「海街diary」の魅力は、誠意のこもった細部の積み重ねにあった

映画館に頻繁に出没する横分けメガネゴリラ

YMG

海街diary

各所で既に語り尽くされているかも知れませんが、それでも「ぼくも語りたい!」と思わせてくれるのが本作「海街diary」の最大の魅力です。

本作は、全シーン全カットの些細な描写一つひとつに映画を輝かせる魅力がさりげなく、惜し気もなく詰めこまれているので、”自分が発見できた魅力”をいくらでも挙げることができます。御覧になった方ならそれを実感されているのではないでしょうか。

あらやる観点からどんな風にでも本作の魅力に触れられますので、ぼくは夏帆ちゃんが演じた三女の姿を通して、本作がいかに魅力に溢れた作品であるかを紹介します。

(※本記事には映画の内容にふれる記述があります)

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超絶豪華な四姉妹!全員が主役級

超絶豪華なキャスト陣で、四姉妹を演じた全員がいわば主役級の四番打者です。世界中から注目されている是枝監督作品だからこそ、実現したキャスティングなのかも知れません。

そんな主役級の四人が本物の姉妹のように馴染んでいる”奇跡”を拝めるのは、本作の魅力を語る上で欠かせないポイントです。
四姉妹全員、劇中で何度もホームランを打っています。そんな四姉妹の中でぼくが特に語りたいのは、活発そうな外見と相反して、想いを最後まで内に秘めっぱなしだった三女についてです。

ちょっとした台詞や仕草に宿った確かな感情

シーフードカレーの材料を買うため長澤まさみさん演じる次女と三女がスーパーの中を歩いているシーン。
次女は、真面目すぎる長女とすずが想いや悩みを抱え込んでしまう性格であることをわかっています。そんな二人について次女は、会話の流れでポロっと「あんたみたいだったら良かったのにね」と独り言のように三女へ言います。それに対して三女は、笑みを浮かべて「え?それどういう意味?」と返しますが、この時の三女の微細に変化した表情、声の抑揚には明らかに影がありました。
まるで「は?私だって、いろいろ我慢してんだけど!」という想いが聞こえてくるようでした。三女の押さえ込んでいる心中が痛いほど伝わってきて苦しかったです。
さり気なく、たわいもないようなシーンですが、ぼくには三女の迸る感情が理解で来た大好きなシーンの一つになりました。よく見てなかったという方は、ぜひもう一回チェックしてみてください!

豊かに描き込まれた魅力的な人物造形

上記したように三女を家族でさえちゃんとわかろうとしていません。たとえ家族であっても、違う人間です。暢気で陽気で天真爛漫そうに見える三女のその姿は、ぼくの目にはそう演じざるを得ない”我慢した結果”の姿にも見えました。

上の2人が衝突している時にはあえて黙って成り行きを見つめ、衝突が多いからこそ場が和むようにあえて、おチャラけていたのではないでしょうか。もしそうだとすると、服装が常に明るいのも納得がいき、無性に切なくなります。
父を知らず、母とは長く一緒にいられなかった三女は、この家の誰よりも「愛される」ことから遠くにいた存在です。だから、母に髪型を褒められた時の三女の嬉しそうな表情が痛いほど切なく、父との繋がりに気付けた時の三女の表情が泣けて泣けて仕方ありませんでした。
大々的にそういったことが描かれていたとは思いませんが、内に秘めた想いは間違いなく画面に映っていました。それはどのシーンでも一緒です。

「生きている」を強調する食事シーンの数々

本作で特に印象に残るのは、食事シーンの数々です。しらす丼にしらすパン、おはぎにお蕎麦などたくさんの食事シーンがあります。中でも魅力が爆発しているのはやはり、夏帆ちゃんが見事に演じた三女がカレーを食べている姿です。あの時のカレーを次々と口へ運んで膨らんだほっぺたは、最高に愛おしくて魅力的でした。願わくば永遠に観ていたかったです。

本作は、お葬式とお葬式に物語が挟まれている為、意図的に食事シーンが強調して描かれています。連載されたコミックから二時間の映画へ物語を落とし込む段階で、映画として成立し得るテーマを浮き彫りにする為に、その間と多くの食事の場面を抜き出したのではないでしょうか。

大袈裟に聞こえるかも知れませんが、全人類が共通して「死ぬまで」の間を「生きて」います。そんな普遍的なテーマを浮き彫りにするのは、世界で活躍する是枝監督にとって宿命だったのだと思います。また、そういう姿勢があるから世界で評価され続けるのかも知れません。

彼女たちはその間で、「生きる」為だけに食事を”摂る”のではなく、楽しさや喜びを同時に味わい「生きている」ことを堪能しようとしていました。また「美味しそうに見える食事」と「食べる行為」を誠実に撮ることには、フィクションを越える力があります。

夏帆ちゃんは疑いようもなくカレーを口に運んで、味わい、飲み込んでいました。しかも、本当に美味しそうに食べています。カレーを本当に美味しそうに食べている夏帆ちゃんの「生きている」姿が、本作を地続きな本当の物語に押し上げているのです!

本作は、食事のシーンだけでも延々見ていたい活き活きとした「生きている」魅力が詰まっています。

テーマに寄り添い続けた撮影

撮影は、常に物語のテーマとも合致していました。中でも特筆したいのは、桜のトンネルシーンのラストカットです。(すずちゃんに浮気します。ごめんなさい夏帆ちゃん)

奇跡が起き過ぎているショットなので、たった数秒のシーンでもあらゆる観点で1時間くらいは語れてしまいますが、ぼくが特に語りたいのはスローモーションの意図です。あくまで憶測に過ぎませんが、本作がフィルムで撮られたことを考えるとあのラストカットだけは、ハイスピードカメラで撮られています。

ハイスピードカメラとは1秒間に24コマ以上のフィルムを回す技術です。あのカットはすずちゃんの表情のクローズアップであると同時に、すずちゃんが体感している幸福な一瞬一瞬に対するクローズアップでもありました。

あっという間に過ぎていってしまうその瞬間の全てを記憶に残そうとするかのようなすずちゃんの心を、フィルムの一コマひとコマが捉えていたのです。
「生きている」ことへのクローズアップ。もう最高です。

細部まで誠意が行き届いた魅力だらけの本作

全てのシーン、全てのカットに上記したことが必ず詰まっていると言っても過言ではありません。三女に特化してもこれだけ語ることができたので、全編を通したら永久に語り続けられてしまうと思います。
是枝監督は、観客一人ひとりの心の中でそんな魅力が弾けるように一つひとつの事柄を丁寧に作り上げたのではないでしょうか。言い換えると観客の想像力を信じて、起爆の種だけを描いているようなものです。
気付くことが出来た魅力一つひとつがその人にとっての「海街diary」になり、一生残る大切な作品になるのではないでしょうか。
だからこそ自分の思い出や記憶を語るみたいに、「海街diary」を語らずにはいられなくなるのだと思います。

 

 

※2022年6月27日時点のVOD配信情報です。

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  • Mai
    4
    綾瀬はるかのお姉ちゃん良かった。なんかお姉ちゃんやるの意外だった笑 何も大きな事件とか起こらないから海外ではあまり評価されなかった様だけど、日常を丁寧に描いていて私は好き。そして鎌倉に行きたくなる。
  • スズメ
    -
     
  • マルコ
    4.5
    穏やかで自然な描写にとても癒された。 4姉妹それぞれの個性が際立って、生活を共にしている姿に憧れた。 時に長女と次女がぶつかるけれど、元に戻る時の自然さが本当に幼い頃から時間を過ごした姉妹だった。 光が沢山入って柔らかい雰囲気なのに、どこか寂しげなのはお葬式のシーンが印象的だからかもしれない。 ただ、お葬式もただ暗い場面だけを描くのではなく、人との出会いや未来への希望を持っているのがとても良かった。 寂しくて優しい雰囲気がとても良かった。
  • porco0110
    4.5
    心が安らぐ。
  • おざわよういちろう
    3.4
    ザ・普通の映画。
海街diary
のレビュー(148907件)