ以上のフィルムを回す技術です。あのカットはすずちゃんの表情のクローズアップであると同時に、すずちゃんが体感している幸福な一瞬一瞬に対するクローズアップでもありました。
細部まで誠意が行き届いた魅力だらけの本作