新作ポケモン映画で17年ぶりにクレジットされた首藤剛志さんとは? 

アニメの風通しがもっと良くなりますように

ネジムラ89

大ヒット上映中の劇場版ポケットモンスターキミにきめた!』。

興行通信社の発表している全国動員数ランキングでも、夏休みシーズンを控え大作映画が揃う中、初週末に1位にランクイン。また、Filmarks(フィルマークス)の初日満足度ランキングでも第2位にあがり、今なお大ヒット上映中の話題作です。

劇場版ポケットモンスターキミにきめた!

アニメ「ポケットモンスター」を語るに欠かせない首藤剛志さんとは?

実は今回の映画、スタッフクレジットにある方が一部脚本としてクレジットされているのはご存知でしょうか。ポケモンのTVアニメシリーズを語る上で非常に重要な人物、首藤剛志(しゅどう たけし)さんです。

1997年にスタートしたTVアニメ「ポケットモンスター」でシリーズの構成を最初に務めたのが、他でもない首藤剛志さん。首藤さんは、2010年にすでに亡くなられています。なぜ、首藤さんが『劇場版ポケットモンスターキミにきめた!』にクレジットされているのでしょうか。それは今回の映画では、アニメシリーズのエピソードが盛り込まれているからです。

これにより、ポケモンにあまり親しくない人も楽しめる今までにない“特別な”映画になっているのです。

アニメシリーズの第1話をピックアップ

予告編を見れば往年のファンはピンと来るように、今作では主人公のサトシとピカチュウの出会いのエピソードが描かれます。二人がどうやって出会ったのか、どう親しくなっていったのか。それら疑問の答えとなるアニメシリーズの第1話「ポケモン!きみにきめた!」のエピソードを劇中で再現しています。そして、そのアニメシリーズ第1話の脚本を務めたのが、今は亡き首藤剛志さんでした。

モンスターボールに入らないピカチュウ

首藤剛志さんは、現在にも続く「ポケモンシリーズの特性」の構想に大きく関わっていた人物です。

例えば、第1話で描かれる「なぜかモンスターボールに入らないピカチュウ」もその特性の一つ。

ポケモンといえば、“親しくなったポケモンは、モンスターボールという道具に収納できる”という設定がありますが、そんな中、アニメシリーズに登場するピカチュウだけは、頑なにモンスターボールには入りません。

首藤剛志さんは、このことについて以下のように述べています。

「自己を見失うな」という事も、このアニメのテーマにしたかった。ピカチュウは、サトシとは仲間であっても、サトシの所有物にはなりたくないのである。 

引用:WEBアニメスタイル「シナリオえーだば創作術ーだれでもできる脚本家」より

人間によるポケモンの服従化のように見えてしまう設定は、原作のゲーム内でもたびたび問題提起される内容です。しかしながら、アニメでは最初に、ピカチュウがモンスターボールには入りたくないという意思表示をし、それをサトシが許容します。その仕掛けがまさに二人が服従関係でない非常に大きな説得力となっています。

戦いを止めようとする人間・サトシ

また、ポケモンに距離感がある人ほど気になる点として、「ポケモンの世界では、人間がポケモンに指示して戦わせ合う」という設定があります。これも人間とポケモンが使役関係のように際立って見える部分でしょう。ポケモンに詳しくない人ほど道具のように扱っているように映ってもおかしくない部分です。

そんな視点に対して首藤剛志さんが向き合ったポケモンシリーズのエピソードが、本人が脚本を務めた、ポケモンの劇場版シリーズ第1弾『劇場版ポケットモンスター/ミュウツーの逆襲です。

劇場版ポケットモンスターミュウツーの逆襲

作中ではポケモンとそのコピーポケモン同士がぶつかり合い、争い続けるシーンが出てきます。そして、その争いを止めようとするのが、普段はポケモンに攻撃命令をする立場である人間のサトシでした。サトシは争いを止めようとした結果、攻撃を受けて石化してしまうのですが、サトシの戦いを止めようとした行動を見たポケモンたちは、なんと人間のように涙を流します。ポケモンは人間の戦いの道具ではない、それどころかポケモンは人間と近い存在、もしくは変わらない存在である対等なものであることを描いていました。

20年の時を経て見つめ直すポケモンとの関係

20年の時を振り返ると、首藤剛志さんは最初にアニメのポケモンの世界を描いていただけあって、特にシビアに人間とポケモンの関係を描いていた方のように思えます。今でこそサトシとピカチュウは仲良しで当たり前ですが、その当たり前にしっかり「なぜなのか」を提示してくれていました。

そして今回劇場版ポケットモンスターキミにきめた!では、そんなサトシとピカチュウの物語がリブートされるにあたり、首藤剛志さんがかつて描いてきた、人間とポケモンの関係について、改めてそのテーマに正面から向き合って物語が描かれることになるわけです。

今回の映画で脚本にクレジットされている米村正二さんが、首藤剛志さんから続く劇場版脚本のバトンを引き継ぎ、「サトシにとってピカチュウとはどんな存在なのか」そして「ピカチュウにとってサトシがどんな存在なのか」という20年間当たり前だったことを再び見つめ直します。

原点に返ることによる効果は、ポケモンファンにとって懐かしいと思わせるだけではありません。『劇場版ポケットモンスターキミにきめた!』では、ポケモンをあまり知らない人にも、ポケモンという世界が何を描いているのか、非常に汲み取りやすい仕組みを生み出してくれているのです。

(C)Nintendo・Creatures・GAME FREAK・TV Tokyo・ShoPro・JR Kikaku (C)Pokemon (C)2017 ピカチュウプロジェクト

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  • あゆら
    3.5
    まーシャドウの声にマジで驚いた!!観たの映画館だったから特にね
  • 3.3
    ピカチュウ可愛すぎる... ポケモンとの友情最高
  • Ryu
    3.7
    カントー地方マサラタウンに住む少年 サトシは10歳になったことで、オーキド博士からピカチュウをもらい、旅立つ。サトシとピカチュウは旅の途中で伝説のポケモン ホウオウを目撃。虹色の羽を手に入れ、いつかホウオウに会いにいくことを誓う。その後、サトシはポケモントレーナーのマコトとソウジと出会い、共に旅を続ける。 ポケモン映画20作記念特別企画ということで、サトシとピカチュウの出会いから旅立ちを描いています。カントー地方編を原案とはしていますが、完全オリジナルストーリーです。 オニスズメの大群からピカチュウを守るサトシ、弱ったヒトカゲとの出会い、バイバイバタフリー など、無印編のエピソードも盛り込まれています。 アニメ本編のパラレルワールドという設定で、カントー地方には登場しない第2世代以降のポケモンも多数登場していて、これにはテンション上がりました。仲間も完全オリジナルキャラクターとなっています。このマコトとソウジがシンオウ地方出身で、これはダイパ世代には嬉しいですね。 ストーリーとしては、まぁ王道ってところでしょうね。中盤にサトシがポケモンのいない現実世界にいる描写があるのですが、あれはポケモンから離れてしまった大人たちに向けてのシーンなのかな。にしても、ポケモンというコンテンツで、あのような冷たく、無機質な感じの表現は見たくなかったという思いがあります。 ソウジのレントラーの話にあるように、ポケモンが死ぬ ということを強めに言及してるのも、ちょっと大人向けな感じもしました。 あと、色んな世代のゲームのアレンジBGMが要所要所でかかるのは、これまためちゃくちゃテンション上がりました。特に第5世代のポケモンリーグや第3世代のおふれのせきしつ のところが特に好きです。 リアルタイムでポケモンが好きな子供たちよりも、ポケモンに触れたことがない人、かつてポケモンが大好きだった大人たち の方がより楽しめる作品だったと思いました。
  • RuKa
    4.2
    最初はただモンスターボールに入るのが嫌だったピカチュウがサトシといたくて危なくても頑なに入らないかんじが切なかった。 ピカチュウ泣くシーンは号泣
  • ほくれれ
    4
    好きな曲はと言う質問に 「めざせポケットモンスター」とよく答えると笑われる。 もちろん、昔から好きだから。 リュックを好んで使い、背負う時に背筋が伸びるようになったり 靴紐を結ぶ時に、ワクワクするのも 案外、日常に残っている サトシが言う、「ポケモンマスター」は、全てのトレーナーの頂点であるポケモンチャンピオンとは違う、 では、なにか?というと 「世界中のポケモンと友達になることが夢 」それがサトシにとってのポケモンマスター なので、主題歌は 「めざせ“友達“マスター」ということ って子供の時から思ってた 歌詞に、背中を押してくれる好きな言葉がある 「ユメはいつかホントになるって だれかが歌っていたけど つぼみがいつか花ひらくように ユメはかなうもの」 今日もどこかで、次のトレーナーが生まれていることにどこか期待しながら映画を観てました。
劇場版ポケットモンスター キミにきめた!
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